くりぃーむソ~ダ

気まぐれな日記だよ。

よもよも

2016-04-13 06:30:59 | Weblog
なんとも、

久しぶりに現場に行ったら、

傾斜の上り下りでくたくた。。

帰ってきたと思ったら

もうなんにもする気がなくなった・・・。

会社でもそろそろ連休の話になって

いつ休む誰が休むって話が出てたけどさ、

今年はなんもやる事ないし、

カレンダーどおりかな。。

この前ひさびさ映画のDVD買って大コケしたし、

やっぱ監督だけでレビュー読まないと金損するわ。

マイケルなんちゃらいう監督の作品。

好き嫌いがあると思うんで、それ以上触れないけど

がっかりした。

あーあ、体のだるさに比例してグチグチが止まらん。。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

よもよも

2016-04-12 06:32:48 | Weblog
なんとも、

寒いわあ。。

昨日はそんなこったで仕事帰りの温泉がしみしみ。

生きかえるぅー、なんて独りごちてた。

性格悪いからだろうけど、

事務所にいて外に雪が降ってると、

夏タイヤに履き替えてたやつは悲鳴。

ずぼらなのかタイミング逃したのかでまだ冬タイヤを履いてるヤツは

イヒヒ・・・。

ってもちろんその中の一人で少数派だけどさ、

言葉にすると

ざまあ見ろってとこかな・・・。

変なトコで意地張ってもだめだワナ。

トホホ・・・。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夢の彼方に(67)

2016-04-12 00:01:58 | 「夢の彼方に」
 青騎士は、湖の上を走る馬を操り、又三郎を助けようと必死に泳いでいるサトルを狙って、高々と槍を掲げた。雷鳴に似たトッピーの声は、サトルの耳にも届いていた。しかし、又三郎を助けたい一心で、夢中になって水を掻いているサトルは、間近に迫っている青騎士にまるで気がついていなかった。

 ―――歌が、聞こえていた。

 サトルは、泳ぎ始めた時から、風の音に混じって、小さな声が聞こえているのに気がついていた。はじめは、風博士のラジオから、音楽が聞こえてくるのだと思っていた。しかし、浮き輪がわりになっているランドセルの中で、ラジオもすっかり水に浸かっているはずだった。では、どこから聞こえてくるのか? 風に揺られた森の木々が、梢を鳴らしている音ではなかった。風に乗って、だんだんと大きく、はっきり聞こえ始めた歌声は、風博士の家で耳にした、不思議な歌声に間違いなかった。暖かな羽毛に包まれるような歌声は、聞いているだけで心地よく、泳ぎ疲れてパンパンに張った腕の痛さも、すっかり忘れさせてくれた。
 歌がはっきりと聞こえ始めたとたん、青騎士の動きが急にぎくしゃくし始めた。目にもとまらぬ早さで水を蹴っていた馬が、小さな波につまづいて、何度も足を踏み外しかけた。
 トッピーは、鋭い牙を剥きだして、サトルの直前まで迫った青騎士に噛みついた。強い顎にがっちりと青騎士をとらえ、長い体をくねらせながら空高く昇ると、大きく左右に頭を振って、青騎士の鎧をバラバラに噛み砕いてしまった。
 手綱を持つ青騎士を失うと、馬はとたんに勢いを失い、体を硬直させたまま、ズブズブと湖底に沈んでいった。
「中は空っぽだったんだ――」と、湖に落ちていく青騎士の鎧を見ながら、サトルは言った。
 青騎士を退けたサトルは、再びトッピーの背に揺られ、湖のそばに建てられた砦にやってきた。
 急いで又三郎を地面に寝かせると、ほどなくして又三郎は息を吹き返し、口から水を吐き出してむせ返った。
「鍵は開いているはずだぜ」と、トッピーが空を飛びながら言った。「一緒にいてやりたいが、オレの寸法にゃ砦は小さすぎる。なにかあったら、すぐ助けに来てやるよ――」
 じゃあな、と言って、トッピーは湖の彼方へ飛んでいった。
 砦は、三階建てのビルほどの大きさだった。けして大きいとは言えなかったが、ねむり王の城にも負けないくらい、頑丈な城壁に守られていた。しっかりと閉じられた厚い木の扉には、トッピーが言ったとおり、鍵はかけられていなかった。
 サトルは、恐る恐る扉をくぐった。すると、小さな公園ほどの広場には、赤々と燃える火が点々と灯されていた。明かりに照らされた砦の入口は、広場の奥にあった。サトルは、又三郎を抱いて中に入ると、意外に広い砦の中を、迷いながらも小走りで寝室を探した。白いシーツを敷いたふかふかのベッドを、二階の部屋で見つけた。又三郎は、サトルの腕の中で、いつの間にかすやすやと寝息を立てていた。サトルは、起こさないようにそっとベッドに又三郎を寝かせると、足音を忍ばせて、部屋の外に出た。
 城壁に急いで駆け戻ったサトルは、開けっ放しだった扉に重い鉄のかんぬきをしっかりとかけた。砦の中の戸締まりも、すぐに見て回ったが、正面の扉以外は、どこもしっかりと錠が下ろされていた。これで、外から侵入することはできないはずだった。
「くしゅん……」
 砦の階段を降り、一階の広間に戻ったサトルは、ひとつくしゃみをした。気がつけば、頭から足の先まで、どこもかしこもびしょ濡れだった。
 サトルは、砦に用意されていた服に着替えると、地下の食堂に降りていった。パルム大臣が言っていたとおり、食堂の隣にある調理場には、食べ物が山ほど用意されていた。ただし困ったことには、どれも料理をしなければ、おいしく食べられない食材ばかりだった。とりあえず、見慣れた果物を手に取ると、サトルはムシャムシャと頬張った。お腹が一杯になると、夜もすっかり更けているせいで、急に眠気が襲い、サトルは食堂のテーブルに突っ伏したまま、グッスリと眠ってしまった。
 眠りにつく直前、サトルは砦の外観が、自分がよく知っている建物にそっくりなのを思い出した。
(そう言えば、この砦みたいな家に住んでる田舎のおばあちゃんって、なんて名前だったっけ……?)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夢の彼方に(66)

