健康長寿の窓口 (タロー8の脳腫瘍闘病記改め)

2009年に乏突起神経膠腫の手術を受け15年が経過したことを機にブログをリニューアル、健康長寿の情報を発信していきます。

高齢者の痩せ過ぎは健康長寿できない

2024-12-03 16:56:44 | 健康・病気

「健康長寿を目指すためにフレイルにならないようにする」、これまでも何度か話題にしてきたことです。

今回は、BMI (ボディマス指数)と健康長寿の関係です。

BMIは肥満度を評価する指標で体重と身長から次の計算式で求めることができます。

BMI = 体重 (kg) ÷ (身長 (m)) 2

日本肥満学会では、BMIが22を適正体重(標準体重)とし、統計的に最も病気になりにくい体重とされています。25以上を肥満、18.5未満を低体重と分類しています。

数値が大きいのは肥満と判定されて身体に良くないことは明確なのですが、私は会社の健診ではいつも20前後(自宅の体組成計は20以下)で、痩せ気味と認識はしていたのですが、小さいと栄養が足りてないのかな?と思うくらいで、さほど気にしてはいませんでした。

ところが、先月11月15日に早稲田大学の研究グループから「高齢者が健康長寿でいられるBMIは22.5~23.5である」との論文が発表されました。

Is a higher body mass index associated with longer duration of survival with disability in frail than in non-frail older adults? (International Journal of  Obessity,. 2024 Nov 15. doi: 10.1038/s41366-024-01681-6

論文の概要は、日本の高齢者約1万人を対象に調査研究を行った結果(2011~16年に実施された京都府亀岡市での研究の一環)、フレイルでもフレイルでもない高齢者のどちらでも、BMIが22.5~23.5で最も介護認定を受けるリスクが低く、18.5未満は介護認定を受ける前に死亡する可能性が高く、BMIが27.5以上では何らかの不自由な状態になりながらも12.5ヶ月長生きできた、というものです。

論文は、BMIの値にかかわらずフレイルのある人は、フレイルのない人に比べて長生きできないので、不自由なく長生きすることを優先するべきと締めくくっています。

先日、職場の健診で19.1との結果が出て、ドクターからもう少し体重を増やしましょうと言われたばかりです。

やべぇ、太らなきゃ!

ちなみに適正体重は次の計算式で求められ、私の適正体重は約60kgであり、あと8kgは体重を増やしたいところです。

適正体重 = (身長m)2 ×22

 

体重を増やしたい、でも肥満にはなりたくない

最近、酪酸菌が痩せ菌として注目されています。調べてみると、酪酸菌の一つクロストリジウム・ブチリカムが腸内で酪酸を生成し、これがエネルギー代謝に影響を与えるらしいのです。(酪酸は、免疫と炎症を調整する細胞も活性化することが知られています。)

つまり、酪酸菌が多いとエネルギー代謝を活発にするから痩せる、ということです。

ん? そう言えば、私の腸内細菌相を調べた結果では、酪酸菌が少なかったけど、何で痩せているんだ、と疑問に思っていました。

以下が腸内細菌相を調べた時のアップです。

シン・腸活時代 2 「はて、私の菌相は?」2024-07-09 

シン・腸活時代 3 「運動は菌相を良くするのか?」2024-07-10

 

それで、酪酸菌が少ない場合でも痩せることはあるのか、と調べてみましたが、どうも見つけることができません。

Copilotに聞いてみると、「痩せ過ぎ(低BMI)と酪酸菌の関係についても研究が進んでいる」と答えが出るのですか、引用根拠を見ても、そんなことは一つも述べられてない!Copilotは当てにならないようです。

でも、何となく(全く根拠はないですが)、酪酸菌で腸内のエネルギー環境を整えると、肥満にならない程度に体重は増やせるのかな、と勝手に思っています。

 

 

 

 

今後の課題ということで、今日はこの辺で。

 


薬に頼らない医療

2024-12-02 15:43:30 | 健康・病気

いろいろあって、ブログ更新が滞っていましたが、再開します。

さて、来年1月のトランプ氏のアメリカ大統領就任を控え、国内の選挙結果もモヤモヤが残る気分ですが、為政者たちが明確なビジョンを持って未来ある世界を築いて欲しいものです。

