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弁護士法人四谷麹町法律事務所のブログ

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「未発生の」賃金債権の減額に対する同意の意思表示の効力を肯定するための要件を教えて下さい。

2015-06-24 | 日記

「未発生の」賃金債権の減額に対する同意の意思表示の効力を肯定するための要件を教えて下さい。


 「未発生の」賃金債権の減額に対する同意についても「賃金債権の放棄と同視すべきものである」とする下級審裁判例もありますが,「未発生の」賃金債権の減額に対する同意は,労働者と使用者が合意により将来の賃金額を変更した(労契法8条参照)に過ぎず,賃金債権の放棄と同視することはできないのですから,通常の同意で足りると考えるべきであり,それが労働者の自由な意思に基づいてなされたものであることが明確であることまでは要件とされないものと考えます。
 北海道国際空港事件最高裁平成15年12月18日第一小法廷判決が,「原審は,上告人が平成13年7月25日に減額された賃金を受け取り,その後同年11月まで異議を述べずに減額された賃金を受け取っていた事実によれば,同年7月1日にさかのぼって賃金が減額されることも,上告人はやむを得ないものとしてこれに応じたものと認めることができると認定した。すなわち,原審は,上告人が平成13年7月25日に同月1日以降の賃金減額に対する同意の意思表示をしたと認定したのであるが,この意思表示には,同月1日から24日までの既発生の賃金債権のうちその20%相当額を放棄する趣旨と,同月25日以降に発生する賃金債権を上記のとおり減額することに同意する趣旨が含まれることになる。しかしながら,上記のような同意の意思表示は,後者の同月25日以降の減額についてのみ効力を有し,前者の既発生の賃金債権を放棄する効力は有しないものと解するのが相当である。」 と判示し,未発生の賃金債権の減額に対する同意の意思表示の効力を肯定しているのは,既発生の賃金債権の減額(放棄)に対する同意の意思表示の効力を肯定するための要件と未発生の賃金債権の減額に対する同意の意思表示の効力を肯定するための要件を明確に区別し,未発生の賃金債権の減額に対する同意の意思表示の効力を肯定するための要件としては,それが労働者の自由な意思に基づいてなされたものであることが明確でなければならないことを要求していないからであると考えられます。


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「既発生の」賃金債権の減額に対する同意の意思表示の効力を肯定するための要件を教えて下さい。

2015-06-24 | 日記

「既発生の」賃金債権の減額に対する同意の意思表示の効力を肯定するための要件を教えて下さい。


 「既発生の」賃金債権の減額に対する同意の意思表示は,既発生の賃金債権の一部を「放棄」することにほかなりません(北海道国際空港事件最高裁平成15年12月18日第一小法廷判決参照)。
 労基法24条1項に定める賃金全額払の原則の趣旨に照らせば,既発生の賃金債権を放棄する意思表示の効力を肯定するには,それが社員の自由な意思に基づいてされたものであることが明確でなければなりません(シンガーソーイングメシーン事件最高裁昭和48年1月19日第二小法廷判決参照)。既発生の賃金債権を放棄する意思表示が,社員の自由な意思に基づいてされたものであることが明確なものではなく,社員の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在したということができない場合には,既発生の賃金債権を放棄する意思表示としての効力を肯定することはできません。


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個別合意よりも社員に有利な労働条件を定めた労働協約,就業規則が存在しない場合

2015-06-24 | 日記

個別合意よりも社員に有利な労働条件を定めた労働協約,就業規則が存在しない場合は,個別合意により賃金減額の効力が生じますか。


 個別合意よりも社員に有利な労働条件を定めた労働協約,就業規則が存在しない場合は,個別合意により賃金減額の効力が生じることになりますが,賃金減額に対する社員の同意の認定は慎重になされることが多いため「口頭」での同意では同意なしと認定されるリスクが高いものと思われます。賃金減額に対する社員の同意は「書面」で取るようにして下さい。


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個別合意よりも社員に有利な労働条件を定めた労働協約,就業規則が存在する場合

