独りの朝

もう夜中のイビキや歯軋りは聞こえない。

部屋を隔てる引き戸を蹴られて起きる事も、

熱帯夜に突然泣き出すさっちゃんも、

鼻血を出してゴソゴソするこっちゃんも、

もう無い。


朝は毎朝5時に起きてしまう。

そこからウトウト、寝たり起きたりの一時間。

でも、以前の様に自分を責め続ける時間では無くなった。

6時になり、携帯の目覚ましが鳴る。

お線香、金ちゃんのエサ。

この時足にまとわりつくネネの姿も無い。


その後は昨晩の後片づけ。

居間の食器集めて洗って、

シンクを磨いて、

冷蔵庫の氷用の水を足して、

水筒に氷と麦茶を入れる。

ゴミは分別してまとめて外に出して

帰ってきて洗濯物を畳んで仕舞う。

余裕があれば掃除機もかける。

現場の距離に合わせて出る時間はまちまちだが、

金ちゃんにいってきますと言って家を出る。

外の草木に水をあげるとアマガエルがピョンと跳ねる。

なんか最近住み付いてる。

「おはよー」って声をかけるとまたピョンと跳ねる。


振り返ってみても、洗濯物を干しながらベランダから笑って手を振る彼女はもう、どこにも居ない。



さみしいけど、

なんか、

一人が板に付いて来た。

そんな毎朝。