弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログです。

問題社員の具体的対処法

2022-11-21 | 日記

代表弁護士藤田進太郎が「問題社員の具体的対処法」と題する講演を行いました。

 

日時:2022年11月18日(金)14:00~16:00
内容
第1章 なぜ問題社員の対処法を学ぶ必要があるのか 
第2章 パワハラ防止法への対応だけでは不十分な理由
第3章 問題社員の具体例と対処法
 1.会社の指示に従わない
 2.遅刻欠勤を繰り返す
 3.不正行為を繰り返す
 4.能力が極端に低い
 5.メンタルが不安定
 6.ダラダラ残業して残業代を請求する
第4章 事前質問への回答

 

____________________

弁護士法人四谷麹町法律事務所
会社経営者のための残業代請求対応
会社経営者のための労働審判対応


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

整理解雇に先立つ真摯な対応の重要性

2022-10-21 | 日記

代表弁護士藤田進太郎が執筆した時言「整理解雇に先立つ真摯な対応の重要性」が日本経済団体連合会の「労働経済判例速報」2022年10月20日号に掲載されました。

 

 

 

____________________

弁護士法人四谷麹町法律事務所
会社経営者のための残業代請求対応
会社経営者のための労働審判対応


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「裁量労働制 好事例セミナー」経団連タイムスNo.3559掲載

2022-09-27 | 日記

2022年8月5日(金)に代表弁護士藤田進太郎が解説した経団連の「裁量労働制 好事例セミナー」が,経団連タイムスNo.3559に掲載されました。(日本経済団体連合会)

 

 

____________________

弁護士法人四谷麹町法律事務所
会社経営者のための残業代請求対応
会社経営者のための労働審判対応


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「裁量労働制 好事例セミナー」経団連タイムスNo.3558掲載

2022-09-14 | 日記

2022年8月5日(金)に代表弁護士藤田進太郎が解説した経団連の「裁量労働制 好事例セミナー」が,経団連タイムスNo.3558に掲載されました。(日本経済団体連合会)

 

 

 

____________________

弁護士法人四谷麹町法律事務所
会社経営者のための残業代請求対応
会社経営者のための労働審判対応


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

裁量労働制 好事例セミナー

2022-08-08 | 日記

代表弁護士藤田進太郎が「裁量労働制 好事例セミナー」と題する講演を行いました。(日本経済団体連合会)

主催:日本経済団体連合会
日時:2022年8月5日(金)10:00~12:00
場所:東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館
内容
1.講演
 裁量労働制における課題
 ~厚労省「これからの労働時間制度に関する検討会報告書」を踏まえて~
2.パネルディスカッション 司会

 

____________________

弁護士法人四谷麹町法律事務所
会社経営者のための残業代請求対応
会社経営者のための労働審判対応


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

経団連タイムス掲載のお知らせ

2022-06-17 | 日記

代表弁護士藤田進太郎が経団連の重要労働判例説明会で解説した「東リ事件大阪高裁判決の解説 ~偽装請負を理由とした労働契約申込みみなし制度適用への対応~」が,経団連タイムスNo.3548に掲載されました。(日本経済団体連合会)

 

******************

週刊 経団連タイムス 2022年6月16日 No.3548 重要労働判例説明会

東リ事件大阪高裁令和3年11月4日判決は,
 ① 労働契約申込みみなし制度の適用を認めた初めての裁判例
 ② 原審の神戸地裁判決が偽装請負等の状態にあったこと自体を否定しているにもかかわらず,偽装請負等の目的があったと推認した裁判例
であり,検討する必要性が高い。
2022年5月26日(木)に開催された重要労働判例説明会における解説の概要が,経団連タイムス No.3548に掲載された。

******************

 

__________________

弁護士法人四谷麹町法律事務所
会社経営者のための残業代請求対応
会社経営者のための労働審判対応


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

著作「これって,パワハラですか?」

2022-06-14 | 日記

代表弁護士藤田進太郎が執筆した遊筆「これって,パワハラですか?」が「労働判例」1263号に掲載されました。(産労総合研究所)

  

【要旨】
 「パワハラかどうか」を議論することに,どれだけの意味があるのかとも思う。「パワハラかどうか」を心配することは,学校のテストでいえば,「赤点かどうか」を心配するようなものではないか。赤点でさえなければ,100人中95番の成績でもいいのだろうか?いや,そんなことはないはずだ。自信があるのであれば上位を目指すべきだし,そうでなくても,真ん中くらいの順位を目指してもいいのではないか。
 部下に注意指導したところパワハラだと言われた事例で,企業にとって重要なことは,「効果的で適切な注意指導ができているかどうか」であろう。であれば,企業は,この点にフォーカスして,対応を議論すべきではないか。
 情報を一方的に伝えるトップダウン型の研修や教育指導だけでは,十分に対応することが難しい。ワークショップなどのボトムアップ型の研修や継続的なカウンセリング等と組み合わせることにより,一人一人が対話の中で自分なりの答えを探り自分を高めていくことができるよう,研修等をデザインしていくべきであろう。

 

「労働判例」1263号,2022年6月15日発行,産労総合研究所

 

__________________

​​​​​​​弁護士法人四谷麹町法律事務所
会社経営者のための残業代請求対応
会社経営者のための労働審判対応


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

注意するとパワハラだなどと言って,上司の指導を聞こうとしない社員の対処法

2022-06-13 | 日記

注意するとパワハラだなどと言って,上司の指導を聞こうとしない。

 

1 パワハラとは
 パワーハラスメントは法律上の用語ではなく,統一的な定義はありません。
 平成22年1月8日付け人事院の通知では,パワーハラスメントは,一般に「職権などのパワーを背景にして,本来の業務の範疇を超えて,継続的に人格と尊厳を侵害する言動を行い,それを受けた就業者の働く環境を悪化させ,あるいは雇用について不安を与えること」を指すとされています。
 『職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告』(平成24年1月30日)は,「職場のパワーハラスメントとは,同じ職場で働く者に対して,職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に,業務の適正な範囲を超えて,精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。」としています。

2 パワハラの行為類型
 「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」では,以下のようなものを挙げています。
 ① 暴行・傷害(身体的な攻撃)
 ② 脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
 ③ 隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
 ④ 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制,仕事の妨害(過大な要求)
 ⑤ 業務上の合理性なく,能力や経験とかけ離れた仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)
 ⑥ 私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)

3 パワハラを巡る紛争の実態
 パワハラを不満に思い,公的機関などに相談している労働者の数は多いが,パワハラを理由とした損害賠償請求がメインの訴訟,労働審判はあまり多くなく,解雇無効を理由とした地位確認請求,残業代請求等に付随して,損害賠償請求がなされることが多いです。解雇無効を理由とした地位確認請求,残業代請求等に付随して,パワハラを理由とする損害賠償請求がなされた場合は,業務指導に必要のない不合理な言動をしているような場合でない限り請求棄却になりやすく,仮に不法行為責任等が認められたとしても慰謝料の金額は低額になりやすい傾向にあります。

4 適法性と適切性
 パワハラが問題とされる言動には,
 ① 違法な言動
 ② 適法だが不適切な言動
 ③ 適切な言動
の3段階があります。
 ②適法だが不適切な言動は数多く見られますが,①違法な言動とまで評価される言動はごく一部に過ぎません。「パワハラかどうか?」という問題設定がなされることが多いですが,程度の問題として考えた方が実態を正確にイメージすることができます。不適切な言動であっても違法と評価されるとは限りませんが,違法と評価されなかったからといって直ちに適切な言動というわけではありません。