2016-04-12 00:01:02 | 「夢の彼方に」
「マジリック……」と、サトルが聞いた。
「もともと、オレはこの湖に住んでいたんだ。だけど、大きな体が邪魔をして、どこにも行けなくってね、ずっと退屈してたのさ。たまたま城に立ち寄ったマジリックが、湖で暇そうにしているオレを見つけて、とっておきの手品を考えたから、ぜひ手伝ってほしいって、声をかけてきたんだよ。どんなことをすればいいんだって話を聞くと、しばらくの間、魔法で金魚の姿に変わっていてくれないかって、そう言うんだ」
「それで、一緒に旅をしていたの」
「金魚になってあげてもいいけど、そのかわり、一緒に旅をさせてくれるならって条件で、引き受けたのさ」と、トッピーが言った。「だけど、湖に戻ったら魔法が解けるなんて、ぜんぜん知らなかったよ――」
「見て、トッピー」と、サトルが眼下の湖を指さした。
 湖に目をやったトッピーが、あわてたように言った。
「大変だ、すぐに助けなきゃ。振り落とされないように、しっかり髪につかまって――」
 サトルがうなづくと、トッピーが長い体をくねらせて頭をめぐらし、湖に向かって急降下を始めた。目指す湖には、青騎士と共に湖の中に沈んだ又三郎が、仰向けに気を失って浮かんでいた。
 風を切るように飛ぶトッピーが、大きな口を開け、又三郎をくわえようと近づいた。しかしそのとたん、青騎士が待っていたかのように湖の中から飛びあがり、切っ先が鈍く光る槍を突き出した。トッピーは、すぐに体をねじって避けたものの、又三郎を助けることはできなかった。
「くそっ、どこまでもしつこいやつだぜ……」トッピーが、口惜しそうに言った。
「……」サトルは、トッピーの髪にしがみつきながら、遠ざかっていく又三郎から目を離さず、ぐっと唇を噛んでいた。
 と、再び空に昇るトッピーの背中から、サトルが言葉にならない叫び声を上げ、湖に飛び降りた。驚いたトッピーが怒ってなにかを叫んだが、大きな水しぶきを上げて湖に落ちたサトルの耳には、なにを言ったのか聞こえていなかった。
 サトルは、バシャバシャと水を蹴りながら、ぐったりとしている又三郎の所まで泳いでいった。柔らかな毛に覆われた顔からは、人のように顔色をうかがうことはできなかったが、かすかな呼吸しかしていない又三郎の体は、湖の水よりも冷たくなっていた。サトルは、又三郎が水を飲まないように顔を上向きにさせたまま、空から見えた岸を目指して、泳ぎ始めた。
 湖が、モコモコと泡を吹くような波を起こし始めた。いち早く気配を察知したトッピーが、うねうねと長い体をくねらせながら、鋭い鈎爪の伸びた手で何度も宙をつかみ、青騎士と対決するタイミングを今か今かとはかっていた。
 津波のような波が、湖の上をすべるように立ち上がった。波は、小さなしぶきとなってちりぢりに風に吹き飛ばされると、中から、まとわりつくヴェールを脱ぎ去るように青騎士が姿を現した。
「まさか、こんなわずかの間でまた強くなったのかよ――」トッピーは、雷鳴が轟くような咆吼を上げると、青騎士に向かって矢のように空を駆け下りていった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夢の彼方に(65)

