くりぃーむソ~ダ

気まぐれな日記だよ。

夢の彼方に(74)

2016-04-19 00:25:03 | 「夢の彼方に」
 身構えるように体を低くして様子をうかがうと、腰の少し曲がったおばあさんが、太い木の陰から、サクサクッと草を揺らしながら姿を現した。

「どうかしたのかい、サトル」

 やさしそうな笑顔を浮かべて、おばあさんがサトルに近づいてきた。
 サトルは、おばあさんを避けるように後ろ向きに進むと、くるりと踵を返して、木の陰に身を隠した。
(誰なんだ、あの人――)
 田舎のおばあちゃんのことを、サトルはすっかり忘れていた。やさしそうな笑顔を見ても、楽しかった思い出を甦らせることはできなかった。
(どうして、ぼくの名前を知っているんだろう――)
 恐る恐る、サトルは木の陰から顔を覗かせた。おばあさんの姿は、どこにもなかった。
 誰だったんだろう……と、サトルが隠れていた木の陰を離れると、ポーンと高く蹴り上げられたサッカーボールが、後ろから頭の上を飛び越えていった。
 はっとして振り返ると、サトルと同い年くらいの男の子が、ボールを蹴り上げた足を降ろして、走り出した。
「今度こそ、ゴールしてやろうぜ」
 ポカンとしたサトルに笑顔を見せると、男の子はボールを追いかけて、森の奥に向かって走っていった。と、あちらこちらの木の陰から、一人二人と男の子が次々に走り出し、ボールを追いかけて行った男の子を追いかけて、木々の間を縫うように走っていった。
 サトルは、はじめにボールを追いかけて行った男の子に見覚えがあった。けれど、どういう訳か名前が思い出せなかった。声をかけられた時、自然に口をつきかけたが、名前を言いかけて、「うっ」と口ごもってしまった。彼が誰だったのか、すっかり忘れてしまっていた。子供達が走り去っていった森の奥を見ながら、サトルは、男の子の名前だけではなく、自分が住んでいた町の記憶までもが、あいまいになっていることに気がついた。
 額に手を当てながら、サトルはほかにも何か忘れていることがないか、息を詰めて一心に考えた。
 ――ドン、と誰かが、サトルの肩に後ろからぶつかってきた。よろめきながら驚いて顔を上げると、「あっ、ごめん」と笑いながら手を振って、ランドセルを背負ったサトル自身が、走り過ぎていった。
「ほら、ちゃんと前を向いて行きなさい――」
 声がした方を見ると、サトルの母親が、怒ったような顔をして立っていた。
「おかあさ、ん……」と、サトルは声を出しかけたが、急に自信をなくして、言葉を飲みこんだ。母親は、目の前にいるサトルが見えないのか、なんにもない空間に手を伸ばすと、ドアを開けるようにして姿を消した。
(いまのは、絶対お母さんだったはずだよ……)
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夢の彼方に(73)

