健康長寿の窓口 (タロー8の脳腫瘍闘病記改め)

2009年に乏突起神経膠腫の手術を受け15年が経過したことを機にブログをリニューアル、健康長寿の情報を発信していきます。

天高く○○肥えない秋

2024-10-02 14:46:56 | 日記

能登半島豪雨で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。

1日でも早く、秋の青く高い空をゆっくりと眺めることができる日が来るようにと祈るばかりです。

 さて、暦の上では秋でも記録的な猛暑が続いた9月が終わり、栗や松茸の収穫がニュースで採り上げられるようにもなり、少しずつ秋らしさを感じるようになってきました。これで金木犀の香りを楽しめるようになれば本格的な10月入りです。

 秋は、野菜や魚・果物くだものなど美味しいものがいっぱい。美味しいものに誘われて、馬肥ゆる秋です。肥ゆるのは”美味しいものは脂肪と糖でできている”からなのです。

 秋ナス、サツマイモ、カボチャ(夏に収穫、収穫後に追熟)などの秋野菜は夏野菜に比くらべて水分が少なく、味が濃く、甘みが強くなるのだそうです。

ブドウやリンゴ、ナシといった果物も、夏に光をたっぷり浴びて温度が高くて光合成が活発になって糖分がたくさん生成されて甘くなります。

    

 

 

 ちなみに、「秋ナスは嫁に食わせるな」ということわざがあります。美味しいものを嫁に食べさせるなという嫁いびりの意味だと思いがちですが、実は、ナスは身体を冷やす働きがあるので(身体を冷やす、温める食材については、9月9日のブログも参照下さい)、美味しくて食べすぎると身体に良くないと嫁の健康を気遣うという意味があります。サツマイモ、カボチャは身体を温める働きがあるので、秋ナスを食べる時はサツマイモやカボチャも一緒に食べるのが良いと思います。

 また、秋に旬を迎えるサンマやサバ、カツオなどの青魚や鮭は、 冬の低水温から身を守るために秋に脂肪を貯めるので脂がのって美味しくなります。

 ちなみに、サンマは身体を冷やし、サバは身体を温め、カツオはどちらでもない(”平”と言います)そうです。

 サンマは大根おろしとすだちとの相性が良いですが、いずれも身体を冷やす食材です。大根おろしをレンチンするとか、サンマを煮込むとか、工夫すると良いでしょう。

 サンマと温の食材の梅干しやショウガと煮込む我が家の定番料理は美味しくて理に適っています。こんな素晴らしい料理を作る私の妻は天才!。そしてビールに合う!お勧めします。

 そして、なんと言っても秋収穫の代表は、お米。品薄が続いていますが、美味しいお米は秋の味覚から外すことはできませんね。

 これだけ美味しい食べ物が揃う秋は馬肥ゆることになります。

はて、

秋に肥ゆるのは何故?

 そもそも食べ物を美味しいと感じるのは、身体が栄養価の高い食べ物を必要とする本能であり、美味しいものを食べたいと思うのは仕方のないことです。

 私たちの遠い祖先は食べ物が豊富でない饑餓の時代に生きていたので、脂肪や糖といった高カロリーの食べ物を見つけたときに食べておこうと行動することが生きるための術でした。それで脳が、高カロリーで美味しい食べ物に対して強い欲求を持つように進化してきたのです。

 さらに、美味しい食べ物を食べると脳内でドーパミンという快感を引き起こす神経伝達物質が放出されるので、高カロリーな美味しい食べ物を食べたいと強く思うようになり、欲求が繰り返されるようになります。

はて、

美味しいから食べるのは分かるけど、では秋に食べ物が美味しくなるのは何故?

 それは、食べ物が少なくなる冬に備えて栄養(脂肪)を蓄えるために、高カロリーの食材が食欲をそそるように仕組まれた自然の摂理と考えられます。

三大栄養素(脂質、糖質、タンパク質)は身体を動かすエネルギー源

脂質(脂肪)

 脂質は、細胞膜やホルモン、ビタミンDといった身体の組成成分の15%ですが、エネルギー源の25%でもあります(食生活改善指導担当者テキスト~健康教育編・栄養指導編~)。脂質のうち、脂肪酸がグリセリンという物質と結合したものが中性脂肪(トリグリセリド)で、皮下脂肪や内臓脂肪、筋肉間脂肪として蓄えられています。健康診断で気になる数値ですね。脂肪酸が糖やリンと結合すると細胞膜の成分となります。中性脂肪や細胞膜中の脂肪酸は、エネルギーが必要な時に切り離されて使われます(9キロカロリー)。

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸

 脂肪酸は、オレイン酸などオメガ9系の一価不飽和脂肪酸、リノール酸やアラキドン酸などオメガ6系や、αリノレン酸などオメガ3系の多価不飽和脂肪酸、パルミチン酸などの飽和脂肪酸の3種類に大きく分けられます。

 飽和脂肪酸の多くは、肉、バター、チーズなどに含まれる動物性脂肪酸です。肉は筋肉を作るタンパク質摂取に重要ですが、血液中の中性脂肪やLDLコレステロールが増やす作用があり心血管系疾患のリスクが高くなるので摂りすぎに注意です。牛乳やヨーグルトなどの動物性脂肪酸には不飽和脂肪酸(トランス型)があります。トランス型の中でも工業的に生産されたマーガリンに含まれるタイプはLDLコレステロールを増やす作用があります。牛乳やヨーグルトに含まれるトランス型不飽和脂肪酸は僅かで健康に影響するほどのものではなく、むしろ、カルシウムやビタミンD、タンパク質摂取のメリットの方が大きいので安心して下さい。

 不飽和脂肪酸のほとんどは植物性で、LDLコレステロールを低下するなど健康に良い作用があります。亜麻仁油やえごま油に含まれるα-リノレン酸は体内で、中性脂肪を下げる作用のあるEPAに変換されて、さらにDHAに変換されます。ただし、変換効率(Folia Pharmacol.Jpn, 151, 27, 2018)はEPAで5%、EPAからDHAで0.5%程度なので、青魚から摂った方が効率よさそうですね。

 身体に良い不飽和脂肪酸が多いのであれば、筋肉に必要な必須アミノ酸が豊富なタンパク質を多く含んだ代替肉が注目されるのも不思議ではないです。

最近では、動物の肉を植物性肉に置き換えると、総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪や体重といった心血管系疾患臓病の危険因子が改善することが報告されています(Can J Cardiol. 40, 1198, 2024)。

糖質

 糖質は、身体の組成成分としては1%未満と少なく、エネルギー源の55%であり、三大栄養素の中でも最も多いです。エネルギー源となるのは糖質の中のブドウ糖(グルコース)です。エネルギーとなるのは脂質の半分以下の4キロカロリーです。食べ物には、ブドウ糖や果糖(フルクトース)の2つ以上が結合した炭水化物として含まれています。炭水化物のうち、消化吸収されてエネルギー源となるものが糖質、消化吸収されない(エネルギー源にならない)ものが食物繊維です(食物繊維は腸内細菌のエサとなってビタミンなどが作られます)。

 ブドウ糖は、筋肉と肝臓にグリコーゲン※1という物質になって貯蔵されます。肝臓にはその重量の約5-8%のグリコーゲンが貯蔵されていて、これは約100gに相当します。筋肉にはその重量の約1-2%のグリコーゲンが貯蔵されていて、これは約250-300gに相当します。エネルギー量に換算すると、肝臓のグリコーゲンは約400-500キロカロリー、筋肉のグリコーゲンは約1200-1500キロカロリーとなります。

 筋肉に多くのグリコーゲンが貯蔵されていますが、これは、筋肉に貯蔵していた方がブドウ糖(エネルギー)としてすぐに使うことができるからです。

 肝臓に貯蔵されたグリコーゲンはブドウ糖に戻って血液中に放出され、筋肉や他の細胞のエネルギーとして使われますが、最も多く消費されるのは脳です(約350~450キロカロリー、全身の約20~25%)※2。脳にもグリコーゲンは貯蔵されますが、約8キロカロリーと僅かなので、脳が24時間休みなく活動するために、肝臓からの安定したブドウ糖の供給が必要なのです。筋肉や肝臓はブドウ糖の貯蔵庫であり、血糖値の調整の役割も果たしています。

 しかし、頭(脳)を使わず、運動しないで消費されなかった余剰なブドウ糖は、徐々に脂質へと転換されます。脂質もエネルギーに使われないので中性脂肪として内臓や皮下、筋肉に溜まってしまいます。肥満の始まりです。食べ物が美味しいと運動量を超える量を食べてしまう、これが馬肥ゆる秋です。

 恐いのは、筋肉は痩せているのに内臓脂肪が多い、サルコペニア肥満です。一見すると太っているようには見えないけれど、実は内臓脂肪がたくさんついている状態(隠れ肥満)で、「馬肥ゆるではないから」と不健康であると気づかないでいるとメタボリック症候群に陥ってしまう、ということになります。

 ※1 グリコキャラメルの”グリコ”はグリコーゲンに由来していることは有名ですね。一粒で300メートル走れるとキャッチフレーズがあります。実際、年齢20歳の男性が分速160m で走ると、1分間に使うエネルギーは キロカロリーで、グリコキャラメル 一粒で 1.89分、約300m走れる計算になるそうです(Glico豆知識より)。

 ※2 肝臓は約360キロカロリーのエネルギーを消費し、心臓は1日に約145キロカロリー、腎臓は約137キロカロリーを消費します。

タンパク質

 タンパク質は身体の組成成分としては約16%と最も多く、エネルギー源としては15%で三大栄養素の中では最も少ないです。肉や骨、細胞のあらゆる基礎であり、エネルギーとして使われるのは(糖質と同じく4キロカロリー)、脂質や糖質が少なくなった時です。糖質・脂質を必要な量はちゃんと摂らないと筋肉のタンパク質がエネルギーに使われて痩せ細ってしまいます。フレイルの始まりです。

 痩せるのであれば「脂質・糖質制限はダイエットに良いじゃな~い」それは大きな間違いです。筋肉が少なくなると身体を動かすのが億劫になり、転倒のリスクも高くなります。また、運動量が少なくなるとエネルギ-が余って脂肪太りになってしまいます。さらに、デンプンを麦芽糖からブドウ糖へと分解するアミラーゼやマルターゼといった酵素もタンパク質なので、脂質・糖質を必要以上に制限すると酵素の働きが悪くなり、脂質・糖質を体内に取りいれる効率が悪くなり、結果、タンパク質が消費されるというフレイルスパイラルに陥ってしまいます。脂質・糖質とともにタンパク質をしっかり摂ることが重要です。特に筋肉量の減少が大きい高齢者は要注意ですので、タンパク質を日頃から意識しておきましょう。

天高く○○肥えない秋にする

 筋力と筋肉量を維持するためには、タンパク質をしっかり摂ることは、これまでも散々書いてきましたが、脂質、糖質も大事、そして運動量に見合う量を摂ることが”肥ゆる”を抑えるために重要。

 野生の動物は冬に備えて脂肪を蓄えますが、人間は冬でも美味しく食べる知恵を持っています。

エネルギー出納バランスの基本概念

厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2020年版)より転載

はて、

美味しいものは具体的にどのくらい食べるのが良い?

日本人の食事摂取基準2020年版では、脂質の摂取量目安は、男女問わず1日全体の摂取エネルギー量の「20%以上30%未満」です。

糖質の摂取量は、糖質と食物繊維を合わせた炭水化物として示されていて(食物繊維はほとんどエネルギーにならない)ので、炭水化物量=糖質量と考えて良い)、男女、年齢関係なくエネルギー量の50〜65%が目標量となっています。

何を、どれだけ食べる?

農林水産省が、1日に、「何を」、「どれだけ」食べたらよいかを考える際の参考なるように、食事の望ましい組み合わせとおおよその量を示したイラスト「食事バランスガイド」を提供しています。参考にすると良いです。

なるほど

 脂質・糖質の摂取とエネルギーの出納バランスを考えて美味しい秋の味覚を満喫しましょう。

 

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