2016-04-12 00:00:03 | 「夢の彼方に」
 又三郎が、その背にサトルを守るようにして後ろに下がった。ズルッと舟底をこする音を立て、突き刺さった槍が引き抜かれると、ぽっかりと口を開けた穴から、湖の水がゴボゴボとボートの中に流れこんできた。
 水を掻き出す暇もなく、ボートはみるみるうちに速度を落とし、あっという間に半ばまで沈んでしまった。
「泳ぎは、得意ですか」胸の近くまで水につかった又三郎が、サトルに聞いた。
 腰まで水につかったサトルは、両手でボートをつかんだまま、口を真一文字に結んで、首を横に振った。
「そうですか――実は私も、水は大の苦手なんです」
 えっ? とサトルが言いかけると、ズバンと水しぶきを上げて、湖の中から、青騎士が姿を現した。馬の体当たりを真横に食らったボートは、ゴロリと転覆し、サトルはその勢いで湖に投げ出されてしまった。
 又三郎は、青騎士が姿を現したとたん、槍を突き出す暇を与えず、振り上げた腕に爪を立ててしがみつくと、青騎士と共に湖に沈んで見えなくなった。
「プハッ!」と、サトルが水面に顔を出した。水を含んで体にまとわりつく服の重さに耐えながら、転覆して浮かぶボートまで泳いでいった。ひっくり返ったボートの上で、むなしく空回りしていたスクリューが、プスンプスンと乾いた咳をするように白い煙を噴き、身震いするように動きを止めた。トミヨからもらった帽子は、湖に落ちた拍子にどこかへいってしまった。ボートのそばには、蓋が開いた水浸しのランドセルと、穴の開いた国語の教科書が浮かんでいた。サトルは、なんとか両方とも拾い上げると、片手を伸ばして、ボートの縁につかまった。
 と、月明かりに照らされた遠くの湖面が、ムクムクとうごめくように盛り上がり、徐々に大きな波を起こしながら、サトルの背後に近づいてきた。
 サトルは、後ろから近づいてくる大きな波に気がつくと、振り返ったまま目をそらさず、ボートをつかんでいる手に力をこめて、鼻の下まで湖に顔を沈めた。
 ザバッ――とサトルの体がボートごと水面に持ち上がった。青騎士が襲いかかってきたものとばかり思ったが、すぐにそうではないのがわかった。サトルがしがみついているのは、硬いウロコに覆われた大きな龍の背中だった。
 グングンと空に昇る龍を追いかけて、湖の中から飛び出した青騎士は、ひっくり返ったボートを足場にして、宙を飛んだ。しかし、突き出された槍の一撃は、空を飛ぶ龍にはかすりもしなかった。
 真っ逆さまに落ちた青騎士は、水しぶきを高く上げ、馬もろとも湖の中へ没していった。
「サトル、怪我はないかい」と、どこかで聞き覚えのある声が言った。
「誰、トッピー……?」
「ああ」と、龍が答えた。「とうとう元に戻っちゃったよ。もう少し、金魚の姿のままで旅をしていたかったんだけどね、しょうがないや。またマジリックが城に来たら、一緒に旅をさせてくれるように頼んでみるさ」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夢の彼方に(64)