2016-04-19 00:24:03 | 「夢の彼方に」
 青騎士は、矢継ぎ早に打ちこまれる鋼鉄の棒を、ことごとく剣で受け止めた。しかし、休むことなく打ちこまれる棒の勢いに押され、たまらず馬を進めると、トッピーが渦を巻くように取り囲んでいる中から、逃げるように外へ抜け出した。
 青騎士とすれ違いざま、又三郎は鋼鉄の棒を力いっぱい放り投げた。しかし、棒は青騎士をかすりもせず、すっかり暗くなった夜の空へ、真っ直ぐに消えていった。
 トッピーは、馬が踵を返すのに合わせて青騎士と向かい合い、脇の下から透明な宝珠を取り出すと、雷鳴のような咆吼を上げた。すると、トッピーの手の中で宝珠がブルブルと震え始め、まぶしい光を瞬間ほとばしらせると、空を焦がす雷(いかずち)を放った。
 剣を斜め下に構え、トッピーめがけて馬を走らせようとした青騎士は、雷に打たれて痺れたように動きを止めた。鎧のあちらこちらに火花が走り、バチバチと小さく放電していた。
 又三郎は、トッピーの背中を走って肩の所まで登ってくると、宙にサッと手を伸ばした。と、暗い空の向こうに飛んでいったはずの鋼鉄の棒が、ぐるぐると回りながら戻ってきた。
 バチン――。
 戻ってきた鋼鉄の棒が、青騎士の後ろから胴を打ち抜いた。
 勢いの止まらない鋼鉄の棒は、又三郎が伸ばした手にしっかりと受け止められた。
「いつも思うが、どこまでもピッタリつきまとって離れない棒なんて、気味が悪いぜ」トッピーが、小さく身震いするように言った。
「つけ狙う青騎士は克服したが、ドリーブランドにやってくる原因になった棒だけは、別だ」と、又三郎は言った。「突き刺さって大ケガを負わされた棒の痛みは、けっして頭から離れない。そして悪夢はいつも、現実だ」
 胴を打ち抜かれた青騎士は、翼の生えた馬もろとも、体の節々から裂けるようにバラバラに分かれて、遙か下の地面に落ちていった。
「倒したか?」と、トッピーは聞いた。
「わからない」と、又三郎は首を振った。「だが、これでまた少しは時間が稼げるはずだ」
「じゃあ、サトルを探しに行くか――」と、トッピーが森に向かって飛び始めた。
「無事でいてくれればいいが……」又三郎の顔は、不安の色に充ちていた。
 ――――
 足を止めたサトルは、後ろを振り返った。
 しまった……と思ったが、もう手遅れだった。振り返った向こうには、砦の影も形も見えなかった。
 先に行くほど暗くうっそうとした森が、鏡を向かい合わせにしたようにどこまでも続いていた。
 森の中は、しんと静まり返っていた。
 どうすればいいのか――。サトルは、先に進むことも戻ることもできず、ただ身を固くして、辺りに目をさまよわせていた。
 ササッ――と、短い下草を揺らして、森の木の間を何かが横切った。
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夢の彼方に(72)

2016-04-19 00:22:55 | 「夢の彼方に」
「サトル、逃げるんだ」トッピーが言うと、青騎士の馬が地面をすべるように走ってきた。
 サトルは、城壁の外に向かって、一目散に走り出した。
「トッピー!」と、青騎士に向かって走る又三郎が言った。
「くそう――」青騎士に向かって空を飛ぶトッピーが、サトルに叫んだ。「あまり遠くに行っちゃダメだ! そこは鏡の森なんだ」
 森の中に逃げたサトルは、トッピーの声を聞くと、急いで足を止めた。
 青騎士を乗せた馬が、長い角を槍のようにに突き出しながら翼を広げ、空を駆けるように迫ってきた。
 急降下をしたトッピーは、地面を舐めるように低く飛んで又三郎を追い越すと、槍のような角を避け、青騎士の馬の横をすり抜けるように再び空へ舞い上がった。
 又三郎は、目の前を過ぎていくトッピーの体に飛び移ると、硬いウロコの並んだ背中を二本足で駆け上がりながら、向かってくる青騎士に鋼鉄の棒を打ちこんだ。

