「約束」 1972年 日本
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監督 斎藤耕一
出演 岸恵子 萩原健一 南美江 三國連太郎
中山仁 姫ゆり子 殿山泰司
ストーリー
「頂くわ、お弁当」「口をきいたな、あんた」二人が初めて言葉を交わしたのは、そんなやりとりだった。
日本海を左手に北上する長い旅の列車で、若い男(萩原健一)が前の座席の年上の女(岸恵子)にあれこれ喋りかけたあげく、口を開かせたのは、男が駅弁を進めたのがきっかけだった。
図々しいが奇妙に憎めぬところもあるこの男は、列車が終着駅に着くと、女を付け回した。
無表情でどこか影のある女も得体が知れなかった。
女は松宮螢子と名乗り、夫を殺害した罪で服役中の模範囚であり、女性看視官(南美江)に付き添われて仮出所中の身だった。
仮出所の目的は、母の墓参りと、同房の女囚から頼まれた手紙をその夫に届けるためであった。
螢子は村井晋吉(殿山泰司)を訪ね頼まれた手紙を届けたが、女(姫ゆり子)のできた晋吉は冷たかった。
男は螢子にしつこくつきまとい、待ち合わせの約束をさせる。
螢子は約束どおりに旅館で男を待つが、待ちぼうけをくわされてしまった。
しかし男は、刑務所に戻るために夜行列車に乗る螢子を追ってきた。
そんな折、列車が土砂崩れにあって停車した。
慌てる房江を尻目に、二人は示し合わせたように線路脇に飛びおり、言葉もなく抱き合った。
逃亡したと思われた二人が戻った列車はやがて動き始め、夜明けには刑務所のある街に着いた。
別れの時がやってきて、男は別れ際中原朗と名のった。
実は中原も、傷害現金強盗の罪を犯して警察に追われる身であったのだが、螢子はそれを知らなかった。
中原は螢子に差し入れる衣料品を夢中で買いあさるが、尾行していた刑事(三國連太郎)に逮捕される。
寸評
日本海の景色と風の音が雰囲気を盛り上げているのだが、映像と雰囲気が前面に出た作品だ。
岸恵子はさすがで、キリッとした顔立ちから繰り出される寡黙な表情が何とも言えない。
対照的にグループサウンドのスターだったショーケンこと萩原健一がみるからに軽薄な若者を好演している。
これが映画初出演だが、その後の活躍を予見させるものをすでに示していたと言える。
全力疾走するシーンが結構あるが、走る姿は若さと若者のエネルギーの象徴だったと思う。
ここでのショーケンが走る姿は、伝説的なテレビドラマ「太陽にほえろ!」のマカロニこと萩原健一が走る姿に引き継がれたのではないかと思う。
冬の日本海は絵になるが、田舎町の中のショットもなかなか印象的だ。
蛍子が旅館で男と待ち合わせの約束をする。
一度目の約束だが男は現れない。
当初入り口で待っていた蛍子は部屋を借りてそこで待つ。
諦めて去っていくシーンは余計なことを描かず、1ショットで描き切ったところなどはなかなかいい。
駅まで追いかけてきた男が秘密を打ち明けられ、呆然と白い壁を背景に立ちつくすシーンも印象的だ。
二人を取り巻くように二人の男が登場する。
一人は護送犯の中山仁である。
かれは手錠をはめられており、萩原健一からちょっかいをかけられるのだが、この男を登場させたのは二人の行く末を暗示させるためだったのではないかと思う。
二人目は殿山泰司の村井晋吉である。
何の罪か分からないが妻が服役していて、その妻からの手紙を拒否するだけでなく愛人がいる。
蛍子も夫殺しをやっているので、この男は蛍子が男への不信感を思い起こさせるために必要だったのだろう。
それは萩原健一の一途な愛を際立たせるための存在でもあった。
物足りない点があるとすれば、見ず知らずの若者が年上の女に魅かれていく過程が希薄なことがある。
それがこの映画を叙情的な雰囲気映画にしていると思う。
しかし、それが取り柄の作品でもあるのだが。
蛍子は監視官に信用されていると思っているが、監視官は仮釈放に反対したと言っているので蛍子が思っているほど彼女を信用してはいなかったのだろう。
その割には蛍子は、結構自由に行動させて貰っているし、模範囚であれば蛍子のように母親の墓参りをさせてもらえるものなのだろうか。
三国連太郎が刑事、裁判官、検事と三役をやっているが、この意図は何だったんだろう。
裁く側の人間をひとまとめにしたということなのだろうか。
まさか出演料をケチったわけでもあるまいに。
二度目の約束にも男は現れないというラストシーンの岸恵子のアップはいい。
この頃の斎藤耕一はいい映画を撮っていたがその後はイマイチだったなあ。
