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監督:アンドリュー・ラウ / アラン・マック
出演:エディソン・チャン ショーン・ユー アンソニー・ウォン エリック・ツァン
カリーナ・ラウ フランシス・ン チャップマン・トー フー・ジュン
ストーリー
1991年。尖沙咀(チムサアチョイ)に君臨する香港マフィアの大ボス、クワンが暗殺された。
混乱に乗じて離反をもくろむ配下のボス4人。
組織犯罪課のウォン警部(アンソニー・ウォン)と相棒のルク警部(フー・ジュン)は、抗争勃発に備えて厳戒体制を敷くが、新参の5人目のボス、サム(エリック・ツァン)だけは静観を決め込む。
そのためにサムはラウ(エディソン・チャン)を警察に潜入させようと考えていた。
サムの妻マリー(カリーナ・ラウ)にひそかに想いを寄せていたラウは、危険を覚悟で引き受ける。
クワンの跡を継いだ次男ハウ(フランシス・ン)は、知的で物静かな外見の下に野心家の顔を隠していた。
4人のボスそれぞれの弱みを握った彼は、一夜にして新たな大ボスとしての地位を固めてしまう。
一方ウォン警部は、警察学校の優等生でありながら、クワンの私生児であることが発覚して退学処分になったヤン(ショーン・ユー)の存在を知り、その血筋を利用してヤンをハウの組織に潜入させる秘策を思いつく。
無謀とも言える作戦だが、ヤンにとっては警官になれる唯一のチャンスだった。
こうして1992年、ラウとヤンは警察学校で一瞬すれ違う。
1995年。潜入捜査のための厳しい訓練中に、刑務所での喧嘩を機にサムの子分キョン(チャップマン・トウ)と親しくなり、黒社会に溶け込み始めたヤン。
ウォン警部は、警視に昇進したルクの反対を押し切ってヤンをハウのもとに送り込む。
一方、組織犯罪課の警官となって2年目のラウは、サムからの情報によって手柄を重ねながらも、マリーへの恋心は募るばかりだった。
ハウは事業を拡大して一家の安泰をはかるとともに、4年前に父を殺した犯人探しに執念を燃やしていたが、ついに証拠を掴み、クワンが殺された4月11日の命日にすべてのドラマが動きだそうとする……。
寸評
前作ですっぽりと抜け落ちていた潜入捜査官ヤンと、逆に警察に潜入したマフィア、ラウの若き日の2人が描かれるが、実は2人よりも目立っているのが脇役陣だ。
ヤンの上司で警察の組織犯罪課のウォン警部、彼の警察仲間のルク、ラウのボスであるサム、サムの女マリー、父の跡を継いだマフィアのドン・ハウといった人々のドラマがこの映画の中心となっている。
特にウォン警部のドラマは見応えタップリで、演じるアンソニー・ウォンの苦悩漂う表情がたまらない。
昇進を果たしたルクとの関係も味わいがあり、二人して指揮を執ることになるエピソードも雰囲気がある。
話はマフィアのボスであるクワンが暗殺されたところから始まるのだが、それを引き継いだ後継者のハウの策士家ぶりも堂に入っていた。
一見頼りなさそうなハウが4人のボスを粛正していく手際もくどくなくてスピーディだ。
殺し殺され、裏切り裏切られ、陰謀渦巻く黒社会を定番的に描いていくが、密度濃く一気に見せる。
その間に、映画「ゴッド・ファーザー」をイメージさせるシーンも登場し、ハウをはじめとするマフィア一家の物語としての側面をチャッカリ頂いているのは香港映画らしい。
家族大事の気持ちがヤンをその世界で重用し、潜入捜査を可能ならしめるていくという描き方も無理がない。
ただし前作の補助説明作品なので、いきなりこの映画に入ったのでは興味が半減してしまう構成になっているのは否めない。
したがって、本作を見る前には一作目を見ておいたほうが良い。
なによりも少し入り組んでいる人物関係が理解しやすいと思う。
一作目で無線機を出されたヤンが「またこれか」と言っていたのも分かるし、ラウの恋人がどんな人だったのかも知らされる。
二人が組織に潜入していく過程がほとんど描かれなかった前作だが、ラウが警察に潜入する決心をする原因がボスの女に対する思いからだったことなども明らかにされる。
サムがボスになったいきさつも描かれ、前作の登場人物がいかに重たいものを背負っていたかがよくわかって、前作のスゴさを再認識させる映画となっているのだが、やはり前作を補完する作品だけに、前作に比べるとその緊張感はやや劣っていたように思う。
若き日のヤンを演じるショーン・ユーとラウを演じるエディソン・チャンの2人は、前作のトニー・レオンとアンディ・ラウに比べると影が薄い。
その影の薄さは、この映画が脇役たちのドラマに主眼を置いたことにもよるが、彼らの役者としての雰囲気によるところが大きかったような気がする。
ずっとトニー・レオンとアンディ・ラウの二人でいけばいいのにと思ったりしたのだが、やはり若返らせる必要があったのだろうか?
ところが、エンドタイトルのあとに、次回最終章の『インファナル・アフェア 終極無間』の予告が流れ、トニー・レオンとアンディ・ラウが帰ってくることが示される。
すさまじい商魂ながら、二人が帰ってくる次回作も見たくなってしまう2作目の出来栄えではあった。