2015-06-24 | 日記

個別合意よりも社員に有利な労働条件を定めた労働協約,就業規則が存在する場合,個別合意だけでは賃金減額の効力は生じませんか。


 個別合意よりも社員に有利な労働条件を定めた労働協約,就業規則が存在する場合には,それらの効力が個別合意に優先するため(労組法16条,労契法12条),個別合意だけでは賃金減額の効力は生じず,労働協約,就業規則を変更して初めて賃金減額の効力が生じることになります。



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具体的に発生した賃金請求権を事後に変更された就業規則の遡及適用により処分することは許されるか

2015-06-24 | 日記

具体的に発生した賃金請求権を事後に変更された就業規則の遡及適用により処分又は変更することは許されますか。


 具体的に発生した賃金請求権を事後に変更された就業規則の遡及適用により処分又は変更することは許されません(香港上海銀行事件最高裁平成元年9月7日第一小法廷判決)。


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就業規則の変更により賃金を減額する場合に要求される合理性の程度を教えて下さい。

2015-06-24 | 日記

就業規則の変更により賃金を減額する場合に要求される合理性の程度を教えて下さい。


 賃金,退職金など労働者にとって重要な権利,労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の作成又は変更については,当該条項が,そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合において,その効力を生ずるとされています(大曲市農協事件最高裁昭和63年2月16日第三小法廷判決)。



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労契法9条の合意があった場合,合理性や周知性は就業規則の変更の要件とはならないと考えていいのか

2015-06-24 | 日記

労契法9条の合意があった場合,合理性や周知性は就業規則の変更の要件とはならないと考えてよろしいでしょうか。


 「就業規則の不利益変更は,それに同意した労働者には同法9条によって拘束力が及び,反対した労働者には同法10条によって拘束力が及ぶものとすることを同法は想定し,そして上記の趣旨からして,同法9条の合意があった場合,合理性や周知性は就業規則の変更の要件とはならないと解される。」(協愛事件大阪高裁平成22年3月18日判決)との見解が妥当と思われますが,労働者の同意があれば合理性や周知性は就業規則の変更の要件とはならないとの見解に立ったとしても,合意の認定は慎重になされるのが通常であるため,労働者が就業規則の変更を提示されて異議を述べなかったといったことだけでは不十分であり,最低限,書面による同意を取る必要があります。
 また,合理性に乏しい就業規則の規定の変更については,書面による同意を取ったとしても,労働者の同意があったとは認定されないリスクが高いものと思われます。



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就業規則の変更による賃金減額が有効となるための要件を教えて下さい。

2015-06-24 | 日記

就業規則の変更による賃金減額が有効となるための要件を教えて下さい。


 就業規則の変更により賃金を減額する場合は,就業規則の不利益変更に該当するため,就業規則の変更が有効となるためには,以下のいずれかの場合である必要があります。
 ① 労働者と合意して就業規則を変更したとき(労契法9条反対解釈)
 ② 変更後の就業規則を周知させ,かつ,就業規則の変更が,労働者の受ける不利益の程度,労働条件の変更の必要性,変更後の就業規則の内容の相当性,労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき(労契法10条)


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労働協約を締結することができない場合や労働協約の効力が及ばない労働者の賃金を減額する方法

2015-06-24 | 日記

労働協約を締結することができない場合や労働協約の効力が及ばない労働者の賃金を減額する方法としては,どのようなものが考えられますか。


 労働協約を締結することができない場合や労働協約の効力が及ばない労働者の賃金を減額する方法としては,就業規則変更又は個別合意による賃金減額が考えられます。



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具体的に発生した賃金請求権を事後に締結された労働協約により処分又は変更することは許されますか。

2015-06-24 | 日記

具体的に発生した賃金請求権を事後に締結された労働協約により処分又は変更することは許されますか。


 具体的に発生した賃金請求権を事後に締結された労働協約により処分又は変更することは許されません(香港上海銀行事件最高裁平成元年9月7日第一小法廷判決)。


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