出来事には理由がある。理由なしに起こる出来事もある。
いずれにせよ、我々は出来事の〈理由〉を突きとめないと、その出来事をうまく飲み込めず、落ちつかない。
さて東京都立大の社会学者・宮台 真司氏が襲撃され、大けがをした事件である。著名な社会学者が顔や首を切りつけられるというこの出来事は、〈なぜ〉起こったのか。事件の背景には、どんな〈理由〉があるのか。
まず考えられるのは、個人的な恨みである。顔や首を何度も執拗に切りつける手口は、犯人の強い恨みを想定すれば、この事件をすっきり理解できる。犯人はあるいは都立大の学生で、宮台氏はこの学生に単位を出さなかったのかもしれない。そのためにこの学生は、せっかく内定した企業に就職できなかったのかもしれない。
個人的な恨みということなら、次に思いつくのは、男女の色恋沙汰である。犯人は宮台氏に、女房を寝盗られたのかもしれない。この社会学者は女癖が悪い、という噂を聞いた(ことがあったような気がする)。
この私・天邪鬼爺も最近は、寄る年波からかボケがひどく、そんな噂があったのかどうかすら覚束ないが、噂がどうであれ、援助交際を論じた著書を持ち、女子高生に人気があった(と思われる)この社会学者なら、男女の色恋沙汰に首を突っ込んだというのもあり得ない話ではない。
しかし、事はそんな単純な話ではないのではないか、と思いはじめたのは、日刊ゲンダイDIGITALに掲載された記事《社会学者・宮台真司氏はなぜ襲撃されたのか? 安倍元首相銃撃事件で展開したメッセージ》(12月1日配信)を読んだからである。
記事によれば、宮台氏は安倍元首相銃撃事件の山上徹也容疑者をモチーフにした映画「REVOLUTION+1」の上映イベントに登壇し、次のように述べたという。
「(反対論がかまびすしい中、国葬が)途中で中断されないで、ここまで引っ張ってきたことによって、国辱の恥さらしになっていることが私はうれしいです。まさに落日、しょぼい日本が話題になる。G7から、誰ひとり来ませんしね」
安倍元首相の国葬をおちょくるこんな発言が、自民党政権の熱烈な支持者の心をいたく刺激したのかもしれない。
宮台氏の思想や発言が事件の〈理由〉になっているとしたら、彼が「オウム事件真相究明の会」の呼びかけ人になったことも無視できない。オウム事件はずいぶん前のことだが、オウム真理教の熱狂的な信者なら。宮台氏の言論活動を許せず、ずっと根に持っていたとしても不思議ではない。
(個人的な体験談で恐縮だが、私は現役の大学教師だった頃、授業でふとした出来心からオウム真理教をおちょくったことがある。聴講学生の中にこのカルト教団の熱烈な信者がいて、この学生から激しい恨みをかったことがある。幸い、その学生は気の弱そうな男子学生で、危害を加えることはなかったが、このことがあってから、私は、カルトは怖い、発言には気をつけなければ、と用心するようになった。)
要するに、多彩な言論活動を行ってきた多才な社会学者の場合には、事件の背景に様々な〈理由〉があり得るということである。以上の〈理由〉以外にも、もっと別の〈理由〉があるかもしれず、そう考えると、かえって落ち着かなくなってくる天邪鬼爺である。読者はいかがだろうか。
いずれにせよ、我々は出来事の〈理由〉を突きとめないと、その出来事をうまく飲み込めず、落ちつかない。
さて東京都立大の社会学者・宮台 真司氏が襲撃され、大けがをした事件である。著名な社会学者が顔や首を切りつけられるというこの出来事は、〈なぜ〉起こったのか。事件の背景には、どんな〈理由〉があるのか。
まず考えられるのは、個人的な恨みである。顔や首を何度も執拗に切りつける手口は、犯人の強い恨みを想定すれば、この事件をすっきり理解できる。犯人はあるいは都立大の学生で、宮台氏はこの学生に単位を出さなかったのかもしれない。そのためにこの学生は、せっかく内定した企業に就職できなかったのかもしれない。
個人的な恨みということなら、次に思いつくのは、男女の色恋沙汰である。犯人は宮台氏に、女房を寝盗られたのかもしれない。この社会学者は女癖が悪い、という噂を聞いた(ことがあったような気がする)。
この私・天邪鬼爺も最近は、寄る年波からかボケがひどく、そんな噂があったのかどうかすら覚束ないが、噂がどうであれ、援助交際を論じた著書を持ち、女子高生に人気があった(と思われる)この社会学者なら、男女の色恋沙汰に首を突っ込んだというのもあり得ない話ではない。
しかし、事はそんな単純な話ではないのではないか、と思いはじめたのは、日刊ゲンダイDIGITALに掲載された記事《社会学者・宮台真司氏はなぜ襲撃されたのか? 安倍元首相銃撃事件で展開したメッセージ》(12月1日配信)を読んだからである。
記事によれば、宮台氏は安倍元首相銃撃事件の山上徹也容疑者をモチーフにした映画「REVOLUTION+1」の上映イベントに登壇し、次のように述べたという。
「(反対論がかまびすしい中、国葬が)途中で中断されないで、ここまで引っ張ってきたことによって、国辱の恥さらしになっていることが私はうれしいです。まさに落日、しょぼい日本が話題になる。G7から、誰ひとり来ませんしね」
安倍元首相の国葬をおちょくるこんな発言が、自民党政権の熱烈な支持者の心をいたく刺激したのかもしれない。
宮台氏の思想や発言が事件の〈理由〉になっているとしたら、彼が「オウム事件真相究明の会」の呼びかけ人になったことも無視できない。オウム事件はずいぶん前のことだが、オウム真理教の熱狂的な信者なら。宮台氏の言論活動を許せず、ずっと根に持っていたとしても不思議ではない。
(個人的な体験談で恐縮だが、私は現役の大学教師だった頃、授業でふとした出来心からオウム真理教をおちょくったことがある。聴講学生の中にこのカルト教団の熱烈な信者がいて、この学生から激しい恨みをかったことがある。幸い、その学生は気の弱そうな男子学生で、危害を加えることはなかったが、このことがあってから、私は、カルトは怖い、発言には気をつけなければ、と用心するようになった。)
要するに、多彩な言論活動を行ってきた多才な社会学者の場合には、事件の背景に様々な〈理由〉があり得るということである。以上の〈理由〉以外にも、もっと別の〈理由〉があるかもしれず、そう考えると、かえって落ち着かなくなってくる天邪鬼爺である。読者はいかがだろうか。