いろいろあって、ブログ更新が滞っていましたが、再開します。
さて、来年1月のトランプ氏のアメリカ大統領就任を控え、国内の選挙結果もモヤモヤが残る気分ですが、為政者たちが明確なビジョンを持って未来ある世界を築いて欲しいものです。
そんなモヤモヤの中で世間を賑わせているのが税控除に関わる「103万円の壁」ですが(「○○の壁」と言えばベストセラーの健康関連本が思い浮かびます)、健康長寿の窓口として気になるのは医療費負担です。
厚生労働省の発表(2024年9月3日)によると、2023年度の概算医療費は 47.3 兆円で3年連続の最高額、前年度比約1.3兆円プラス、伸び率は2.9%の増加だそうです。
内訳は、入院18.7兆円(構成割合39.5%)、入院外16.4兆円(34.7%)、歯科3.3兆円(7.0%)、調剤8.3兆円(17.6%)です。調剤は5.4%の増加です。
国民1人当たりで見ると、医療費は38万円(前年度より1万2000円増加)です。
高齢者に目を向けると、75歳以上の医療費は18.8兆円で4.5%増加、全体に占める割合は39.8%、75歳以上は一人当たり平均96万5000円(3割負担として約29万円)で0.9%上昇、75歳未満の平均(25万2000円)の約4倍ということで、75歳以上の医療費増加が際立ちます。
概算医療費は病気やけがなどの受診で医療機関に支払われた総額で、労災保険や全額自己負担のケースなどは含まれません。もちろん、健康保険に関わらない市販薬を購入した額は含まれないということなので、実際に個人が支払った医療費はもっと多いのではないかと思います。
社会保障はどうなっている?
石破総理大臣が所信表明の中で、「医療・年金・子育て・介護など、社会保障全般を見直し、国民の皆様に安心していただける社会保障制度を確立する」と述べられましたが、具体的にどのようにすれば健康保険料を含めた医療費の自己負担を減らすことができるのか、まだハッキリ見えてきません。
セルフメディケーション
国家予算の医療費削減の一つとして、セルフメディケーション、つまり「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てする」との考え方があります。ごもっともな考え方ではありますが、国家予算を軽減できても現実には自己負担軽減につながるとは思えないです。セルフメディケーション税制を利用して一般用医薬品の購入した費用の一部を所得税から控除されますが、2020年の報告では利用率はわずか0.1%(確定申告ベース)です。
一方、一般用医薬品との国内市場をメーカー出荷額ベースで見ると(2021年のデータになりますが)、前年比0.4%増の6,990億円です(矢野経済研究所https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3044)。セルフメディケーションが定着すれば、この数字が大きくなるのでしょうが、それは国民にとって良いことなのか?負担が増えるだけなのでは?
後発医薬品を使おう
国家予算の医療費削減のもう一つの政策として、後発医薬品の推奨があります。
後発医薬品(後発品)とは、長い年月と莫大な費用を掛けて開発されて(しかもハイリスク)、特許を取得し、最初の新薬として市場に出された医薬品(先発医薬品)の特許権が切れた後に、同じ有効成分を使用して製造する医薬品のことで、ジェネリック医薬品とも言います。後発品は、先発品と同等の効果を持っていますが、開発費用が先発医薬品に比べて低く、価格が低く設定されることが多いので、医療費削減につながる、というものです。もちろん、個人負担額も減るので、国にとっても個人にとっても嬉しい話です。
後発品を利用されている方は増えていて、後発品割合(数量ベース)は令和5年度末(令和6年3月)時点で85.3%だそうです。
さらに、今年10月から薬の選定療養制度が始まったので、その利用は増えるのではないかと思います。
薬の選定療養制度というのは、後発医薬品が存在する場合に、患者が希望して先発医薬品を選択する際に、先発医薬品と後発医薬品の価格差(薬価の差額)の4分の1に相当する金額を「特別の料金」として支払う、というものです。医療上の必要性が認められる場合(医師の判断)や、後発医薬品が在庫切れの場合(医薬品の供給不足が問題になっていますが)などが、患者の希望によらず先発医薬品を使用する場合は、特別の料金を支払う必要はありません。なお、特別料金には保険は適用されません。
例えば、先発医薬品の価格が1,000円、後発医薬品の価格が600円の場合、価格差は400円で、その4分の1が特別料金になります。
患者が先発品を希望する場合、患者が支払うのは、先発品価格の1000円の3割負担で300円に、差額400円の4分の1である100円を特別の料金として追加して300+100=400円を支払うことになります。
薬に頼らない医療
医療費削減の対策案として数年前に某政党が予防医療やプライマリ・ケアを重視して「薬のいらない医療」を目指す、と訴えておりましたが、103万円の壁がクローズアップされて、政治資金問題とともに忘れ去られようとしているのかなあ。
どんな政策であろうと、私達一人一人が自分の健康を人任せにせず、「医者・薬いらず」を自分で考えるようになれば、国家予算も自己負担も軽減できるのは間違いなく、健康長寿は心も懐も豊かにしてくれるはずです。
少なくとも17.6%を占める調剤費8.3兆円は軽減できるので、もっと有益なことに使ってもらいましょう。
薬局で働いていると、数種類のお薬が慢性的に処方されているのを見かけます。処方された薬そのものの作用・副作用などのリスクに気づいたら薬剤師として医師に相談しますが、処方(治療方針)に対して意見は言えません。でも、薬を減らす、止めることはできないのかなあ、と悩む毎日です。
薬は本来持っている自分で病気を治す力(自然治癒力)を引き出すことで病気を治すもの、食事・運動・睡眠+笑顔が基本との信念で、引き続き、健康長寿ネタを紹介していきますので、今後もよろしくお願いいたします。
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