2016-04-11 23:59:25 | 「夢の彼方に」
 又三郎は目を凝らし、暗い湖面の変化に注意を払っていた。
 物語をかなえる本を手にしたサトルは、無言のまま言葉を綴ると、大きな声で言った。
「ボートの後ろに力の強いエンジン付きのスクリューが現れると、波を蹴立てて、避難所まで一気に湖を走り抜けた」
 物語をかなえる本が、金色にまぶしく光り始めた。溢れ出すように迸る光は、ボートの周りだけを昼間のように明るく浮かび上がらせた。
「危ない! 本を捨てるんだ――」振り返った又三郎が、大きな声で叫んだ。
 あっけにとられたサトルは、まぶしく光る本を手にしたまま、凍りついたように動かなかった。

 ザッパ―――

 水中から、青騎士が再び姿を現した。又三郎が、鋼鉄の棒を手にして、サトルに走り寄った。しかし、激しく宙を蹴る馬の前足が、又三郎の行く手をはばんだ。本を持ったサトルめがけて、青騎士の槍が突き出された。
 サトルの胸を、青騎士の槍が貫こうとした刹那、トッピーが金魚鉢ごと槍の切っ先に立ちふさがった。ドン、と金魚鉢が鈍い音を立てて砕け、中の水がトッピーもろとも四方に飛び散った。
 狙いのはずれた槍は、まぶしく光る本を浅く貫いただけで、間一髪サトルに突き刺さることなく、青騎士とともに瑚中に没していった。
「トッピー!」サトルが、大きくうねる波に揺れるボートから、身を乗り出して叫んだ。
 物語をかなえる本は、青騎士の槍に貫かれたとたん、まぶしく迸らせていた光を、プッツリと失った。ロウソクの炎が、ひと息に吹き消されたようだった。しかし、ブロロロ  と振動する機械音が轟き、エンジン付きのスクリューが、ボートの後ろに現れた。
 ボートは、水しぶきを上げながら、湖の上を跳ねるように走り始めた。
 一気に速度を上げたボートは、ガクガクと不安定に揺れ、どこか手がかりにつかまっていなければ、簡単に振り落とされてしまいそうだった。
「ダメだ、これじゃ逃げられない」と、サトルの前でかがんでいる又三郎が言った。「同じ所をぐるぐる回っているだけです」
 サトルは、吹きつける風の勢いに目を細めながら、振り返ってボートの後ろを見た。ブルブルと、力強く波を蹴立てているエンジンには、操作する舵棒がついていなかった。
「舵がない――」
 サトルが前に向き直って言うと、黒目をぱっちりと見開いた又三郎が、「ナゴ……」と、牙を見せながら恨めしそうに短く鳴いた。
 湖を覆っていた靄は、にわかに吹き始めた風にすっかり追い立てられ、少しばかり縁の欠けた月が、雲ひとつない夜空に怪しく輝き、ゆらゆらと波打つ湖面を照らしていた。
 ドッグン……と、ボートが一瞬跳ねるように浮き上がり、船底を破って、なにかが突き出した。
 ハッとして息をのむと、月明かりを鈍く反射している青騎士の槍が、サトルの目の前にそそり立っていた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夢の彼方に(63)

2016-04-11 23:58:40 | 「夢の彼方に」
 ひくっ、と又三郎の耳が動いた。
 ピンと伸びたヒゲを振るわせながら、又三郎がすっくと二本足で立ち上がった。
「なにか来る。気をつけて――」ボートの舳先に足をかけて立った又三郎が、振り向きながらサトルに言った。
 サトルは、頭を低くしながら、静かに息を潜めた。

