健康長寿の窓口 (タロー8の脳腫瘍闘病記改め)

2009年に乏突起神経膠腫の手術を受け15年が経過したことを機にブログをリニューアル、健康長寿の情報を発信していきます。

天高く○○肥えない秋

2024-10-02 14:46:56 | 日記

能登半島豪雨で被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。

1日でも早く、秋の青く高い空をゆっくりと眺めることができる日が来るようにと祈るばかりです。

 さて、暦の上では秋でも記録的な猛暑が続いた9月が終わり、栗や松茸の収穫がニュースで採り上げられるようにもなり、少しずつ秋らしさを感じるようになってきました。これで金木犀の香りを楽しめるようになれば本格的な10月入りです。

 秋は、野菜や魚・果物くだものなど美味しいものがいっぱい。美味しいものに誘われて、馬肥ゆる秋です。肥ゆるのは”美味しいものは脂肪と糖でできている”からなのです。

 秋ナス、サツマイモ、カボチャ(夏に収穫、収穫後に追熟)などの秋野菜は夏野菜に比くらべて水分が少なく、味が濃く、甘みが強くなるのだそうです。

ブドウやリンゴ、ナシといった果物も、夏に光をたっぷり浴びて温度が高くて光合成が活発になって糖分がたくさん生成されて甘くなります。

    

 

 

 ちなみに、「秋ナスは嫁に食わせるな」ということわざがあります。美味しいものを嫁に食べさせるなという嫁いびりの意味だと思いがちですが、実は、ナスは身体を冷やす働きがあるので(身体を冷やす、温める食材については、9月9日のブログも参照下さい)、美味しくて食べすぎると身体に良くないと嫁の健康を気遣うという意味があります。サツマイモ、カボチャは身体を温める働きがあるので、秋ナスを食べる時はサツマイモやカボチャも一緒に食べるのが良いと思います。

 また、秋に旬を迎えるサンマやサバ、カツオなどの青魚や鮭は、 冬の低水温から身を守るために秋に脂肪を貯めるので脂がのって美味しくなります。

 ちなみに、サンマは身体を冷やし、サバは身体を温め、カツオはどちらでもない(”平”と言います)そうです。

 サンマは大根おろしとすだちとの相性が良いですが、いずれも身体を冷やす食材です。大根おろしをレンチンするとか、サンマを煮込むとか、工夫すると良いでしょう。

 サンマと温の食材の梅干しやショウガと煮込む我が家の定番料理は美味しくて理に適っています。こんな素晴らしい料理を作る私の妻は天才!。そしてビールに合う!お勧めします。

 そして、なんと言っても秋収穫の代表は、お米。品薄が続いていますが、美味しいお米は秋の味覚から外すことはできませんね。

 これだけ美味しい食べ物が揃う秋は馬肥ゆることになります。

はて、

秋に肥ゆるのは何故?

 そもそも食べ物を美味しいと感じるのは、身体が栄養価の高い食べ物を必要とする本能であり、美味しいものを食べたいと思うのは仕方のないことです。

 私たちの遠い祖先は食べ物が豊富でない饑餓の時代に生きていたので、脂肪や糖といった高カロリーの食べ物を見つけたときに食べておこうと行動することが生きるための術でした。それで脳が、高カロリーで美味しい食べ物に対して強い欲求を持つように進化してきたのです。

 さらに、美味しい食べ物を食べると脳内でドーパミンという快感を引き起こす神経伝達物質が放出されるので、高カロリーな美味しい食べ物を食べたいと強く思うようになり、欲求が繰り返されるようになります。

はて、

美味しいから食べるのは分かるけど、では秋に食べ物が美味しくなるのは何故?

