あなたから一番遠いブログ

自分が生きている世界に違和感を感じている。誰にも言えない本音を、世界の片隅になすりつけるように書きつけよう。

御嶽山事故と自衛隊の「色」

2014年10月03日 00時00分52秒 | Weblog
 木曽の御岳の水蒸気噴火で発生した事故は、戦後の山岳事故では最大の惨事になってしまった。現場はすさまじい状態だったようで、まさに地獄絵図のような証言が報道されている。子供から青年、壮年、高齢者まで、本当にあらゆる年代の方が被害にあい、御岳が多くの人に愛され親しまれる山であるということと同時に、昨今の登山ブームが幅広い人達に広まっていることをあらためて感じさせた。
 ぼくも今でこそ登山をする機会が無くなってしまったが、昔はよく山に行っていた。御岳にも登ったはずだと思うのだが何故かほとんど記憶にない。資料を調べてみたら1981年の年末に行っていたことが分かった。冬山である。これはぼくが初めて本格的に行った冬期山行だった。もちろん先輩たちに連れられて行ったのだが。記憶が薄いのは初めての雪山で、しかも3000メートル級、相当な緊張感があって山がどうこうという余裕は全く無く、とにかく乗り切ることだけしか頭になかったからだろう。

 今回の事故はすでに単なる山岳事故ではなく社会問題化している。ネット上では登山は禁止にしろという主張まである。ぼくは危険性を理解した上で、しっかり対策をとりながら、最終的に自分の責任で決断して登るということだと思う。もちろんそれでも今回のような不可抗力の事故は起こる。登山では危険を100%回避することは出来ない。ただそれは海でも言えることだし、様々なスポーツやレクリエーションにおいても言えることかもしれない。
 100%の安全を全て行政に求めることは出来ない。それは逆に言えば個人が行政に完全に管理されることになってしまう。しかし行政であれ個人であれ、作為的もしくは不作為によって危険を増大させられても困る。危険を判断するためのデータは隠さず公開してもらいたいし、もちろん危険を大きくするようなことをしないでもらいたい。

 片山さつき参議院議員はツィッターで、民主党政権による事業仕分けで御嶽山が常時監視の対象からはずされたと「誤報」し、自民党内からの圧力で渋々陳謝する事態となった。ところがさらにその後、実は御岳を監視強化の対象からはずしたのは麻生内閣の時の文科省であったことが明らかになり、さらには安倍政権下の昨年夏から頂上付近の地震計が老朽化で壊れていたのに、その後一年以上放置されていたことも発覚した。
 もちろん専門の学者も含めて御岳がいつ噴火するのかなど予測しようがないのが現状だから、対応が甘くなってしまうのも仕方ないところがある。こうなった以上そのことをしっかり自覚して自然を甘く見てはならないという教訓を皆が共有することが重要だ。こんなことを政争の具にするのは、まさに愚の骨頂である。

 御岳噴火事故を巡っては他にジャーナリスト江川紹子氏のツイッター発言問題が起きている。自衛隊が災害派遣されたことに対して「機動隊や山岳警備隊の応援派遣をした方がよさそう」「装甲車や戦車は、火砕流には勝てません」と書き込んで批判を受けた。江川氏もその後、無知であったとして謝罪した。
 江川氏の書き込みが事実において誤っていたという点はそれとして、ただその感性については分からないでもない。今回の事故でも、またこれまでの災害派遣全てについてだけれど、自衛隊の服装や装備の色使いはどう見ても気持ちが悪い。不気味である。
 ぼくは山に登るときには派手な格好をしろと教わった。遠くからでも目立つようにだ。アースカラーの山の中では原色は目立つ。パーティーの間が広がってしまったり、もちろん遭難の時にも登山者がどこにいるかすぐに分かる方が安全である。
 しかし自衛隊の装備はみな迷彩色だ。当たり前だがわざと目立たないようにしているのである。これは災害現場で救助作業をするのには全く逆効果だ。少なくとも人を助けに行く格好ではない。被救助者からも見えづらいし、救助隊同士でも視認しづらく、比較するなら原色よりも危険度は高い。それはそもそも自衛隊が国民が本当に期待していることとは逆に、戦闘をするための機関であるからだ。戦闘は人を殺す業務である。ここにやはり大きな矛盾が現れている。

