「目撃」 1997年 アメリカ
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監督 クリント・イーストウッド
出演 クリント・イーストウッド
ジーン・ハックマン
エド・ハリス
ローラ・リニー
スコット・グレン
デニス・ヘイスバート
ストーリー
大統領の後援者である政界の大物サリヴァンの邸宅に忍び込んだ盗みのプロ、ルーサー・ホイットニーは、一家が休暇旅行中に夫人クリスティの寝室にある金庫室の中身を頂く。
その時、何とクリスティが大統領のリッチモンドを伴って帰宅。
酔った勢いで暴力を振るうリッチモンドに、クリスティがナイフで反撃。
飛び込んだシークレット・サービスのバートンとコリンが、彼女を射殺した。
大統領補佐官のグロリアは、2人に現場の証拠隠滅を命じ、事件の揉み消しを図る。
金庫室に隠れて一部始終を目撃したルーサーは、彼らが現場に忘れたナイフを手に逃走。
事態に気づいたバートンとコリンの追跡を振り切って逃げきった。
目撃を名乗り出ると窃盗の罪に問われる上に、現職大統領が殺人の張本人だという話を誰が信じてくれよう。
ルーサーは悩んだ末に国外逃亡を決める。
一方、サリヴァン邸強盗殺人事件を担当する刑事のセス・フランクは、水も漏らさぬ鮮やかな手口は明らかにルーサーの犯行を示唆しているものの、彼が殺人を犯すとは考えられない。
だが、ルーサーと直接対面したフランクは、彼が何かを知っていると確信。
ルーサーは空港で搭乗を待つ間、テレビでリッチモンドがホワイトハウスで開いた記者会見の中継を見る。
盟友ウォルターの夫人の死を悼み、白々しく涙を流すリッチモンドの姿を見た時、ルーサーの腹は決まった。
ルーサーは、離れて暮らす最愛の娘ケイトとカフェで接触する。
大統領が雇った殺し屋とコリンが彼を狙撃するが失敗に終わり、ルーサーは逃亡した。
コリンは、今度はケイトを狙い、崖から車ごと突き落とされた彼女は重傷を負う。
とどめを刺すべくケイトのいる病院に侵入したコリンを、待ち伏せしていたルーサーが殺した。
ルーサーはサリヴァンに接触すると、事件の真相を告白して、あのナイフを手渡した。
寸評
事件を目撃した為に犯人側から命を狙われると言う物語は数多く撮られてきたが、「目撃」のユニークなところはその犯人がアメリカ大統領である点だ。
直接手を下したのはシークレット・サービスの二人だが、その原因を作ったのは大統領で、もみ消しを指揮したのが主席補佐官であると言うことが作品の興味を引く。
大統領の有力な後援者であるサリヴァンが、リッチモンドは女性にだらしない男だと言っていたが、それと同時に若い後妻をもらったサリバンの異常性格も描かれ、二人の性的行動がこの物語の背景にある。
この作品は1997年の製作だが、奇しくも翌1998年に第42代アメリカ合衆国大統領ビル・クリントンと研修生モニカ・ルインスキーのスキャンダルが報じられて大きな話題となった。
このルインスキー事件の追及過程で、クリントンが聖域であるはずのホワイトハウスでの行為がマスコミに暴露され、大統領も「ルインスキーさんと不適切な関係を持った」と告白せざるを得なくなって、クリントンは大統領職としての権威を大きく失墜させた。
大統領と言えども生身の人間で、ハメをはずした行為を行うものだと認識させられたのだが、映画に描かれた内容は正にその事実を先取りしたようなものだ。
余計な主張などない、文字通り娯楽に徹したストレートな作品だ。
冒頭でビデオ録画のエピソードが出てくるが、これも伏線になっていて、この手の作品の手際に工夫がみられる。
冒頭でルーサーが豪邸に忍び込むが、その手際のよさに「なぜそんなに完璧に事が運べるのか」と疑問が湧いてきて、あまりにも都合がよすぎるのではないかと感じていたのだが、監督イーストウッドはその説明を、ルーサーが犯人はこうしたのではないかと刑事のセス・フランクに語ることで行っていて手抜きはしていない。
シークレット・サービスのバートンとコリンがサリヴァン夫人を殺したのだが、この二人のキャラクター設定も作品を面白くしている。
ティム・コリンはためらいもなく命ぜられた任務を遂行するタイプである。
一方のビル・バートンは命令に従いながらも自責の念を持ち続ける。
首席補佐官としては重みに欠けるグロリアに対して、二人の性格対比がそれを補っていたように感じた。
ルーサーが大統領側への挑戦として、盗み出したアクセサリーをグロリアに送り届ける。
グロリアがその高価な贈り物に有頂天になる様子は、大統領はグロリアとも関係していたのではないかと思わせ、その後にダンスをしながらかわす会話の様子が面白い。
それにしてもルーサーはスーパーマンで、ピンチに慌てふためくこともないし、神出鬼没でもある。
娘のケイトと落ち合う場面で狙撃されるが、偶然の出来事で難を逃れた時に見せる姿の消し方の超人的な行動も、娯楽映画としてはこれもありなのだろう。
事件を通じて父娘が確執を取り払う物語として見れば了解できるのだが、サスペンスとして見た場合の解決に至る過程は気ぜわしい。
ビル・バートン、グロリアの処理は一瞬のことで、僕は少し物足りなさを感じた。
サリヴァンの行動は理解できるけれど、彼が発表する姿の真実性を納得させる映像はない。
大統領演説と共に、テレビに映し出される感動的なスピーチには裏があると言うことなのかもしれない。