 それは、食べ物が少なくなる冬に備えて栄養(脂肪)を蓄えるために、高カロリーの食材が食欲をそそるように仕組まれた自然の摂理と考えられます。

三大栄養素(脂質、糖質、タンパク質)は身体を動かすエネルギー源

脂質(脂肪)

 脂質は、細胞膜やホルモン、ビタミンDといった身体の組成成分の15%ですが、エネルギー源の25%でもあります(食生活改善指導担当者テキスト~健康教育編・栄養指導編~)。脂質のうち、脂肪酸がグリセリンという物質と結合したものが中性脂肪(トリグリセリド)で、皮下脂肪や内臓脂肪、筋肉間脂肪として蓄えられています。健康診断で気になる数値ですね。脂肪酸が糖やリンと結合すると細胞膜の成分となります。中性脂肪や細胞膜中の脂肪酸は、エネルギーが必要な時に切り離されて使われます(9キロカロリー)。

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸

 脂肪酸は、オレイン酸などオメガ9系の一価不飽和脂肪酸、リノール酸やアラキドン酸などオメガ6系や、αリノレン酸などオメガ3系の多価不飽和脂肪酸、パルミチン酸などの飽和脂肪酸の3種類に大きく分けられます。

 飽和脂肪酸の多くは、肉、バター、チーズなどに含まれる動物性脂肪酸です。肉は筋肉を作るタンパク質摂取に重要ですが、血液中の中性脂肪やLDLコレステロールが増やす作用があり心血管系疾患のリスクが高くなるので摂りすぎに注意です。牛乳やヨーグルトなどの動物性脂肪酸には不飽和脂肪酸(トランス型)があります。トランス型の中でも工業的に生産されたマーガリンに含まれるタイプはLDLコレステロールを増やす作用があります。牛乳やヨーグルトに含まれるトランス型不飽和脂肪酸は僅かで健康に影響するほどのものではなく、むしろ、カルシウムやビタミンD、タンパク質摂取のメリットの方が大きいので安心して下さい。

 不飽和脂肪酸のほとんどは植物性で、LDLコレステロールを低下するなど健康に良い作用があります。亜麻仁油やえごま油に含まれるα-リノレン酸は体内で、中性脂肪を下げる作用のあるEPAに変換されて、さらにDHAに変換されます。ただし、変換効率(Folia Pharmacol.Jpn, 151, 27, 2018)はEPAで5%、EPAからDHAで0.5%程度なので、青魚から摂った方が効率よさそうですね。

 身体に良い不飽和脂肪酸が多いのであれば、筋肉に必要な必須アミノ酸が豊富なタンパク質を多く含んだ代替肉が注目されるのも不思議ではないです。

最近では、動物の肉を植物性肉に置き換えると、総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪や体重といった心血管系疾患臓病の危険因子が改善することが報告されています(Can J Cardiol. 40, 1198, 2024)。

糖質

 糖質は、身体の組成成分としては1%未満と少なく、エネルギー源の55%であり、三大栄養素の中でも最も多いです。エネルギー源となるのは糖質の中のブドウ糖(グルコース)です。エネルギーとなるのは脂質の半分以下の4キロカロリーです。食べ物には、ブドウ糖や果糖(フルクトース)の2つ以上が結合した炭水化物として含まれています。炭水化物のうち、消化吸収されてエネルギー源となるものが糖質、消化吸収されない(エネルギー源にならない)ものが食物繊維です(食物繊維は腸内細菌のエサとなってビタミンなどが作られます)。

 ブドウ糖は、筋肉と肝臓にグリコーゲン※1という物質になって貯蔵されます。肝臓にはその重量の約5-8%のグリコーゲンが貯蔵されていて、これは約100gに相当します。筋肉にはその重量の約1-2%のグリコーゲンが貯蔵されていて、これは約250-300gに相当します。エネルギー量に換算すると、肝臓のグリコーゲンは約400-500キロカロリー、筋肉のグリコーゲンは約1200-1500キロカロリーとなります。