そんなモヤモヤの中で世間を賑わせているのが税控除に関わる「103万円の壁」ですが(「○○の壁」と言えばベストセラーの健康関連本が思い浮かびます)、健康長寿の窓口として気になるのは医療費負担です。

厚生労働省の発表(2024年9月3日)によると、2023年度の概算医療費は 47.3 兆円で3年連続の最高額、前年度比約1.3兆円プラス、伸び率は2.9%の増加だそうです。

内訳は、入院18.7兆円(構成割合39.5%)、入院外16.4兆円(34.7%)、歯科3.3兆円(7.0%)、調剤8.3兆円(17.6%)です。調剤は5.4%の増加です。

国民1人当たりで見ると、医療費は38万円(前年度より1万2000円増加)です。

高齢者に目を向けると、75歳以上の医療費は18.8兆円で4.5%増加、全体に占める割合は39.8%、75歳以上は一人当たり平均96万5000円(3割負担として約29万円)で0.9%上昇、75歳未満の平均(25万2000円)の約4倍ということで、75歳以上の医療費増加が際立ちます。

概算医療費は病気やけがなどの受診で医療機関に支払われた総額で、労災保険や全額自己負担のケースなどは含まれません。もちろん、健康保険に関わらない市販薬を購入した額は含まれないということなので、実際に個人が支払った医療費はもっと多いのではないかと思います。

社会保障はどうなっている?

石破総理大臣が所信表明の中で、「医療・年金・子育て・介護など、社会保障全般を見直し、国民の皆様に安心していただける社会保障制度を確立する」と述べられましたが、具体的にどのようにすれば健康保険料を含めた医療費の自己負担を減らすことができるのか、まだハッキリ見えてきません。

セルフメディケーション

国家予算の医療費削減の一つとして、セルフメディケーション、つまり「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てする」との考え方があります。ごもっともな考え方ではありますが、国家予算を軽減できても現実には自己負担軽減につながるとは思えないです。セルフメディケーション税制を利用して一般用医薬品の購入した費用の一部を所得税から控除されますが、2020年の報告では利用率はわずか0.1%(確定申告ベース)です。

一方、一般用医薬品との国内市場をメーカー出荷額ベースで見ると(2021年のデータになりますが)、前年比0.4%増の6,990億円です(矢野経済研究所https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3044)。セルフメディケーションが定着すれば、この数字が大きくなるのでしょうが、それは国民にとって良いことなのか?負担が増えるだけなのでは?

後発医薬品を使おう

国家予算の医療費削減のもう一つの政策として、後発医薬品の推奨があります。

後発医薬品(後発品)とは、長い年月と莫大な費用を掛けて開発されて(しかもハイリスク)、特許を取得し、最初の新薬として市場に出された医薬品(先発医薬品)の特許権が切れた後に、同じ有効成分を使用して製造する医薬品のことで、ジェネリック医薬品とも言います。後発品は、先発品と同等の効果を持っていますが、開発費用が先発医薬品に比べて低く、価格が低く設定されることが多いので、医療費削減につながる、というものです。もちろん、個人負担額も減るので、国にとっても個人にとっても嬉しい話です。

後発品を利用されている方は増えていて、後発品割合(数量ベース)は令和5年度末(令和6年3月)時点で85.3%だそうです。

さらに、今年10月から薬の選定療養制度が始まったので、その利用は増えるのではないかと思います。

薬の選定療養制度というのは、後発医薬品が存在する場合に、患者が希望して先発医薬品を選択する際に、先発医薬品と後発医薬品の価格差(薬価の差額)の4分の1に相当する金額を「特別の料金」として支払う、というものです。医療上の必要性が認められる場合(医師の判断)や、後発医薬品が在庫切れの場合(医薬品の供給不足が問題になっていますが)などが、患者の希望によらず先発医薬品を使用する場合は、特別の料金を支払う必要はありません。なお、特別料金には保険は適用されません。

