おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

スワロウテイル

2021-04-22 07:49:03 | 映画
「スワロウテイル」 1996年 日本


監督 岩井俊二
出演 三上博史 江口洋介 Chara 伊藤歩
   アンディ・ホイ 渡部篤郎 桃井かおり
   山口智子 大塚寧々 洞口依子
   ミッキー・カーティス 渡辺哲

ストーリー
娼婦だった母を亡くして知り合いをたらい回しにされた少女(伊藤歩)は、胸にアゲハ蝶のタトゥーを入れた娼婦のグリコ(CHARA)に引き取られたのだが、グリコは歌手を夢見て“円都”にやって来た“円盗”で、2人の兄と生き別れになってからは娼婦を生業として生きてきた女である。
グリコからアゲハという名前を貰った少女は、同じ“円盗”のフェイホン(三上博史)やラン(渡部篤郎)たちが経営するなんでも屋“青空”で働き始める。
ある夜、グリコの客の須藤(塩見三省)に襲われたアゲハは隣室の元ボクサー・アーロウ(シーク・マハメッド・ベイ)に助けられ、運悪く死んだ須藤の腹の中から、『マイ・ウェイ』が録音されたカセットテープを発見した。
同じころ、中国マフィアのリーダー・リャンキ(江口洋介)は行方不明の須藤が持ち逃げした偽造一万円札のデータが入ったカセットテープを探していた。
腕利きの殺し屋でもあるランは仲間のシェンメイ(山口智子)からリャンキの情報をつかむと、テープの正体をつきとめた。
大金を掴んだフェイホン達は、グリコの夢を叶えてやろうとライヴハウス“イェンタウンクラブ”をオープンさせる。
グリコの歌は評判を呼び、たちまち彼女は大スターとなった。
そんなある日、アゲハは仲間のホァン(小橋賢児)たちと試した覚醒剤で意識不明になり、偶然通りかかったリャンキに助けられ、リャンキがグリコの生き別れの兄であることを知った。
フェイホンはグリコの関係を引き裂こうとしたマネージャーの星野(洞口依子)に密入国を入国管理局に密告されたが、なんとか街に戻ってこれたフェイホンはグリコのために身を引いて、手切れ金を受け取った。
これにバンドのメンバーは激怒し、イェンタウンクラブは閉鎖に追い込まれてしまった。
アゲハは再び偽札を使って、店の権利とバラバラになった仲間の気持ちを取り戻そうとする。
一方、グリコの娼婦仲間・レイコ(大塚寧々)から須藤が死んだいきさつをつかんだリャンキの手下・マオフウ( アンディ・ホイ)は、執拗にグリコを追いつめていた。


寸評
"円"が世界で一番強かった時代。
一攫千金を求めて日本にやってきた外国人達は、街を"円都(イェン・タウン)"と呼び、日本人達は住み着いた違法労働者達を"円盗(イェン・タウン)"と呼んで卑しんだ。
そんな円都に住む、円盗たちの物語である。
そんなナレーションが最初と最後に入る。
舞台は中国マフィアがうごめいている架空の街だが、画面に描かれるスラム街の様子はその雰囲気を十分すぎるぐらい醸し出していた。
最初はスラム街での人身売買を含めた売春組織の様子が描かれ、そして「青空」という浮浪者の様な連中が商売をしている場所が描かれる。
人身売買も彼らが行う商売も非合法なもので無茶苦茶なのだが、アメリカのギャング組織やイタリアンマフィアと違って、中国マフィアならこんなことをやるだろうなと思わせる内容だ。
少女の人身売買ではまるで物を売る様に転売されていく様子が描かれるし、商売と言っても無理やり走っている車をパチンコで狙い打ってパンクさせ、その修理代を稼ぎながら尚且つガソリンを抜き取るといったものだ。
土地を不法占拠していそうなのに退去させられないのは何故なんだと思ったりもするが、そんな疑問を挟んではこの映画は楽しめない。
車に押しつぶされて死んだ須藤の腹の中から紙幣に埋められた磁気データの情報が入ったカセットテープが出てくるなどというのもぶっ飛んでいる。
兎に角前半は円盗と呼ばれる彼らの無軌道ぶりが徹底的に描かれるのだが、その異様な世界についていけなければこの時点でギブ・アップだ。

やがて「青空」も連中がそのデーターを利用して偽札を作り大金を得るのだが、本当にあのやり方で偽札が作れるのかどうかは分からない。
アゲハが偽札を作った時には小学生を大量動員させて換金するのだが、大勢の小学生にこんな犯罪行為をさせるのは映画と言え問題だと思う。
このシーンのためにR-12指定を受けたのだと後日に知った。
まともな判断だと思う。

日本映画だが交わされる会話は英語だったり中国語だったりで、ほとんど字幕が表示されるという形式で、そのことも異様な雰囲気の一役を買っている。
なかには何語だかわからないような言葉も使われていたような気がする。
グリコのライブシーンや、アヘン街をうろつく姿などシーン的に必要以上の長さを持つシーンが随所にある。
意図したシーンの表現なのだろうがこの映画を長くしている要因にもなっている。
ちょっとしか登場シーンしかない俳優さんもいるが、そのチョットで魅力を発散させるのは俳優さんの力量なのか監督の演出力によるものなのだろうか?
娼婦仲間レイコの大塚寧々や雑誌記者の桃井かおりは登場シーンが多いほうで、ランの仲間の山口智子などはチラッとしか登場しないから輝いていたような気がするし、一番格好良かった三上博史が儲け役だった。