米国民、議員の信を失ったオバマ大統領 4月訪日で日本が得るものはあるのか
2014.02.20 zakzak
「中間選挙にむけたキャンペーンがすでに始まっているが、与党・民主党の候補は誰もオバマ大統領に応援に来てほしいと思っていない」
米議会の友人が私にこう言った。民主党の議員らは、オバマ氏から応援の申し出があった場合、「大変ありがたいのですが、結構です」などと、どう言って断ろうか苦労している。
日本は、靖国問題などで中韓が反発しているため、4月のオバマ氏訪日を有り難がっている向きもある。だが、米国でオバマ氏の支持率が急落し、中間選挙を控えて、身の置き所がなくなっていることを理解しているのだろうか。
実際、オバマ氏に対する米国民の評価は、支持率が低下しているといった程度の生易しいものではなくなっている。私が親しくしている保守系雑誌編集長はこう言った。
「オバマ氏は、今やレームダックどころではない。国民健康保険の問題で嘘をついただけでなく、移民法改正や税制改革も実施できていない。そのうえ、米議会の指導者や議員と対立して個人的にも嫌われている」
レームダック(足の不自由なアヒル=死に体)とは任期切れを前に政治的に何もできなくなった政治家のこと。オバマ氏は任期が2年半も残っているのに、すでに何もできなくなっている。
米大統領は、指導者としてのイメージが重要だ。しかし、オバマ氏は正直でないうえ、看板とする政策を何一つ実現できない、指導力のない大統領というネガティブなイメージを国民に与えるようになっている。
オバマ氏は、中間選挙の応援を歓迎されないため、メンツを保つために、せっせと外国旅行に出かけるのだ。
3月にサウジアラビアとオランダ、4月に韓国と日本、5月にブラジル、6月にアフリカ訪問を予定している。“死に体”のオバマ氏が来日し、安倍晋三首相と握手したところで、日本のイメージが良くなるはずはない。
さらに、考えなくてはならないのはTPP問題だ。オバマ氏が推し進めるTPPを日本側が妥協して飲んだとしても、米国での日本の立場が良くなるわけではない。
米民主党の議員たちは、TPPが成立しても、「得をするのは農民や企業の株主だけだ」と考えている。環境保全関連の製品などの輸出がいくらか増えるものの、TPP協定で、「米国の労働者が受ける打撃のほうが大きい」と、強く反対している。
「オバマ氏が日本を説得してTPP締結の調印にこぎつけても、米上院がTPPを批准する見通しは今のところ非常に少ない」。米議会の専門家はこう言っている。
日本の人々はオバマ氏の置かれている政治的な立場を冷静に分析し、大統領の訪日を評価すべきである。
■日高義樹(ひだか・よしき) 1935年、名古屋市生まれ。東京大学英文科卒。59年NHKに入局し、ワシントン支局長、理事待遇アメリカ総局長を歴任。退職後、ハーバード大学客員教授・同大諮問委員を経て、現在はハドソン研究所首席研究員、全米商工会議所会長顧問。
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20140220/dms1402200722000-n1.htm
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成26(2014)年2月20日(木曜日)貳
通巻第4154号
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投資家ヴィザを中国人に不適切に発給する代理人や政治家は民主党
ヒラリーの兄弟、クリントンへの政治献金者、そしてオバマ政権高官ら
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ワシントンタイムズ(2月18日)がすっぱ抜いた。
EB-5ヴィザは米国に投資し、会社を創設するかして十人以上のアメリカ人雇用が義務付けられている。100万ドルの投資が最低限度必要だが、貧困地域での雇用創設のための起業なら50万ドルでもよい。
中国の富裕層が、このヴィザ申請に群がるのも、EB-5は、永住権(グリーンカード)を入手出来るからだ。
これを逆利用して「ニュー・ビジネス」を始めたのが民主党系の国務省高官OBや中国に利権をもつ政治家らだった。