 ガチン――

 青騎士は、又三郎の一撃を剣で受け流すと、馬を高く舞い上がらせた。
 空でとぐろを巻きながら牙を剥くトッピーと、翼を広げながら前足で何度も宙を掻く青騎士の馬が、対峙した。
 又三郎は、鋼鉄の棒を片手に持ちながら、トッピーの肩まで駆け上がると、青騎士を見ながら言った。
「湖で戦った時より、さらに強くなっている」
「ああ――」と、トッピーがうなずいた。
「お城の様子は、どうなんだ――」と、又三郎が聞いた。
「残念だが、まだ誰も夢の扉から帰ってこない」と、トッピーが言った。「このままじゃ、青騎士を撃退するのもすぐに限界がきちまう。サトルを元の世界に戻すには、青騎士が手に負えなくなるほど強くなる前に、なにか別の方法を考えなきゃいけないな」
「円盤ムシ……」と、又三郎がつぶやくように言った。
「雲をつかむ方がたやすいぜ」トッピーがくすりと笑った。
「気に入らないな」と、又三郎が不機嫌そうに言った。「サトルが無事に元の世界にもどれたら、今度こそ決着をつけてやる。退屈を口実に逃げ出すのは、もう認めない」
「こっちこそ望むところだが、湖でおぼれた頼りないヤツにしちゃあ、ずいぶんと強気じゃないか。行くぞ――」トッピーは言うと、雷鳴のような咆吼を上げて、青騎士に向かって行った。
 青騎士は、トッピーが頭を低くして向かってくると、片手で手綱を取りながら、馬に拍車をかけた。馬は顎を引きながら槍のような角を前に突きだし、トッピーめがけて空を駆けた。
 トッピーは、見えない四方の壁にぶつかって、次々と跳ね返るように螺旋を描きながら、宙を舞う馬を取り囲むように飛び、青騎士の振るう剣を巧みにかわした。
 鋼鉄の棒を持った又三郎は、波のようにうねるトッピーの背から背へ飛び移り、上下と言わず、左右と言わず、あらゆる方向から、次々と青騎士に一撃を加えていった。
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夢の彼方に(71)

2016-04-19 00:22:05 | 「夢の彼方に」
 サトルは、真横を向いた兜を手で前に向け直すと、格子になっている面を持ち上げて言った。
「なにがあったの……」
「逃げろ!」と、又三郎が言うよりも早く、サトルは、うつ伏せに倒れた青騎士の姿に目を止めると、身につけていた鎧を脱ぎ捨て、ランドセルを背負いながら、あわてて砦の外に駆けだした。
 サトルを追って、馬が走り出した。又三郎は、目の前を行く戦車の手すりにつかまろうと、手を伸ばした。そこへ、むくりと起きあがった青騎士が、又三郎めがけて、手にした大剣を投げつけた。
 又三郎は、戦車に伸ばした手をすぐに戻すと、ひらりとマントを翻して、飛んでくる鋭い刃(やいば)に背を向けた。
 すると、マントの上から又三郎を貫くはずの大剣が、時間を逆戻しするように跳ね返り、青騎士を真っ二つに切り裂いた。
 バラバラになって散らばった青騎士の鎧は、煙がくゆるように跡形もなく消え去った。
「やはり、この青騎士はおとりだったか……」又三郎は、走り去った馬を追いかけて、砦の外に駆け出した。
 サトルが砦の外に出ると、異状を感じたトッピーが、薄暗くなった空を縫うようにして飛んできた。
「どうしたんだよ、サトル」と、声をかける暇もなく、トッピーは、青騎士の馬がサトルのすぐ後ろから追いかけてくるを見ると、体を真っ直ぐに伸ばして、矢のような早さで空を突っ切った。
 青騎士の馬がサトルに襲いかかる寸前、トッピーが馬の横腹に頭からぶつかった。大きく跳ね飛ばされた馬は、上向きになった足をばたつかせながら宙を舞い、砦の壁にしたたか体を打ちつけると、ドシンと地面にすべり落ちた。
「なにやってるんだよ寝坊助は、こんな時に助けに来ないなんて」と、横倒しになった馬の上空で、ねじ巻きのように螺旋を描いて頭をめぐらせたトッピーが、サトルに言った。
「ありがとう、助かったよ」サトルは言うと、地面に降りてくるトッピーに走り寄った。
「止まれ!」と、又三郎の声が聞こえた。
 ――バチン!
 火花が宙に舞い、又三郎の投げた鋼鉄の棒が、青騎士の投げた槍を地面に叩き落とした。
 とっさに身を伏せたサトルが顔を上げると、わずかの差で青騎士の槍を避けたトッピーが、空に舞い上がりながら言った。
「やれやれ、ずいぶんと遅いご登場じゃないか――」
 駆けつけた又三郎は、地面に突き刺さった鋼鉄の棒を手に取ると、倒れた馬の方を見ながら言った。
「そっちこそ、私を恐れて逃げ去ったのかと思っていたよ――」
 むっくりと、砦の下に倒れていた馬が、立ち上がった。と、一頭の馬が、いつのまにか青騎士に姿を変えていた。
 青騎士は、翼を広げた馬に軽々と跨ると、片手で手綱を取り、腰に下げた細身の剣を引き抜いた。後ろ足で立ち上がった馬が、目を赤く光らせて甲高い嘶きを上げると、その額から、長い槍を思わせる角がみるみるうちに伸びてきた。
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夢の彼方に(70)

