タワレコオリジナルでマルケヴィチ生誕100年記念と称してベートーヴェンの彼の正規録音がLP当時のオリジナルジャケットでの売り出しをネットで見た。食指が動いたが、音質の改善は手持ちと変化が無いことから諦めた。
ベートーヴェンの中では3番が非常に面白い。この録音は1956年。もちろんモノ録音で、オケがトスカニーニの引退直後に解散させられたNBC交響楽団の残党が集まり再スタートの録音だ。そしてわずか2ヶ月後にブルーノ・ワルターが同じオケでトスカニーニ追悼コンサートを行った。
両者を聴き比べをすると、音楽の作りは1957年の演奏はマルケヴィチの演奏だ。日本のカリスマ?音楽評論家のU氏は1957年のワルターの演奏を大絶賛しているが、むしろワルターはマルケヴィチが作った土台に乗っただけでだけで、録音も音楽の粋もマルケヴィチ盤が優れている。一節には54年のトスカニーニ引退解散後の演奏能力の落ちたオケを追悼演奏会でのワルターの演奏を汚したくないために、リハーサルを兼ねてマルケヴィチに立て直しのために録音を訓練かたがた依頼したとの説もあるそうだ。
それにしても音ににごりのない素晴らしい演奏である反面、美しすぎる英雄だ。
ブルーノ・ワルターとコロンビア交響楽団の英雄は、親が買った我が家での最初の30cmLpのステレオレコードだったが、1957年の演奏とは正反対だった。1947年のニューヨークフィルの演奏とも違いやはり1957年のワルターの演奏はマルケヴィチのものだろう。ワルターの演奏はロマン的な美しさで1957年のような造形的な美しさはべつものだろう。
カリスマ評論家?はマルケヴィチの演奏をきいたのだろうか。彼はワルター教信者にすぎないだけなのだろう。
ブルーノ・ワルター トスカニーニ追悼演奏会
同じマルケヴィチでもIMPで製作されPickwickというイギリスの廉価版CDで発売された Berlin Radio OrchestraのCDは 秋葉の石丸電気のバーゲンコーナーでマルケヴィチの名前があったのはすべて(4-5枚)購入したはずで、1枚あたり500円以下だったと記憶している。録音は1982年のステレオと明記されているが、LIVEのせいなのか明瞭さ、音の透明度に欠けマルケヴィチの演奏とは思えない。彼の死の直前のN響との名演奏に比べ前年のこの英雄は艶のない演奏に終始している。
1970年の日フィルとの演奏をBSフジでの日フィルアーカイブを録画しDVDに焼き直したのを所持しているが、これはいささか教科書的な演奏でつまらない。
ベートーヴェンの英雄は、私自身の所持しているメディアの中では正直1960年のミュンシュ=ボストン交響楽団のLIVEのDVDが最高だ。この演奏会は日比谷の旧NHKホールでのコンサートだが、1960年なのにステレオ録音で画像もモノクロながら、WGBHのハーバード大学講堂のDVDより数段上をいくもので当時のNHKの技術の高さを物語るものだろう。
日米の国歌演奏の後の英雄からミュンシュの全開モードが炸裂して、一気呵成に終楽章に進むスピード感が爽快でありながら、とてつもなく大きなスケールでまさにミュンシュの中でも最高のできだと思う。ダフニスとクロエの第二組曲も最高の出来だと思う。まさに日本の演奏史に残るコンサートが映像付きで味わえるのはありがたい。このコンサート会場にいた人は、その後のコンサートが小さく思えたことだろう。こんなコンサートが生で聞けたらとこのDVDを観るたびに、この会場にいた人が羨ましく思える。
そんな事で同じコンビのCDを聴いてもDVDのあとではあまり感動は起こらない。
蛇足だが、1960年5月4日は安保改訂の直前で会場付近は安保反対デモで騒然としていたはずだが、その影響はなかったのだろうか、会場には現天皇が、皇太子として臨席されていたとのことだが、物々しい警戒の中で行われたのだろうか。
マルケヴィッチのエロイカは2点知っておりまして、どちらも彼の以外ではありえません。都響との盤もあるそうですが、入手できません。