5 違法性の判断基準
(1) 違法なパワハラに該当するかどうかの一般的な判断基準
 「行為のなされた状況,行為者の意図・目的,行為の態様,侵害された権利・利益の内容,程度,行為者の職務上の地位,権限,両者のそれまでの関係,反復・継続性の有無,程度等の要素を総合考慮し,社会通念上,許容される範囲を超えているかどうか」により,不法行為法上違法と評価されるかどうかを検討するのが通常です。
 単純化して説明すると,
 ① 業務遂行上必要な言動か(目的)
 ② 社会通念上,許容される範囲を超える言動か(程度)
を検討することになります。
 ①指導教育目的等の業務遂行上必要な言動であれば,やり過ぎない限り,②社会通念上,許容される範囲を超えていないと評価されることになります。他方,①業務上必要のない言動の場合は,②社会通念上,許容される範囲を超えると評価されやすくなります。
 セクハラの対象となる性的言動は業務を遂行する上で不要なものであるのに対し,パワハラの対象となる指導教育,業務命令等は業務を遂行する上で必要なものであるため,業務を遂行する上で必要のない性的言動と比較して,違法とまでは評価されにくい傾向にありますが,業務遂行上必要のない言動については,違法と評価されやすくなります。
(2) 参考裁判例
 ア ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル(自然退職)事件東京地裁平成24年3月9日判決
 「この点,世上一般にいわれるパワーハラスメントは極めて抽象的な概念で,内包外延とも明確ではない。そうだとするとパワーハラスメントといわれるものが不法行為を構成するためには,質的にも量的にも一定の違法性を具備していることが必要である。したがって,パワーハラスメントを行った者とされた者の人間関係,当該行為の動機・目的,時間・場所,態様等を総合考慮の上,『企業組織もしくは職務上の指揮命令関係にある上司等が,職務を遂行する過程において,部下に対して,職務上の地位・権限を逸脱・濫用し,社会通念に照らし客観的な見地からみて,通常人が許容し得る範囲を著しく超えるような有形・無形の圧力を加える行為』をしたと評価される場合に限り,被害者の人格権を侵害するものとして民法709条所定の不法行為を構成するものと解するのが相当である。」
 イ 海上自衛隊事件福岡高裁平成20年8月25日判決
 「一般に,人に疲労や心理的負荷等が過度に蓄積した場合には,心身の健康を損なう危険があると考えられるから,他人に心理的負荷を過度に蓄積させるような行為は,原則として違法であるというべきであり,国家公務員が,職務上,そのような行為を行った場合には,原則として国家賠償法上違法であり,例外的に,その行為が合理的理由に基づいて,一般的に妥当な方法と程度で行われた場合には,正当な職務行為として,違法性が阻却される場合があるものというべきである。」
(3) 労災認定において心理的負荷が強いとされている言動
 パワハラとの関係では,以下のようなものについて,客観的に対象疾病を発病させるおそれのある強い心理的負荷であるとされています。
 ① 部下に対する上司の言動が,業務指導の範囲を逸脱しており,その中に人格や人間性を否定するような言動が含まれ,かつ,これが執拗に行われた
 ② 同僚等による多人数が結託しての人格や人間性を否定するような言動が執拗に行われた
 ③ 治療を要する程度の暴行を受けた
 ④ 業務をめぐる方針等において,周囲からも客観的に認識されるような大きな対立が上司との間に生じ,その後の業務に大きな支障を来した
 ⑤ 業務をめぐる方針等において,周囲からも客観的に認識されるような大きな対立が多数の同僚との間に生じ,その後の業務に大きな支障を来した
 ⑥ 業務をめぐる方針等において,周囲からも客観的に認識されるような大きな対立が多数の部下との間に生じ,その後の業務に大きな支障を来した
 ⑦ 業務に関連し,重大な違法行為(人の生命に関わる違法行為,発覚した場合に会社の信用を著しく傷つける違法行為)を命じられた
 ⑧ 業務に関連し,反対したにもかかわらず,違法行為を執拗に命じられ,やむなくそれに従った
 ⑨ 業務に関連し,重大な違法行為を命じられ,何度もそれに従った
 ⑩ 業務に関連し,強要された違法行為が発覚し,事後対応に多大な労力を費やした(重いペナルティを課された等を含む)
 ⑪ 客観的に,相当な努力があっても達成困難なノルマが課され,達成できない場合には重いペナルティがあると予告された
 ⑫ 退職の意思のないことを表明しているにもかかわらず,執拗に退職を求められた
 ⑬ 恐怖感を抱かせる方法を用いて退職勧奨された
 ⑭ 突然解雇の通告を受け,何ら理由が説明されることなく,説明を求めても応じられず,撤回されることもなかった
 ⑮ 非正規社員であるとの理由等により仕事上の差別,不利益取扱いを受け,仕事上の差別,不利益取扱いの程度が著しく大きく,人格を否定するようなものであって,かつこれが継続した

6 業務指導の重要性
 近年では,上司の言動が気にくわないと,何でも「パワハラ」だと言い出す社員が増えています。そのような社員は,勤務態度等に問題があることが多く,むしろ,注意,指導,教育の必要性が高いことが多い印象です。部下にとって不快な上司の言動が何でもパワハラに該当するわけではありません。上司の部下に対する注意,指導,教育は必要不可欠なものであり,上司に部下の人材育成を放棄されても困ります。パワハラにならないよう神経質になるあまり,上司が部下に対して何も指導できないようなことがあっては本末転倒です。
 『職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告』は,
 「個人の受け取り方によっては,業務上必要な指示や注意・指導を不満に感じたりする場合でも,これらが業務上の適正な範囲で行われている場合には,パワーハラスメントには当たらないものとなる。」
 「なお,取組を始めるにあたって留意すべきことは,職場のパワーハラスメント対策が上司の適正な指導を妨げるものにならないようにするということである。上司は自らの職位・職能に応じて権限を発揮し,上司としての役割を遂行することが求められる。」
としています。

7 コミュニケーションの重要性
 パワハラ紛争の原因には様々なものがありますが,コミュニケーション不足又はコミュニケーションの取り方が下手なことが主な原因となっているものが多い印象です。コミュニケーションが不足していたり,コミュニケーションの取り方が下手だったりすると,パワハラだと受け取られやすくなります。コミュニケーション能力を向上させるとともに,十分なコミュニケーションを取ることができるよう努力して下さい。
 コミュニケーション能力が不足しているためにパワハラだと言われてしまう場合は,懲戒処分を行うよりも,研修,降職,配置転換等により対処した方が有効な場合もあります。

8 無断録音
 パワハラの状況は,部下により無断録音されて,証拠として提出されることが多いです。訴訟では,無断録音したものが証拠として認められてしまうのが通常です。
 部下が上司をわざと挑発して,不相当な発言を引き出そうとすることもあります。無断録音されていても問題が生じないよう指導の仕方に気をつけて下さい。

9 違法なパワハラと評価されないための心構え
 自分の言動が録音されていて,社長,上司,裁判官等に聞かれても問題ないような言動を心がければ,通常は違法なパワハラと判断されるようなことはしないのが通常です。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎

__________________

注意するとパワハラだなどと言って,上司の指導を聞こうとしない。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
会社経営者のための残業代請求対応
会社経営者のための労働審判対応


