2カ月前ぐらいにタワーレコードでマリア・ティーボの弾くモーツァルトピアノ協奏曲21番のDVDが格安バーゲンであった。抱き合わせ注文すると20%引きの文句につられ4種のDVDを注文した。しかし21番は在庫切れで待たされ、結局1番ほしかったDVDがメーカー切れで残り3種だけが届いた。その中の1つがオイディプスなのだが、これはすでに92年のサイトウ記念フェスティバルでのLIVEのためNHKで放送されたものを録画していたので、素晴らしさは了承済みだった。
しかし5.1Chの音声と制作ドキュメンタリーが付いていることで購入した。また今回は、バーンスタインのハーバード大学での講義「答えのない質問」のレクチャー6「大地の詩」の講義に使用されたオイディプスを合わせ比較して聴いた(観た)
バーンステタインのオイディプス
レクチャー5では20世紀の危機としてマーラーの死とシェーンベルク、ベルクの12音技法の限界を述べ、レクチャー6ではそのアンチに位置するストラヴィンスキーの音楽を、12音技法の支持者アドルノの「新音楽哲学」でのストラヴィンスキー批判に対する反論で進めている。そうした中での彼のストラヴィンスキー擁護は一環してチェムスキーの言語論を元に、詩と音楽の相関性の中で共通項としての「陰喩」のあり方で締めている。しかしながらレクチャー1から彼が取り上げた詩人は恥ずかしながらほとんど私自身は「文化史」の中で詩人名ぐらいはおぼろげな記憶はもつが其の例示に出した「詩」そのものは全くの無知であるゆえに理解できていない。だが彼が講義の締めとして選んだオイディプスは、20世紀音楽の危機への1回答として示したものだが、21世紀の今日、まだ私には判断はつかねる。
ただ彼はストラヴィンスキー音楽を折衷主義(通常音楽史の教科書では新古典主義とする。)と定義し、初期3部作の原始音楽(=民俗舞踊、部族音楽=)と古典(バッハーベートーヴェン)の融合としてオイディプス音楽を分析して、ヴェルディーのアイーダ、ベートーヴェンの運命、そしてッ随所に現れるバッハを提示するとともに、通俗音楽(=ハーバード大学フットボール応援歌を提示した=)までを融合した音楽であるとして実演で示し全講義を終了した。
彼の講義の後だけに非常に良く、また面白く聴けた。主役のルネ・コロ、トロヤヌスの出来もよくボストン交響楽団の演奏も素晴らしい。なぜ単独のDVDの発売が無いのが不思議なくらいのできだと思う演奏だ。
小澤征爾=サイトウ記念オーケストラのオイディプス
この曲のベストDVDだと思う。舞台が素晴らしい。田中民氏の群舞?と言い演出も仮面劇をモチーフにしたのも効果的だ。オケの響きも映像もバーンスタインとの20年差は大きい。NHKの技術も生きている。語り部の白石京子も効果的ですべてが揃っている。ジェシーノイマン、ブリン・ターフェルと今思うだけでも良くも揃ったものだと、小澤氏の力を思い知らされたが唯一といえばオイディプス役が少し弱かったことか。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます