Q10辞めさせたい正社員がいる場合,どのように対処すればいいのでしょうか?
解雇は原則として自由であり(民法627条),客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,解雇権を濫用したものとして無効となる(労働契約法16条)というのが法の建前ですが,現実には,原則として解雇は無効で,特別な事情がある場合に限り解雇が有効となるというように,原則と例外が逆転した運用がなされていますので,正社員を有効に解雇することは極めて難しくなっています。
また,勤続年数が長い正社員や幹部社員の解雇事案では,毎月支払われる賃金額が高額になる結果,仮に解雇が無効であった場合に発生しているバックペイの金額が高額となることなどから,解決金の相場も高額になりがちです。
さらに,未払の割増賃金(残業代)の請求は,在職中ではなく,退職後になされることが多く,労基法所定の割増賃金の支払がなされていない会社において無理な解雇が強行された場合には,より割増賃金(残業代)の請求を受けるリスクが高まる印象です。
したがって,一般論としては最後の最後まで解雇は行わず,社員から任意に退職届を提出してもらえるよう努力すべきです。
退職届の提出があった場合であっても,退職勧奨の違法を根拠に,損害賠償請求を受けたり,退職の無効を主張されたりするリスクはゼロではありませんが,退職届も取らずに,一方的に解雇した場合と比べると,格段にリスクが低下することは疑いありません。
やむを得ず解雇を行う場合は,弁護士の指導の下,慎重に行う必要があります。
退職の問題は社員の生活に重大な影響を及ぼすのが通常で,非常にデリケートな問題ですから,社員の生活に対する十分な配慮が必要となります。
例えば,離職票の交付を速やかに行う等,失業手当の受給手続が円滑に行えるよう配慮することは,最低限必要です。
感情的になりそうな何らかの事情があったとしても,離職票の交付を遅らせてはいけません。
失業手当に関し,自分から退職届を出して退職すると自己都合退職として扱われ,失業手当を受給する上で不利な取扱を受けるのではないかと懸念し,退職自体はやむを得ないと考えていても,退職届の提出を拒絶する社員がいます。
しかし,「事業主から退職するよう勧奨を受けたこと。」(雇用保険法施行規則36条9号)は,「特定受給資格者」(雇用保険法23条1項)に該当しますので(雇用保険法23条2項2号),会社都合の解雇等の場合と同様の扱いとなり,労働者が失業手当を受給する上で不利益を受けることはありません。
社員が失業手当の受給条件について心配しているようでしたら,丁寧に説明して懸念を払拭する必要があります。
退職勧奨を行うにあたっては,担当者の選定が極めて重要となります。
退職勧奨が紛争の契機となることが多いので,相手の気持ちを理解する能力を持っている,コミュニケーション能力の高い社員が退職勧奨を担当する必要があります。
最悪なのは,退職勧奨を受ける社員と仲の悪い上司が退職勧奨を行うようなケースで,非常にトラブルが多くなっていますので,そうならないよう配慮することが必要です。
同じようなケースであっても,退職勧奨の担当者が誰かにより,紛争が全く起きなかったり,紛争が多発したりします。
退職勧奨を検討する際,通常は,「どのように退職勧奨すべきか?」という発想で考えることになりますが,現実の紛争予防のためには,「誰が退職勧奨を担当するのか?」という点が極めて重要であるということを覚えておいて下さい。
弁護士 藤田 進太郎
解雇は原則として自由であり(民法627条),客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,解雇権を濫用したものとして無効となる(労働契約法16条)というのが法の建前ですが,現実には,原則として解雇は無効で,特別な事情がある場合に限り解雇が有効となるというように,原則と例外が逆転した運用がなされていますので,正社員を有効に解雇することは極めて難しくなっています。
また,勤続年数が長い正社員や幹部社員の解雇事案では,毎月支払われる賃金額が高額になる結果,仮に解雇が無効であった場合に発生しているバックペイの金額が高額となることなどから,解決金の相場も高額になりがちです。
さらに,未払の割増賃金(残業代)の請求は,在職中ではなく,退職後になされることが多く,労基法所定の割増賃金の支払がなされていない会社において無理な解雇が強行された場合には,より割増賃金(残業代)の請求を受けるリスクが高まる印象です。
したがって,一般論としては最後の最後まで解雇は行わず,社員から任意に退職届を提出してもらえるよう努力すべきです。
退職届の提出があった場合であっても,退職勧奨の違法を根拠に,損害賠償請求を受けたり,退職の無効を主張されたりするリスクはゼロではありませんが,退職届も取らずに,一方的に解雇した場合と比べると,格段にリスクが低下することは疑いありません。
やむを得ず解雇を行う場合は,弁護士の指導の下,慎重に行う必要があります。
退職の問題は社員の生活に重大な影響を及ぼすのが通常で,非常にデリケートな問題ですから,社員の生活に対する十分な配慮が必要となります。
例えば,離職票の交付を速やかに行う等,失業手当の受給手続が円滑に行えるよう配慮することは,最低限必要です。
感情的になりそうな何らかの事情があったとしても,離職票の交付を遅らせてはいけません。
失業手当に関し,自分から退職届を出して退職すると自己都合退職として扱われ,失業手当を受給する上で不利な取扱を受けるのではないかと懸念し,退職自体はやむを得ないと考えていても,退職届の提出を拒絶する社員がいます。
しかし,「事業主から退職するよう勧奨を受けたこと。」(雇用保険法施行規則36条9号)は,「特定受給資格者」(雇用保険法23条1項)に該当しますので(雇用保険法23条2項2号),会社都合の解雇等の場合と同様の扱いとなり,労働者が失業手当を受給する上で不利益を受けることはありません。
社員が失業手当の受給条件について心配しているようでしたら,丁寧に説明して懸念を払拭する必要があります。
退職勧奨を行うにあたっては,担当者の選定が極めて重要となります。
退職勧奨が紛争の契機となることが多いので,相手の気持ちを理解する能力を持っている,コミュニケーション能力の高い社員が退職勧奨を担当する必要があります。
最悪なのは,退職勧奨を受ける社員と仲の悪い上司が退職勧奨を行うようなケースで,非常にトラブルが多くなっていますので,そうならないよう配慮することが必要です。
同じようなケースであっても,退職勧奨の担当者が誰かにより,紛争が全く起きなかったり,紛争が多発したりします。
退職勧奨を検討する際,通常は,「どのように退職勧奨すべきか?」という発想で考えることになりますが,現実の紛争予防のためには,「誰が退職勧奨を担当するのか?」という点が極めて重要であるということを覚えておいて下さい。
弁護士 藤田 進太郎