サトルが登ってきた山道は、一番下のブロックにぶつかると、そこでプッツリと途切れてしまった。辺りを探しても、山頂に向かう別の道は、どこにも見あたらなかった。
「ここから、どうやって進めばいいんだろう……」
サトルが困ったように言うと、空高く飛んでいたトッピーが、サトルの目の前に降りてきて言った。
「ホントにこの山なのか? 上から見ても、どこにも道なんかありゃしないぞ。あるのは、このおかしなブロックだけだ――」
サトルは力なくうなずくと、黙ったまま、立ちふさがるブロックに近づいた。
「それじゃ、もうひとっ飛び調べてくるか――」トッピーは言うと、水の中で小刻みにヒレを動かしながら、金魚鉢ごと山の頂上に向かって飛んでいった。
透明なブロックは、大きさの違いこそあれ、川に流れていた氷のような粒にそっくりだった。表面に映し出されている景色は、顔を近づけてよく見ると、ブロックの中にすっぽりと閉じこめられた景色が、透明な壁を透して、見えているのだった。
「あっ」と、サトルはブロックに触れていた手をあわてて引っこめた。
ほんのわずかしか力を加えていないにもかかわらず、大きなブロックが軽々と、滑るように動いたような気がしたからだった。
「そうか――」
サトルは思いつくと、目の前のブロックをポンと両手で押した。
ブロックは、思ったとおりにスッと軽く動いたが、予想していた以上に大きく動き、ストンとブロックひとつ分だけ、奥に入りこんでしまった。すると、上に載っていたブロックが、周りのブロックを巻きこみながら、ズドンと雪崩を起こすように落ちてきた。もしもすぐに離れていなければ、危うく崩れ落ちてきたブロックの下敷きになっていたかもしれなかった。
「どうした!」と、トッピーが叫びながら、血相を変えて矢のように空から降りてきた。
「わかったよ、トッピー」と、サトルがうれしそうに言った。「トミヨが言っていた意味が、なんとなくだけど、わかったような気がするんだ――」
”――ただ気をつけなきゃならないのは、上の物は上向きに、下の物は下向きに、重い物は下、軽い物は上だよ”
と、サトルは不思議そうな顔をしているトッピーを見ながら、トミヨが別れ際に言っていた言葉を繰り返し思い出していた。
サトルとトッピーは、ブロックが自然に崩れて、登れるようになった場所を探すことにした。山の裾に沿って歩いていくと、隣り合ったブロックよりも低く落ちこんで、サトルが手を伸ばせば登れそうなブロックが、階段のように積み上がっている場所があった。
「あそこなら、登れるかもしれないよ」と、サトルがブロックに駆け寄った。
「大丈夫なのか……」と、トッピーが心配そうに言った。「下からじゃ見えないかもしれないけど、少し登ったところから、また崩れていないブロックが、しっかり積み上がってるぞ――」
「ここから、どうやって進めばいいんだろう……」
サトルが困ったように言うと、空高く飛んでいたトッピーが、サトルの目の前に降りてきて言った。
「ホントにこの山なのか? 上から見ても、どこにも道なんかありゃしないぞ。あるのは、このおかしなブロックだけだ――」
サトルは力なくうなずくと、黙ったまま、立ちふさがるブロックに近づいた。
「それじゃ、もうひとっ飛び調べてくるか――」トッピーは言うと、水の中で小刻みにヒレを動かしながら、金魚鉢ごと山の頂上に向かって飛んでいった。
透明なブロックは、大きさの違いこそあれ、川に流れていた氷のような粒にそっくりだった。表面に映し出されている景色は、顔を近づけてよく見ると、ブロックの中にすっぽりと閉じこめられた景色が、透明な壁を透して、見えているのだった。
「あっ」と、サトルはブロックに触れていた手をあわてて引っこめた。
ほんのわずかしか力を加えていないにもかかわらず、大きなブロックが軽々と、滑るように動いたような気がしたからだった。
「そうか――」
サトルは思いつくと、目の前のブロックをポンと両手で押した。
ブロックは、思ったとおりにスッと軽く動いたが、予想していた以上に大きく動き、ストンとブロックひとつ分だけ、奥に入りこんでしまった。すると、上に載っていたブロックが、周りのブロックを巻きこみながら、ズドンと雪崩を起こすように落ちてきた。もしもすぐに離れていなければ、危うく崩れ落ちてきたブロックの下敷きになっていたかもしれなかった。
「どうした!」と、トッピーが叫びながら、血相を変えて矢のように空から降りてきた。
「わかったよ、トッピー」と、サトルがうれしそうに言った。「トミヨが言っていた意味が、なんとなくだけど、わかったような気がするんだ――」
”――ただ気をつけなきゃならないのは、上の物は上向きに、下の物は下向きに、重い物は下、軽い物は上だよ”
と、サトルは不思議そうな顔をしているトッピーを見ながら、トミヨが別れ際に言っていた言葉を繰り返し思い出していた。
サトルとトッピーは、ブロックが自然に崩れて、登れるようになった場所を探すことにした。山の裾に沿って歩いていくと、隣り合ったブロックよりも低く落ちこんで、サトルが手を伸ばせば登れそうなブロックが、階段のように積み上がっている場所があった。
「あそこなら、登れるかもしれないよ」と、サトルがブロックに駆け寄った。
「大丈夫なのか……」と、トッピーが心配そうに言った。「下からじゃ見えないかもしれないけど、少し登ったところから、また崩れていないブロックが、しっかり積み上がってるぞ――」