おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ミスティック・リバー

2020-04-26 10:04:22 | 映画
「ミスティック・リバー」 2003年 アメリカ


監督 クリント・イーストウッド
出演 ショーン・ペン
   ティム・ロビンス
   ケヴィン・ベーコン
   ローレンス・フィッシュバーン
   マーシャ・ゲイ・ハーデン
   ローラ・リニー
   エミー・ロッサム

ストーリー
一度は犯罪社会に身を置きながら今は雑貨店を経営しているジミー(ショーン・ペン)、平凡な家庭人であるデイヴ(ティム・ロビンス)、刑事のショーン(ケヴィン・ベーコン)の3人は、ボストンのイーストバッキンガム地区で少年時代を共に過ごした幼なじみ。
しかし彼らが11歳の時、ある男にデイヴだけが誘拐されて性的な凌辱を受け、その日を境に3人は離れ離れになった。
それから25年後の現在、ジミーの娘が何者かに殺される殺人事件が勃発。
捜査にあたることになったのはショーンと、相棒のホワイティー(ローレンス・フィッシュバーン)であり、容疑者として浮かび上がってきたのは、なんとデイヴだった。
今も少年時代のトラウマに悩まされているデイヴ。
そして、事件当夜に血まみれで帰宅した彼に、妻のセレステ(マーシャ・ゲイ・ハーデン)は不安を隠しきれず、ジミーに夫が犯人だと思うと心中を告白した。
ジミーは自らの手で娘の復讐を果たすべく、デイヴを呼び出す。
少年に悪戯をしていた男を殴り殺して血まみれになったと主張するデイヴに圧力をかけたジミーは、娘を殺したと言わせてデイヴを殺害し川に沈める。


寸評
もうひとつの「スタンド・バイ・ミー」といったキャッチコピーが見られたが、確かに1986年に作られたロブ・ライナーの「スタンド・バイ・ミー」と背景は同じような感じだ。
少年時代に印象深い出来事を共有体験するが、やがて大きくなってそれぞれの道を歩き始めることによって、以前のようにいつも一緒ということはなくなるけれども、共有体験をした仲間としてそれぞれの記憶の中にあるといった構成だ。しかし、その描き方は全く違う。「スタンド・バイ・ミー」は少年時代の友達の死を新聞記事で知り、主人公の言葉を借りる形で記憶をたどるように、自分の人生にあまりにも強烈な記憶を残した、少年時代に経験した2日間の出来事を振り返っていた。
一方この「ミスティック・リバー」は同じように、少年時代に経験した大きな共通の出来事を持ちながらも、やがて別れてそれぞれの人生を歩みながらも、過去の出来事の呪縛から逃れられないで、25年経った後のそれぞれの生き様を描いている。
公開から15年も経ってしまって、僕には「スタンド・バイ・ミー」はある種、少年時代の冒険物語というイメージで残っている。本作品は大人になってからの出来事を描いていることもあって、20数年も心の傷を持ちながら成長した3人の苦悩を描いていたと思う。その分、心理劇とも見て取れて中々見ごたえのある作品に仕上がっていた。
ダーティー・ハリーでトップ・スターとなったクリント・イーストウッドは監督としての才能も並々ならぬものがある。その力量は既に「許されざる者」や「マディソン郡の橋」、「スペース カウボーイ」等で実証済み。もっとも30年以上も監督をやって、20数作品も撮っているから、今や監督業の方が本職かも。

少年時代の友情に結ばれた仲間もいつしか別れを告げるし、それぞれの道を歩き出す事もわかっている。誰でも少年時代の友達との忘れる事の出来ない想い出を持っているし、時にはそれが悪戯心でやった万引きの想い出のように、心に重くのしかかかるものだったりする事もある。
ティム・ロビンス演じるデイブが少年の頃に受けた、幼児性的暴行犯の仕打ちは、当のデイブだけでなく、ジミーやショーンの心の傷になっていることがよくわかる。特にショーン・ペン演じるジミーがいい。彼はかつて服役していた事もあるが、仲間をチクルようなヤツは許さない分、捕まった時でも仲間の名前は絶対に漏らさない意志の強さを持っていて、愛する者のためなら何でもやる男だ。しかしそれでも、あの時連れて行かれたのが自分だったとしたらとの思いを引きずっている。ところが、そのジミーの持つ強さが終盤になって一気に映画を盛り上げる。それまでの全てがまるで其処に行くための伏線だったかのようだ。

無言電話を掛け続けるショーンの別居中の妻の存在もスパイスのようになっていて中々よいアクセントになっていた。成功者のように写るケビン・ベーコン演じる所のショーンも陽のあたる生活を送っているのではなく、これまた別の苦悩も抱えながら生きている一生の中における苦味を感じさせてよかった。
パレードに参加している息子を追いかけるセレステ、戻ってきた妻とパレードを見学するショーン、そして向かい側にいるジミーの姿が、物語はまだまだ続くのだとばかりに映画に余韻を持って終らせている。そして同じような重荷を背負って生きるであろう者も登場させて、さらなる余韻をもたせている。

昨今、CGを駆使したドンパチ映画が多い中にあって、カーク・ダグラスを髣髴させるショーン・ペンを初めとする性格俳優たちが繰り広げる人間劇と、演技力の共演を見ると何故か充実感を感じる。