正直今日のコンサートで聴くまで、彼の演奏を耳にしたことはなかった。単にバッハの無伴奏ソナタが聴きたくて、5月にチケットを買ったが忘れていた。たまたま魔笛を聴きに行く時にチケット取り出すため引き出しを開け、10月にコンサートがあるのに気がついた程だ。会場はミューズの中では一番小さなホールで300人しか入らないキューブホールだ。主催者もさほど重きおいてというより、鼻から客を集める努力はしてないで単に会場貸しだけのことでたまたま空いていたのがキューブだったのだろう?。中ホールであったなら、500円の学割席ができただろうに。
たまたまこの日は所沢市の音楽文化祭?ということで大ホールはおじさん、おばさんの発表会で賑を見せ、中ホールは「詩吟大会」であった。
小ホールはそれでも8割弱の入りであった。開演とともに黒のロックシンガー並みの衣装で容貌も長髪でこれまたロックシンガーなみであったが、演奏が始まるや、グイグイ彼の奏でる音に引き込まれていった。素晴らしいとしか言いようのないバッハだ。いままで出会ったことのないバッハだ。ステージ上を動き、体を大きく動かし、演奏スタイルも出会ったことのないバッハだった。出てくる音は力強く、歯切れのよい、豪速球の響きだった。(会場が狭く小さいことが多分に影響しているが。)今までの私のバッハはヘンリック・シェリングの端正な折り目正しいバッハ、アルチュール・グルミヨーのとにかく美しいバッハそしてヨハンナ・マルティーの優しいバッハだったが、ラドゥロヴィッチはファジル・サイのピアノを聴いた時の感動と同じ次元の感動を味わった。
バッハに感動したが、それ以上に感動したのがイザイのソナタ2曲だった。どちらも初めて聴いた曲だが、スポーツをした後の爽快感を聴き終わった瞬間に味わった。
今日のコンサートほど、私のようなジジ・ババに聴かせるのではなく、高校生にきかせて欲しかった。このようなコンサートに若い人が聴きにきてもらえるような努力をしないと、この業界の行く先に未来はないように思う。NHKの作る浪花節的な生い立ち物語でスターを作ってもマーケットは広がらないしチケット代を釣り上げては若い人は離れるだけだ。
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