2016-04-19 00:20:49 | 「夢の彼方に」
 サトルは、散らかしていた食堂の後片づけをしながら、今日もこのまま無事に終わるのではないかと、どこか安心しきっていた。
 夕方、自分が使っている部屋の片づけもちゃんと終わらせたサトルが、砦の一階に下りてくると、ガンガン、ガンガン……と大きな音を響かせ、城壁の厚い扉が、何度も強く打ち叩かれた。
 驚いたサトルは、下りてきたばかりの階段を駆け上がると、城壁が見下ろせる窓から身を乗り出して、外の様子をうかがった。鋼鉄の棒を持った又三郎が、城壁の上から、じっと扉の方向に目を落としていた。サトルは万が一に備え、ランドセルと、砦の倉庫で見つけた物を準備しておいた部屋へ、急いで戻った。
 扉の外にいるのは、青騎士だった。湖の中から姿を現した青騎士は、全身ずぶ濡れで、ボタボタと水を滴らせながら、二頭引きの戦車に乗っていた。
 城壁に沿って戦車を進めた青騎士は、扉の前にやってくると、見下ろす又三郎には見向きもせず、厚い扉を、二頭の馬の前足で激しく蹴り始めた。城壁を揺らすほどの衝撃が、又三郎の足下から伝わってきた。しかし、城壁と同じく、頑丈に作られた扉は、びくともしなかった。扉の表面が、泥だらけの蹄で汚れただけだった。
 又三郎は、独り言のように言った。
「たとえ青騎士であろうと、この城壁は簡単に破れまい――」
 と、青騎士はなにを思ったか、馬の頭を巡らせて、戦車を森の方へ遠ざけた。
 又三郎は、ギュッと唇を噛みながら、青騎士の不審な動きを見守っていた。
 砦に向かって、再び馬の踵を返した青騎士は、グイッと強く手綱を引いた。二頭の馬が、息を合わせるように後ろ足で立ち上がり、耳をつんざくほどの大きな声で嘶いた。
 土を蹴立てて走り始めた馬は、青騎士を乗せた戦車を引きながら、城壁の扉に向かって、まっすぐに進んできた。
(まさか、破れないとわかった城壁に、頭から突進するつもりなのか……)と、又三郎が疑問に思ったとたん、馬の背中から、白い翼がニョキリと伸びてきた。
「なんて事だ、今度は空も飛べるのか――」と、又三郎は地団駄を踏んだ。
 大きな翼を羽ばたかせた馬は、城壁をやすやすと飛び越えると、翼を翻し、砦の二階の窓から、中に突っこんでいった。
 ズドドン……と、石積みの壁がもろくも崩れ落ち、翼の生えた馬を操る青騎士が、一階の広間にふわりと降り立った。
 青騎士は、ブルルン、ブルルンと息を荒げた馬をなだめながら、兜をめぐらせて、辺りをうかがった。目指すサトルの姿は、どこにも見あたらなかった。
「えやっ!」と、駆けつけた又三郎が、目にも止まらぬ早さで跳び上がり、鋼鉄の棒を青騎士の頭に打ち下ろした。
 ガシャン、と鉄のぶつかり合う鈍い音が響くと、戦車に乗っていた青騎士が、朽ちた木が根本から折れるように転倒した。
「湖では不覚を取ったが、同じ轍を二度とは踏まんぞ――」
 又三郎が言うと、広間の隅で山になっていた瓦礫が、ゴロリと崩れた。驚いた又三郎が、とっさに鋼鉄の棒を構えると、中から、体に合わないゆるゆるの鎧を身につけたサトルが、おろおろと両手で手探りをするように立ち上がった。
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夢の彼方に(69)