米国の入国管理は02年から国土安全保障省に移管されたが、20万を超える組織でありながら権限は制限され、予算がすくなく、けっきょく不法取得者の後追い調査ができていない。
EB―5不正入手で起訴されたのは過去二十年にわずか一件だけという。
EB-5を専門に取り扱う代理業者は、米国に一握りしかいない。不正がみつかったケースはイリノイ州シカゴ空港周辺にホテルやコンベンション・ホールをつくって地域経済を活性化するためのファンドをつくるとして4500万ドルの資金を中国人250名から集めた。2013年2月に発覚した。
ヴァージニア州に本社のある「湾岸ファンド・マネージメント社」はアンソニー・ローダムが経営者、聞いた名前? そうですよ。ヒラリー前国務長官の兄弟である。
またクリントンに政治献金した「グリーンテック社」社長だったテリー・マコーリフ(現在ヴァイジニア州知事)が、「湾岸ファンド・マネージメント社」に深く関わっていた。
ついでながらマコーリフがヴィージニア州という共和党の地盤で奇跡的逆転勝利を得られたのはクリントン夫妻の積極的な応援と共和党が党内の足並みが乱れ、ティーパーティに攪乱されたためだった。共和党との差は2%でしかなかった。
▼いずれも怪しげな親中派商人やロビィスト
ラスベガスのカジノ・ホテルに投資する中国人のヴィザを急いで発給せよと圧力をかけたのはハリー・ライド上院院内総務(民主党、ネバダ州選出)だった。地元への利益誘導には露骨である。
また書類調査では国土安全保障省担当に、24名の中国人富裕層の申請にあたり威圧的に発給するよう圧力をかけたのはオバマ政権高官だったという。
事前の審査はおもに犯罪歴と会社登記書類を調べるだけで、追跡調査、詳細な監査はネグレクトされている。
かくしてワシントンでは「EB―5」ヴィザの見直し議論は遠のき、そればかりか、その制度の抜け道に通暁し、盲点を突いて中国人富裕層の不法申請を合法的に手助けする親中派政治家、政府職員OBらのニュー・ビジネスとなってしまったとワシントンタイムズが分析した。
http://melma.com/backnumber_45206_5982564/
◆その国に行ったこともない民間人、米大使に指名
オバマ米大統領が大使に指名した民間人が赴任予定の国に行ったことがなく、その国の基礎知識にも欠けていることが次々と露呈した。
米国では大統領の友人や選挙資金の提供者が「政治任命」で大使になる慣例があるが、適性を無視した人事に批判が強まっている。
「政治任命」では、国務省主導で外交官を起用するのでなく、大統領が側近や議員、経済人らを大使に指名する。1月から2月に開かれた上院外交委員会の公聴会では、政治任命の大使候補者の答弁で、耳を疑うような発言が相次いだ。
駐ノルウェー大使に指名されたジョージ・ツニス氏は、ノルウェーに行ったことがあるかと聞かれ、「ありません」と答えた。同国が立憲君主制であることも知らなかった。駐アルゼンチン大使、駐アイスランド大使に指名された民間人もそれぞれの任地に「行く機会がなかった」と述べた。
駐ハンガリー大使に指名されたコリーン・ベル氏は、「前任の大使はハンガリー政府との関係が悪かったが、どう変えるか」と聞かれ、「市民社会と関わっていく」と、ちぐはぐな回答を繰り返した。
(2014年2月19日18時54分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20140219-OYT1T00853.htm
◆安倍首相を望んだことを悔やむ米国政府
2014.02.21(金) Financial Times JB PRESS
(2014年2月20日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
安倍晋三首相が率いる日本と習近平国家主席が率いる中国との関係を評価するのは極めて簡単だ。どちらも相手をあまり好きではない。日中双方が、政策目標を推し進める道具としてナショナリズムを利用している。どちらも恐らく、相手側に押しがいのある「タフな男」がいることは都合がいいと考えている。
評価するのがそれほど簡単でないのが、日米関係の状態だ。本来であれば、日米関係は日中関係よりもはるかに容易に読み解けるはずだ。結局、日本は米国にとってアジアで最も重要な同盟国であり、第2次世界大戦の終結後、米軍の戦闘機と部隊を受け入れる「不沈空母」だったのだから。