 ザッパン―――

 湖の中から姿を現したのは、青騎士だった。滝のような水しぶきを上げ、乗っている馬ごと、水面に躍り出た。
 馬が前足を暴れさせながら、耳が壊れそうなほど甲高い金切り声で嘶いた。
 しっかりと手綱を持った青騎士は、長い槍を右手に大きく振りかぶり、サトルに突き立てようとしていた。
 舳先に立っていた又三郎が、青騎士に向かって駆け寄った。大きく払うように右手を振ると、その手には、角張った長い鉄の棒が握られていた。
 カチン、と鉄の打ち合う音が響くと、火傷しそうなほどまぶしい火花が、四方に飛び散った。
 サトルに突き出された槍を、又三郎が、鋼鉄のドン突き棒で受け止めたのだった。
 青騎士は、ズドンと大きなしぶきを上げながら、湖の中に沈んでいった。
 大きな波を受けたボートは、転覆しそうなほど左右に揺れると、そのまま動かなくなってしまった。
「くそっ、湖で襲ってくるなんて――」又三郎が、くやしそうにつぶやいた。
 サトルがボートから湖をのぞくと、青騎士の沈んだ場所から、ブクブクと泡が浮かんで弾け、ボートからスーッと遠ざかって見えなくなった。
「気をつけて、ヤツはまた襲ってきます……」又三郎は言うと、青騎士が姿を消した湖の奥に目を向けた。二本足で立ったまま、一方の端だけが鋭く尖っている鋼鉄の棒を両手に構え、身じろぎもしなかった。
 波が治まると、ボートがまた進み始めた。タプンタプンと、ボートを打つ波の音が聞こえていた。
「岸までもう少しの我慢です。窮屈でしょうが、なるべく頭を低くして、座っていてください。青騎士は、倒されるたびに強くなっていきます。見たところ、まだ水の中では自由に動けないようですが、次もまた同じように水中から襲ってくるとは限りません  」
 サトルは小さくうなずくと、トッピーの金魚鉢を抱えて、ボートの後ろに腰を下ろした。と、はっと思いつき、金魚鉢を置くと、背負っているランドセルを下に降ろして、中から物語をかなえる本を取り出した。
 トッピーが、「なにする気だよ……」と、不安な表情を浮かべて、サトルのそばにフワフワと浮かび上がった。
「いいこと考えたんだ」と、サトルは小声で、けれど力強く言った。「青騎士になんて、負けるもんか――」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夢の彼方に(62)

2016-04-11 23:57:55 | 「夢の彼方に」
「大臣からお話は聞いております。私と同じ場所から、こちらにいらっしゃったそうですね。私のような者では役不足かもしれませんが、ぜひお供させて頂きます――」
 ニャン、と又三郎は深々と頭を下げると、そのまま手をついて柱のそばに下がり、眠そうにゴロリと横になった。
「――まぁ、あいつなら、オレの出る幕もないか」と、ガッチがサトルを見上げながら言った。「王様が戻るまで、無事でいろよ」
 サトルは、唇を固く結んで、大きくうなずいた。
 大臣がサトル達を連れてきたのは、城の地下にある船着き場だった。ゴツゴツとした石壁に覆われた船着き場は、天井も低く、ジメジメとしていて、狭い通路のようだった。どこからともなく落ちる滴が、あちらこちらで、ぽたりぽたりと競うように音を立てていた。
 薄暗闇の中、一艘のボートが止められているのが見えた。
 サトルがボートに乗りこむと、又三郎もちょこんと飛び乗ってきた。トッピーは食べられるのを怖がっているのか、又三郎が飛び跳ねても、決して手の届かないところに浮かびながら、ジッと不審な目を向けていた。
「又三郎、ちょっと待て――」と、船着き場に立っている大臣が、なにかを取り出しながら言った。「この世界に来て、青騎士と最後まで戦い抜いたおまえだ。いらぬお節介かもしれないが、これはわしの気持ちじゃ」
 大臣が広げたのは、透き通るほど薄い銀色のマントだった。
「お城の魔法使い達に術をかけてもらった”みかわしのマント”じゃ、くれぐれも、気をつけるのじゃぞ」
 二本足で立った又三郎は、大臣にマントをつけてもらうと、首周りが窮屈なのを気にしながら、小さくうなずくように一礼した。
「では、よろしく頼んだぞ」大臣がボートを押すと、サトル達が乗ったボートは、櫓を操る者がいないにもかかわらず、水の上を音もなく進んでいった。
 ボートが船着き場を離れると、又三郎は手を下ろし、猫の姿勢に戻った。長いしっぽを振りながら、舳先のそばに歩いていくと、ゴロリと眠そうに横になって、体を丸くした。
 湖に出ると、もうすっかり日が暮れていた。青い湖面は姿を消し、替わってミルクのように濃い靄が、辺り一面を白一色の世界に変えてしまっていた。厚い靄のカーテンを透して、おぼろな月明かりだけが、かろうじて湖面を照らしていた。
 さざ波が、サァーと小魚の群れのような波を立て、ボートを揺らして過ぎていった。これまでほとんど吹いていなかった風が、濃い靄を追い立てるように吹き始め、次第に強さを増していった。
 周りを覆っていた靄が、風に吹かれて徐々に薄くなっていった。ボートは、夜の色に黒く染まった湖の上を、滑るように進んでいた。
 サトルは、トッピーの金魚鉢を胸に抱えたまま、ボートの後ろに腰を下ろし、緊張した面持ちで、辺りに注意を払っていた。
「寒くなってきたな、サトル……」と、トッピーが震える声で言った。
「うん――」サトルは答えると、ボートの前で丸くなっている又三郎を見た。目をつぶって寝転がったまま、ほとんど動いていなかった。何度か声をかけようとしたが、ピリピリとした空気を感じ、声にならない言葉を飲みこんだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夢の彼方に(61)

2016-04-11 23:57:04 | 「夢の彼方に」
「――いいか、落ち着いて、ワシの話をよく聞くのじゃ。ねむり王様が救出されるまで、夢の扉を使うことはできない。サトル君には我慢してもらわなければならないが、ガッチの言うとおり、このまま城にいても、兵士達が不在の中、襲ってくる青騎士から守ってあげることなど、とうていできはしないだろう。それにこのまま城にいたとして、もしも夢の扉が青騎士に壊されてしまうようなことがあれば、ねむり王様はおろか、救出に向かった多くの兵士達まで、二度と夢の中から戻ってこられなくなってしまう。そこでだ、ワシの考えじゃが、サトル君には、湖のそばにある避難所で、いったん身を潜めてもらおうと思う。要塞とまでは行かないが、万が一の時のため、城にも負けないくらい堅牢に造られた砦じゃ。食料もたんと蓄えておる。青騎士が襲ってきても、分厚い石積みの壁は、容易に壊せやしないだろうて」
「避難所に逃げるのはいいが、ただ隠れていたって、青騎士は止められないぜ――」と、ガッチが怒ったように言った。「誰かが一緒について行かなきゃ、守れるものも守れやしないさ」
「やれやれ……」と、パルム大臣がため息混じりに言った。「きかん気が強くて、力をもてあましておる小人には、どうにも手を焼かされるわい」
 大臣が夢の扉から離れて、出入口の方へ歩きながら言った。
「城には誰も兵士が残っておらぬと言ったが、まだおるじゃろうが、とっておきの者が――」
 と、ガッチが腕を組みながら「ふん」とつまらなさそうに鼻を鳴らした。
「青騎士からサトル君を守るため、城の者を一人守りにつかせることにした」と、大臣が振り返って言った。「しばらくの間、その者と共に湖のそばにある避難所に隠れていてほしい」
「もう来ておるはずなんじゃが……」と、大臣が広間の入り口に向かって、大きな声で呼んだ。「おい! 又三郎。又三郎はどこじゃ――」