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

勤務態度が悪い社員の対処法

2022-06-10 | 日記

勤務態度が悪い。

1 注意指導
  勤務態度が悪い社員は,注意指導してそのような勤務態度は許されないのだということを理解させる必要があります。訴訟や労働審判になって弁護士に相談するような事例では,当然行うべき注意指導がなされていないことが多い印象があります。
 勤務態度が悪い社員を放置することにより,他の社員のやる気がそがれたり,新入社員がいじめられたり,仕事を十分に教えてもらえなかったりして,退職してしまったりすることがありますし,金品の横領,手当等の不正受給の温床にもなります。
 上司が,勤務態度が悪い社員に対して注意指導した場合,反発を買うことは珍しくなく,トラブルになることもあるせいか,注意指導を怠る上司が散見されます。当然行うべき注意指導を行うことができる上司は,注意指導できない上司よりも高く評価する必要があります。勤務態度が悪い社員が注意指導に従わない場合には,直属の上司1人に任せきりにせず組織として対応して下さい。当然行うべき注意指導を行って勤務態度が悪い社員の反発を買うよりも,勤務態度が悪い社員を放置したままにしておいて異動を待った方がマイナス評価がつかず得だと考える上司が出てこないようにする必要があります。
 長年にわたって勤務態度の悪い社員を放置してきた職場において,新任の上司があるべき勤務態度に是正しようとして反発を買い,トラブルになることが多いところです。勤務態度が悪くても長年放置され,態度の悪さが年々悪化してきた社員の態度を改めさせるのは難易度が高く,解雇・退職の問題に発展することも多いですので,勤務態度の悪さが悪化する前に,対処する必要があります。こういった社員は,時間をかけて根気強く注意指導していく必要があり,注意指導しても従おうとしないからといって,放置してはいけません。 
 口頭で注意指導しても勤務態度の悪さが改まらない場合は,将来の懲戒処分,退職勧奨,解雇,訴訟活動を見据えて,書面で注意指導します。書面で注意指導することにより,本人の改善をより強く促すことになりますし,訴訟や労働審判になった場合,勤務態度の悪さを改めるよう注意指導した証拠を確保することもできます。
 当事務所に相談にいらっしゃった会社経営者から「自分の勤務態度が悪いことや何度も注意指導されてきたことは,本人が一番よく分かっているはずです。」との説明を受けることが多いですが,訴訟や労働審判では,労働者側から,自分の勤務態度は悪くないし,注意指導を受けたことは(ほとんど)ないと主張がなされるのがむしろ通常です。口頭で注意指導しただけで,書面等の客観的な証拠が残っていない場合,当該社員の勤務態度の悪さが甚だしいことや十分に注意指導してきたことを立証するのが困難となってしまいます。
 「上司も,部下も,同僚も,取引先もみんな,彼(女)の勤務態度が悪いことを知っていますし,法廷で証言してくれると言っています。」という話をお聞きすることも多いですが,一般的には,紛争が表面化してから作成された上司・同僚・部下の陳述書や法廷での証言はあまり証拠価値が高くありません。取引先の社員に訴訟で証人になるよう頼むことは,それ自体ハードルが高いことが多いです。「彼(女)の勤務態度が悪い。」という点では関係者の意見が一致していたとしても,何月何日の何時頃,どこで何をどのようにしたから勤務態度が悪いと評価することができるのかといった具体的事実を聞いても,具体的日時場所等を説明できないことは珍しくありません。勤務態度が悪いことを基礎付ける具体的事実を説明できないと証拠価値が高く評価されにくくなります。
 電子メールを送信して改善を促しつつ注意指導した証拠を確保することも考えられますが,メールでの注意指導は,口頭での注意指導を十分に行うことが前提です。面と向かっては何も言わずにメールだけで注意指導した場合,コミュニケーションが不足して誤解が生じやすいため注意指導の効果が上がらず,かえってパワハラであるなどと反発を受けることも珍しくありません。

2 懲戒処分
 書面で注意指導しても勤務態度の悪さが改まらない場合は,懲戒処分を検討することになります。まずは,譴責,減給といった軽い懲戒処分を行い,それでも改善しない場合には,出勤停止,降格処分と次第に重い処分をしていきます。
 懲戒処分に処すると職場の雰囲気が悪くなるなどと言って,懲戒処分を行わずに辞めてもらおうとする会社経営者もいますが,懲戒処分もせずにいきなり解雇したのではよほど悪質な事情がある場合でない限り,解雇は無効となってしまうリスクが高いところです。そもそも,勤務態度が悪い社員に対して注意指導や懲戒処分ができないようでは,組織として十分に機能しているとはいえません。必要な注意指導や懲戒処分を行い,職場の秩序を維持するのは,会社経営者の責任です。

3 退職勧奨
 勤務態度の悪さの程度が甚だしく,十分に注意指導し,懲戒処分に処しても勤務態度の悪さが改まらず,改善の見込みが乏しい場合には,会社を辞めてもらうほかありませんので,退職勧奨や解雇を検討することになります。十分に注意指導し,繰り返し懲戒処分を行っており,解雇が有効となりそうな事案では,解雇するまでもなく,退職勧奨に応じてもらえることが多いところです。
 他方,勤務態度の悪さの程度がそれほどでもなく,十分な注意指導や懲戒処分がなされていない等の理由から解雇が有効とはなりそうもない事案,誠実に勤務する意欲が低かったり能力が低い等の理由から転職が容易ではない社員の事案,本人の実力に見合わない適正水準を超えた金額の賃金が支給されていて転職すればほぼ間違いなく当該社員の収入が減ることが予想される事案等では,退職届を提出させる難易度が高く,退職に同意してもらうために支払う割増退職金等の金額も高くなりがちです。

4 解雇
 勤務態度の悪さの程度が甚だしく,十分に注意指導し,懲戒処分に処しても勤務態度の悪さが改まらず,改善の見込みが低い場合には,退職勧奨と平行して普通解雇や懲戒解雇を検討することになります。
 普通解雇(狭義)とは,能力不足,勤務態度不良,業務命令違反等,労働者に責任のある事由による解雇のことをいい,懲戒解雇とは,使用者が有する懲戒権の発動により,一種の制裁罰として,企業秩序に違反した労働者に対し行われる解雇のことをいいます。
 普通解雇や懲戒解雇が有効となるかどうかを判断するにあたっては,
 ① 就業規則の普通解雇事由,懲戒解雇事由に該当するか
 ② 解雇権濫用(労契法16条)や懲戒権濫用(労契法15条)に当たらないか
 ③ 解雇予告義務(労基法20条)を遵守しているか
 ④ 解雇が法律上制限されている場合に該当しないか
等を検討する必要があります。
 普通解雇や懲戒解雇が有効となるためには,単に①就業規則の普通解雇事由や懲戒解雇事由に該当するだけでなく,②解雇権濫用や懲戒権濫用に当たらないことも必要となります。②解雇権濫用や懲戒権濫用に当たらないというためには,普通解雇や懲戒解雇に客観的に合理的な理由があり,社会通念上相当なものである必要があります。
  普通解雇や懲戒解雇に「客観的に」合理的な理由があるというためには,「裁判官」が,労働契約を終了させなければならないほど社員の勤務態度の悪さの程度が甚だしく,業務の遂行や企業秩序の維持に重大な支障が生じていると判断するに値する「証拠」が必要です。会社経営者,上司,同僚,部下,取引先などが,主観的に普通解雇や懲戒解雇に値すると考えただけでは足りません。
 勤務態度が悪い社員の普通解雇や懲戒解雇が②解雇権濫用や懲戒権濫用に当たらないかを判断するにあたっては,勤務態度の悪さが業務に与える悪影響の程度,態様,頻度,過失によるものか悪意・故意によるものか,勤務態度が悪い理由,謝罪・反省の有無,勤務態度の悪さを是正するために会社が講じていた措置の有無・内容,平素の勤務成績,他の社員に対する処分内容・過去の事例との均衡等が考慮されます。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎

__________________

勤務態度が悪い。 (y-klaw.com)

弁護士法人四谷麹町法律事務所
会社経営者のための残業代請求対応
会社経営者のための労働審判対応


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

本日の講演「東リ事件大阪高裁判決の解説 ~偽装請負を理由とした労働契約申込みみなし制度適用への対応~」

2022-05-27 | 日記

代表弁護士藤田進太郎が「東リ事件大阪高裁判決の解説 ~偽装請負を理由とした労働契約申込みみなし制度適用への対応~」と題する講演を行いました。

 

主催:日本経済団体連合会
日時:2022年5月26日(木)10:30~12:00
場所:東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館
内容
・東リ事件大阪高裁令和3年11月4日判決を検討する必要性
・前提知識の確認
・東リ事件大阪高裁令和3年11月4日判決の解説
・実務上の留意点
・質疑応答

 

__________________

弁護士法人四谷麹町法律事務所
会社経営者のための残業代請求対応
会社経営者のための労働審判対応


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

遅刻や無断欠勤が多い社員の対処法

2022-05-17 | 日記

遅刻や無断欠勤が多い。

1 勤怠管理
 遅刻や無断欠勤が多い社員の対応として最初にしなければならないことは,遅刻や欠勤の事実を「客観的証拠」により管理することです。客観的証拠が存在しないと,遅刻や欠勤の立証が困難になることがあります。
 遅刻時間の管理は,タイムカードや日報等を用いて,通常の労働時間管理をすることにより行います。
 欠勤日数の管理は,タイムカードの打刻や日報の提出がないことを確認しつつ,欠勤届を提出させることにより行います。

2 原因の調査
 次に,どうして遅刻や無断欠勤が多いのか,その原因を調査する必要があります。
 なぜなら,遅刻や無断欠勤が多い原因としては,大きく分けて,
 ① 体調不良
 ② だらしない
の2つがあり,原因がどちらかにより,対処法が違うからです。
 体調不良のため遅刻や無断欠勤が多い場合は,残業を禁止したり,医師への受診を促したり,休職命令を検討したり,傷病手当金の申請を促したり,普通解雇を検討したりする等,体調不良の社員に対する通常の対応を行います。
 他方,社員の体調に問題はないのに,単にだらしないため遅刻や無断欠勤が多いような場合は,注意指導等の問題社員に対する通常の対応を行います。

3 注意指導
 だらしないため遅刻や無断欠勤が多い社員については,十分に注意指導して,正当な理由なく遅刻や欠勤をしてはいけないこと,やむなく遅刻や欠勤をする場合は速やかに会社に連絡する必要があること等を理解させ,正当な理由のない遅刻や無断欠勤をなくす努力をして下さい。
 注意指導の主な目的は,
 ① 正当な理由のない遅刻,欠勤をなくすこと
 ② 証拠の確保
の2つです。ポイントは,
 ① 正当な理由のない遅刻,欠勤をなくすこと
が一番の目的であって,
 ② 証拠の確保
を一番の目的にしてはいけないということです。
 確かに,注意指導したことを立証するための証拠を確保しておく必要はあります。しかし,正当な理由のない遅刻,欠勤をなくすことを第一の目的としなければ,形だけいくら注意指導しても問題社員の勤怠を改善させることは難しいでしょう。単に「証拠作り」をしているに過ぎないことが透けて見えれば,労働審判や訴訟においても,懲戒処分や解雇の前提として行うべき注意指導をしたと評価してもらえない可能性が高くなります。
 遅刻や無断欠勤が多い問題社員の態度が悪く,改善の意欲が見られないと,注意指導する側も匙を投げてしまい,辞めてもらうための証拠作りを注意指導の主な目的にしたくなるかもしれません。しかし,そのやり方ではかえって,辞めてもらうという目的を達成することを困難にしてしまいます。問題社員の遅刻や無断欠勤をなくすことができるよう誠心誠意注意指導することが,結果として,問題社員の正当な理由のない遅刻,欠勤をなくすことや,改善しない場合の退職につながるのです。大変かもしれませんが,頑張って下さい。
 遅刻や無断欠勤の多い問題社員を注意指導するに当たっては,遅刻や欠勤の事実を確認するほか,遅刻や無断欠勤の理由等についても事情を聴取します。事情を聴取したら,説明内容に対応したフィードバックを行い,遅刻や無断欠勤をなくすことができるようベストを尽くして下さい。
 事情聴取の内容は,報告書等の形で上司に報告し,記録に残しておいて下さい。報告書等の書面の形式では大げさだというのであれば,上司への電子メールでの報告でも構いません。会社経営者等,社内で報告する相手がいないような場合は,顧問弁護士にメールで報告するとよいでしょう。遅刻や無断欠勤の程度が甚だしく,懲戒処分を念頭に置いているような場合は,聴取結果を事情聴取書にまとめた上で聴取内容を確認させ,署名押印させることもあります。
 上司等への報告や事情聴取書は,5W1Hを意識して「事実」を記載したものを作成して下さい。何月何日の何時頃,どこで,誰が,誰に対して,何をしたのか(どのような言葉のやり取りがなされたのか)といった客観的な事実を記載する必要があります。必要に応じて,どのように話したのか,どうしてそのように話したのかといったものを付け加えてもいいかもしれません。「事実」を記載せずに,「遅刻が多い。」とか「反省の色が見られない。」といった評価的な表現や「次に遅刻したらいかなる処分を受けても異存ありません。」といった反省の気持ちを表明する発言の記録が中心となってしまったのでは,遅刻や無断欠勤の具体的事情が明らかにならず,証拠価値が低くなってしまうことがあります。
 口頭でいくら注意指導しても遅刻や無断欠勤が改まらず,業務に支障を来しているような場合は,「注意書」「厳重注意書」等の書面に5W1Hを意識した具体的事実を記載した「書面」を交付して注意指導しましょう。具体的事実を記載した「注意書」「厳重注意書」等の書面で注意指導することにより,本人の改善をより強く促すとともに,注意指導したことの証拠を確保することができます。遅刻や無断欠勤を繰り返していて,普段は自分の非を認め謝罪の言葉を口にしていたような社員であっても,労働審判や団体交渉の席では,「遅刻や欠勤は会社に認めてもらっていましたし,上司から十分な注意指導を受けたこともありません。」などと言って,懲戒処分や解雇の無効を主張するのがむしろ通常です。
 「注意書」「厳重注意書」といった書面を受け取ったことがないと言われないようにするため,受領書にサインを取った方がいいのかとか,書留郵便で郵送した方がいいのかといった質問を受けることがよくあります。確かに,万全を期すのであれば,そういった配慮が必要なこともあるでしょう。しかし,実際の事案では,「注意書」「厳重注意書」といった書面を交付したにもかかわらず,受け取っていないと言われることは,それほど多くはありません。「確かに厳重注意書を受け取りましたが,内容が事実とは異なります。」といった主張がなされることがほとんどです。したがって,ほとんどの事案では,押印済みの「注意書」「厳重注意書」といった書面の写しとPDFを取った上で,本人に「注意書」等を交付し,何月何日何時頃どこで誰が当該社員に注意書等を交付したのか,その際,どのような言葉のやり取りがなされたのかを記録し,上司や顧問弁護士にメールで報告しておけば十分です。極端な虚言癖のある社員等,特に必要性が高い場合についてのみ,「注意書」等を交付するとともにそのPDFをメール送信したり,書留郵便やレターパックで「注意書」等を郵送したりすれば足りると思います。
 注意指導の際のやり取りを録音しておくことも考えられますが,録音されていることを意識すると,言いたいことを素直に言えなくなってしまう可能性があります。録音記録を労働審判等で証拠として使うためには,反訳(文字起こし)して文書化しなければならないため,録音記録の利用は手間がかかる面があることを意識する必要もあります。録音記録は,必要性をよく検討した上で,必要性が高いと判断された場合に利用すべきと考えます。
 従来,ルーズな勤怠管理をしていた職場の場合,従来であれば容認されていた程度の遅刻や無断欠勤をした社員に対し注意指導しても,なかなか受け入れられず,上司が遅刻や無断欠勤を注意したところ,「パワハラだ。」などと言われることも珍しくありません。遅刻や無断欠勤をしないのは当然のことなのですが,ルーズな勤怠管理をしていた会社にも落ち度がありますので,直ちに懲戒処分等を行うことはお勧めできません。今後は遅刻や無断欠勤を許さない旨,明確に伝えた上で,粘り強く注意指導し,それでも改善しないときに懲戒処分等を行うことをお勧めします。
 遅刻や無断欠勤が多い問題社員に対し電子メールを送信して改善を促しつつ注意指導した証拠を確保することも考えられますが,電子メールでの注意指導は,必ず「口頭での注意指導とセット」で行って下さい。遅刻や無断欠勤が多い問題社員が,在職中であるにもかかわらず口頭での注意指導を拒絶し,電子メールでのみ注意指導等をするよう要求してくることがありますが,口頭での注意指導を怠ってはいけません。口頭でのコミュニケーションと比較して,電子メールでのコミュニケーションは,誤解が生じやすいものです。恋人や友達と喧嘩した際,電子メール,メッセンジャー,LINE等での話し合いでは埒があかなかったのに,実際に会ってしばらく話しているうちに仲直りしたという経験がある方も大勢いらっしゃるのではないかと思います。口頭での注意指導をせずに電子メールだけで注意指導した場合,注意指導の効果が上がらず,かえって「パワハラだ。」などと反発を受け,問題がこじれることはよくある話です。仮に,会って話すことができないような状況であっても,電子メールでの連絡で終わらせずに,せめて,電話で話すくらいの努力はするようにして下さい。テレビ電話機能を用いて,お互いの姿を表示しながら話し合うことができればより望ましいところです。
 口頭で十分に注意指導せずに「書面」でのみ注意指導することもお勧めできません。社員の言い分を聴きながら口頭で教え諭して正しい方向に導いていく努力なしに,遅刻や無断欠勤の多い社員の態度を改めさせることは困難です。口頭での注意指導が不十分なまま,書面での注意指導や懲戒処分を行った場合,単に「証拠作り」をしているだけのように見えてしまうこともあります。

