昨夜はテレビを通じてビッグニュースが日本中を駆けめぐった。北朝鮮から
帰国した韓国の特使が、会見をして次のように発表したという。まず、南北
両国は首脳会談を4月末に板門店で開くことで合意した。また、懸案の核問
題については、北朝鮮が「体制の安全が保証されれば、核兵器を保有する理
由がない」として、非核化の意思を明確に示し、米国との関係正常化に向け
た直接対話への意欲を示したというのである。
これを聞いた人はだれもが「え、ホントか?!」と驚き、大半が「北朝鮮はきっ
と出まかせを言っているのだろう」と考えたに違いない。北朝鮮がアメリカ
とチキンレースを演じていた去年、有力だった一つの見方がある。「核を手
放したら、イラクのフセイン政権のように、直ちに米軍に攻め込まれ、滅ぼ
される。そう北朝鮮は考えている。だから、北の金正恩政権は絶対に、どれ
だけ制裁を課されても、核兵器を手放そうとはしないだろう」という見方で
ある。この見方からすれば、北の金正恩が韓国特使との会談で核放棄の意思
を示したなどというのは「嘘八百だ!裏に何かあるに決まっている」という
ことになるだろう。
しかし、私はそうは考えない。金正恩が韓国特使との会談で示した核放棄の
意思は、額面通りに受け取ってもいいのではないかと見ている。ただ、その
場合、問題になるのは、非核化・核放棄のプロセスである。核兵器をただ単
に廃棄処分するだけなら、「直ちに米軍に攻め込まれる」という北朝鮮の心
配は現実のものになりかねず、したがって北朝鮮が何の留保もなく、無条件
に核兵器を廃棄処分しようなどと考えるはずはない。
では、この非核化のプロセスについて、北朝鮮は一体どう考えているのか。
核兵器の処分と管理をロシアに委ねる。そして北朝鮮が米軍に攻撃されれ
ば、ロシア軍が直ちにこれに反撃を加えるなどして、北朝鮮国家の安全保障
をはかるよう取り決めを交わせば良い。ーー金正恩はおそらくそう考えてい
る。
北朝鮮という「緩衝国家」の存続は、ロシアにとって利益になるばかりでな
く、極東アジアに支配の手を伸ばそうとするロシアの思わくにも合致するは
ずだ。つまり、南北朝鮮統一の黒幕として動こうとするプーチン大統領の
〈力への意志〉を、抜け目のない北の若い指導者は、ここで対米交渉のカー
ドとして使おうと考えているのである。背後にロシア軍が控えているとなれ
ば、米軍もおいそれとは手を出せないだろう。
ロシアを巻き込んだ米朝会談のお膳立てには、プーチン・金正恩・トランプ
というトップの三人だけでなく、下部組織の多くのエージェントが下交渉役
として(すでに!)動いているはずだ。自国のエージェントからの報告に
よって、金正恩は「よし、プーチンで行ける」と判断したのだろう。
さてさて、どうなりますことやら。いずれにしても、瀕死の我がアベ首相が
蚊帳の外におかれることは確実である。
帰国した韓国の特使が、会見をして次のように発表したという。まず、南北
両国は首脳会談を4月末に板門店で開くことで合意した。また、懸案の核問
題については、北朝鮮が「体制の安全が保証されれば、核兵器を保有する理
由がない」として、非核化の意思を明確に示し、米国との関係正常化に向け
た直接対話への意欲を示したというのである。
これを聞いた人はだれもが「え、ホントか?!」と驚き、大半が「北朝鮮はきっ
と出まかせを言っているのだろう」と考えたに違いない。北朝鮮がアメリカ
とチキンレースを演じていた去年、有力だった一つの見方がある。「核を手
放したら、イラクのフセイン政権のように、直ちに米軍に攻め込まれ、滅ぼ
される。そう北朝鮮は考えている。だから、北の金正恩政権は絶対に、どれ
だけ制裁を課されても、核兵器を手放そうとはしないだろう」という見方で
ある。この見方からすれば、北の金正恩が韓国特使との会談で核放棄の意思
を示したなどというのは「嘘八百だ!裏に何かあるに決まっている」という
ことになるだろう。
しかし、私はそうは考えない。金正恩が韓国特使との会談で示した核放棄の
意思は、額面通りに受け取ってもいいのではないかと見ている。ただ、その
場合、問題になるのは、非核化・核放棄のプロセスである。核兵器をただ単
に廃棄処分するだけなら、「直ちに米軍に攻め込まれる」という北朝鮮の心
配は現実のものになりかねず、したがって北朝鮮が何の留保もなく、無条件
に核兵器を廃棄処分しようなどと考えるはずはない。
では、この非核化のプロセスについて、北朝鮮は一体どう考えているのか。
核兵器の処分と管理をロシアに委ねる。そして北朝鮮が米軍に攻撃されれ
ば、ロシア軍が直ちにこれに反撃を加えるなどして、北朝鮮国家の安全保障
をはかるよう取り決めを交わせば良い。ーー金正恩はおそらくそう考えてい
る。
北朝鮮という「緩衝国家」の存続は、ロシアにとって利益になるばかりでな
く、極東アジアに支配の手を伸ばそうとするロシアの思わくにも合致するは
ずだ。つまり、南北朝鮮統一の黒幕として動こうとするプーチン大統領の
〈力への意志〉を、抜け目のない北の若い指導者は、ここで対米交渉のカー
ドとして使おうと考えているのである。背後にロシア軍が控えているとなれ
ば、米軍もおいそれとは手を出せないだろう。
ロシアを巻き込んだ米朝会談のお膳立てには、プーチン・金正恩・トランプ
というトップの三人だけでなく、下部組織の多くのエージェントが下交渉役
として(すでに!)動いているはずだ。自国のエージェントからの報告に
よって、金正恩は「よし、プーチンで行ける」と判断したのだろう。
さてさて、どうなりますことやら。いずれにしても、瀕死の我がアベ首相が
蚊帳の外におかれることは確実である。