 筋肉に多くのグリコーゲンが貯蔵されていますが、これは、筋肉に貯蔵していた方がブドウ糖(エネルギー)としてすぐに使うことができるからです。

 肝臓に貯蔵されたグリコーゲンはブドウ糖に戻って血液中に放出され、筋肉や他の細胞のエネルギーとして使われますが、最も多く消費されるのは脳です(約350~450キロカロリー、全身の約20~25%)※2。脳にもグリコーゲンは貯蔵されますが、約8キロカロリーと僅かなので、脳が24時間休みなく活動するために、肝臓からの安定したブドウ糖の供給が必要なのです。筋肉や肝臓はブドウ糖の貯蔵庫であり、血糖値の調整の役割も果たしています。

 しかし、頭(脳)を使わず、運動しないで消費されなかった余剰なブドウ糖は、徐々に脂質へと転換されます。脂質もエネルギーに使われないので中性脂肪として内臓や皮下、筋肉に溜まってしまいます。肥満の始まりです。食べ物が美味しいと運動量を超える量を食べてしまう、これが馬肥ゆる秋です。

 恐いのは、筋肉は痩せているのに内臓脂肪が多い、サルコペニア肥満です。一見すると太っているようには見えないけれど、実は内臓脂肪がたくさんついている状態(隠れ肥満)で、「馬肥ゆるではないから」と不健康であると気づかないでいるとメタボリック症候群に陥ってしまう、ということになります。

 ※1 グリコキャラメルの”グリコ”はグリコーゲンに由来していることは有名ですね。一粒で300メートル走れるとキャッチフレーズがあります。実際、年齢20歳の男性が分速160m で走ると、1分間に使うエネルギーは キロカロリーで、グリコキャラメル 一粒で 1.89分、約300m走れる計算になるそうです(Glico豆知識より)。

 ※2 肝臓は約360キロカロリーのエネルギーを消費し、心臓は1日に約145キロカロリー、腎臓は約137キロカロリーを消費します。

タンパク質

 タンパク質は身体の組成成分としては約16%と最も多く、エネルギー源としては15%で三大栄養素の中では最も少ないです。肉や骨、細胞のあらゆる基礎であり、エネルギーとして使われるのは(糖質と同じく4キロカロリー)、脂質や糖質が少なくなった時です。糖質・脂質を必要な量はちゃんと摂らないと筋肉のタンパク質がエネルギーに使われて痩せ細ってしまいます。フレイルの始まりです。

 痩せるのであれば「脂質・糖質制限はダイエットに良いじゃな~い」それは大きな間違いです。筋肉が少なくなると身体を動かすのが億劫になり、転倒のリスクも高くなります。また、運動量が少なくなるとエネルギ-が余って脂肪太りになってしまいます。さらに、デンプンを麦芽糖からブドウ糖へと分解するアミラーゼやマルターゼといった酵素もタンパク質なので、脂質・糖質を必要以上に制限すると酵素の働きが悪くなり、脂質・糖質を体内に取りいれる効率が悪くなり、結果、タンパク質が消費されるというフレイルスパイラルに陥ってしまいます。脂質・糖質とともにタンパク質をしっかり摂ることが重要です。特に筋肉量の減少が大きい高齢者は要注意ですので、タンパク質を日頃から意識しておきましょう。

天高く○○肥えない秋にする

 筋力と筋肉量を維持するためには、タンパク質をしっかり摂ることは、これまでも散々書いてきましたが、脂質、糖質も大事、そして運動量に見合う量を摂ることが”肥ゆる”を抑えるために重要。

 野生の動物は冬に備えて脂肪を蓄えますが、人間は冬でも美味しく食べる知恵を持っています。

エネルギー出納バランスの基本概念

厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2020年版)より転載

はて、

美味しいものは具体的にどのくらい食べるのが良い?

日本人の食事摂取基準2020年版では、脂質の摂取量目安は、男女問わず1日全体の摂取エネルギー量の「20%以上30%未満」です。

糖質の摂取量は、糖質と食物繊維を合わせた炭水化物として示されていて(食物繊維はほとんどエネルギーにならない)ので、炭水化物量=糖質量と考えて良い)、男女、年齢関係なくエネルギー量の50〜65%が目標量となっています。

何を、どれだけ食べる?