例えば、先発医薬品の価格が1,000円、後発医薬品の価格が600円の場合、価格差は400円で、その4分の1が特別料金になります。

患者が先発品を希望する場合、患者が支払うのは、先発品価格の1000円の3割負担で300円に、差額400円の4分の1である100円を特別の料金として追加して300+100=400円を支払うことになります。

薬に頼らない医療

医療費削減の対策案として数年前に某政党が予防医療やプライマリ・ケアを重視して「薬のいらない医療」を目指す、と訴えておりましたが、103万円の壁がクローズアップされて、政治資金問題とともに忘れ去られようとしているのかなあ。

どんな政策であろうと、私達一人一人が自分の健康を人任せにせず、「医者・薬いらず」を自分で考えるようになれば、国家予算も自己負担も軽減できるのは間違いなく、健康長寿は心も懐も豊かにしてくれるはずです。

少なくとも17.6%を占める調剤費8.3兆円は軽減できるので、もっと有益なことに使ってもらいましょう。

薬局で働いていると、数種類のお薬が慢性的に処方されているのを見かけます。処方された薬そのものの作用・副作用などのリスクに気づいたら薬剤師として医師に相談しますが、処方(治療方針)に対して意見は言えません。でも、薬を減らす、止めることはできないのかなあ、と悩む毎日です。

薬は本来持っている自分で病気を治す力(自然治癒力)を引き出すことで病気を治すもの、食事・運動・睡眠+笑顔が基本との信念で、引き続き、健康長寿ネタを紹介していきますので、今後もよろしくお願いいたします。


プロテイン摂取は何時?

2024-10-22 17:25:58 | 日記

朝タン?

新聞で某通信販売の「朝タンのススメ」なる広告を見つけました。朝タンとは、食でタンパク質を摂る、ってことを言うらしい。夕食で多く摂っても筋肉ではなく脂肪になってしまうのだそうです。

はて、

タンパク質は運動の後や寝る前が良い、って認識していましたが、朝タンのエビデンスはあるの?

新聞広告には出典が記載されていなかったので、早速、調査開始です。

 

高齢女性で実証、遺伝子レベルでメカニズム解明も

早稲田大学のプレスリリース(2021年7月7日)によると、「マウスを使った動物実験で体内時計と朝のタンパク質摂取と筋肉増加が関係していた、そして高齢女性を対象とした調査で、3食のタンパク質摂取量と骨格筋機能に相関があった」のだそうです。

体内時計は、時間遺伝子によって時間を刻み、ヒトでは1日が24時間より15~20分程度長いと考えられています。中途半端な15~20分は朝日を浴びることでリセットされるので、1日を快適に過ごし、しっかり睡眠を取って翌日に備えることができます。

マウスでの実験は、まず、①タンパク質の多い朝食、②朝夕食とも同じタンパク質量、③タンパク質の多い夕食で筋肉量を比較したら、①が多いことを確認しています。

※ タンパク質はカゼインタンパクを使い、カゼイン20%含有を多い方、3%含有を少ない方、同量はそれぞれ11.5%含有とした。(多い方を14%,少ない方は3%、それぞれ8.5%を同量としたパターンもあり)

次に、筋肉の合成を高める作用が強いアミノ酸でお馴染みのBCAA(分岐鎖アミノ酸)を加えた朝食または夕食を食べさせたところ、BCAAの多い朝食の方が筋肉量が多く、BCAA以外のアミノ酸では増加しなかったそうです。つまり、朝食でBCAAを摂ることが筋肉を増やすには大事なのだということが分かります。

続いて、DNA情報を読み取る時計遺伝子(CLOCK遺伝子)が働かないマウスと、筋肉と関係のある時計遺伝子(BMAL1遺伝子)※が働かないマウスに朝食と夕食でタンパク質を食べさせて筋肉量を比べたところ、いずれのマウスも朝食でタンパク質を摂って筋肉量が増える効果が見られず時計遺伝子が関係しているらしい、とのことです。

※ CLOK遺伝子がBMAL1遺伝子とくっつくことで筋肉形成が始まります。

さらに、朝食時にタンパク多く摂るとオートファジーの活性化によって筋肉が増えるということも分かりました。オートファジーというのは、タンパク質をアミノ酸に分解して再度タンパク質を作るという生物が持っている機能です。オートファジーと健康長寿の関係については過去でのブログに書いているので、「gooブログ 健康長寿の窓口 脳腫瘍闘病記 オートファジー」で検索、ポチッて下さい。