 今これ以上の論議をするつもりはないが、ヘリコプターはまだしも、行動服などは災害派遣用に違う色やデザインのものを用意しておいても良いのではないか。少なくとも国連PKOで派遣される場合には、装備は白、帽子やヘルメットは青である。これは戦争をしないという目印になっている。迷彩柄とは逆にわざと目立つようにしているのだ。
 現実の問題として人々が自衛隊に期待していることが、戦闘ではなく救助である以上、それを体現してはどうだろうか。そうすればいくらかは「平和主義」が本当に平和のためのものであるというアピールにもなると思うのだが。
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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2014-10-04 07:57:46
自衛隊員が災害派遣の時のためにわざわざ迷彩服以外の制服も作るというのは、税金の無駄遣いだと思います
ましてや「不気味だから」などという個人の意識を理由に税金の無駄使いを認めるわけにはいきません
私は個人的には迷彩服に何の不気味さも感じませんし、大都市を襲った大震災や、今回の御岳山では火山灰で周りは真っ白の世界でしたから、迷彩服でも十分目立っています

そもそも迷彩服で救助活動に支障が出たという実例が多数あるようなら、とっくに改善されていると思います
戦場で傷ついた負傷兵を救助するのも、自衛隊にとって重要な任務の一つですから
しかし、世界中の国々でも軍隊が救助活動をする場合は迷彩服のままです

>迷彩柄とは逆にわざと目立つようにしているのだ。

イラクに派遣された自衛隊の迷彩服は緑色で、砂漠のイラクでは逆に非常に目立っていました
自衛隊は「戦争に来たのではない」という事をアピールするために、わざと目立つ緑色の迷彩服そのままで任務を遂行しました
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本当にムダでしょうか? (仮名Z)
2014-10-04 11:59:51
名無し様
 大変論旨の明確なコメントをいただきありがとうございます。
 お呼びしづらいので、出来ましたら次回よりハンドルネームを記入していただけるとありがたいです。

 まず「迷彩服以外の制服も作るというのは、税金の無駄遣い」という御意見ですが、ぼくはレトリックとしてはともかく、本質的には税金のムダというものはないと考えています。以下の記事でごく簡単に触れていますのでご笑覧いただければ幸いです。

「オリンピックで税金を考える」
http://blog.goo.ne.jp/zetsubo/e/71919dc1408212b3083298c08b1c43da

 さてその上で、やはり軍隊において一番大切なのは兵士の命であり、また被救助者の命であると思います。その意味では安全性向上のために作業服の種類が増えることに予算を使っても全くムダだとは思いません。
 また戦車や航空機、艦船などに比較したら、いかに高いと言っても衣料品ですから、それほどの大きな負担増にはならないのではないでょうか?
 本文を熟読していただければ容易に御理解いただけると思いますが、ぼくは「ましてや「不気味だから」などという個人の意識を理由に」服装のことを言っているわけではありません。

 ものの見え方については感性の問題ですから、名無しさんが「迷彩服でも十分目立ってい」るとおっしゃるのであれば、そうなのでしょう。しかし、ぼくは今回の事件の画像や動画などを見た感じでは、警察や消防などと比べて明らかに自衛隊は視認しづらく、特に降灰や降雨があるように見える場面では岩の色と同化しているように見えました。東日本大震災ではここまでではありませんでしたが、やはり視認しづらいと思いました。

 それから「不気味」というのはぼくの感覚ですが、やはり感覚や直感というのも大事にしたいと思います。これはおそらく戦争というものについての感度の問題でしょう。ぼくはベトナム戦争の報道をリアルに憶えている世代でもあり、迷彩柄は直接戦争を表す記号になってしまいます。ぼくにとって戦争は不気味なものであり、迷彩柄は不気味さとイコールです。

 名無しさんは現代の戦争における戦闘についてあまりご存じないのかもしれませんが、「戦場で傷ついた負傷兵を救助する」場合、現代の戦場では目立つことが危険になっています。かつて第一次世界大戦以前なら、人道的活動として目立つ格好をしたこともあったかもしれませんが、現状では戦闘時の友軍の救助は目立たない装備でやるのが普通だと思います。
 ある意味で嘆かわしいことでもありますが、これは赤十字を偽装に使った作戦が横行したためだと思います。ただし報道機関や非軍事の医療団などは、あえて軍服とは違う目立つ格好をすることがセオリーとなっています。

 名無しさんが「自衛隊は「戦争に来たのではない」という事をアピールするために、わざと目立つ緑色の迷彩服そのままで任務を遂行し」たとご指摘になっているのは、全くその通りだと思います。もちろん砂漠では日本の自然と風土に合わせた迷彩柄は逆に目立つという効果があります。ですから本文をよく読んでいただければ分かるとおり、ぼくは別に国連PKOでの自衛隊の服装を評価こそせよ、批判はしていません。暑くて大変だったかもしれませんね。
 逆に言えば、当然自衛隊の迷彩柄は日本国内においては目立たないようになっているわけです。もしそうでなかったらそれこそ「税金のムダ遣い」です。つまり自衛隊の装備の精度が高ければ、それだけ自然災害における活動では使い勝手が悪くなるということだと思います。
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