農林水産省が、1日に、「何を」、「どれだけ」食べたらよいかを考える際の参考なるように、食事の望ましい組み合わせとおおよその量を示したイラスト「食事バランスガイド」を提供しています。参考にすると良いです。

なるほど

 脂質・糖質の摂取とエネルギーの出納バランスを考えて美味しい秋の味覚を満喫しましょう。

 

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今日は「たんぱく質の日」~同時多発テロの日に思う~

2024-09-11 15:57:03 | 日記

9月11日と言えば、2001年のアメリカで起こった同時多発テロが思い浮かびます。アメリカでは今日を「愛国者の日」としてテロの追悼をするのだそうです。

他にも、「公衆電話の日:1900年に日本で初めて公衆電話が設置された」「警察相談の日」が制定されているそうです。

 

そして、今日のお題「たんぱく質の日」でもあります。

株式会社明治が「タンパク質の重要性を広く認識してもらう」ために制定し、一般社団法人日本記念日協会が認定したのだそうです(認定日は不明)。

今朝の朝日新聞の1面広告にも掲載されていましたが、9月11日が選ばれた理由は、タンパク質が20種類のアミノ酸(厳密にはタンパク質構成アミノ酸 ※)から構成され、そのうち9種類が必須アミノ酸、11種類が非必須アミノ酸であることに由来しています。

「非必須アミノ酸は不要?」ということではなく体内で合成できるので、食事から摂る必要はないという意味で、必須アミノ酸というのは体内で合成できないので、食事から摂る必要がある、という意味です。

※ タンパク質を構成しない“非タンパク質構成アミノ酸”は数千種類以上もあります。非タンパク質構成アミノ酸の一つであるD-トリプトファン※※のようには腸内細菌が産生してアレルギー抑制に関係するものもあります。

※※ トリプトファンと似ていますが異なるものです。D-トリプトファンを右手とすると、必須アミノ酸のトリプトファン(L-トリプトファン)は左手のようなものです。

タンパク質と健康の関係については既に2024年3月30日のブログ「プロテインブームに思う」で紹介していますので今日は割愛し、同時多発テロに因んで、タンパク質構成アミノ酸と平和について語ってみたいと思います。

必須アミノ酸は、上記ブログで紹介したとおり、「風呂場の椅子独り占め:フェニルアラニン、ロイシン、バリン、イソロイシン、スレオニン(トレオニン)、ヒスチジン、トリプトファン、リシン、メチオニン」の9種類で、特にバリン、ロイシン、イソロイシンといった分枝鎖アミノ酸(BCAA)は筋肉のタンパク質を構成するアミノ酸として注目されています。

 

 

一方、非必須アミノ酸は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン、チロシンの11種類です。

これら20種類のアミノ酸で私達の身体は構成されています。筋肉も骨も、脳や腸、髪の毛や爪、酵素に至るまで全てです。ワンちゃんや猫ちゃん、牛や馬、腸内細菌も病原菌もウイルスも同じです。

私達ヒトは必須アミノ酸が上記の通りですが、猫ちゃんは体内でタウリン(栄養ドリンクにも入ってますね、ファイトー!いっぱーつ!)を合成する酵素の活性が非常に低いため、タウリンが必須アミノ酸だそうです。猫は、魚介類(特に貝類や青魚)からタウリンを摂取するそうです。サザエさんからお魚を盗んだのは理にかなっているようです。ただし、海水魚は淡水魚に比べてタウリンを合成する能力が低いので、サンマを盗んだ猫には利益はなかったかも知れません。猫用キャットフードや猫サプリでにも含まれているものがあるそうです。