2016-04-19 00:19:02 | 「夢の彼方に」
 歩きながら、又三郎はサトルに聞いた。
「私は、どのくらい眠っていたんでしょう――」
「二日だよ」と、サトルは言った。「もう目を覚まさないんじゃないかって、ドキドキしちゃったよ。でも、トッピーが様子を見に来てくれて、あいつなら心配いらないから、目が覚めるまで寝かせてやって欲しいって、そう頼まれたんだ」
「トッピー?」と、又三郎が顔をしかめながら言った。「あいつが、湖に戻ってきたんですか……」
「知ってるの?」サトルが聞くと、又三郎はもちろん、とうなずいた。
 サトルが、一緒に旅をしてきたトッピーのことを話すと、又三郎は残念そうに言った。
「――もっと早く気がついていれば、あのヒラヒラした尾びれにひと囓りして、私の力を認めさせてやれたんですが」
 食堂の隣の調理場に入ると、又三郎が「ウッ……」と顔をしかめて声をもらした。
「どうしたんですか、この有様は――」又三郎は、食材の切れ端や、焦げついた鍋が山積みになっているのを見て言った。
「ごめんね……」サトルは言うと、恥ずかしそうに頭を掻いた。「料理なんてろくにしたことなかったから――」
「これじゃ、猫でも食べられませんよ」と、又三郎は、あきれたように言った。「青騎士と戦う勇気ももちろん必要ですが、お城から知らせが届くまで無事に戦い抜くためにも、食事はしっかり取らなければいけません」
 又三郎は、サトルに代わって腕を振るうと、具のたっぷり入ったおいしそうなスープを手早くこしらえた。
「ドリーブランドに来る前、見よう見まねで覚えたスープです。人の味覚に合わせたつもりですが、なにぶん猫の身ゆえ、お口に合うかどうか自信はありません――」
 ひと匙スープをすすったサトルは、
「おいしい……」
 目を丸くして言うと、あっというまに平らげてしまった。
 又三郎は、スープのおかわりを皿に盛りつけながら、サトルに聞いた。
「ところでここ最近、覚えていたはずのことがなかなか思い出せない、そんなことはありませんでしたか」
 料理を目の前に舌なめずりをしながら、サトルは首を振った。
「早く食べないと、全部なくなっちゃうよ――」スープがたっぷりと入った皿を受け取りながら、サトルは少し怒ったように言った。
 又三郎はなにか言いかけたが、「それでは私も、いただきます」と言って、自分の皿にスープをよそうと、スプーンを器用に使って食べ始めた。
 食事を終えると、又三郎はサトルを砦の中に残し、見回りのために城壁の上に登っていった。
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夢の彼方に(68)

2016-04-19 00:17:40 | 「夢の彼方に」
         10
 又三郎は夢を見ていた。
 夢の中で、死の砂漠をさまよっていた。
 ここはどこなのか。一体何が起こったのか。思い出そうとすると、頭の中がキリキリと針を刺すような痛みに襲われた。
 ほとんど失われてしまった記憶の中で、青騎士と対決したことだけは、はっきりと覚えていた。
 どのくらいさまよっていたのか、たどり着いたところは、山のように大きな樹の根本だった。樹は、草木のまったくない乾ききった砂漠の中にあって、なぜか青々と、葉を茂らせていた。
「迷える者よ――」と、大きな樹は言った。「君がまた信念を取り戻し、自分の存在に感じた疑問を振り払うことができたなら、落ちてきた世界へ戻ることができるだろう」
 青騎士を捜して、又三郎は、再び死の砂漠をさまよっていた。もうろうとした意識の中で、砂漠の樹王が言っていた言葉を、繰り返し思い出していた。
「ワシの葉は、死の砂漠に落ちた者を地上に戻す力を持っている。自分を見失い、風に流されるがままの砂に姿を変えたくなければ、手に取った葉を肌身離さず、己の幻影に打ち勝つがいい」
 振り返ると、見上げるほど背の高い青騎士が、恐ろしげな大剣を手にして立っていた。
「フッフッフッ――どうだ、驚いたか、私はいつもおまえのそばにいる」憎々しげに笑う青騎士が、兜の面を片手で持ち上げた。
 ギリリ……と耳障りな金属音を軋ませ、兜の下から、もう一人の又三郎が顔を出した。
「おまえがおまえであったのは、ここまでだ。ここからは、オレが本物のオレになる……」
 又三郎は、青騎士から目を離さず、足下の砂に手を入れると、鋼鉄のドン突き棒を引き抜いた。
 青騎士が、大剣を両手で持ち、ゆっくりと高く構えた。
 鋼鉄の棒を腰だめに構えた又三郎が、ヒュッと短い息を吐き、砂を蹴った。ためらうことなく、真正面から青騎士に向かっていった。
 大剣と鋼鉄の棒が、同時に閃いた。
 勝負は、一瞬で決まった。

 ―――又三郎は、目を覚ました。
 ふかふかのベッドで横になっていた又三郎は、むくりと体を起こすと、二本足で床に立ち上がった。すぐにおぼつかない足取りで部屋を出ると、空腹で腹がキリキリと痛むのをこらえながら、サトルを捜した。
 廊下の窓から、城壁の上にいるサトルの姿が見えた。
 又三郎は砦の外に出ると、城壁に登る階段に向かった。すると、ちょうどサトルが階段を駆け下りてきた。
 歩いてくる又三郎を見つけると、サトルは驚いたように言った。
「もう、大丈夫なの……」
「手間をかけさせてしまって、申し訳ありませんでした」と、又三郎は頭を下げた。「それより、なにをされていたんですか。不用心に城壁の外へ姿を見せては、危険です」
「ごめんよ――」と、サトルはきびしい表情を浮かべた又三郎に言った。「ちょっと見回りをしてただけなんだ。それより、お腹は空いてない? ずっと寝ていたから、きっとお腹がペコペコでしょ……。もうそろそろお昼だし、食事にしようよ」
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よもよも

2016-04-18 06:35:12 | Weblog
なんとも、

週末車のタイヤ取っ替えたり練習行ったりでヘトヘトだった。。

で、九州の地震がひどいことになってるけど、

道南地方も強風で

夜中から、今はだいぶ治まってるけど

屋根飛ばされるんじゃないかってくらいひどかった。。

まだ現場の仕事も進んでないから

被害もなんもないんだけどさ、

ほかになんか被害が出ていそがしいことになるんじゃないかって気が気でないわ。。

九州でもそうだけど

日が暮れて夜になってからでしょ。

なにかあっても見に行くことができないから、

目が開いてても目隠しされてる状態だから、

考えりゃ不安になって落ち着かんわ。。

毎度思い知らされるけど、

自然には勝てんわ。。
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よもよも

2016-04-15 06:28:50 | Weblog
なんとも、

あせったわ。

仕事から帰ってきて、ウトウトして寝ちゃったんだけど、

なんだかうるさい音が気になって起きたんだけど、

つけっぱになってたテレビがニュース話してただけだったんだわ。

で、

うっかり寝ちゃったのに気がついて立ち上がろうとしたら、

緊急地震速報がテレビの向こうに流れてきて、

地震のニュースに全部切り替わったのさ。。

それからはもうドキドキしっぱなしなんだけど、

なんでこんな四半世紀もたってない期間に

巨大な地震が頻発すんのかね??

自分の運命なのかもしんないけど

南西沖地震から始まって東日本大震災でもう無いんじゃないかと思ったら、でしょ。

転勤族だから、明日は我が身って考えると、

おちおち寝てもいられない。

昨日も日付が変わってからやっと床についたけど

なんだかザワザワする音が聞こえるようで、

目がさえてあんま眠れなかった。。

大変だわ・・・。
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よもよも

2016-04-14 06:25:37 | Weblog
なんとも、

谷底に落ちるみたいに

鼻がぐずりだした・・・。

シラカバ花粉やら黄砂やら、

目にも鼻にも悪いモンがこんなに飛んでるのかと思うと、

息したくなくなるわ。。

ポータブルの酸素ボンベがあれば、

マスクなんか止めて一日中つけてたい。。

ああかゆい。
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