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監督 クリント・イーストウッド
出演 クリント・イーストウッド
ジーン・ハックマン
エド・ハリス
ローラ・リニー
スコット・グレン
デニス・ヘイスバート
ストーリー
大統領の後援者である政界の大物サリヴァンの邸宅に忍び込んだ盗みのプロ、ルーサー・ホイットニーは、一家が休暇旅行中に夫人クリスティの寝室にある金庫室の中身を頂く。
その時、何とクリスティが大統領のリッチモンドを伴って帰宅。
酔った勢いで暴力を振るうリッチモンドに、クリスティがナイフで反撃。
飛び込んだシークレット・サービスのバートンとコリンが、彼女を射殺した。
大統領補佐官のグロリアは、2人に現場の証拠隠滅を命じ、事件の揉み消しを図る。
金庫室に隠れて一部始終を目撃したルーサーは、彼らが現場に忘れたナイフを手に逃走。
事態に気づいたバートンとコリンの追跡を振り切って逃げきった。
目撃を名乗り出ると窃盗の罪に問われる上に、現職大統領が殺人の張本人だという話を誰が信じてくれよう。
ルーサーは悩んだ末に国外逃亡を決める。
一方、サリヴァン邸強盗殺人事件を担当する刑事のセス・フランクは、水も漏らさぬ鮮やかな手口は明らかにルーサーの犯行を示唆しているものの、彼が殺人を犯すとは考えられない。
だが、ルーサーと直接対面したフランクは、彼が何かを知っていると確信。
ルーサーは空港で搭乗を待つ間、テレビでリッチモンドがホワイトハウスで開いた記者会見の中継を見る。
盟友ウォルターの夫人の死を悼み、白々しく涙を流すリッチモンドの姿を見た時、ルーサーの腹は決まった。
ルーサーは、離れて暮らす最愛の娘ケイトとカフェで接触する。
大統領が雇った殺し屋とコリンが彼を狙撃するが失敗に終わり、ルーサーは逃亡した。
コリンは、今度はケイトを狙い、崖から車ごと突き落とされた彼女は重傷を負う。
とどめを刺すべくケイトのいる病院に侵入したコリンを、待ち伏せしていたルーサーが殺した。
ルーサーはサリヴァンに接触すると、事件の真相を告白して、あのナイフを手渡した。
寸評
事件を目撃した為に犯人側から命を狙われると言う物語は数多く撮られてきたが、「目撃」のユニークなところはその犯人がアメリカ大統領である点だ。
直接手を下したのはシークレット・サービスの二人だが、その原因を作ったのは大統領で、もみ消しを指揮したのが主席補佐官であると言うことが作品の興味を引く。
大統領の有力な後援者であるサリヴァンが、リッチモンドは女性にだらしない男だと言っていたが、それと同時に若い後妻をもらったサリバンの異常性格も描かれ、二人の性的行動がこの物語の背景にある。
この作品は1997年の製作だが、奇しくも翌1998年に第42代アメリカ合衆国大統領ビル・クリントンと研修生モニカ・ルインスキーのスキャンダルが報じられて大きな話題となった。
このルインスキー事件の追及過程で、クリントンが聖域であるはずのホワイトハウスでの行為がマスコミに暴露され、大統領も「ルインスキーさんと不適切な関係を持った」と告白せざるを得なくなって、クリントンは大統領職としての権威を大きく失墜させた。
大統領と言えども生身の人間で、ハメをはずした行為を行うものだと認識させられたのだが、映画に描かれた内容は正にその事実を先取りしたようなものだ。
余計な主張などない、文字通り娯楽に徹したストレートな作品だ。
冒頭でビデオ録画のエピソードが出てくるが、これも伏線になっていて、この手の作品の手際に工夫がみられる。
冒頭でルーサーが豪邸に忍び込むが、その手際のよさに「なぜそんなに完璧に事が運べるのか」と疑問が湧いてきて、あまりにも都合がよすぎるのではないかと感じていたのだが、監督イーストウッドはその説明を、ルーサーが犯人はこうしたのではないかと刑事のセス・フランクに語ることで行っていて手抜きはしていない。
シークレット・サービスのバートンとコリンがサリヴァン夫人を殺したのだが、この二人のキャラクター設定も作品を面白くしている。
ティム・コリンはためらいもなく命ぜられた任務を遂行するタイプである。
一方のビル・バートンは命令に従いながらも自責の念を持ち続ける。
首席補佐官としては重みに欠けるグロリアに対して、二人の性格対比がそれを補っていたように感じた。
ルーサーが大統領側への挑戦として、盗み出したアクセサリーをグロリアに送り届ける。
グロリアがその高価な贈り物に有頂天になる様子は、大統領はグロリアとも関係していたのではないかと思わせ、その後にダンスをしながらかわす会話の様子が面白い。
それにしてもルーサーはスーパーマンで、ピンチに慌てふためくこともないし、神出鬼没でもある。
娘のケイトと落ち合う場面で狙撃されるが、偶然の出来事で難を逃れた時に見せる姿の消し方の超人的な行動も、娯楽映画としてはこれもありなのだろう。
事件を通じて父娘が確執を取り払う物語として見れば了解できるのだが、サスペンスとして見た場合の解決に至る過程は気ぜわしい。
ビル・バートン、グロリアの処理は一瞬のことで、僕は少し物足りなさを感じた。
サリヴァンの行動は理解できるけれど、彼が発表する姿の真実性を納得させる映像はない。
大統領演説と共に、テレビに映し出される感動的なスピーチには裏があると言うことなのかもしれない。