さて、20種類のアミノ酸で、生物(ウイルスを除く)の多様性が出来上がったのも不思議ですが、そもそもアミノ酸って、炭素と水素そして酸素と窒素、時には硫黄の5種類の原子がつながった単純な化学物質です。そのアミノ酸が数十個以上つながったものがタンパク質です。そのような背景から、アミノ酸は生命の起源とも言われています。

その生命の起源はどこで生まれたのでしょうか。構成する5種類の原子は元々は地球に存在するものであることから、46億年前に地球が誕生した後で、当時の地球環境の化学反応で作られたという説や宇宙に漂う小惑星などが隕石として地球に落ちてアミノ酸を持ち込んだ、という説があります。では、小惑星のアミノ酸はどうやって生まれたの?5種類の原子は宇宙に存在していたので、宇宙誕生後に、宇宙環境での化学反応ではないかとの説があります。未だに神秘に包まれていますが、宇宙探査機「はやぶさ2」が小惑星「リュウグウ」から持ち帰ったアミノ酸の解析で答えが出るのでしょうか?

それはさておき、生命の起源、アミノ酸が存在したとしても、それがタンパク質となり、生物となり、人間へと進化してきたのは、少なくとも40数億年の歳月が必要だった訳で、その間に、どの生物(タンパク質)生き残るかという過程で“免疫システム”が出来上がったのです。

アミノ酸の誕生から40数億年かけて進化してきた私達の身体、そして生き延びるための知恵と生活を一瞬にして灰と化してしまう戦争、テロを起こす人達は、この偶然に偶然の重なった素晴らしい生命体を何だと思っているのでしょうね。

“免疫”は生物やウイルスが生き残りをかけた巧妙なシステムですが、共存共栄の道を選んだものもあります。

その代表的なものがミトコンドリア。ミトコンドリアは一般的には1つの細胞に100個から2000個程度存在します。特にエネルギー消費が多い筋肉細胞や肝細胞などでは、ミトコンドリアの数が多くなります。ミトコンドリアは、私達の活動に必要なエネルギー源ATPを供給する代わりに、私達の身体を通じて遺伝子を残しています。

また、細菌の一部は、私達に必要なビタミンや短鎖脂肪酸などの有益な物質を産生する代わりに、腸内や口腔内、皮膚など身体の至る所で共生して継代しています。

ウイルスの一種である内在性レトロウイルスの遺伝子が、胎盤を形成する機能として働いているということも知られています。

人間社会でも、助け合いや協力が大切です。お互いに支え合うことで、より良い社会を築くことができますよね。戦争やテロでは共存共栄ではなく、ただひたすら相互破壊しているに過ぎません。ミトコンドリアや細菌、そしてウイルスよりも高い知能を持っているはずの人間なら、共存共栄の道を進むべきと思います。残念なことにミトコンドリアや細菌、そしてウイルスよりも知能は低いのかも知れません。

 

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筋肉の力と量、高齢者にはどっちが大事?

2024-09-10 16:13:30 | 日記

先週(9月3日)に「1日3秒、週3日の筋トレで良い」について書きましたが、それはあくまでも肘の伸長性についてのお話し。もちろん、腕っ節の強い高齢者は頼もしいですが、高齢者にとって大事なことなの?と考えてみました。

結論から言えば、どちらも大事です。でも、それでは話が続きません。

健康寿命※)を縮める要介護になってしまう要因は、認知症が22.2%で最も多く、高齢による衰弱(16.5%)、骨折・転倒(15.6%)がそれに次ぎます(政策研ニュース No.66 2022年7月「フレイルの最新動向について」)。衰弱、転倒・骨折を足腰(筋肉)の弱りによるものとして合計すると32.1%となり、筋力を強くすることで要介護を防ぐことができる可能性が高いと思います。

転倒を防ぐには、特に抗重力筋(大腿四頭筋や腹直筋などの体を支える筋肉)の強化が重要になります。抗重力筋の強化は、日常生活の動作(立ち上がる、歩く、階段を上るなど)を楽にすることで生活の質が向上します。