緊張する日米関係
そして今、数十年間にわたり米国から促された末に、ようやく強固な防衛態勢を築き、平和主義の日本が長年大事にしてきた「ただ乗り」の国防政策を見直す意思を持った安倍氏という指導者がいる。
だが、長年求めてきたものを手に入れた今、米国政府はおじけづいている様子を見せている。
その兆しの1つは、安倍氏が昨年12月に靖国神社を参拝した後に米国政府が「失望」を表明したことだ。靖国神社は中国と韓国から、自責の念がない日本の軍国主義の象徴と見なされている。
以前は、米国政府は内々に靖国参拝への不満を述べたが、公然と日本を非難することはなかった。日本政府は今回、米国が日本語できつい響きのある失望と訳された「disappointed」という言葉を使ったことに驚かされた。
ほかにも緊張の兆候が見られた。米国の政治家は、安倍氏の歴史観に対する懸念を表明している。バージニア州の議会は、学校教科書に日本海を表記する際には韓国名の「東海」を併記するよう求める法案を可決した。米国政府は、安倍氏の指揮下で、やはり米国の重要な同盟国である韓国と日本の関係も悪化したことを懸念している。
日本の観点から見ると、論争になっている島嶼に対する日本の支配権に対し、中国政府が防空識別圏設定の発表で巧妙に対抗してきた時、米国政府は十分な力強さをもって日本を支持しなかった。
米国政府は確かに中国の防空識別圏内に爆撃機「B52」を2機送り込んで不満を表したが、米国のジョー・バイデン副大統領は北京を訪問した時に、この問題をことさら取り上げなかった。
東京の多くの政府関係者は、米国政府は事実上、中国の一方的な動きを黙って受け入れたと考えている。また、彼らは常日頃、中国にどっぷり染まった人々を周囲に置く傾向のあるバラク・オバマ大統領の回りに「ジャパンハンド」がいないことも嘆いている。米国政府が日本を支持することは、もはや当てにできないという感覚が広まっていると語る日本政府関係者は1人ではない。
このような背景には、安倍氏にも当然分かる皮肉がある。1950年以降ずっと、米国政府は日本に対し、再軍備し、現在安倍首相が提唱しているような国防態勢を取ることを迫ってきた。ダグラス・マッカーサー元帥の命令で書かれた1947年の平和憲法のインクが乾くや否や、米国人は日本に「交戦権」を永遠に放棄させたことを悔やんだ。
米軍による占領終了の交渉を任じられたジョン・フォスター・ダレスは日本に対し、30万~35万人規模の軍隊を構築するよう迫った。中国は共産主義国家になり、米国は朝鮮半島で戦争を戦っていた。東アジアに無力化された「従属国家」を抱えることは、もはや米国に適さなくなっていたのだ。
何年もの間、日本はこうした圧力に抵抗してきた。日本政府は米国の核の傘を頼りにし、ビジネスを築く仕事に勤しんだ。日本の唯一の譲歩は、戦闘を禁じられた自衛隊を創設することだった。
あれから60年経った今、日本には、米国を言葉通りに受け止める指導者がいる。安倍氏には、日本の憲法解釈を見直し、場合によっては平和主義を謳った憲法第9条そのものを覆す個人的な信念と地政学的な口実がある。
中国を挑発しかねない日本のナショナリズムへの不安
しかし、その瞬間が訪れた今、一部の米国政府関係者は考え直している。ある元ホワイトハウス高官によれば、ジョン・ケリー国務長官は日本を「予測不能で危険」な国と見なしているという。
日本のナショナリズムが北京で対抗措置を引き起こすとの不安感もある。オーストラリアの学者で元国防省高官のヒュー・ホワイト氏は、これが意味することは明白だと言う。「米国としては、中国と対立する危険を冒すくらいなら日本の国益を犠牲にする」ということだ。
安倍氏が靖国神社を参拝した時、米国政府にメッセージを送る意図もあったのかもしれない。日本の右派の奇妙なところは、最も熱心な日米同盟支持者でありながら、同時に米国政府が敗戦国・日本に強いた戦後処理に憤慨していることだ。米国の望みに逆らって靖国を参拝することは、日本は常に米国政府の命令に従うわけではないという合図を送る1つの方法だ。
ワシントンで見られる安倍氏への嫌悪感は、決して普遍的ではない。
ある意味では、安倍氏はまさに米国という医師が命じた日本の首相そのものだ。同氏は日本経済を浮揚させる計画を持っている。沖縄の米海兵隊基地の問題を解決する望みが多少なりともある日本の指導者は、もう何年もいなかった。日本は長年、国防費に国内総生産(GDP)比1%の上限を自ら課してきたが、安倍氏は国防費を増額する意思がある。
だが、これらの政策には代償が伴う。ワシントンの多くの人が不快に感じる修正主義的なナショナリズムである。
米国のジレンマと日本の悩み
「中国が成長するにつれ、日本が中国の力に不安を感じる理由がどんどん増え、日本を守る米国の意思への信頼がどんどん薄れていく」とホワイト氏は言う。
同氏いわく、米国は日本の中核利益を守ることをはっきり確約するか、さもなくば、日本が「1945年以降に放棄した戦略的な独立性」を取り戻すのを助けなければならない。このジレンマに相当する日本の悩みは、一層強く米国にしがみつくか、米国から離れるか、という問題だ。
By David Pilling
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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40005
◆竹中平蔵「破壊ビジネス」の立役者が残した動かぬ証拠
最近、やたらと“米国の崩壊”だの、“米帝国の終焉”といった過激なタイトルで本を上梓される方々がいる。いわゆるサブプライムに象徴される証券化された有価証券に基づく損失の膨れ上がりにより米国の金融マーケットが圧迫され、さらには米国経済全体の勢いが減退しつつあることは事実である。
しかし、だからといって覇権国・米国による日本を含めた世界に対する手綱は緩むことはないのである。上記のネット監視がそのことを物語っている。私たち=日本人としても、あくまでもそのようなものとして米国に対する警戒心を失ってはならないのである。
こうした警戒心を研ぎ澄ませるのに役立つアイテムとして、私が普段活用しているのが、構造改革という名の“破壊ビジネス”の立役者だった日本人たちが得意げに書き残している書籍である。構造改革とは、とどのつまり、「自分たちの身の丈以上に消費をすることで経常収支赤字が恒常化した米国が、マクロ経済上の相殺を資本収支の絶えざる黒字化のために、とりわけ国富を溜め込んだ国に対して強いているビジネス・モデル」にすぎない。そのお先棒を担ぎ、国富の米国への移転を手伝っているのが、日本の政界・財界・学界・官界・メディア界にあまねく生息している“破壊ビジネス”の担い手たちなのである。
米国はこれまで、こうした“破壊ビジネス”の担い手たちを陰に日向に支援してきた。なぜなら、そうしなければ自国のマクロ経済運営が立ち行かなくなるからである。しかし、そのような役割を忠実にこなすことによって米国より事実上のサポートを受けて出世していく“破壊ビジネス”の担い手たちは、この隠微な事実を決してあからさまに口にすることはない。
しかし、そのように慎重な彼らであっても、時として口を滑らせてしまうことがあるのだ。その一つが、彼らが得意げに記す「自叙伝」なのである。そこでは、米国による日本での“破壊ビジネス”の実態が期せずして赤裸々に語られる場合がままある。
この観点から、私が今、最も注目しているのが高橋洋一「さらば財務省! 官僚すべてを敵にして男の告白」(講談社)である。
高橋洋一氏はこの本のカバーによると”内閣参事官“。1980年に大蔵省に入省後、理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員を経て、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)などを歴任したとある。最近、さまざまな媒体で”竹中平蔵擁護論“を声高に主張されているようなので、この高橋洋一氏の名前を目にした方も多いことだろう。
もっとも、ここで関心があるのは高橋洋一氏お得意の“竹中平蔵擁護論”ではない。彼がこの本の中で、米国による“破壊ビジネス”の傷跡を(意図せずして)赤裸々に語っている、郵政民営化の基本骨格づくりをめぐる次のような下りである。
「私も、基本方針づくりにはもちろん参加した。岸さんらと四人ほどで、あるいは竹中さんの外部オフィスで、また、竹中さんから見てちょっと遠い人間を入れる必要があるときには、ホテルの一室で、集まって。