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監督 斎藤耕一
出演 岸恵子 萩原健一 南美江 三國連太郎
中山仁 姫ゆり子 殿山泰司
ストーリー
「頂くわ、お弁当」「口をきいたな、あんた」二人が初めて言葉を交わしたのは、そんなやりとりだった。
日本海を左手に北上する長い旅の列車で、若い男(萩原健一)が前の座席の年上の女(岸恵子)にあれこれ喋りかけたあげく、口を開かせたのは、男が駅弁を進めたのがきっかけだった。
図々しいが奇妙に憎めぬところもあるこの男は、列車が終着駅に着くと、女を付け回した。
無表情でどこか影のある女も得体が知れなかった。
女は松宮螢子と名乗り、夫を殺害した罪で服役中の模範囚であり、女性看視官(南美江)に付き添われて仮出所中の身だった。
仮出所の目的は、母の墓参りと、同房の女囚から頼まれた手紙をその夫に届けるためであった。
螢子は村井晋吉(殿山泰司)を訪ね頼まれた手紙を届けたが、女(姫ゆり子)のできた晋吉は冷たかった。
男は螢子にしつこくつきまとい、待ち合わせの約束をさせる。
螢子は約束どおりに旅館で男を待つが、待ちぼうけをくわされてしまった。
しかし男は、刑務所に戻るために夜行列車に乗る螢子を追ってきた。
そんな折、列車が土砂崩れにあって停車した。
慌てる房江を尻目に、二人は示し合わせたように線路脇に飛びおり、言葉もなく抱き合った。
逃亡したと思われた二人が戻った列車はやがて動き始め、夜明けには刑務所のある街に着いた。
別れの時がやってきて、男は別れ際中原朗と名のった。
実は中原も、傷害現金強盗の罪を犯して警察に追われる身であったのだが、螢子はそれを知らなかった。
中原は螢子に差し入れる衣料品を夢中で買いあさるが、尾行していた刑事(三國連太郎)に逮捕される。
寸評
日本海の景色と風の音が雰囲気を盛り上げているのだが、映像と雰囲気が前面に出た作品だ。
岸恵子はさすがで、キリッとした顔立ちから繰り出される寡黙な表情が何とも言えない。
対照的にグループサウンドのスターだったショーケンこと萩原健一がみるからに軽薄な若者を好演している。
これが映画初出演だが、その後の活躍を予見させるものをすでに示していたと言える。
全力疾走するシーンが結構あるが、走る姿は若さと若者のエネルギーの象徴だったと思う。
ここでのショーケンが走る姿は、伝説的なテレビドラマ「太陽にほえろ!」のマカロニこと萩原健一が走る姿に引き継がれたのではないかと思う。
冬の日本海は絵になるが、田舎町の中のショットもなかなか印象的だ。
蛍子が旅館で男と待ち合わせの約束をする。
一度目の約束だが男は現れない。
当初入り口で待っていた蛍子は部屋を借りてそこで待つ。
諦めて去っていくシーンは余計なことを描かず、1ショットで描き切ったところなどはなかなかいい。
駅まで追いかけてきた男が秘密を打ち明けられ、呆然と白い壁を背景に立ちつくすシーンも印象的だ。
二人を取り巻くように二人の男が登場する。
一人は護送犯の中山仁である。
かれは手錠をはめられており、萩原健一からちょっかいをかけられるのだが、この男を登場させたのは二人の行く末を暗示させるためだったのではないかと思う。
二人目は殿山泰司の村井晋吉である。
何の罪か分からないが妻が服役していて、その妻からの手紙を拒否するだけでなく愛人がいる。
蛍子も夫殺しをやっているので、この男は蛍子が男への不信感を思い起こさせるために必要だったのだろう。
それは萩原健一の一途な愛を際立たせるための存在でもあった。
物足りない点があるとすれば、見ず知らずの若者が年上の女に魅かれていく過程が希薄なことがある。
それがこの映画を叙情的な雰囲気映画にしていると思う。
しかし、それが取り柄の作品でもあるのだが。
蛍子は監視官に信用されていると思っているが、監視官は仮釈放に反対したと言っているので蛍子が思っているほど彼女を信用してはいなかったのだろう。
その割には蛍子は、結構自由に行動させて貰っているし、模範囚であれば蛍子のように母親の墓参りをさせてもらえるものなのだろうか。
三国連太郎が刑事、裁判官、検事と三役をやっているが、この意図は何だったんだろう。
裁く側の人間をひとまとめにしたということなのだろうか。
まさか出演料をケチったわけでもあるまいに。
二度目の約束にも男は現れないというラストシーンの岸恵子のアップはいい。
この頃の斎藤耕一はいい映画を撮っていたがその後はイマイチだったなあ。