とりとも雑楽帳

狭山丘陵の里山歩きとクラッシク音楽の鑑賞日記です。

ベツレヘムの密告者 読後感 ムムム・・・???

2009年07月26日 | この本は面白い
最近、推理小説は空振りが続き途中での投げ出しが続いた中で、久しぶりに一気に読み終えた。イスラム人の名前の付け方が、解決のキーワードだったが、犯人捜しよりもパレスチナ問題の混迷の本質を作者は提示したかったのだろうか?
確かに事実の積み重ねたルポルタージュよりも、一部の事実をフィクションでまとめたほうが物事の真実を語る。その意味ではパレスチナ問題を理解するには、良くできた構成だろう。しかしこの小説には重大な欠点がある。この小説を作り上げた舞台がいかなる過程で生まれたかは語っていない。最大の悲劇の原因であるイスラエルの役割を無視して、全土を戦場と化した中で身も心も荒廃しているパレスチナを嘆くのは、イギリス人作者の視点がエルサレムのイスラエルの側からの視点だからだろう。
この小説では極力政治状況には触れずに、歴史の視点を作者が主人公に言わしているが、イスラエルの侵略がない時代の歴史ではベツレヘムは、キリスト教徒もイスラムもユダヤ信者も混在した町だったはずだ。自爆テロの本質を下世話な損得計算から結論は出せないだろう。断片的な事象でパレスチナ現状を俯瞰させてくれた作者の力量は認めるが、一気に読んだが読後感はすっきりしない作品だった。


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