HMVのネットでシャルル・ミュンシュのブルックナーの交響曲7番がDVDで発売されるとの予告を知って、直ぐにオーダーを入れた。ミュンシュ大好き人間の私だが、まさかミュンシュがブルックナーの7番しかもDVDの演奏記録が存在するとは思ってもいなかった。
だが前にも書いたが、世の中のブルックナーのブームとも言える現象は理解できず、未だにブルックナーの良さがわからないものには、たとえ好きなミュンシュが振ったとしても出てくる音はつまらないものだろうと、半ば決めつけて観た。
まず映像は1958年のモノクロ、音声はアナログ、正に歴史を感じる。当時のTVカメラの限界か時折四隅が欠ける。
でもミュンシュの演奏はすごい。鈍重、冗漫な音楽をビシバシ切り込み突き進む。演奏時間52:03。おそらく最短な7番であろう。
演奏は面白い。ボストンのオケを競馬の騎士のごとくゴール目がけて突き進むが如く鞭打つ姿のような指揮ぶりだ。結局はこうでもしない限り、ブルックナーは表現し得ないのだろう。
世に蔓延するブルックナー信徒からは避難轟々であろう。しかしどんなにミュンシュが斬り込んでも、所詮この作曲家の煌くような感性の欠如を補えるものは、ミュンシュといえども不可能だと知った。
私はワグナーが好きだ。音楽史的にはブルックナーはワグナーを師と仰ぎ、世に言うワグナー派VSブラームス派の抗争のなかでのワグナー派の頭目であったが、今の私の耳には、古典派と言われるブラームスの音楽のロマンあふれるメロディーの数々に比較し残されたブルックナーの感性の欠如とかび臭いハーモニーの多用は何処がロマン派と言われるのか教養不足もあるが理解しがたい。
遡ればワグナーが好き故に、ブルックナーを理解しようとこれまで授業料を払って来たが、ミュンシュのこのDVDでこれ以上はムダと知った。
これまでの授業料
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カール・シューリヒト/ハーグフィル 演奏時間60:26
高校時代にコンサートホールから出たLP。当時1枚で1350円は7番の最安値ステレオ。小遣いで買えた。
CD化されたときに彼のモーツァルトとが聞きたくて、買い直した。
その後、ブルックナーを理解するため彼とウィーンフィルの3番、8番、9番を買うがつまらない曲だとの印象しかない。
指揮者 : Bohm, Karl
• 楽団 : Vienna Philharmonic Orchestra
彼の3,4番が評判を呼び、LPを購入、7番はシューリヒト盤が評論家諸氏がオケが弱体で響きが弱いとのことで、ベーム/ウィーンと当時先生方が激賞ものだと言うので購入。
シュターツカペレ・ドレスデン
オイゲン・ヨッフム(指揮)
録音時期:1975-80年 録音場所:ドレスデン、ルカ教会
ベーム盤に満足出来ず、当時レコード芸術のアカデミー受賞の全集がCD廉価盤となったことから購入。しかしベームより劣る。
・モーツァルト:交響曲第33番変ロ長調 K.319
・ブルックナー:交響曲第7番ホ長調 WAB107
アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
オイゲン・ヨッフム(指揮)
収録:1986年9月17日、人見記念講堂(NHKによる実況録画)
・特典映像『ヨッフム、ブルックナー第7番を語る』
画面:カラー、NTSC、スタンダード(4:3)
音声:リニアPCMステレオ
ブルックナー教徒のバイブル的なDVD。しかし私にはモーツアルトの素朴な朴訥な流れが、アムステルダムの音色にマッチし安らぎを迎えたとたん、罵声とも怒号ともつかぬブラボーの叫び、一人のバカにこころ乱される。ブルックナーを迎えると、朴訥なヨッフムの指揮ぶりに音楽にひきこまれそうになったところで指に唾をつけ譜面をめくる姿の登場、それが肝腎なところで何度も出くわす。「誰かこの爺さんに指サック貸してあげろよ」と叫びたくなった。そして最後の余韻を楽しもうとすると、多分モーツアルトの時と同一人物とおぼしきバカがこれ又怒号の雄叫び、これに呼応しヨッフム爺さんが舌を出す姿がアップ。音楽の余韻を壊す映像と音声。これが歴史的名盤と言われる所以かと?
その他の手持ちにNHKで放映された、チェリビダッケ37年ぶりのベルリンフィルコンサートとSKY Aで放映された1990/10/18チェリビダッケ=ミュンヘンフィルのサントリーホールでのLIVEをDVDに録画したものを所持しているが、文献学者よろしく細部の1音1音掘り下げていく音楽は、ブルックナーの欠点を一つ一つなぞるようで、この音楽を80分近くコンサートホールの椅子にいることは私には耐えられない音楽となっている。
結局ブルックナーとして私に許容できる限界は、ミュンシュとシューリヒトだけだと思った。
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