マウスの実験は、「Distribution of dietary protein intake in daily meals influences skeletal muscle hypertrophy via the muscle clock: Cell Reports 36 , 109336」という論文で発表されています。

以上のマウス実験を受けて、65歳以上の高齢女性60人を対象に、3食のタンパク質の摂取量と骨格筋機能との関係を2017年10月から2018年2月まで調査したところ、「朝食で多くのタンパク質を摂取している人の方が、夕食で多くのタンパク質を摂取している人よりも、筋肉量(骨格筋指数)が増えた」という結果がえられたそうです。

夕食でタンパク質をたくさん摂ったら脂肪になる?

残念ながら、科学的根拠を見つけ出すことができませんでした。

皆さんご存知の通り、エネルギー源(糖質・、脂質)を摂ってもエネルギーを消費しないと余ったエネルギー源が脂肪となって身体に蓄積していきますよね。

タンパク質はほとんどが身体の構成成分となっていて、糖質・脂質が不足した時に、タンパク質が糖新生というプロセスを経てできたブドウ糖(糖質)がエネルギー源として使われます。通常、夕食後にエネルギーを使うことはないので、糖質・脂質が消費されずに残るので、タンパク質がブドウ糖になって蓄積されるということは起きないはずなのですが・・・。ただし、空腹で糖質が足りないとか、糖尿病や糖質代謝異常症などの病気の場合は、糖新生が活性化するので脂肪の蓄積につながることがあります。

運動する前と後のどちらが良い?

筋肉を作るときにmTORという酵素が働きます。mTORは筋トレなどの運動後に活性化されるので、タンパク質を摂るのは運動後が良さそうです。運動後の30~60分が「ゴールデンタイム」なので、消化吸収の速いホエイタンパクが良いです。

寝る前も良い?

就寝中は成長ホルモンが分泌されてmTORが活性化するので、お布団に入る前のタンパク質摂取も良いです。カゼインタンパクはゆっくり吸収されるので、寝ている間に長時間の筋肉合成効果を得るのに適しています。

成長ホルモンは深い睡眠の時に多く分泌されるので、質の良い睡眠を取ることが効果的ですね。眠りに入って1~3時間がポイントです。

サプリに頼るのも良いですが、昼寝は短めに、寝る前は部屋を暗くする、というのもアリです。

「筋トレをした時の就寝前のプロテイン摂取は効果的だ」との比較的新しい論文があります。

Protein Ingestion before Sleep Improves Postexercise Overnight Recovery(Med Sci Sports Exerc. 2012 Aug;44(8):1560-9.)

 

朝食と筋トレした後、そして寝る前にタンパク質を摂る、というのが理想のようです。

1日に体重あたり1gのタンパク質を摂りましょう。60kgの人なら60g、覚えやすいですね。

 

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腎障害だけじゃないよ

2024-10-21 17:04:40 | 日記

当ブログへのご訪問ありがとうございます。お陰様で日本ブログ村の「生活改善」部門で107サイト中5位に入りました(10月21日現在)。

今後もよろしくお願いいたします。

紅麹の腎障害問題が発覚して半年以上も経つというのに、今更のように医薬品の腎障害が週刊誌で採り上げられていました。

記事と同様の内容「”急性腎障害”の副作用リスクがある処方薬リスト(非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や降圧剤、胃腸薬など)」がネットで公開されていますので、詳細はそちらをご覧頂くとして、今回は医薬品の副作用についてのお話しです。

 

副作用って何?

そもそも医薬品は身体にとって異物です。また、医薬品の作用は複雑で“複数”あって、そのすべては解明されていないので、効き目だけでなく様々な副作用を生じる場合があります。

まず、世界保健機関(WHO)の定義によれば、医薬品の副作用とは、「疾病の予防、診断、治療のため、又は身体の機能を正常化するために、人に通常用いられる量で発現する医薬品の有害かつ意図しない反応」とされています。分かりやすく言えば、「通常に服用する量で、意図しないで起こってしまう“有害な”作用」です。

鼻炎薬を飲むと眠くなるのは副作用?

複数の作用がある医薬品には、期待する“有益な”作用とは別の作用が有益な場合は、通常は副作用とは言いません。鼻炎薬の中に含まれる抗ヒスタミン成分によっては眠気を催す製品があります。一方で、眠気の作用がある抗ヒスタミン成分を利用すれば、睡眠改善薬となります。鼻炎薬としては副作用となる眠気も睡眠改善薬としては”有益な”作用になるのです。

※ 眠気を催す抗ヒスタミン成分は、風邪薬や乗物酔い止めといった製品にも使われています。車を運転する場合、ドラッグストアなどで購入する際には、パッケージの「注意」に「服用後、乗物又は機械類の運転操作をしないでください。」などと記載されているか確認しましょう。最近は眠くなりにくい抗ヒスタミン成分を使っている製品もあるので、よく分からない場合は、薬剤師、登録販売者に相談しましょう。病院で処方されるお薬なら、お医者さんに聞くか、薬局で薬剤師さんに聞いてみましょう。

紅麹の腎障害は副作用?

紅麹のような食品で起きる有害事象(健康被害)を医薬品のように副作用と言うのは適切ではありません。また、小林製薬の紅麹製品(コレステヘルプなど)は、紅麹由来の成分で腎障害を起こすシトルリンが生成しない方法で製造されており(実際にシトルリンは検出されてないと言われています)、腎障害は製造工程の管理不十分が原因で生じた青カビ由来の成分”プベルル酸”が原因と考えられています。むしろ、コレステヘルプの「悪玉コレステロールを下げる」機能性関与成分の”米紅麹ポリケチド“がスタチン系脂質異常症治療薬(前出の週刊誌にも記載)と似ていて、スタチン系の副作用である”横紋筋融解症”による筋肉痛や筋力低下を起こりうる有害事象として考えた方が良いでしょう。

腎障害以外の副作用

前出の週刊誌に記載されている医薬品の全ての副作用を列記すると一冊の本になるくらい大変なことになるので、今日は高齢者に身近な解熱・鎮痛・消炎薬に絞ります。

2024年10月8日、厚生労働省が非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の添付文書(薬のトリセツ)について、重大な副作用として「心筋梗塞、脳血管障害」を追記するようにという改訂指示を発出しました(指示内容の詳細は割愛します)。医療用医薬品と一般用医薬品(処方箋なしでも買える)で追記する内容や書き方に違いはありますが、基本的には同じです。

「心筋梗塞、脳血管障害」が追記となる一般用医薬品は、イブプロフェンやロキソニンを含む製品が対象です。局所作用の貼り薬は除外ですが、私が使っている膝痛のお薬”「ロコアテープ(有効成分はエスフルルビプロフェン・ハッカ油)“は貼り薬であっても全身作用があるので対象となっています。膝痛で通院中の方は、気になったら主治医にご相談ください。

リウマチなどの膝痛では、症状によっては“セレコックス錠と”やそのジェネリック“セレコキシブ錠”(いずれも成分はセレコキシブ)を処方されている方もいると思います。セレコキシブは、プロスタグランジンという痛みの元になる体内物質を合成するシクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素の作用を阻害します。このシクロオキシゲナーゼ阻害作用のあるNSAIDsには「妊娠中期の妊婦へのシクロオキシゲナーゼ阻害剤の使用により、胎児動脈管収縮を疑う所見を適宜確認する」旨が追記されます。

シクロオキシゲナーゼ阻害作用のあるNSAIDsには、イブプロフェン、インドメタシン、エテンザミド、サリチル酸メチル、ジクロフェナク、フェルビナク、ロキソニンといったお馴染みの成分もあり、同様の改訂がされます。

 心筋梗塞なんて、恐いですね。でも痛みや熱など辛いときは、用法用量を守って、少しでも異変を感じたらお医者さんへGo。


ちなみにNSAIDsの腎障害は、プロスタグランジン合成阻害作用により、腎血管が収縮して腎血流量が低下し、尿量が減少することに起因します。また、膀胱排尿筋の収縮が抑制されて、膀胱の緊張を緩和作用もあることから、副作用を逆手にとってロキソニンが夜間頻尿に用いられることがあるようです(保険適応外です)。ただし夜間頻尿は高齢者に多いので、飲み続けると腎機能障害だけでなく、心筋梗塞や脳血管障害を起こすリスクがあるので注意が必要です。頻尿だからと言って市販のロキソニンを買ってきて自己判断で飲むことは絶対にしないでください。

 

効く”医薬品

週刊誌で医薬品の副作用が採り上げられたことで、医薬品の有効性と安全性や、特に機能性を標榜する食品の有害事象について興味を持ち、頭痛や発熱などの症状に”効く”というのはリスクを伴うものと理解して正しく使うこと、また、気になることがあったら専門家(医師、薬剤師、登録販売者)に相談することを意識する人が増えるのはとても良いことだと思います。

 

また、医薬品は”効く”ことで病気を自分自身で治そうとする力(自然治癒力)を助けてくれるものと捉え、できるだけ医薬品に頼らないようにすることも健康長寿に大切です。

 

自然治癒力を引き出す

治療中の方は主治医と相談の上、基本は食事(タンパク質を中心に)、運動(ウォーキングと筋トレ)、睡眠(質の良い眠り)と笑顔と感謝を心掛けましょう。そして歯を健康に保つことも大事です(私のお勧めはL8020という乳酸菌が配合された歯磨き粉です)。私の過去のブログを参考にしていただくと幸いです。過去のブログを見たい方は、「健康長寿の窓口 脳腫瘍闘病記 食事(あるいは運動、睡眠、笑顔)」で検索、ポチッとして下さい。


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さあ、歩きましょう! 運動しましょう!



ご注意ください

2024-10-19 18:05:04 | 日記

「ご注意ください」

というMeiji Seikaファルマの一面広告。お詫びの広告かと思いきや、ファルマの新しいタイプ(レプリコンワクチン)の新型コロナワクチン「コスタイベ」の接種拒否について誤った認識への対応です。

さて、問題になっているのは、”コスタイベ筋注“に対して8月7日付けで日本看護倫理学会(JNEA)が「現段階において拙速にレプリコンワクチンを導入することには深刻な懸念を表明します。」と緊急声明を表明したことに対して、Meiji Seikaファルマ(MP)が10月9日づけで見解を公表しています。

それぞれの主張を簡単にまとめると、JNEAは、レプリコンワクチンに対して安全性に関する懸念があり、ワクチンの新しさや長期的なデータの不足を理由に、慎重な対応を求めており、MPは、レプリコンワクチンの安全性と有効性について科学的データについて、製造販売承認に至った既存の研究や臨床試験の結果を示しています。

レプリコンワクチンに対するJNEAの懸念は主に、開発国や先行治験国で認可されていないこと、レプリコンワクチンが「自己複製する mRNA」であるために、レプリコンワクチン自体が接種者から非接種者に感染(シェディング)する懸念があること、です。2つ目の懸念がSNSで拡散され、医療に関わる学会の声明だけに、フェイクとは思えないのが拍車を掛けた、コスタイベを打った人は入店禁止になるなど世間を騒がすことになったと考えられます。

 

JNEAの懸念に対してMPは下記のように見解を述べています。

  • ヨーロッパで承認申請がなされ最終段階にあること、アメリカその他においても申請準備が進んでいること、日本では厳しい基準で実施した臨床試験の結果により有効性と安全性が確認されて厚生労働大臣が承認したものであり、安全性に懸念があるから海外で承認されてないというのは憶測で事実誤認である。
  • mRNAワクチンは、スパイクタンパクというウイルスの一部分を使用しているので、感染性のあるウイルスを形成することはない。

ここで免疫とワクチンについてちょっと寄り道します。

免疫のタイプにも色々ありますが、抗体による異物(病原体)排除にフォーカスします。ウイルスなど病原体が体内に入ると、B細胞という免疫細胞がその病原体専用の抗体を作り、病原体にくっついて力を弱めて体外へ排出します。

B細胞は病原体のタンパク質(つまりアミノ酸のつながったもの)のアミノ酸の並び方(バーコード)を記憶します。2回目に病原体が入ってきたときはバーコードを読み取って、専用の抗体を素早く作ります。これを獲得免疫と言い、ワクチンは獲得免疫を利用します。

病原体のウイルスは自分自身で増殖することができないので、動物の細胞に入り込んで細胞をタンパク質の工場として利用して自分自身を複製増殖し、細胞の外へ出て行き、呼気などを通じて他人へ感染します。

ワクチンは、ウイルスのバーコードを予め体内に送り込んでおくことで、人工的に獲得免疫をつくり、準備するためのものです。

バーコードを何にするかによってワクチンの種類が異なります。インフルエンザワクチンのような従来のタイプのように、殺したウイルス(ウイルスは生きものではないので殺すという表現は相応しくない)の一部をバーコードとするのが(不活化ワクチン)です。麻疹や風疹で使われているウイルス本体を弱毒化した生ワクチンタイプのあります。

ファイザー(コミナティ)とかモデルナ(スパイクバックス)いう名前で知られるようになった新型コロナワクチンは、ウイルスの一部分(スパイクタンパク)のバーコードとして、体内の細胞でそのスパイクタンパクを作らせるための設計図を使うタイプで、この設計図がmRNAで、遺伝子組換えワクチン、mRNAワクチンもと呼ばれます。

MPのコスタイベは、細胞がタンパクを作るときに働くレプリカーゼという酵素も混ぜておいて効率的にmRNAを作らせるもので、レプリコンワクチンと呼ばれます。mRNAを使います。つまり、レプリコンワクチンはmRNAワクチンの進化形であり、ファイザーのmRNAワクチンよりもmRNAの量を少なくして、効果が持続するという利点があります。

JNEAの声明にある“シェディング”という言葉は、元々は英語で「取りのぞく、離れる、放つ」を意味する“shed”であり、生物学では「細胞内(工場)で作られたタンパク(ウイルス粒子)を細胞(工場)の外へ”出す”(参考:

Wikipedia)」という意味で使われるそうです。

悲しいかな、誰かが“シェディング”を「感染する」と日本語訳したのでしょうか、レプリコンワクチンの安全性への懸念の元になっているようです。感染という意味で使ったとして、病原性のないスパイクタンパクが感染しても新型コロナ感染症を引き起こすとは思えないです。むしろ、他人のつくったスパイクタンパクが獲得免疫を作ってくれるかも知れません。

閑話休題コスタイベの研究結果は、厚生労働省のHPで公開されています。

ただ、厳しい審査を経て承認されたコスタイベであっても100%安全である)と言うのは難しい話です。以前のブログ「悪魔の証明」でお話ししたように、副反応が起こることが0%であることは証明できないので、代わりに、現時点でのデータに基づいてリスクが低いと評価されることが一般的です。JNEAの懸念の一つ、「mRNAがDNAそのものに影響を及ぼすのではないか(ヒトでの逆転写酵素の有無)」についても可能性はゼロではありません。ゼロあることを証明するのは悪魔の証明です。だからMPは、承認を得た科学的根拠をと述べているのです。

それに対して、科学的根拠のないJNEAの声明は憶測と(おそらく)感情的なもので稚拙という印象を受けました。

Meiji Seikaファルマは名誉毀損で反ワクチン団体を提訴するに踏み切ったようです。

コスタイベを承認した厚生労働省は9月17日に武見敬三・厚生労働大臣(当時)が、問題ないと表明し、昨日(10月18日)に武見敬三・前厚生労働大臣がコスタイベを公開接種したそうです。ファイザー製のコロナワクチンの時も、同じようなパフォーマンスがあったような・・・。

レプリコン問題はこの先、どうなることやら。いずれにしても、新型コロナに罹らない、ウイルスを感染させないことが大事です。感染者数が減少傾向にあり、ウイルスの毒性も弱くなってきているとは言え、後遺症は気になると琴です。特に高齢者、基礎疾患のある方、そしてその周りの方は、注意が必要ですね。免疫でウイルスから身を守るためには、タンパク質を中心にバランス良く栄養をしっかり摂って免疫細胞を元気にしておくことも対策の一つ。

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