 ニャー。

 聞こえたのは、猫の鳴き声だった。
「まったく、フラフラと正体のつかめんやつじゃ」大臣が困ったように言った。「さあ又三郎、出てくるんだ」
 ニャー、と鳴きながら、ちょこんとどこからともなく、猫が広間に現れた。
「来ておるのなら、さっさと姿をあらわさんか」と、大臣が小走りに戻ってきた。「猫の又三郎じゃ。これ、しっかりサトル君をお守りするんだぞ――」
 ニャー、と鳴いた猫は、黒い目の玉を細い皿のように立てながら、サトルに足音もなく近づき、品定めをするように顔を向けたまま、周りをぐるりと一回りした。
 又三郎と呼ばれた猫は、四肢の先が靴下を履いたように白く、体は灰色がかった虎縞模様で、見たところ、普通の猫と変わったところはどこにもなかった。猫の姿を見るなり、それまでジッとしていたトッピーが、フラフラと落ち着かなげに飛び始めた。
「こらっ、しっかりと挨拶せんか!」と、パフル大臣が言った。
 大臣に叱られた猫は、あわててサトルの前に来ると、人のように二本足で、スッと自然に立ち上がった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夢の彼方に(60)

2016-04-11 23:56:12 | 「夢の彼方に」
「これが、”夢の扉”じゃよ――」大臣が、扉を示しながら言った。
「へぇー、はじめて見るなぁ」と、トッピーが扉に近づいて言った。
 トッピーの後に続いて、サトルも小走りに扉に近づいた。四角い木の扉は、縁から少し内側に入って段差がつき、四角の中にまた四角があるようにくぼんでいた。装飾と呼べるものは、それしかなかった。いつ頃作られたのか、しぶい焦げ茶色に染まった扉は、長い時の流れを感じさせた。よく見ると、閉じられた扉の中から、床を這うように一本の赤いロープが延び、広間を横切って、そばの柱に結わえられていた。
「王様を捜索するために、城の兵士が山ほど扉の奥に行っておる。延びているロープは迷わないための備えじゃが、果てしがない夢の中、あまり役に立つとは言い難い。扉の奥では、兵士一人一人の技量と経験だけが便りなのじゃ。本来なら、サトル君をあの扉から帰してさしあげたいところじゃが、扉で行ける夢の世界はひとつだけ。ゆえに王様を見つけ出すまでは、なんとか我慢して欲しいのじゃ……」
 どう答えていいものか、サトルが戸惑っていると、大臣が言った。
「ねむり王様が無事に救出隊に保護されれば、あの銅鑼を叩いて、すぐにでも目を覚まさせることができるんじゃが――」
 大臣が見上げたところには、一見すると壁一面に描かれた壁画かと思うほど、巨大な銅鑼が据えられていた。丸い縁取りの中には、幾重にもとぐろを巻いて宙を舞う龍が彫刻されていた。両目は力強く見開かれ、黄色く光っていた。大きな口をカッと開け、鋭い牙を恐ろしげに剥き出していた。
「あー、もういつまで待たせる気だよ!」
 と、銅鑼の下で小さな影が動くと、赤い小人がちょこんと立ち上がった。
「こらガッチ、救出隊からいつ連絡が入るかわからんのじゃ、気を抜くんじゃない」
「わかってるよ。だけどこう暇じゃあな――」
「ガッチ?」と、サトルは嬉しそうに言った。
 小人が、背伸びをしながら言った。
「遅かったじゃないか――とはいっても、城がこのザマじゃ、帰るに帰れないけどな」
 ガッチはサトルに駆け寄ると、ちょこんと肩に飛び上がり、いたずらをするように耳を手でねぶった。
「元気そうだな、大臣からちょこちょこ話は聞いていたが、村であった時よりずいぶん逞しくなったみたいじゃないか」と、ガッチは体をよじってくすぐったがるサトルに言った。「これからはオレも一緒だ。怪力ガッチ様にかかりゃ、青騎士なんかに負けやしないさ」
「いい加減にせい、お調子者が!」と、パルム大臣が大きな声を上げた。片手を伸ばして、サトルの肩に乗っているガッチをつかまえようとしたが、ガッチは難なく大臣の手をよけ、ストンと広間の床に降り立った。
「オレが守らなきゃ、誰がサトルを青騎士から守ってやれるんだ……」と、ガッチが腰に両のこぶしをあて、小さな胸を張るように言った。「ねむり王の捜索にてんやわんやで、城の中はほとんど空っぽじゃないか。青騎士にひるまないで立ち向かえるヤツなんて、誰一人として残っちゃいないだろ」
「んむむ……」と、眉をひそめた大臣が、静かに話し始めた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする