「だから――」と、バードはちらっと奥をうかがった。「おれに仕事をまかせて、こっちに出てこないんだ。出てきたら、手足がおぼつかなくなってるのがわかっちゃうからね」
クックックッ……と、二人はまた笑った。
「手伝うよ」と、そう言ってグレイは、バードと一緒に道具を運び、ひとまとめにするのを手伝った。
「よしっと。馬車は裏だから、用意してくるよ」
バードは立ちあがると、表から外へ駆けていった。グレイは待っていた方がいいか迷ったが、マサカリの束を背負うと、よろけながらも外へ出て、バードが駆けていった方へ回って行った。
裏へは、狭い路地を通らなければならなかった。
マサカリの束はかさばって、背負っていてさえひと苦労だったが、ほとんど横向きになって進むので、束をおろして両手で持つしかなかった。
ようやく出口にさしかかると、にわかに騒がしい声が聞こえてきた。人をけなすような、そして恐いような気配が漂っていた。
グレイが顔を出すと、バードが裕福な身なりをした四人組の学生に取り囲まれ、尻をしこたま蹴り上げられていた。
バードは、手を出したいのを、歯を食いしばりながら我慢しているようだった。往来は、表ほど人通りは頻繁ではなかったが、それでも多くの道行く人の姿があった。すぐ脇を通っていったご婦人。紳士の姿もあった。けれど、いずれもこちらの姿は見えていたが、何事もなかったように見て見ぬふりをして、足早に通り過ぎていった。
グレイは、彼の外見からは意外に思えたが、マサカリを放り出すと、学生達に突っかかっていった。どう見ても、バードよりは年下だったが、グレイよりも年上の四人組は、背丈でも、力でもグレイに勝っていた。
割って入ったグレイは、案の定、頬をゲンコツでぶたれ、よろりと地面に倒れこんだ。
「なんだよ、このチビ」
学生の一人が、吐き捨てるように言った。
「物乞いのくせに、紳士にたてつこうなんて、身のほど知らずだぜ」と、四人の学生のうち、一番体格のいいやつが言った。
細面の一人が、倒れ伏せているグレイの横腹を蹴り上げた。グレイは、腹を抱えてうずくまった。
「おまえら――」
バードは、その細面の学生を突き飛ばすと、素早くマサカリの一本を引き抜いた。
「死にたかったらかかってこい」と、そう言ってマサカリを高く振り上げた。学校の帰り道、ただ面白半分にからかって楽しんでいた彼らは、バードが本気だと気がつくと、吊り糸が緩んだ人形のような、けたけたと気持ちの悪い笑みを浮かべながら、逃げ去った。
「大丈夫か、おい」と、バードはグレイを助け起こした。
クックックッ……と、二人はまた笑った。
「手伝うよ」と、そう言ってグレイは、バードと一緒に道具を運び、ひとまとめにするのを手伝った。
「よしっと。馬車は裏だから、用意してくるよ」
バードは立ちあがると、表から外へ駆けていった。グレイは待っていた方がいいか迷ったが、マサカリの束を背負うと、よろけながらも外へ出て、バードが駆けていった方へ回って行った。
裏へは、狭い路地を通らなければならなかった。
マサカリの束はかさばって、背負っていてさえひと苦労だったが、ほとんど横向きになって進むので、束をおろして両手で持つしかなかった。
ようやく出口にさしかかると、にわかに騒がしい声が聞こえてきた。人をけなすような、そして恐いような気配が漂っていた。
グレイが顔を出すと、バードが裕福な身なりをした四人組の学生に取り囲まれ、尻をしこたま蹴り上げられていた。
バードは、手を出したいのを、歯を食いしばりながら我慢しているようだった。往来は、表ほど人通りは頻繁ではなかったが、それでも多くの道行く人の姿があった。すぐ脇を通っていったご婦人。紳士の姿もあった。けれど、いずれもこちらの姿は見えていたが、何事もなかったように見て見ぬふりをして、足早に通り過ぎていった。
グレイは、彼の外見からは意外に思えたが、マサカリを放り出すと、学生達に突っかかっていった。どう見ても、バードよりは年下だったが、グレイよりも年上の四人組は、背丈でも、力でもグレイに勝っていた。
割って入ったグレイは、案の定、頬をゲンコツでぶたれ、よろりと地面に倒れこんだ。
「なんだよ、このチビ」
学生の一人が、吐き捨てるように言った。
「物乞いのくせに、紳士にたてつこうなんて、身のほど知らずだぜ」と、四人の学生のうち、一番体格のいいやつが言った。
細面の一人が、倒れ伏せているグレイの横腹を蹴り上げた。グレイは、腹を抱えてうずくまった。
「おまえら――」
バードは、その細面の学生を突き飛ばすと、素早くマサカリの一本を引き抜いた。
「死にたかったらかかってこい」と、そう言ってマサカリを高く振り上げた。学校の帰り道、ただ面白半分にからかって楽しんでいた彼らは、バードが本気だと気がつくと、吊り糸が緩んだ人形のような、けたけたと気持ちの悪い笑みを浮かべながら、逃げ去った。
「大丈夫か、おい」と、バードはグレイを助け起こした。