4 実態どおりの評価
 勤務成績の評価は,遅刻や無断欠勤を正確に反映したものにして下さい。実態よりも高い評価をしているような会社は,勤務成績の評価の信頼性が低く,トラブルが拡大しやすい傾向にあります。
 勤務成績の評価を実態に合わせて下げて昇給を停止したり,賞与を他の社員よりも大幅に低額にしたり,懲戒処分を行ったりして紛争になった場合,どうして勤務成績の評価を下げたのか,懲戒処分を行わなければならないのかを説明できるようにしておく必要があります。従来は実態よりも高い評価がなされ,昇給幅も賞与額も他の社員とあまり変わらなかった社員に関し,繰り返される遅刻や無断欠勤に堪忍袋の緒が切れて勤務成績の評価を実態に合わせて大幅に下げたような場合は,評価を大幅に下げた合理的理由を説明する難易度が高くなります。その結果,評価を実態に合わせて大幅に下げたことがハラスメントと受け取られて紛争となったり,配置転換・降格,懲戒処分,解雇等が無効と判断されたりするリスクが高くなります。
 実態よりも高い評価をした方が部下に好かれやすく,問題を先送りにできることもあり,管理職の中には,下手に厳しい評価をして部下に不満を持たれては損だ,実態よりも高い評価をしてあげる上司が良い上司だ,などと勘違いしている者も少なからず存在します。言ってみれば,会社の利益や公正な評価よりも,自分の利益を優先させているわけです。部下の良いところも悪いところもありのままによく見てあげて適正に評価することの重要性を社内で共有しておくべきでしょう。

5 配置転換・降格
 遅刻や無断欠勤があったのでは支障が大きな業務に従事している場合は,人事権を行使して,担当業務を変更することを検討する必要があるかもしれません。
 管理職が遅刻や無断欠勤が多く,部下やプロジェクトの管理に支障を来すなど,管理職としての適格性を欠くような場合は,「人事権」を行使して,管理職から外す等の対応をするとよいでしょう。就業規則には「懲戒処分」としての降格処分が規定されていることが多いですが,多くの事案において会社にとって最も重要なのは「適材適所」の実現であって,当該管理職の処罰ではありません。懲戒処分の形式を選択する必要性が高い例外的な場合を除き,「懲戒処分」としての降格処分をするのではなく,「人事権」を行使して管理職から外す等の対応をすることをお勧めします。

6 懲戒処分
 「厳重注意書」等の書面で注意指導しても遅刻や無断欠勤が改まらず,業務に支障が生じている場合は,懲戒処分を検討せざるを得ません。遅刻や無断欠勤が多い社員の対応としては,まずは,譴責,減給といった軽い懲戒処分を行い,それでも改善しない場合に出勤停止等のより重い処分をしていくことになります。
 民間企業の社員と国家公務員との性質の違いは意識する必要があるものの,懲戒処分の種類を決定するに当たっては,人事院事務総長発「懲戒処分の指針について」が参考になります。同指針は,遅刻や欠勤に関する標準的な懲戒処分として以下のように規定しています。
 (1) 欠勤
  ア 正当な理由なく10日以内の間勤務を欠いた職員は、減給又は戒告とする。
  イ 正当な理由なく11日以上20日以内の間勤務を欠いた職員は、停職又は減給とする。
  ウ 正当な理由なく21日以上の間勤務を欠いた職員は、免職又は停職とする。
 (2) 遅刻・早退
   勤務時間の始め又は終わりに繰り返し勤務を欠いた職員は、戒告とする。
 有効に懲戒処分を行う前提として,懲戒の種類と事由を就業規則に明記し,周知(社員が見ようと思えば見られる状態にしておくこと。)させておいて下さい。就業規則が周知されていないと,業務に重大な支障が生じていても懲戒処分を有効に行うことはできません。中小企業では,懲戒事由に該当するかとか,懲戒権濫用に当たらないかといった問題以前の話として,就業規則が周知されていないというだけの理由で懲戒処分が無効と判断されることも珍しくありません。
 「懲戒処分なんてしたら,職場の雰囲気が悪くなる。」などと言って,懲戒処分を行わずにいきなり辞めてもらおうとする会社経営者は珍しくありません。しかし,懲戒処分歴のない社員を,遅刻や無断欠勤を理由として有効に解雇することは,遅刻や無断欠勤の程度がよほど甚だしい場合でない限り困難です。遅刻や無断欠勤が多い社員が退職勧奨に応じて退職届を提出してくれれば,懲戒処分を行っていなくても目的は達成できるかもしれませんが,懲戒処分を行っておらず,解雇しても無効と判断されるリスクが高い事案において,社員から「退職勧奨には応じられません。」と回答されてしまったら打つ手はなく,それこそ職場の雰囲気が悪くなってしまいます。解決金を支払って辞めてもらおうにも,社員は解雇されても無効であることが分かっていて怖くないわけですから,解決金の相場は高くなることでしょう。勢い,強引な退職勧奨を行って,不法行為が成立するようなことにもなりかねません。他方,解雇が有効となる可能性がそれなりに高い場合であれば,社員の側としても無理に争って解雇が有効と判断されては困りますから,ほどほどの金額の解決金で合意退職に応じることが合理的な選択となります。したがって,退職勧奨で辞めてもらう場合であっても,懲戒処分を繰り返し行ったにもかかわらず遅刻や無断欠勤が改まらなかったのでやむなく退職勧奨をして辞めてもらったという流れになるよう準備していく必要があります(懲戒処分の結果,遅刻や無断欠勤が改善された場合は,当面は勤務を継続させて様子を見ることになります。)。職場の雰囲気が悪くなることを恐れて,懲戒処分をせずにいきなり辞めてもらおうとすることは,遅刻や無断欠勤の程度が甚だしいなどの理由から解雇が有効となる見込みが高い場合や,本人も退職する意思を表明していて条件交渉が残されているだけの場合を除き,適切ではないと考えます。

7 退職勧奨
 懲戒処分を繰り返しても遅刻や無断欠勤が改まらない社員については,退職勧奨を行って辞めてもらうことを検討すべきでしょう。
 退職に当たり一定額の金銭の支払等を要求された場合は,それが過度の要求でないのであれば,折り合いをつけるよう交渉するのが原則です。双方折り合いがついた場合は,退職合意書を交わすなどして権利義務関係を明確にし,退職してもらいましょう。折り合いがつかない場合は,懲戒処分を行うのか,解雇するのかなどについて,検討していくことになります。

8 普通解雇・懲戒解雇(諭旨解雇・諭旨退職)等の退職の効果を伴う処分
 懲戒処分を繰り返しても遅刻や無断欠勤が改まらず,退職勧奨にも応じない場合は,普通解雇・懲戒解雇(諭旨解雇・諭旨退職)等の退職の効果を伴う処分を検討せざるを得ません。
 懲戒解雇(諭旨解雇・諭旨退職)等の懲戒処分を行う場合には,懲戒の種類と事由が記載された就業規則が周知されていることが前提として必要です。就業規則が周知されていないと「門前払い」となり,懲戒解雇等の懲戒処分を有効に行うことはできません。就業規則が周知されておらず懲戒解雇等の懲戒処分ができない場合は,普通解雇で対処することになります。諭旨退職処分をした場合は,退職願が提出されていたとしても,合意退職扱いとはされず,懲戒処分としての諭旨退職処分の有効性が問題となることにも注意して下さい。
 普通解雇や懲戒解雇(諭旨解雇・諭旨退職)等の退職の効果を伴う処分を行う場合は,職場から排除しなければならないほど遅刻や無断欠勤の程度が甚だしく,業務に重大な支障が生じていることを証拠により立証できるようにしておく必要があります。立証に必要な客観的証拠がそろっているのか,十分に検討してから普通解雇や懲戒解雇等に踏み切って下さい。
 私が顧問先企業等に解雇等を指導する場合,1か月以上欠勤が続いてから普通解雇(たいていは予告解雇)に踏み切るのが通常です。遅刻や無断欠勤の多い問題社員に関しては,懲戒解雇,即時解雇にこだわる必要性のある事案はほとんど存在しません。普通解雇(たいていは予告解雇)で,遅刻や無断欠勤の多い問題社員との間の労働契約関係の解消という目的を達成することができます。特に,遅刻や欠勤があればその時間分の賃金が支払われない欠勤控除のある会社においては,社会保険料の負担はあるにせよ,急いで解雇に踏み切る必要性は高くありません。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎

__________________

遅刻や無断欠勤が多い。 (y-klaw.com)

弁護士法人四谷麹町法律事務所
会社経営者のための残業代請求対応
会社経営者のための労働審判対応


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

協調性がない社員の対処法

2022-05-12 | 日記

協調性がない。

 

1 「協調性がない。」の具体的意味
 「協調性がない。」という日本語は,評価的要素が強い日本語です。「協調性がない。」と「評価」する前提として,協調性がないことを基礎づける「事実」の有無・内容を確定させる必要があります。協調性がないことを基礎づける「事実」の有無・内容を確定できない状態で「協調性がない。」と評価することは,単に「何となく協調性がないような気がする。」と言っているのと変わりません。「事実」と「評価」を分けて考え,「事実に基づいた評価」をして下さい。
 事実(具体的言動) → 評価(「…に値するほど協調性に欠ける。」)
 協調性に乏しいことを基礎付ける具体的言動を,5W1Hを踏まえて説明できるようにしておいて下さい。いつ,どこで,誰が,何を,どのように言ったのか(したのか)について事実関係を客観的に記録し,どうしてそのようなことを言ったのか(したのか)について,本人から事情を聴取して記録して下さい。
 協調性がないことを基礎づける「事実」の有無・内容を確定することができたら,次は当該事実に基づいて「評価」を行います。「協調性がない。」といっても程度問題です。通常許される個性の範囲内に収まっているのか,それとも,社員や管理職としての適格性が問われたり,企業秩序を阻害したりする程度にまで至っているものなのかを「評価」した上で,対応を決める必要があります。
 周囲の社員の言うことを鵜呑みにして,裏付けを取らずに「協調性がない。」と決めつけて,処分を決めてはいけません。「上司も,同僚も,部下も,みんなが協調性がないと言っている,裁判になったら証言すると言っている」ことから,協調性がないことを基礎づける「事実」を確定せずにいきなり協調性がないと「評価」して,懲戒処分や解雇をしてしまったような事案は,「事実に基づいた評価」を行っていない失敗事例の典型です。客観的証拠と照らし合わせ,本人の言い分を聴取するなどして「事実」をよく確認してから,「事実に基づいた評価」を行って下さい。

2 注意指導
 業務に必要な協調性が欠けている問題社員については,注意指導して,周囲と協調性を保つことの重要性を理解させ,協調性に欠ける言動を改めさせる努力をして下さい。
 注意指導の主な目的は,
 ① 業務に支障を来すような協調性に欠ける言動を改めさせること
 ② 証拠の確保
の2つです。ポイントは,①業務に支障を来すような協調性に欠ける言動を改めさせることが一番の目的であって,②証拠の確保を一番の目的にしてはいけないということです。
 確かに,注意指導したことを立証するための証拠を確保しておく必要はあります。しかし,業務に支障を来すような協調性に欠ける言動を改めさせることを第一の目的としなければ,形だけいくら注意指導しても問題社員の協調性に欠ける言動を改善させることは難しいでしょう。単に「証拠作り」をしているに過ぎないことが透けて見えれば,労働審判や訴訟においても,懲戒処分や解雇の前提として行うべき注意指導をしたと評価してもらえない可能性が高くなります。
 協調性に欠ける言動が多い問題社員の態度が悪く,改善の意欲が見られないと,注意指導する側も匙を投げてしまい,辞めてもらうための証拠作りを注意指導の主な目的にしたくなるかもしれません。しかし,そのやり方ではかえって,辞めてもらうという目的を達成することを困難にしてしまいます。問題社員の協調性に欠ける言動をなくすことができるよう誠心誠意注意指導することが,結果として,問題社員の協調性に欠ける言動をなくすことや,改善しない場合の退職につながるのです。大変かもしれませんが,頑張って下さい。
 注意指導の仕方のポイントは,何をどのように改めればいいのか,具体的に伝えることです。単に,「もっと協調性を持って仕事して下さい。」「どうすればいいかは,自分の頭で考えて下さい。」などと伝えたのでは,具体的に何をどのようにすればいいのか分かりませんし,注意指導に従ったのか,従わなかったかの判断もできません。具体的事案に応じて,どうしてそのような言動をしたのか質問したり,具体的にどのようにすればいいのか教えたりして,注意指導していく必要があります。
 例えば,上司の指示をよく考えもせずに断る問題社員に対しては,「上司から仕事の指示を受けたら,指示された仕事をするよう努めなければなりません。指示された仕事ができない事情があるのであれば,どうしてできないのかをよく説明し,理解してもらえるよう努力して下さい。直ちに対応できない場合であっても,工夫すれば対応できるのであれば,工夫して指示された仕事ができるよう努力して下さい。」などと伝えます。そして,上司の指示を断るような状況にないのに上司の指示を断ってきた場合には,本人の言い分を聞きつつ,何をどうすればいいのか具体的に教えてあげるようにして下さい。
 協調性のなさの程度が甚だしい問題社員に対する注意指導の内容は,報告書等の形で上司に報告し,記録に残しておいて下さい。報告書等の書面の形式では大げさだというのであれば,上司への電子メールでの報告でも構いません。会社経営者等,社内で報告する相手がいないような場合は,顧問弁護士にメールで報告するとよいでしょう。協調性のなさの程度が甚だしく,懲戒処分を念頭に置いているような場合は,聴取結果を事情聴取書にまとめた上で聴取内容を確認させ,署名押印させることもあります。
 上司等への報告や事情聴取書は,5W1Hを意識して「事実」を記載したものを作成して下さい。何月何日の何時頃,どこで,誰が,誰に対して,何をしたのか(どのような言葉のやり取りがなされたのか)といった客観的な事実を記載する必要があります。必要に応じて,どのように話したのか,どうしてそのように話したのかといったものを付け加えてもいいかもしれません。「事実」を記載せずに,「協調性がない。」とか「反省の色が見られない。」といった評価的な表現や「次に協調性に欠けた言動をしたらいかなる処分を受けても異存ありません。」といった反省の気持ちを表明する発言の記録が中心となってしまったのでは,協調性に欠ける言動の具体的内容が明らかにならず,証拠価値が低くなってしまうことがあります。
 口頭でいくら注意指導しても協調性に欠ける言動が改まらず,業務に支障を来しているような場合は,「注意書」「厳重注意書」等の書面に,
 ① 協調性に欠けることを示す言動の具体的内容
 ② 具体的にどうすればよかったのか
を5W1Hを意識して記載して交付し注意指導しましょう。①協調性に欠けることを示す言動の具体的内容と②具体的どうすればよかったのかを記載した「注意書」「厳重注意書」等の書面で注意指導することにより,本人の改善をより強く促すとともに,注意指導したことの証拠を確保することができます。協調性に欠ける言動を繰り返していて,普段は自分の非を認め謝罪の言葉を口にしていたような社員であっても,労働審判や団体交渉の席では,「会社が言うような協調性に欠ける言動をしたことはありませんし,十分な注意指導を受けたこともありません。」などと言って,懲戒処分や解雇の無効を主張するのがむしろ通常です。協調性に欠けることを示す言動の内容とどうすればよかったのかを5W1Hを意識して具体的に記載した「注意書」「厳重注意書」といった書面を交付して注意指導することにより,当該社員がどういった言動をしたのかや,上司により書面で注意指導をした事実を立証することができるようになります。
 「注意書」「厳重注意書」といった書面を受け取ったことがないと言われないようにするため,受領書にサインを取った方がいいのかとか,書留郵便で郵送した方がいいのかといった質問を受けることがよくあります。確かに,万全を期すのであれば,そういった配慮が必要なこともあるでしょう。しかし,実際の事案では,「注意書」「厳重注意書」といった書面を交付したにもかかわらず,受け取っていないと言われることは,それほど多くはありません。「確かに厳重注意書を受け取りましたが,内容が事実とは異なります。」といった主張がなされることがほとんどです。したがって,ほとんどの事案では,押印済みの「注意書」「厳重注意書」といった書面の写しとPDFを取った上で,本人に「注意書」等を交付し,何月何日何時頃どこで誰が当該社員に注意書等を交付したのか,その際,どのような言葉のやり取りがなされたのかを記録し,上司や顧問弁護士にメールで報告しておけば十分です。極端な虚言癖のある社員等,特に必要性が高い場合についてのみ,「注意書」等を交付するとともにそのPDFをメール送信したり,書留郵便やレターパックで「注意書」等を郵送したりすれば足りるでしょう。
 注意指導の際のやり取りを録音しておくことも考えられますが,録音されていることを意識すると,言いたいことを素直に言えなくなってしまう可能性があります。録音記録を労働審判等で証拠として使うためには,反訳(文字起こし)して文書化しなければならないため,録音記録の利用は手間がかかる面があることを意識する必要もあります。録音記録は,必要性をよく検討した上で,必要性が高いと判断された場合に利用すべきと考えます。
 従来,協調性に欠ける言動を放置していた職場の場合,従来であれば容認されていた程度の協調性に欠ける言動をした社員に対し注意指導しても,なかなか受け入れられず,上司が協調性に欠ける言動を注意したところ,「パワハラだ。」などと言われることも珍しくありません。仕事の種類によって必要性に程度の差こそあれ,周囲と協調しながら仕事をすることは当然のことなのですが,協調性に欠ける言動を放置していた会社にも落ち度がありますので,直ちに懲戒処分等を行うことはお勧めできません。今後は協調性に欠ける言動を許さない旨,明確に伝えた上で,具体的にどうすればいいのか教えながら粘り強く注意指導し,それでも改善しないときに懲戒処分等を検討することをお勧めします。
 協調性に欠ける言動が多い問題社員に対し電子メールを送信して改善を促しつつ注意指導した証拠を確保することも考えられますが,電子メールでの注意指導は,必ず「口頭での注意指導とセット」で行って下さい。協調性に欠ける言動が多い問題社員が,在職中であるにもかかわらず口頭での注意指導を拒絶し,電子メールでのみ注意指導等をするよう要求してくることがありますが,口頭での注意指導を怠ってはいけません。口頭でのコミュニケーションと比較して,電子メールでのコミュニケーションは,誤解が生じやすいものです。恋人や友達と喧嘩した際,電子メール,メッセンジャー,LINE等での話し合いでは埒があかなかったのに,実際に会ってしばらく話しているうちに仲直りしたという経験がある方も大勢いらっしゃるのではないかと思います。口頭での注意指導をせずに電子メールだけで注意指導した場合,注意指導の効果が上がらず,かえって「パワハラだ。」などと反発を受け,問題がこじれることはよくある話です。仮に,会って話すことができないような状況であっても,電子メールでの連絡で終わらせずに,せめて,電話で話すくらいの努力はするようにして下さい。テレビ電話機能を用いて,お互いの姿を表示しながら話し合うことができればより望ましいところです。
 口頭で十分に注意指導せずに「書面」でのみ注意指導することもお勧めできません。社員の言い分を聴きながら口頭で教え諭して正しい方向に導いていく努力なしに,協調性に欠ける言動が多い社員の態度を改めさせることは困難です。口頭での注意指導が不十分なまま,書面での注意指導や懲戒処分を行った場合,単に「証拠作り」をしているだけのように見えてしまうこともあります。