日を追うにつれ、民営化の具体的な道のりもほのかに見えてきた。たとえば郵政四分社化である。・・・(中略)・・・様々なパターンを考えては打ち消した。案を練っては否定し、否定しては練るという虚しい作業が続いたが、しかし、これを繰り返していくと、問題のあるパターンはふるい落とされていき、最後には、最も適切な案が残る。数ヶ月、苦悶を重ねて行き着いたのが、四分社化だった。
もっとも、竹中さんが四分社化を採用したのは、私のアイデアだけを取り入れたからではない。郵政事業の分割に関しては、マッキンゼー社も案を練っていた。マッキンゼーは一足先に実施されたドイツの郵政民営化にコンサルタントとして参加したという経験があった。
マッキンゼーで、郵政民営化を考えていたのは宇田左近さん(現・日本郵政専務執行役)である。宇田さんの考えがおもしろく、竹中さんの琴線に触れたようだった。
宇田さんのやり方は、私のアプローチとはまるで違う。私は経済学的な見地からだったが、宇田さんは経営学的な観点からのものだった。しかし、到達した結論は同じ四分社化。後に宇田さんと話してみると偶然にも似た考え方だった。」(高橋洋一・前掲書より抜粋)
以上が問題の部分である。ここでこの問題の箇所から“客観的に”読み取ることができる事実関係をまとめておくことにしよう:
●郵政民営化という、総額350兆円もの“国富”にかかわる重大案件について、当然のことながら秘匿装置もついていない(したがって外国勢力によって盗聴も容易な)民間施設での協議が繰り返されていたこと。
●日本の郵政民営化に纏わる基礎的な検討作業に際し、米系経営コンサルティング会社が当初から深く関与していたということ。また、「民営化」が実現した後、その中心人物がそのまま民営化された日本郵政の経営幹部に滑り込んでいるということ。
これだけでも充分に驚きなのだが、さらに驚愕すべきことが一つある。それは、郵政民営化が米国から日本につきつけられてきた「対日年次改革要望書」の筆頭項目ともいうべき重大な要求であったという事実そのもの、あるいはそれを踏まえた展開に関する言及をこの本で高橋洋一氏は一切行っていないということである。この本の中でそもそも外国について触れた部分は、プリンストン大学に同氏が留学している最中の下りのみなのである。もちろん、外国勢力からなんらかの影響力の行使があったかどうかなど、物事の“核心”についての言及は一切ない。
しかし、郵政民営化をめぐってはそもそもこれが米国からの密やかな、しかし明確な対日圧力に基づくものであったことが当時(2005年頃)、最大の争点だったのである。そのことは余りにも周知の事実であるにもかかわらず、これについて当事者であった高橋洋一氏は一切言及していないわけである。単に失念したというのであれば「知」を武器にする官僚としての資質を疑わせるものであり、他方、意図的に記述していないというのであれば「誰のために働いたのか」という重大な疑念が高橋洋一氏の“業績”には今後常にまとわりつくことになるのだ。
いずれにせよ、はっきりしたことが一つある。
「歴史は沈黙によってもつくられる」
http://blog.goo.ne.jp/shiome/e/0918f89715f57369e3952119c53521fd
◆「日米安保条約はもはや賞味期限切れ」
日高義樹氏に聞く「いま備えるべき日本の安全保障」論
2014.02.14(金) 井本 省吾 JB PRESS
尖閣諸島領海への船舶侵入、防空識別圏の設定など、強まる中国の軍事攻勢に対して日本人の不安が高まっている。いざという時の頼みの綱は日米安保条約だが、最近の米国政府の内向き姿勢が不安を助長している。オバマ政権の中国への宥和的な態度も気がかりだ。一体、アメリカは日米同盟をどうしようとしているのか――。
「もはや日米安保条約は賞味期限切れだ」。NHKワシントン支局長を務め、長く米国の外交・軍事戦略を取材し、ヘンリー・キッシンジャー氏など米国の政官界に幅広い人脈を持つ米ハドソン研究所首席研究員、日高義樹氏はこう明言する。
