特定秘密保護法案の審議が国会で始まっているが、今日の委員会審議では民間人への調査が問題になった。つまり特定秘密に関わる民間企業の従業員について国が事細かに調査するというのである。
自民党のホームページに掲載されているQ&Aによると、特定秘密を扱う職員(公務員)は特定秘密を漏らすおそれがないかどうか適正評価を受けなくてはならないとされている(ただし大臣などは免除…一番必要な木もするが)。
その際、調査される項目は、
(1)特定有害活動及びテロリズムとの関係
(2)犯罪及び懲戒の経歴
(3)情報の取扱いに係る非違の経歴
(4)薬物の濫用及び影響
(5)精神疾患
(6)飲酒についての節度
(7)信用状態その他の経済的な状況
だと言う。
さらに「評価対象者の家族(配偶者、父母、子、兄弟姉妹、配偶者の父母及び子)と同居人について氏名、生年月日、住所及び国籍のみを調査します」とある。
そしてわざわざ「適性評価により、プライバシーが侵害されるのではありませんか?」などの設問を立てた上で、「適性評価の実施に当たっては、評価対象者の明示的な同意を必要(とする)」とか、「政治活動や組合活動、個人の思想・信条は調査事項ではありません」などと書いている。
国会で取り上げられたのは、この本来なら担当する職員に対して行われる適正評価が、民間企業の従業員にも同様に行われるという問題である。たとえば兵器産業で特定秘密に指定された部分を担当する人も、国によって本人や家族の素行調査が行われるのだ。
ここで生じる大きな問題のひとつは、この適正評価の結果が企業側に報告されるという点である。担当の森雅子大臣は「企業側に伝えられるのは結果だけ。またこの結果を人事考課に影響させることは法律で禁じている」と答弁した。人事考課というのはようするに査定というこであろう。
しかし当然ながら、もし企業の側が国から「この人は特定秘密に関わる適正が無い」もしくは「この人は調査に同意しなかった」と言われて、ただ見過ごすことが出来るだろうか。おそらく独自に社内調査をするに違いない。その結果をもってその人を左遷するなり処分するなりをするなら、これは直接に国の調査結果を反映させたのではないと言い張れるわけだから、企業は法律に違反しないことになる。
もちろん、そもそも国の調査範囲の限定規定の方も全くなんの歯止めになっていない。
「政治活動や組合活動、個人の思想・信条は調査事項ではない」と言っても、調査事項の中に「特定有害活動及びテロリズムとの関係」とか「情報の取扱いに係る非違の経歴」などという項目が入っている以上、たとえば社会主義者や共産主義者、もしくはイスラム教徒であるかどうか、まさに思想信条信教が調べられることは間違いない。
当然それは本人にとどまらず、家族、同居人、友人や恋人まで拡大されるだろう。たとえば恋人が左翼活動家だとか、友人がイスラム原理主義者だとかというケースもありうる訳で、表向きは恋人や友人は調査対象でないと言っても、「テロリズムの関係」という名目でいくらでも調べることが出来るのだ。
ただ本当のことを言えば、こんな法律が出来ようが出来まいが、現実にはもっとひどいことが、すでに今現在でも公安警察によって日常的に行われているのである。
ぼくは学生時代から新左翼運動の活動家だったのだが、卒業して最初の就職先は意図したわけではなかったが軍事産業の下請けだった。ぼくは実際にその工場の中に入って当時最新鋭のジェット戦闘機の性能試験の報告書やマニュアルを整理したりしていた。
別に不正なことをしたことはない。情報を外部に持ち出したことも無い。そもそもそんな資料は現実の革命運動には何の意味も無かった。実を言えばむしろ違法なことをしていたのは、その軍事産業の大会社とぼくが入社した下請け会社の方だった。ここでも断っておくが、ぼくはその不正についても別に誰にも口外しなかったし、どちらの会社にも不利益を与えていない。
それでもある日ぼくは突然、大会社への出入りが禁止され、自分の会社の中でもイジメを受けることになった。仕事を全て奪われ、いつの間にか机が窓際に移動され、そのうちその机も無くなり、やがて椅子さえ無くなった。追い出しを受けたのである。
こうなった原因はもちろん公安警察が大会社に密告したからだ。しかしぼくは別に前科もなかったし、法的にも契約上もクビになる理由は無かった(少なくともその時はw)
その後、いろいろな会社を転転とすることになるのだが、たいていの場合、2~3年すると公安警察が会社に密告してきた。どの場合も一応表向きは自己都合の円満退社の形を取ったが実質的にはクビになった。(その頃にはこちらの脛にも多少の傷がついてたのも事実だがww)