【参考】

※介護の必要な期間(平均寿命(0歳における平均余命)と健康寿命(健康上の問題で日常生活に制限のない期間)の差)を2010年と2019年で比較すると男女と短くなっています。2010年は2001年と比較すると長くなっていたことを考えると、健康長寿の傾向が現れていると思います。

(データ内閣府 令和6年版高齢社会白書 p29)

一方、筋肉量を増やすことは基礎代謝を上げ、エネルギー消費が効率的になり、体脂肪の減少や生活習慣病の予防に効果的です。また、筋肉量が増えると、筋力も自然に向上するので、筋力トレーニングと合わせ、筋力と筋肉量の両方をバランスよく維持・向上させることが大切なのです。

筋力強化と筋肥大に限界に近いトレーニングは有効?

では、筋力トレーニング(無酸素運動)と筋肉量を増やすトレーニング(有酸素運動)をどのように組み合わせるのが良いのでしょうか。最近、どちらも限界に近いトレーニングをすることが良いという研究が報告されたので、ご紹介します。

Exploring the Dose-Response Relationship Between Estimated Resistance Training Proximity to Failure, Strength Gain, and Muscle Hypertrophy: A Series of Meta-Regressions.

Sports medicine (Auckland, N.Z.). 2024 Jul 06; doi: 10.1007/s40279-024-02069-2.

この研究によれば、トレーニングをまだ余力のあるレップ数(それ以上ウェイトを持ち上げられなくなるまでの動作の反復、反復1回が1レップ)でやめても、限界に近いレップ数で行っても、筋力増強の程度は同様で、筋肉量増加については、限界に近いレップ数でトレーニングを行う方が効果の大きいことが示されました。

論文の筆者は、「筋肉量を増やしたいのであれば、「あ~、もうダメ、ゲ・ン・カ・イで~す」と思えるくらいまでのトレーニングが効果的だが、怪我を防ぐために0~5回程度少なめのレップ数で行う方が良く、筋肉を増強したい人は、ウェイトを重くして、レップ数を限界よりも3~5回少なくするのが良い」と言っています。

軽めのウェイトで限界近くまで有酸素運動で筋肉量を増やして、ウェイトを重くして限界近くまで無酸素運動で筋力強化、でも安全のために無理のない範囲で良い、というイメージでしょうか。そして、継続です。

 


これって秋バテ?

2024-09-09 16:25:08 | 日記

朝晩は若干過ごしやすくなってきたものの、日中は厳しい残暑が続いています。

はて?

今年の残暑っていつまで続くの?

日本気象協会は、「残暑が長い見込み」と言っておりますが、いつまでは明言を避けています。

でも、○○日までは暑いと明確になったからと言って、残暑が過ぎるまでは避暑地で過ごそう、という訳にもいかず、どうしようもないですが、身体が持たないですよね。

お天気.comによると、立秋(8月7日頃)から秋分(9月23日頃)までの暑さを残暑と言い、立秋(8月7日頃)から秋分(9月23日頃)までの間に気温が「高い」こと、おさまらない暑さを『残暑が厳しい』と言うそうです。

「暑さ寒さも彼岸まで」と言われる通り、秋分までは残暑に耐えていきたいです。

そこで気をつけたいのが、残暑を過ぎて過ごしやすくなってからの身体の不調です。夜も寝苦しい猛暑の夏は“夏バテ”を自覚できますが、お彼岸も過ぎて朝晩は過ごしやすくなってきたはずなのに(今は端境期)、体がだるく頭がぼっーとしてすっきりしない、食欲がない、 風邪をひきやすい、寝不足・寝つきが悪い、生理痛がひどい・・・こんな症状があったら、それは“秋バテ”かもしれません。

そもそも”バテる”というのは、「疲れ果てる」の「果てる」から出て、もとスポーツ選手などの間で用いられていた語」(webilioデジタル大辞典)だそうで、動けなくなるほど疲れる状態です。