軍事予算を削減している米国は、日本を守る力も意欲も減退しているからだ。「自国のことは自分でやってくれ」という態度。しかも、国内総生産(GDP)が日本を上回った中国との関係を深めた方が経済的にも得策、という考え方が米国の政府、経済界に広がりつつある。
もちろん安保条約の手前、尖閣周辺で日中戦争が火を噴けば米国は助けに来るが、空海軍による「エア・シー・バトル(空と海からの戦闘)」だけで、尖閣に上陸したりはしない。もし尖閣に中国の漁民や軍人が上陸したら、日本が自力で排除するしかないという。
「日本は憲法を改正し、核武装を含め自力の軍事力を持つ必要がある」という日高氏に、いま備えるべき日本の安全保障体制を聞いた。
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井本 アメリカは内向きになり、また中国との経済関係を密にして、日本との関係を薄めつつあると言われます。
内向きになるアメリカ、ドル体制維持のために中国選ぶ
日高 アメリカのオバマ政権はアジアのパートナーとして日本よりも中国を選んだと理解していいと思う。日本より経済力の大きくなった中国を大事にするのは当然だという空気が今の米政財界にあります。米国経済は短期的には立ち直ったけれど、累積財政赤字は依然として大きく、ドル体制を維持するには米国債を買ってもらうなど中国の経済力に頼らざるを得ない。
中国はすでに米国債の最大の保有国だが、今後も買い続けてもらう。その見返りに中国が人民元をドルにペッグし、国際通貨として石油代金などの支払いに使うことを許す。発表はされていないが、昨年6月にカリフォルニアで開かれたバラク・オバマ大統領と習近平・中国国家主席との会談で、そうした合意がなされたと私は推測しています。
ドル体制維持のために中国を選んだ。しかも、イラクやアフガニスタンなど中東地域での軍事外交で疲弊したこともあって、米国は孤立主義に向かっています。「遠いところで戦争するなんて、もうまっぴら。外国のことなんて知らないよ」。最近の米国の世論調査を見ると、そうした声が過半数を占めています。べトナム戦争の泥沼に嫌気がさして厭戦ムードが広がった1960年代後半以来の内向き志向ですね。
井本 そこから、日米安保条約の意味合いが変わってきたと?
日高 そう、安保条約の空洞化、安保は時代遅れになったということです。歴史的に言うと、アメリカの安保条約締結の狙いは、まず日本をソ連に取られないようにすることだった。1951年のサンフランシスコ条約調印時、日本を独立させたら、すぐに日本はソ連軍を駐留させるのではないか、という不信感があった。また、日本は経済力と軍事力を回復すると、またぞろ中国に進出するかもしれない。それを阻止しようとも思っていた。
井本 日本を抑えるために平和憲法を制定させ、在日米軍基地を置く。いわゆる「瓶のふた」論ですね。
日高 もう1つ大きな狙いが日本の経済力の活用。日本を下請けにして日本の安くて高品質の商品を購入、アメリカの商品も日本に買わせる。財政が悪化してからは米国債を大量に買ってもらう。しかし、日本経済の低成長化と中国経済の台頭で、こうした時代が終わりました。
軍事的にも従来は台湾有事、朝鮮半島有事という、起こり得る2つの戦争の後方基地として日本が必要だった。しかし、今や台湾はミサイルを持ち、北朝鮮も核保有国だから、地上戦闘はあり得ない。日米安保条約で台湾有事、朝鮮有事での軍事的意味合いが薄れたわけです。
井本 安保条約は、米ソ冷戦時は対ソ連、共産体制への防波堤としての意味が大きかったですよね。
日高 1971年のキッシンジャーの中国訪問は共産国家の中ソを分裂させて、中国を米国の味方につけるためでした。当時の中国は経済のみならず軍事力も弱かった。一方、日本は経済力がついたのだから、憲法を変えさせて日本の軍事力で極東の安定を保とうとも、米国は考えていた。
1990年代初頭のソ連崩壊以降も、その考えを持ち続けていました。だけど、いくらアメリカが要請しても、日本は逃げまくってほとんど何もやらなかった。そうこうしているうちに、中国の軍事力が強くなってしまった。1970年代以降、日米安保は形骸化し時代遅れになりながらも、惰性で今日まで続いてきた、というのが実態ですよ。
「極東では日本が自力でやれ」が米国政府の本音
井本 でも、マスコミ報道を見ると、米政府高官やそのOBは今でも「日米同盟は大事、日本を守る姿勢は変わらない」と言っているようですが。
日高 日米安保をメシのタネにしているアメリカ人の言葉を表面的に聞くから、そうなるんです。客観的に見れば分かるように、財政悪化の中でいま米軍は縮小に向かっています。
まず国防費を毎年10%づつ削減する。第2に2016年に在韓米軍を撤退させる計画です。第3に、2015年9月以降に海兵隊を現在の4個師団から2個師団に半減させます。艦艇も削減させる。
これは、米国が自国の防衛に専念していくということを意味します。世界の地域防衛はその地域の同盟国に任せざるを得ない。「極東では日本が自力でやれ」ということです。
井本 しかし、最新鋭の戦闘爆機F22を沖縄にも巡回させる形で配備するなど、沖縄はじめ日本の基地の機能を強化しているように見えます。
日高 中国に対抗するために必要な軍事力は保持するということです。地域防衛をサボり続けた日本は頼りにならない。そこへ中国が大きく台頭した。ならば、中国と共存する道を探るという方向に変わったわけです。
米国はアジアを中国に独占させたくはない。だから沖縄はじめ日本列島に米軍基地を置き、最新鋭の兵器を用意する。中国に勝手な行動はさせないよ、ということです。あくまでもアメリカの国益のための基地として日本が必要だというにすぎません。だから、米国の方から日米安保条約を破棄するとは言ってこないでしょうね。
井本 そうだとしても、結果的に米軍基地の存在が中国や北朝鮮の脅威を封ずる役割を果たすことになります。
日高 しかし、尖閣防衛のために米国が戦うだろうか。自分からは、まず戦争はしないでしょうね。尖閣諸島を中国軍やそれを後ろ盾にした漁民が占領しても、米国は手出ししませんよ。
ただ万一、中国の駆逐艦が出てきて、日本の海上・航空自衛隊と戦闘になったら、安保条約に基づいて米空海軍は戦争に加わる。米軍はそのシミュレーションも作っています。でも、戦闘は海上とその上の空だけに限定しています。尖閣諸島などでの陸上の戦争は考えていないし、中国の基地も攻撃しない。日本の領土そのものを守るわけではないんです。
だから、沖縄の普天間にいる海兵隊も、実は今の米軍の防衛戦略としてはあまり必要ない。日本は普天間の辺野古移転の話で大騒ぎしているけど、アメリカ議会はもう沖縄から海兵隊を全部引き揚げろ、と言っているくらいですよ。
米国が恐れるのは、とばっちりで日中戦争に巻き込まれる事態
井本 米国は日本と中国、韓国の間に緊張が高まっている点を憂慮し、もっと中韓と仲良くしてほしい、軋轢をなくしてほしいと言っています。
日高 それはそうでしょう。自分から戦う気はないと言っても、日本が乱を起こしたら、安保条約上、とばっちりを受けて日中の戦争に巻き込まれる。そんな面倒はごめんだ、迷惑だということ。日本のためを思って仲良くしろといっているわけではない。
井本 中国がミサイルで日本を攻撃し、沖縄にある米軍基地を攻撃することもあり得るでしょう。
日高 米国のシミュレーションでは、対中戦で米軍は圧倒的な優位に立ち、戦闘は10日間で終わります。米軍基地を攻撃したら損するのは中国だから、中国はやらないだろうと思っていますよ。
井本 それは日本にとってもいいのでは?
日高 中国が戦闘をしかけずに尖閣を取った場合、米国は何もしませんよ。海上でも中国船が日本の巡視船にぶつかってきた程度では動かない。キッシンジャーは「中国はosmosis、じわじわと浸透するように相手の領土を奪っていくのが得意だ」と言っている。シベリアも中国人が徐々に住み着いて人口が増え、気がついたら中国領になる。そうした事態をロシアは恐れています。
井本 沖縄でも中国人が浸透してきているようですが、米軍基地に手出しさえしなければ、米国は我関せず、の態度を取るわけですか。
日高 そう、日本の領土に近づいた中国船や中国の軍隊は自分で追い返す努力をせよ、ということです。以前の日米安保では「日本に軍事行動を起こさせない」が前提だった。今は「日本が軍事行動を起こして戦争にならない限り、米軍は出ていかない」という形に変わったのです。
対等の立場で守り合うのが本来の軍事同盟
井本 日本は米国を守らないが、米国は日本を守る。そのために日本に米軍基地を置くのを認めるという片務的な日米安保条約の賞味期限は切れた。双務的な対等の安保条約に変える必要があると?
日高 そうです。本来、対等の立場で守り合うのが軍事同盟。だから、同盟国が協力して敵に対処する集団的自衛権の行使など当然のことです。自分は戦わないで、守ってくれと言っても他国は動きません。まず国家は戦争するということを認める憲法にしなければ、米国民は相手にしませんよ。
井本 安倍政権は憲法改正を目指しています。集団的自衛権を行使できるようにしているのは、そのための第一歩ではないですか。
日高 一歩ではあるが、逆立ちの一歩だと思うんですよ。まず憲法を改正して、自衛隊も戦争するという前提にした組織に変えなければいけない。軍事裁判とか反逆罪とか、戦う組織としての法律も整備して。それが世界の常識です。それなしに集団的自衛権と言っても、国際社会では納得されませんね。
井本 特定秘密保護法を成立させ、日本版NSC(国家安全保障会議)も成立させましたが。
日高 それも憲法を改正しなければ小手先のことにしか見えません。日本版NSCの事務方のトップである国家安全保障局長を元外務次官の谷内正太郎氏にした点を見ても、軍事を軽視し、外交に偏っている印象を受けます。
井本 憲法改正には国会議員の3分の2の賛成が必要で、一朝一夕ではできません。
日高 それは分かるけれど、本当に改正に向けてヤル気があるのかどうか、まだ不明ですね。
井本 中国は南シナ海や東シナ海、西太平洋で勢力を伸ばしており、米国との軍事バランスが変えようとしています。それにより日本を心理的に屈服させようとしている、という見方もあります。
中国はそう簡単に東アジアを制覇できないが・・・
日高 ただ、米国では「そう簡単に中国は東アジアを制覇できない。中国周辺が安定していないからだ」という見方も有力です。
井本 不動産バブルの崩壊で中国経済がガタガタになるという見方ですか。
日高 私のいるハドソン研究所では「中国人は賢いから経済問題はうまく解決するだろう。現に中国政府は成長率を抑えて、バブル崩壊を起こさないようにしている」という声が強い。そうした国内問題ではなく、中国を取り巻く周辺国の脅威があるのです。
インド洋ではインドが海軍力を増強しており、中国の中東からの石油輸入ルートを脅かす存在になりつつある。インドはイランやアフガニスタン、イラクも味方につけ、中央アジアからインド洋にかけて中国の動きを封じ込めるだろう、と見られています。
ロシアやインドネシアも今後、中国の拡大阻止に動く。米国が内向きになるにつれ、中国の周辺国も勢力を伸ばすわけで、「実は中国は東シナ海や南シナ海で威張っている余裕なんてない」とも見られています。
井本 安倍晋三首相が就任以来、インドや東南アジア、ロシアとの外交を活発に進めているのも、対中牽制が1つの狙いです。
日本は憲法を改正し、核武装を含め自力の軍事力を持て
日高 でも、そんな外交より、まずは憲法改正、自力で守る姿勢を固めることの方が重要ですね。中国はミサイルで攻めてくる可能性もあるので、米国頼みにせず抑止力として日本もミサイルを持つ。そういう気概が必要ですよ。
井本 核武装はどうですか。
日高 そこまで考えていいと思いますね。
井本 米国が嫌がっているんじゃないですか。
日高 いや、キッシンジャーなんか「なぜ日本は核兵器を持たないんだ」って言っていますよ。ただ核兵器を持つ国が増えると、安全保障戦略が複雑化して面倒だから、日本の核武装に反対するという声が根強いのも事実です。
井本 米国には日本が核武装すると米国を攻撃するかもしれないという不安もあるようです。広島、長崎への原爆投下の報復をされるのではないかと。
日高 1つの解決策は英国方式でしょう。英国の原潜の核ミサイルは米国から借りている。日本も核ミサイルを米国から借りる仕組みにすれば、核兵器使用について米国がコントロールできますから。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39931