こういう国家権力のやり方は、単に嫌がらせと言うより反体制派を経済的に追い詰める策略である。革命家だって飯を食わなくてはならない。年中クビになっていたら革命運動も出来なくなるというわけだ。
ただ一番つらかったのは、こうした嫌がらせが家族にまで及んだときだった。革命運動をしていたのは家族でぼく一人だったし、また学校を卒業すると同時に家を出ていたから、ほとんど家族と音信は無かった。それでも国家権力はその家族にまで嫌がらせをした。
具体的に言えば、弟が就職差別を受けたのだ。彼は教員免許を取り教員になろうとしていた。それなりに優秀だったのにずっと公立学校の教員試験に落ち続けた。ある人が弟にその理由として兄が革命運動をしているからだと教えてくれたそうだ。
全くこの国の権力者ははじめから憲法を守る気など持っていない。いかに思想、信条、表現の自由などと書かれていても、彼らにはそんなことは関係ないのである。
さて思わず思い出話に話が脱線してしまったが、ようするに今回の特定秘密保護法は、ぼくが体験したようなことを、より合法的にやれるようにする法律でもあると言うことなのである。
ある企業に勤めている人が、たとえば自分の家族や友人が反体制の思想を持っているというだけで、会社をクビになってしまうかもしれない。
もしあなたが急に防衛省関連の仕事を命じられるとする。それはあなたが知らないところで特定秘密に指定されているかもしれない(秘密なんだから知らないのが当然か…)。すると国家機関があなたの身辺調査を始める。あなたは直接関係なくとも家族か親友の中に反原発などの活発な活動家がいたとする。国はそれを反体制活動とみなし、あなたはそういう人と近しい関係者と見られて「適正評価」で不可とされる。
その結果報告を受けた会社は驚き慌てる。会社にとって最大の得意先である省庁に嫌われるような社員を置いておくわけにいかないからだ。会社はあなたをどこか遠い勤務地に転勤させるかもしれない。意味の無い部署に配置転換するかもしれない。あなたは耐え切れず会社を辞めることになる。
確かに表向き会社はあなたをクビにすることは出来ないが、今では社員を追い出す技術はぼくが若い頃よりずっと進化しているようだし、法的規制もかなり緩くなっているようだ。
あなたは何一つ秘密に関わったわけでもなく、ましてや秘密を漏らしたわけでもないのに、人生を滅茶苦茶にされてしまうかもしれない。秘密法の恐ろしさはこういうところにあるのである。
自民党のホームページに掲載されているQ&Aによると、特定秘密を扱う職員(公務員)は特定秘密を漏らすおそれがないかどうか適正評価を受けなくてはならないとされている(ただし大臣などは免除…一番必要な木もするが)。
その際、調査される項目は、
(1)特定有害活動及びテロリズムとの関係
(2)犯罪及び懲戒の経歴
(3)情報の取扱いに係る非違の経歴
(4)薬物の濫用及び影響
(5)精神疾患
(6)飲酒についての節度
(7)信用状態その他の経済的な状況
だと言う。
さらに「評価対象者の家族(配偶者、父母、子、兄弟姉妹、配偶者の父母及び子)と同居人について氏名、生年月日、住所及び国籍のみを調査します」とある。
そしてわざわざ「適性評価により、プライバシーが侵害されるのではありませんか?」などの設問を立てた上で、「適性評価の実施に当たっては、評価対象者の明示的な同意を必要(とする)」とか、「政治活動や組合活動、個人の思想・信条は調査事項ではありません」などと書いている。
国会で取り上げられたのは、この本来なら担当する職員に対して行われる適正評価が、民間企業の従業員にも同様に行われるという問題である。たとえば兵器産業で特定秘密に指定された部分を担当する人も、国によって本人や家族の素行調査が行われるのだ。
ここで生じる大きな問題のひとつは、この適正評価の結果が企業側に報告されるという点である。担当の森雅子大臣は「企業側に伝えられるのは結果だけ。またこの結果を人事考課に影響させることは法律で禁じている」と答弁した。人事考課というのはようするに査定というこであろう。
しかし当然ながら、もし企業の側が国から「この人は特定秘密に関わる適正が無い」もしくは「この人は調査に同意しなかった」と言われて、ただ見過ごすことが出来るだろうか。おそらく独自に社内調査をするに違いない。その結果をもってその人を左遷するなり処分するなりをするなら、これは直接に国の調査結果を反映させたのではないと言い張れるわけだから、企業は法律に違反しないことになる。
もちろん、そもそも国の調査範囲の限定規定の方も全くなんの歯止めになっていない。