ではどうして秋バテになってしまうのでしょうか。

まずは、朝晩と日中の寒暖差が大きいことが挙げられます。

9月1日以降の広島市の気温差は9~10℃くらいで推移していますが、最高気温は33℃以下に落ち着くかと思いきや、一昨日から逆戻りして昨日は35℃超えてしまい、やれやれです(広島県の過去のアメダス実況)。

最高気温が35℃を超え、気温差が10℃もあると、暑さと身体が気温の激しい変化に適応しようとして自律神経が乱れる、つまり交感神経と副交感神経のバランスが崩れて不調を感じるようになります。秋は寒暖差が大きいだけでなく、台風や低気圧などで気圧も上下しやすく自律神経が乱れやすくなります。今年は秋分までは耐えて、という訳には行かないようで、夏バテなのか、秋バテなのかよく分からなくなっています。

交感神経は身体を活動的にし、副交感神経はリラックスさせる神経です。交感神経が働くと血管は収縮し(血圧上昇)、胃の動きも弱まります。副交感神経の働きはその逆です。動物の本能として、獲物を捕まえるときに交感神経が働き、獲物を食べた後でリラックスするときに副交感神経が働くと考えると、自律神経のバランスが良く理解できると思いますので気温の変化が激しいと体温調節のために交感神経が働き続け、エネルギーを消耗します。

また、活動的になると身体はエネルギーを使って発生した熱を外へ出そうとして汗をかきますが、この時、水分と一緒にミネラルや水に溶けやすいビタミンB群(エネルギー源)も一緒に出て行ってしまいます。また、冷たいものを飲むと胃は急激に冷えて血流が悪くなって運動機能が低下して消化不良で栄養不足に陥ります。強い紫外線を浴びることも身体にストレスがかかりエネルギーも失われます。さらに熱帯夜の不眠が拍車を掛けます。体力不足の人は夏バテを自覚したまま秋になってもずるずると引き摺ってしまいます。体力のある人は夏を乗り越えたと自信を持っていても、知らず知らずのうちにミネラル・ビタミン・エネルギー不足になっているので、秋になって燃え尽きてしまうので要注意です。

※ 交感神経はアドレナリンを分泌し、副交感神経はセチルコリンを分泌しますが、汗腺(汗を出すところ)は例外で、交感神経でもアセチルコリンが使われます。

交感神経が活発化は、血流が悪くなったり、尿の排泄が抑制されたりして体内の水分が溜まってしまうことも身体の不調(むくみや倦怠感、頭痛)を招く原因にもなります。俗に言う「気象病」です。

では、秋バテ(夏バテも)対策に何をすれば良いのでしょうか。

まずは寒暖差をできるだけ小さくすること。まだ熱中症警戒アラートが発出されるような日中では、エアコンを使うことが推奨されていますが、部屋の内外の気温差を5℃以内で調節しましょう。公共交通機関や公共施設などでエアコン設定ができないときは、カーディガンなどの衣服で調節可能です。朝晩と日中との寒暖差にも衣服調節で対応します。

また、リラックスするために副交感神経の活性化を補助するには、入浴や運動がお勧めです。気圧の変化は気温変化のように調節ができない場合も良いですね。ただし、激しい運動や熱いお風呂は交感神経を刺激してしまうのでNGです。

失われたビタミンを補うには、ビタミン剤などの医薬品やミネラル補給にはサプリメントで手っ取り早く、というのもありですが、やはり、その他の栄養素(タンパク質、脂質、炭水化物(糖質、食物繊維))を一緒に摂るためにバランス良い食事とが一番良いと思います。

糖質をエネルギーに変える働きにより疲労回復に役立つビタミンB1 が多く含まれる食品には、豚肉、レバー、紅サケ、ごま、小豆、玄米、豆腐、さつまいも、そば、ほうれん草やグリーンピースなどがあります。タマネギやニンニクと合わせて摂るとビタミンB1の吸収率がアップします。

