「シン君…」
チェギョンはうつむき気味のシンに「でも」と続けた。
「何でも無いような思い出の方が、大事だったりするのよ?」
上目遣いでチェギョンはそう言った。
「そうか?」
どこか釈然としないシンは、月を見ながら酒を一気に流し込んだ。
「そうよ」
チェギョンは瓶を手に取ると、無言で差し出された杯に、無言で酒を注いだ。
トクトクと、注がれる音だけが辺りを満たす。
緩やかに吹く風が、懐かしい香りを運んだ。
「そう言えば、マカオでの事を覚えている?」
チェギョンは微かに首を傾げた。
「式を挙げた時の事か?」
シンは月からチェギョンへ視線を向けた。
「そう、あの時のこと」
「忘れるはずがない。いや、忘れられるものか」
そう断言したシンに、チェギョンは小さく笑った。
「なんだ?」
不思議そうなシンに、チェギョンはさらに笑った。
「だって…」
チェギョンは、シンをチラリと見上げた。
「やっぱり、シン君なんだなぁ、って」
シンは片眉の眉尻を上げた。
「?」
「シン君はシン君のまま…『王子病』は、変わらないってことよ」
そう言って朗らかに笑ったチェギョンに、シンは憮然とした。
「ならば、お前も変わらないだろうが。明朗病のシン・チェギョン」
チェギョンはうつむき気味のシンに「でも」と続けた。
「何でも無いような思い出の方が、大事だったりするのよ?」
上目遣いでチェギョンはそう言った。
「そうか?」
どこか釈然としないシンは、月を見ながら酒を一気に流し込んだ。
「そうよ」
チェギョンは瓶を手に取ると、無言で差し出された杯に、無言で酒を注いだ。
トクトクと、注がれる音だけが辺りを満たす。
緩やかに吹く風が、懐かしい香りを運んだ。
「そう言えば、マカオでの事を覚えている?」
チェギョンは微かに首を傾げた。
「式を挙げた時の事か?」
シンは月からチェギョンへ視線を向けた。
「そう、あの時のこと」
「忘れるはずがない。いや、忘れられるものか」
そう断言したシンに、チェギョンは小さく笑った。
「なんだ?」
不思議そうなシンに、チェギョンはさらに笑った。
「だって…」
チェギョンは、シンをチラリと見上げた。
「やっぱり、シン君なんだなぁ、って」
シンは片眉の眉尻を上げた。
「?」
「シン君はシン君のまま…『王子病』は、変わらないってことよ」
そう言って朗らかに笑ったチェギョンに、シンは憮然とした。
「ならば、お前も変わらないだろうが。明朗病のシン・チェギョン」