3 実態どおりの評価
 勤務成績の評価は,協調性に欠ける言動の程度を正確に反映したものにして下さい。実態よりも高い評価をしているような会社は,勤務成績の評価の信頼性が低く,トラブルが拡大しやすい傾向にあります。
 勤務成績の評価を実態に合わせて下げて昇給を停止したり,賞与を他の社員よりも大幅に低額にしたり,懲戒処分を行ったりして紛争になった場合,どうして勤務成績の評価を下げたのか,懲戒処分を行わなければならないのかを説明できるようにしておく必要があります。従来は実態よりも高い評価がなされ,昇給幅も賞与額も他の社員とあまり変わらなかった社員が協調性に欠ける言動を繰り返すことに堪忍袋の緒が切れて勤務成績の評価を大幅に下げたような場合は,評価を大幅に下げた合理的理由を説明する難易度が高くなります。その結果,評価を大幅に下げたことがハラスメントと受け取られて紛争となったり,配置転換・降格,懲戒処分,解雇等が無効と判断されたりするリスクが高くなります。
 実態よりも高い評価をした方が部下に好かれやすく,問題を先送りにできることもあり,管理職の中には,下手に厳しい評価をして部下に不満を持たれては損だ,実態よりも高い評価をしてあげる上司が良い上司だ,などと勘違いしている者も少なからず存在します。言ってみれば,会社の利益や公正な評価よりも,自分の利益を優先させているわけです。部下の良いところも悪いところもありのままによく見てあげて評価することの重要性を社内で共有しておくべきでしょう。

4 配置転換・降格
 配置転換の余地があるのであれば,協調性に欠ける言動が多い社員を別の部署に配置転換してみてもいいでしょう。それほど共同作業が必要のない業務を担当することになったり,共同で仕事をするメンバーが変わることで,協調性に欠ける言動がそれほど目立たなくなることもあります。しかし,複数の配置転換先でも協調性に欠ける言動を繰り返して周囲との軋轢が生じるようであれば,本人に問題がある可能性が高いと言わざるを得ません。
 管理職が協調性に欠けた言動を繰り返し,部下やプロジェクトの管理に支障を来すなど,管理職としての適格性を欠くような場合は,「人事権」を行使して,管理職から外す等の対応をするとよいでしょう。就業規則には「懲戒処分」としての降格処分が規定されていることが多いですが,多くの事案において会社にとって最も重要なのは「適材適所」の実現であって,当該管理職の処罰ではありません。懲戒処分の形式を選択する必要性が高い例外的な場合を除き,「懲戒処分」としての降格処分をするのではなく,「人事権」を行使して管理職から外す等の対応をすることをお勧めします。

5 懲戒処分
 「厳重注意書」等の書面で注意指導し,配置転換や降格等で対応しても協調性に欠ける言動が改まらず,業務に支障が生じている場合は,懲戒処分を検討せざるを得ません。懲戒処分の種類を検討するにあたっては,協調性が特に必要とされる業務内容,職場環境かどうか,チームワークが重視される共同作業が多い業務内容なのか,少人数の職場なのかといった要素を考慮します。「協調性がない。」ことを理由に懲戒処分を行おうとする場合,通常は,譴責,減給といった軽い懲戒処分を行い,それでも改善しない場合に出勤停止等のより重い処分をしていくことになります。
 有効に懲戒処分を行う前提として,懲戒の種類と事由を就業規則に明記し,周知(社員が見ようと思えば見られる状態にしておくこと。)させておいて下さい。就業規則が周知されていないと,業務に重大な支障が生じていても懲戒処分は無効となります。小規模な会社では,懲戒処分の相当性以前の問題として,就業規則が周知されていないというだけの理由で懲戒処分が無効と判断されることも珍しくありません。
 「懲戒処分なんてしたら,職場の雰囲気が悪くなる。」などと言って,懲戒処分を行わずにいきなり辞めてもらおうとする会社経営者は珍しくありません。しかし,単に「協調性がない。」と表現したのでは足りないくらいの問題行動をした場合でない限り,懲戒処分歴のない社員を,協調性に欠ける言動を理由に有効に解雇することは困難です。協調性に欠ける言動をした社員が退職勧奨に応じて退職届を提出してくれれば,懲戒処分を行っていなくても目的は達成できるかもしれませんが,懲戒処分を行っておらず,解雇しても無効と判断されるリスクが高い事案において,社員から退職勧奨には応じないと回答されてしまったら打つ手はなく,それこそ職場の雰囲気が悪くなってしまいます。解決金を支払って辞めてもらおうにも,社員は解雇されても無効であることが分かっていて怖くないわけですから,解決金の相場は高くなることでしょう。勢い,強引な退職勧奨を行って,不法行為が成立するようなことにもなりかねません。他方,解雇が有効となる可能性がそれなりに高い場合であれば,社員の側としても無理に争って解雇が有効と判断されては困りますから,ほどほどの金額の解決金で合意退職に応じることが合理的な選択となります。したがって,退職勧奨で辞めてもらう場合であっても,懲戒処分を繰り返し行ったにもかかわらず協調性に欠ける言動が改まらなかったのでやむなく退職勧奨をして辞めてもらったという流れになるよう準備していく必要があります(懲戒処分の結果,協調性の乏しい言動が改善された場合は,当面は勤務を継続させて様子を見ることになります。)。職場の雰囲気が悪くなることを恐れて,懲戒処分をせずにいきなり辞めてもらおうとすることは,協調性に欠ける言動の程度が甚だしいなどの理由から解雇が有効となる見込みが高い場合や,本人も退職する意思を表明していて条件交渉が残されているだけの場合を除き,適切ではないと考えます。

6 退職勧奨
 懲戒処分を繰り返しても協調性に欠ける言動が改まらない問題社員については,退職勧奨を行って辞めてもらうことを検討すべきでしょう。
 退職に当たり一定額の金銭の支払等を要求された場合は,それが過度の要求でない限り,折り合いをつけるよう交渉するのが原則です。双方折り合いがついた場合は,退職合意書を交わすなどして権利義務関係を明確にし,退職してもらいましょう。折り合いがつかない場合は,解雇するのか,懲戒処分を行うのかなどについて,検討していくことになります。

7 普通解雇・懲戒解雇(諭旨解雇・諭旨退職)等の退職の効果を伴う処分
 懲戒処分を繰り返しても協調性に欠ける言動が改善せず,退職勧奨にも応じない場合は,普通解雇・懲戒解雇(諭旨解雇・諭旨退職)等の退職の効果を伴う処分を検討せざるを得ません。
 懲戒解雇(諭旨解雇・諭旨退職)等の懲戒処分を行う場合には,懲戒の種類と事由が記載された就業規則が周知されていることが前提として必要です。就業規則が周知されていないと「門前払い」となり,懲戒解雇等の懲戒処分を有効に行うことはできません。就業規則が周知されておらず懲戒解雇等の懲戒処分ができない場合は,普通解雇で対処することになります。諭旨退職処分をした場合は,退職願が提出されていたとしても,合意退職扱いとはされず,懲戒処分としての諭旨退職処分の有効性が問題となることにも注意して下さい。
 普通解雇や懲戒解雇等の退職の効果を伴う処分を行う場合は,職場から排除しなければならないほど協調性に欠ける言動の程度が甚だしく,業務に重大な支障が生じていることを証拠により立証できるようにしておく必要があります。立証に必要な客観的証拠がそろっているのか,十分に検討してから普通解雇や懲戒解雇等に踏み切って下さい。
 私は,単に「協調性がない。」としか表現できない事案で,普通解雇・懲戒解雇(諭旨解雇・諭旨退職)等の退職の効果を伴う処分ができる事案は多くないと考えています。普通解雇や懲戒解雇等に値するほど協調性のなさの程度が甚だしい事案であれば,通常は,より具体的な普通解雇事由,懲戒解雇事由が存在するように思います。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎

 

__________________

協調性がない。 (y-klaw.com)

弁護士法人四谷麹町法律事務所
会社経営者のための残業代請求対応
会社経営者のための労働審判対応


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Q.飲食業で残業代(割増賃金)請求を受けるリスクが特に高いのはどうしてだと思いますか。

2022-04-26 | 日記

Q.飲食業で残業代(割増賃金)請求を受けるリスクが特に高いのはどうしてだと思いますか。


 飲食業で残業代(割増賃金)請求を受けるリスクが特に高い一番の理由は、飲食業では会社経営者が残業代(割増賃金)を支払わなければならないという意識が低いことにあると考えています。飲食業の経営者に残業代(割増賃金)を支払わない理由を聞いてみると、
 「飲食業だから。」
 「昔からそういうやり方でやってきて、問題になったことはない。」
 「飲食業で残業代なんて支払ったら、店がつぶれてしまう。」
 「それが嫌なら、転職した方がいい。」
といった程度の理由しかないことが多く、当然ですが、訴訟や労働審判になれば、残業代(割増賃金)請求が認められることになります。上記のような認識を持っている飲食業の会社経営者は、これもまた自然なことですが、残業代(割増賃金)請求を受けると被害者意識を強く持つ傾向があり、そばにいて大変残念でいたたまれない気持ちにさせられます。
 2番目の理由としては、労働時間が長いため、残業代(割増賃金)の金額が高額になりがちな点が挙げられると思います。1日あたりの店舗の営業時間は8時間を超えるのが通常であり、仕込み作業が必要なこともあるため、少なくとも正社員については1日8時間を超えて労働させるケースが多くなっています。また、店舗物件の有効利用の観点から、店舗の休日が全くなかったり、週1日だけしかなかったりすることが多く、完全週休二日制で休日出勤無しのケースはむしろ珍しい部類に入ります。その結果、週40時間(特例措置対象事業場では週44時間)を超えて労働させることが多く、1日8時間超の残業代(時間外割増賃金)のみならず、週40時間(特例措置対象事業場では週44時間)超の残業代(時間外割増賃金)を支払わなければならなくなることは珍しくありません。
 定額(固定)残業代制度を採るなどして、一応の残業代(割増賃金)請求対策が採られている会社もありますが、定額(固定)残業代制度に対して裁判所の厳しい判断が相次いでいる現状に対する認識が甘く、制度設計や運用が雑で敗訴リスクが懸念されるケースが数多く見られます。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎

__________________

https://www.y-klaw.com/faq1/366.html

弁護士法人四谷麹町法律事務所
会社経営者のための残業代請求対応
会社経営者のための労働審判対応


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Q.運送業を営む会社を経営していますが、休日なしで長時間働いてお金を稼ぎたいと言ってくる運転手にはどのように対応すればいいでしょうか。

2022-04-25 | 日記

Q.運送業を営む会社を経営していますが、休日なしで長時間働いてお金を稼ぎたいと言ってくる運転手にはどのように対応すればいいでしょうか。


 運送業を営む会社を経営していると、休まずにもっと働いてお金を稼ぎたい、働かせてくれなければ辞めて他の会社に転職する、などと言ってくる運転手がいることに気づくことと思います。
 たくさん働きたいという意欲は素晴らしいのかもしれませんが、使用者には運転手の健康に配慮する義務(労契法5条)がありますので、本人が望んでいるからといって、恒常的な長時間労働を容認するわけにはいきません。ある程度までであれば、多めに運転させても構いませんが、度を超して働きたいという希望を押し通そうとする運転手については、断固として長時間労働を拒絶する必要があります。その結果、転職してしまうかもしれませんが、やむを得ない選択と腹をくくるべきでしょう。
 なお、時間外割増賃金は1日8時間を超えて働かせたときだけ支払うものではなく、週40時間を超えて働かせた場合にも支払う必要がありますので、週6日以上働かせた場合には朝から残業(時間外労働)扱いになり時間外割増賃金の支払が必要となる可能性があります。また、休日を定めなかった場合であっても、7日続けて働かせた場合には、7日目の日は法定休日として取り扱われることになりますので、休日割増賃金を支払う必要があります。残業代(割増賃金)請求対策という観点からも、恒常的な長時間労働を抑制する必要があるところです。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎

__________________

https://www.y-klaw.com/faq1/364.html

弁護士法人四谷麹町法律事務所
会社経営者のための残業代請求対応
会社経営者のための労働審判対応


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東京地裁労働部と東京三弁護士会の協議会

2022-04-13 | 日記

代表弁護士藤田進太郎が参加した東京地裁労働部と東京三弁護士会の協議会が労働判例に掲載されました。(産労総合研究所)
 


 

東京地裁労働部と東京三弁護士会の協議会 第19回

「労働判例」2022年4月15日1259号(産労総合研究所)

協議議題
・新型コロナウイルスの感染対策問題発生後,1年半以上が経過したが,労働問題に関し,発生し,あるいは増加している相談の類型・論点,今後どのような類型・論点の労働事件が増加するのかの見通し等について
・裁判手続・労働審判手続の迅速化,IT化等について
・労働審判全般に関する審理,調停,審判の最近の状況について

 

__________________

弁護士法人四谷麹町法律事務所
会社経営者のための残業代請求対応
会社経営者のための労働審判対応


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする