ささやんの天邪鬼 ほぼ隔日刊

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

信教の自由と国家

2022-12-09 23:29:57 | 日記
おもしろいニュースを聞いた。

『ハインリヒ13世』を名乗る男。いったい、どのような人物なのでしょうか。
ドイツの連邦検察は、国内のテロ組織に関わっていたとして『ハインリヒ13世』を名乗る貴族の家系出身とみられる男や現職の裁判官など25人を逮捕しました。
検察は、男らが国家の転覆と独自の政府の樹立を企てていた疑いがあるとみて組織の実態解明に向けて捜査を進めています。

(NHK NEWS WEB 12月8日配信)

「ハインリヒ13世」を名乗るドイツ人は、ドイツ国憲法のどんな条文に則って「有罪」と判決を下されるのだろうか。残念ながら私はドイツの憲法については何も知らないので、もし日本で同様の事件が起こったらどうなるか、それを考えてみたい。

仮に「伏目宮13世」を名乗る男が、YouTubeで次のように演説したとしよう。
「薄汚れた自民党政権を倒して、俗世を超越した全く新しいピュアな政府、神聖な政府を樹立するのだ。傍系ではあるが、天皇家の血統をひく私なら、その神聖な清き政府のトップ・リーダーにふさわしい。私を国家主席とした新国家を打ち立てようではないか!」

もちろん、国にこの男の演説を差し止める権限はない。わが日本国憲法は、その20条で次のように謳っている。

「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。」

信教の自由とは、どんな宗教思想を信じても自由だということである。日本国憲法はこの自由を「権利」として日本国民に保障している。伏目宮13世がどんな思想信条を持ち、どんな場でこれを唱道したとしても、国はこれを差し止めることはできないのだ。一般の人々も、「可笑しなキ印が出てきたなあ」と、彼を嘲笑うだけだろう。

だが、伏目宮13世の懸命な訴えが次第に人々に受け入れられ、自衛隊の幹部や、霞が関の高級官僚らから何人も同調者が出てくるようになれば、事情は違ってくる。伏目宮13世の同調者グループは、「テロを準備している危険な集団」とみなされるため、厳しい監視の目が注がれ、厳格な取り締まりの対象になる。国は取り締まりの根拠として、憲法第13条を持ち出すだろう。

「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」

伏目宮13世の同調者グループが国による取り締まりの対象になるのは、彼らが「公共の福祉」を脅かす存在とみなされるからなのだ。

ま、いずこも同じ。出る杭は打たれる。ただ、出る杭を打つのが国となると、それなりの大義名分が必要になるということである。
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正しい宗教?!

2022-12-09 03:54:59 | 日記
きのうの夕方、ぼんやりとテレビのワイドショーを見ていた。見ていたのは、TBSの「Nスタ」である。

数日前のことになるが、干し柿をかじったら、前歯がぽろりと欠けてしまった。義歯の補修をしてもらう必要が生じ、きのうは訪問歯科の若い医師に来てもらっていた。補修の作業自体は昼前に終わったが、怠惰な私は、この訪問診療に託(かこつ)け、デイサービスへの「出勤」はズル休みをしたのである。

空いた時間に、何かしたいことがあったわけではない。それで私は、却ってヒマを持て余し、テレビのスイッチを入れたのだった。

テレビの画面では、司会の井上貴博アナが「そうしないと、正しい宗教との区別が分からなくなってしまいますからね」としゃべっていた。ぼんやり・のほほん状態の私の脳みそに響いたのは、「正しい宗教」という言葉だった。このときの話題は旧統一教会の規制問題だったが、漫然と聞き流していたためか、私は前後の文脈がどうだったかを全く憶えていない。ただ憶えているのは、私の脳みそが「正しい宗教なんてあるのだろうか。そもそも宗教に、正しいとか、正しくないとか、そんな区別が当てはまるのだろうか」とつぶやいたことである。

井上アナが「正しい宗教」という言葉を口にしたとき、彼は「創価学会の信者が信じる宗教は正しい宗教、旧統一教会の信者が信じる宗教は正しくない宗教」と安直に、大雑把に考えていたのかもしれない。大方の視聴者も、そのくくり方を特段、疑おうとはしなかったに違いない。

妙なところに拘ってしまうのが、私、天邪鬼爺の悲しい性分である。

べつに私は「創価学会の信者が信じる宗教は正しい宗教である」とか、「創価学会の信者が信じる宗教は正しくない宗教である」などと言いたいわけではない。そんなこと、くどくど言わなくても、読者諸賢ならお分かりいただけるだろう。
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