「政治活動や組合活動、個人の思想・信条は調査事項ではない」と言っても、調査事項の中に「特定有害活動及びテロリズムとの関係」とか「情報の取扱いに係る非違の経歴」などという項目が入っている以上、たとえば社会主義者や共産主義者、もしくはイスラム教徒であるかどうか、まさに思想信条信教が調べられることは間違いない。
当然それは本人にとどまらず、家族、同居人、友人や恋人まで拡大されるだろう。たとえば恋人が左翼活動家だとか、友人がイスラム原理主義者だとかというケースもありうる訳で、表向きは恋人や友人は調査対象でないと言っても、「テロリズムの関係」という名目でいくらでも調べることが出来るのだ。
ただ本当のことを言えば、こんな法律が出来ようが出来まいが、現実にはもっとひどいことが、すでに今現在でも公安警察によって日常的に行われているのである。
ぼくは学生時代から新左翼運動の活動家だったのだが、卒業して最初の就職先は意図したわけではなかったが軍事産業の下請けだった。ぼくは実際にその工場の中に入って当時最新鋭のジェット戦闘機の性能試験の報告書やマニュアルを整理したりしていた。
別に不正なことをしたことはない。情報を外部に持ち出したことも無い。そもそもそんな資料は現実の革命運動には何の意味も無かった。実を言えばむしろ違法なことをしていたのは、その軍事産業の大会社とぼくが入社した下請け会社の方だった。ここでも断っておくが、ぼくはその不正についても別に誰にも口外しなかったし、どちらの会社にも不利益を与えていない。
それでもある日ぼくは突然、大会社への出入りが禁止され、自分の会社の中でもイジメを受けることになった。仕事を全て奪われ、いつの間にか机が窓際に移動され、そのうちその机も無くなり、やがて椅子さえ無くなった。追い出しを受けたのである。
こうなった原因はもちろん公安警察が大会社に密告したからだ。しかしぼくは別に前科もなかったし、法的にも契約上もクビになる理由は無かった(少なくともその時はw)
その後、いろいろな会社を転転とすることになるのだが、たいていの場合、2~3年すると公安警察が会社に密告してきた。どの場合も一応表向きは自己都合の円満退社の形を取ったが実質的にはクビになった。(その頃にはこちらの脛にも多少の傷がついてたのも事実だがww)
こういう国家権力のやり方は、単に嫌がらせと言うより反体制派を経済的に追い詰める策略である。革命家だって飯を食わなくてはならない。年中クビになっていたら革命運動も出来なくなるというわけだ。
ただ一番つらかったのは、こうした嫌がらせが家族にまで及んだときだった。革命運動をしていたのは家族でぼく一人だったし、また学校を卒業すると同時に家を出ていたから、ほとんど家族と音信は無かった。それでも国家権力はその家族にまで嫌がらせをした。
具体的に言えば、弟が就職差別を受けたのだ。彼は教員免許を取り教員になろうとしていた。それなりに優秀だったのにずっと公立学校の教員試験に落ち続けた。ある人が弟にその理由として兄が革命運動をしているからだと教えてくれたそうだ。
全くこの国の権力者ははじめから憲法を守る気など持っていない。いかに思想、信条、表現の自由などと書かれていても、彼らにはそんなことは関係ないのである。
さて思わず思い出話に話が脱線してしまったが、ようするに今回の特定秘密保護法は、ぼくが体験したようなことを、より合法的にやれるようにする法律でもあると言うことなのである。
ある企業に勤めている人が、たとえば自分の家族や友人が反体制の思想を持っているというだけで、会社をクビになってしまうかもしれない。
もしあなたが急に防衛省関連の仕事を命じられるとする。それはあなたが知らないところで特定秘密に指定されているかもしれない(秘密なんだから知らないのが当然か…)。すると国家機関があなたの身辺調査を始める。あなたは直接関係なくとも家族か親友の中に反原発などの活発な活動家がいたとする。国はそれを反体制活動とみなし、あなたはそういう人と近しい関係者と見られて「適正評価」で不可とされる。
その結果報告を受けた会社は驚き慌てる。会社にとって最大の得意先である省庁に嫌われるような社員を置いておくわけにいかないからだ。会社はあなたをどこか遠い勤務地に転勤させるかもしれない。意味の無い部署に配置転換するかもしれない。あなたは耐え切れず会社を辞めることになる。
確かに表向き会社はあなたをクビにすることは出来ないが、今では社員を追い出す技術はぼくが若い頃よりずっと進化しているようだし、法的規制もかなり緩くなっているようだ。
あなたは何一つ秘密に関わったわけでもなく、ましてや秘密を漏らしたわけでもないのに、人生を滅茶苦茶にされてしまうかもしれない。秘密法の恐ろしさはこういうところにあるのである。