健康長寿の窓口 (タロー8の脳腫瘍闘病記改め)

2009年に乏突起神経膠腫の手術を受け15年が経過したことを機にブログをリニューアル、健康長寿の情報を発信していきます。

コウモリはウイルスを抱いて空を翔ぶ

2024-06-03 17:04:43 | 日記

コウモリはウイルスを抱いて空を翔ぶ

 「コウモリはウイルスを抱いて空を翔ぶ」はタイトルだけで衝動買いしてしまった書籍です。サブタイトルとして「生き物たちのネオ免疫学」が付されています。

 何故、タイトルにビビッと来たのか、それは、新型コロナウイルスのコウモリ起源説(人畜共通感染による直接あるいは間接接触感染)が頭に浮かんだからです(起源には人工説や陰謀説など諸説あり、最終的な結論は出てなかったと思います。コロナ禍が収束に向かい議論の熱は冷めたように感じます)。コウモリは高病原性のウイルスをたくさん持っていると言われていますが、「特定のウイルスには耐性があるのなら兎も角、不特定のウイルスに感染してどうしてコウモリは死なないの?」の”はて?”の答えを教えてくれそうでワクワクしながら読み始め、その答えは早くも前半に知ることになりました。

 ネタバレは良くないので、答えは割愛しますが、コウモリ以外にも、ラクダ、ヤツメウナギ、カエルやアンコウなど哺乳類、両生類、魚類といった様々な生物が、それぞれ特徴のある異なった免疫システムを如何にして獲得してきたのか、進化の過程を交えながら、複雑な免疫システムが解説されています。読み終えて、サブタイトルがネオ免疫学である理由が分かりました。

その他、ザックリとした内容は以下の通りです。

・ 哺乳類の「妊娠」を可能にしたのは太古のウイルスのおかげ?(太古のウイルスが哺乳類の進化に影響を与えた可能性)

・ がん細胞の伝染

・ 免疫がつくってどういう状態?(免疫系の基本原理や免疫細胞の働き)

 では、どうして健康長寿の窓口で本書籍を紹介するのか?それは、ビビッと来た理由の一つでもあります。

 免疫を理解して、がんや感染症に罹らない身体作りをする、というのは勿論ですが、それなら免疫の仕組みを解説した書籍(一般向けから専門書まで数多く出版されています)を読めば良いのであって、たいていは、食事、運動、睡眠の3原則(に笑顔をプラス)を生活リズムに適切に取りいれることで免疫力アップ!で片付きますし、これまでも老化スピードを遅くするコツとして紹介してきました(免疫力は適切なバランスが重要)。

 免疫というのは、読んで字の如く、「疫(病気)を免れる」ということです。そもそも病気とうのは、身体が正常に機能することが“何か”によって妨げられている状態と考えられますので、“何か”を排除する身体が元々持っているシステムが免疫ということになります。西洋医学では薬や手術で補助する、東洋医学では身体が本来持っている力(自然治癒力)を引き出す、という違いはありますが、いずれも回り回って、免疫力を適切なバランスにすることが基本と考えています。

 “何か”を排除する身体が元々持っているシステムは、どうやって生まれたのか、それは長~い進化の歴史の中で作られたもの、そして今も進化は続いている、ということを知れば、3原則以外にできること、すべきことが何であるか、なんとな~く分かってきます(分かったような気になる)。

 例えば、私達の身体が100兆個以上というとてつもなく多くの微生物(細菌など)と共存しているのですが、それには理由があります。免疫寛容というもので、つまりは、「家賃無しでアパート(身体)に棲まわせてあげるから、アパートの維持にできること何か働いてね」という契約を微生物と結ぶようなものです(コウモリがウイルスを抱えても平気なのとは少し違うようです)。

 それがある時(ある細菌で)病気になってしまうのは契約してない悪者が乗り込んでくるから、契約を結ぶのか、あるいは現住民に助けを請うのか、はたまた喧嘩するのか、です。これも免疫。

 巷には、「・・・さえすれば長生きできる」、とか、「答えは・・・にあった」、とか、中には、一般的に良いと言われている(腸活など)を、「・・・してはダメ」、と否定するような情報が溢れています。私にはとても違和感があったのですが、この本を読んで、「そんな単純なものではない免疫(病気から免れる)は複雑なんだ、人それぞれ、その時の内外環境それぞれだ」ということを感じました。人それぞれ?ん?、体質ってこと?

 だからどうするのが良いかって、答えはありません。ただ、情報を鵜呑みにしないこと、は大事だと思います。それから、結局は何事もバランスだということです。

 筆者の新田剛先生(東大准教授)は“あとがき”で、新型コロナ感染症をめぐる社会的混乱の根本に何があるのか、と問いかけています。それが執筆を始めた意味であること、免疫学は過去、現在を知り、未来を予測する学問であると。「試験に出ない免疫学」、「役に立たない免疫学」とも述べていらっしゃいますが、いやいやとんでもナイッス、とても役に立つ一冊だと思います。

 ちょっと難しい専門用語が出てきますが、イラストも豊富で高校生物くらいの知識があれば何とかついて行ける内容です。

 さらに難しい話を知りたい方は、アバス-リックマン-ピレの「基礎免疫学 免疫系の機能とその異常 原著第6版(ELSEVIER)」の日本語訳がお奨めです。

 そう言えば、前々職では、夕方になると部屋にコウモリが飛び込んで来たことがありました。虫取り網で捕まえて外へ逃がした同僚もいました。翌朝に廊下に落ちていた死骸を拾って捨てたこともありました。その頃は、変なウイルスに感染するリスクを全く考えてなく、思い返すとゾッとします。

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