気をつけたいのは、東洋医学では食材には身体を温める作用のものと冷やす作用のものがあるとされていることです。これは温かい食べ物、冷たい食べ物ものということではありません。例えばコーヒーは身体を冷やす作用があるので、ホットで飲んでも身体を冷やすと言われています(深く焙煎されたものは”温”とする意見もあるようですが)。紅茶は温める作用があるので、アイスで飲んでも温まると言われています。

コーヒーや紅茶、緑茶は利尿作用があるカフェインを含み、水分を体から出してしまうので、熱中症対策にはならないので注意が必要です。水や麦茶が無難でしょう。

一般的に暑い夏に採れる野菜・果実は冷やす、冬野菜・果実は温める、と言われますが、使う際には念のためググってください。

私はこれまで、冷たいものを飲むときは、胃に負担を掛けないように意識して口の中で少し温めて飲んでいましたが、今年の夏は暑すぎて、ゴクゴクと飲んでしまうことが多かったです。秋バテまっしぐらかも。

交感神経のバランスが良ければ、熱中症予防として水分を多く摂っても不必要な水分は出て行くので大丈夫ですが、バランスが崩れてしまうと、東洋医学的には水毒という状態になります。この時は五苓散という漢方薬が良さそうです。お店でパッケージを見て気象病、天気痛のお薬だと思って買ったら、実は五苓散だったということもあります。

なるほど、

4月12日のブログ「生きるために必要なのはバランス~東洋医学を科学する~」にも繋がっているんだ。

最後に、

秋バテが長く続くようであれば、別の病気が隠れているかも知れないので、お医者さんへGoです。


1日3秒、週3日の筋トレで良い?!

2024-09-04 15:29:27 | 日記

9月に入っても猛暑日は止まりません。

NHK広島放送局のお天気ブログによると、広島では、夏の期間(気象の世界では6月~8月のことのようです)の猛暑日の合計は35日、猛暑日の連続日数は20日だったそうです。

暑いと運動をやるのが億劫になります。何しろ、熱中症警戒アラートが発出されると、運動は控えなければなりません。特に還暦を過ぎた者にとっては命を削りたくありません、などど筋トレをしなくなった言い訳をしていたら、筋肉は減り、三角筋や上腕二頭筋は柔々になってしまいました。

ウォーキングだけは週1日くらいはやっていましたが、夏前よりも大幅に減ったのは間違いありません。

そんな時に朗報?です。

新潟医療福祉大学とオーストラリア・Edith Cowan Universityの研究によると、1日3秒、週3日の全力の伸張性収縮※を4週間続けると筋力が増加する(力が強くなる)ことが分かったそうです。

Weekly minimum frequency of one maximal eccentric contraction to increase muscle strength of the elbow flexors.

Eur J Appl Physiol. 2024 Jan;124(1):329-339.

研究は、健康な大学生26人に対して、肘の伸張性収縮を1日3秒、週2日、週3日、週5日のトレーニングをそれぞれ4週間行って比較したところ、週2日では効果がなく、週3日で筋力が強くなり、週5日でさらに強くなった、というものです。

論文の概要しか分からない(無料では中身を読めない)ので、タイトルの“maximal”が伸張性収縮のどの程度の負荷か分かりませんが、ちょっと重いなぁと思うくらいのダンベルを1日たったの3秒持ち上げて伸ばすトレーニングを週3日で4週間続ければ、少なくとも上腕二頭筋は鍛えられる、ということです。

うん?3秒ってことは上げ下ろしを3秒ってことですよね。これなら暑くても続けられそう?です。

※ 重り(つまりダンベル)をゆっくりと降ろすなどの運動のことで、エキセントリック収縮とも言います。重たいものを持って、耐えられずに筋肉が引き伸ばされる伸張性収縮時には、実は筋肉は非常に大きな力を発揮できています。そして、この力は、筋肉が引き伸ばされる速度が高くなるほど大きくなります。