とりとも雑楽帳

狭山丘陵の里山歩きとクラッシク音楽の鑑賞日記です。

入院中に見たオペラ(その2) カール・ベーム 

2007年07月12日 | オペラ
モーツァルト「後宮からの誘拐」=カール・ベーム=バイエルン国立歌劇場
    コンスタンツェ=E・グルベローヴァ ベルモンテ=F・アライサ ブロンテ=R.グリスト オスミン=M・タルベラ
    演出 A・エファーディング 1980/4 実況 LD→DVDにダビング
 
この見所はなんと言ってE・グルベローヴァの一人舞台だ、この頃の彼女は最良の声をしていたのだろう。演技も舞台の容姿も声ともども華がある。惜しむらくはオスミンがクルト・モルであったらと思う。タルベラの演技はコミカルな味が出てこない。 オーソドックスな演出は、現在の曲解と自己満足に満ちた演出家の一人よがりな過剰サービス横行の舞台を見るにつけ、ホットするとともに明るさが癒され入院中のオペラとして最適だった。

反面 R.シュトラウスは入院中には不適だが見てしまった。

エレクトラ=カール・ベーム=ウィーンフィル
  エレクトラ=L.リザネック クリテムネストラ=A.ヴァルナイ クリンテミス=C.リゲンザ オレスト=D.フィッシャー、ディースカウ
  演出G.フリードリッヒ 1981/4 映画

この映像は、「カール・ベームの生涯」でも紹介された、彼の最後の演奏になる。「後宮」から1年後、そして死の1年前、遺言だ。たまたまなのか、なぜエレクトラだったのか。ベームは80年に来日でフィガロと同時にナクソス島のアリアドネを振った。彼の最上の遺言は日本での実演で書き残したのだろう。
このLDではA.ヴァルナイ、L.リザネック、 C.リゲンザの10年の隔たりを置きながらワグナーのイゾルデを演じた、ワグネリアンがすさまじい対抗心で役柄を演じている。特にすでに60歳を超えたA.ヴァルナイの迫力には圧倒される。
ベームの体力を考慮し断続的に作られたにもかかわらず、この映像と音の流れには、弛緩したところは一切感じられず映像の緊張感と音の集中がすばらしいものになっている。
ただ全体が復讐劇ですさまじく随処で血飛沫が飛ぶ暗い映像は、いささか入院中のオペラにはそぐわないものだった。
でもカール・ベームの「生」への執念に勇気づけられはした。


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