ジーン・ウールの不思議な旅

ジーン・ウールは不思議な女性です。姿を変えて過去にも未来にも現れます。
もしかしたら貴方の友人や奥様かも知れません。

店主ご挨拶

ようこそお越し下さいました。 昨年(2010)、3ヶ月の雲水修行に行ってまいりました。 私は働き者で(自己申告)、精舎は朝は早く夜は遅く「朝瞑想」の時間は、気がつくといつも寝ておりましたが・・。 私の人生の1ページに、思いがけないご褒美を頂けたような日々を過ごさせて頂きました。・・ま、主婦でも決心ひとつで如何様な道も開けるんですね。 今も精舎に行くと「実家に帰った」ような気がします。 このブログ管理人は、最近物忘れ症候群中につき、おいで頂いた感謝を申し上げ、コメントを頂いても書いたり書かなかったり、付き合いが悪いことのご無礼をお許し下さいませ。

ウトナピシュティム 34

2006-09-14 08:38:36 | ウトナピシュティム
34.
 やがて、ギルガメシュに終わりの時が来た。
ギルガメシュは床に伏していた。3分の2が神、3分の1が人間の身体のギルガメシュにも終わりの時が来た。身体は弱ってはいたが、毎日決まった時間になると、従者たちの持つ御車に担がれて、川の水で身体を清め供犠を捧げていた。
しかし、その日ギルガメシュは起きあがらなかった。
ギルガメシュは、その生命の終わりの時にウルシャナビに語った。

「ウルシャナビよ、わたしは再び旅をしよう。シャマシュの道は、遙かな地平のまたその先まで続くのだ。この地の果てるところまで、わたしは旅をしよう。この先に何があるのか知りたいものだ。」

香柏の森に住むフンババを滅ぼし、山の麓でライオンどもを殺し、天から下った天牛を捕らえて打ち倒した勇者ギルガメシュの最後は、まるで眠りにつく人のようだった。
眠りと死との垣根は低く、ギルガメシュは、ゆっくりと低い垣根を越えて、かの地へ渡った。
風は爽やかで、太陽がギルガメシュとウルシャナビに光を注いだ。

ウルシャナビが彼、ギルガメシュの豊かな土地を遙かに見渡したとき、高い空に何かがよぎったのを、ウルシャナビは見た。それは鳥のようで鳥ではなかった。


 粘土板[ギルガメシュ叙事詩]の当時の書名は、「すべてのものを国の果てまで見たという人」だったそうだ。

ウトナピシュティム 33

2006-09-13 09:39:02 | ウトナピシュティム
33.
20ベール行って、彼らはパンを割いた。
30ベール行って、夕べの休息をとった。
彼らは囲いの町ウルクの町中にたどり着いた。

ギルガメシュは、ウルシャナビに語った。
「ウルシャナビよ、ウルクの城壁に上り、往き来してみよ。
礎石をしらべ、煉瓦を吟味してみよ。その煉瓦が焼成煉瓦でないかどうか。その基礎は七賢者が据えたのではなかったかどうか。
ウルクの町は1シャル、果樹園は1シャル、粘土をとる低地が1シャル、それにイシュタル神殿の未耕作地。
すなわち、ウルクは3シャルとさらに未耕作地からなっている」

ギルガメシュは指さす。彼が遠く旅した、遙かな地の果てを指さす。
「ウルシャナビよ、麦を作ろう。わたしが旅した国々で、新しい麦を見た。1つの穂に多くの実をつける麦を見た。あの麦をウルクでも作ろう。
わたしが旅した国々で、珍しいものや美しいものを見た。
スーサでラピスラズリや紅玉髄を見た。アナトリヤでは、金や銀、レバノン杉、トルコ石、それから銅だ。わたしは再び、訪れた地へ交易のため訪ねよう。偉大なるわが父シャマシュのために、このウルクに輝ける神殿を建設するのだ」

ギルガメシュとウルシャナビは、城壁の上で遠く地平を眺めた。
この地平の、また遙か先の地平へと、ギルガメシュの思いは馳せた
「わたしは再び旅をしよう。シャマシュの道は、遙かな地平のまたその先まで続くのだ。この地の果てるところまで、わたしは旅をしよう。この先に何があるのか知りたいのだ。」

ギルガメシュは、長い旅をして得た知識でもって、多くの国々と交易をした。そして偉大なるシャマシュのために、素晴らしいジグラッドを建設した。それは、この世に二つとない程の素晴らしさだった。

ウトナピシュティム 32

2006-09-12 08:11:10 | ウトナピシュティム
32.
ギルガメシュは語った。
「舟師ウルシャナビよ、わが言葉を退けないで欲しい。
何のために、わが腕は疲れ切ったのか。何のために、わが心臓の血は失せ去るのか。わたしは自分のために、よきことを企てたのではなかったか。大地のライオン(蛇のこと)にも、わたしはよきことを行ったのに、いまや20ベールも流れはかの草を運んでしまう。

いつのことだったのだろう。深淵の溝を開けたことがあった。深淵の溝を開けたとき、わたしは道具(プックとメック)を落としてしまったのだ。あの時はエンキドゥが、わたしの代わりに道具を探しに行ってくれた。わたしが戻るべきであったのか。そして舟を岸辺に置いておくべきだったのか」泡のように浮かびくる記憶は定かではなかった。

「老いたるものが若返る草は、求めるとなお遠ざかり、人間の名前は葦原の葦のようにへし折られる。美しい若者も美しい娘も等しく死にへし折られるのだ。誰も死を見ることは出来ない。誰も死の声を聞くことは出来ない。死は怒りのなかで人間をへし折るのだ。
いつかはわれわれは家を建て、巣造りをする。いつかは兄弟たちがそれを分配してしまう。いつかは憎しみが生じ、いつかは川が氾濫し、洪水をもたらす。蜻蛉たちも川に流される。顔は太陽を見つめて生きようとしても、すぐさま何もかも失せてしまう。眠る者と死ぬ者は等しい。人々は死の姿を心に描けない。」ウトナピシュティムの語った言葉がギルガメシュの心に甦った。

ウトナピシュティム 31

2006-09-11 10:39:03 | ウトナピシュティム
31.
そこにかの草があったのだ。
彼がその草を取ると、刺藪の根が彼の手を刺した。
(シュメールの「死と生命の秘密の草」は、旧約聖書の「命の木(エデンの園の中央に生えている)」で「DNAの樹」のことだと「古代史に秘められたDNA暗号」桂樹佑著・・が出ています。・・旧約聖書の創世記には・・「エデンの園には1本の川が流れていて、そこから4本の川となり、第1の川はピション、第2の川はギホンで、第3の川の名はチグリスで、アシュルの東の方を流れており、第4の川はユーフラテスであった」と書かれている。旧約聖書の舞台はまさにここシュメールなのです)

ギルガメシュが重い石を足からはずすと、彼は泡のように上へと昇っていった。
深淵の海は、彼を岸辺に投げ出した。

ギルガメシュは彼、ウルシャナビに語った。
「ウルシャナビよ、この草は危機を超えるための草だ。それによって人は生命を得る。
わたしはこれを囲いの町ウルクに持ち帰り、老人にそれを、試してみよう。その草の名は『老いたる人が若返る』わたしもそれを試し、若き時代に戻ろう」

20ベール行って、彼らはパンを割いた。
30ベール行って、夕べの休息をとった。
そこには冷たい水をたたえる泉があった。ギルガメシュは泉を見て、シャマシュに供犠を捧げようと下って行き、水で身体を清めていた。

一匹の蛇がその草の香りを嗅いで、音もなく忍び寄った。
蛇はギルガメシュが深淵から持ち帰った草を取り去った。そしてむしゃむしゃと食べてしまった。
蛇は戻って行くとき、古い皮を脱ぎ捨てた。【脱いだ皮は、この世の肉体だ。蛇が戻っていったのはあの世に他ならない。夢が現実で、この世が実は夢なのだ】

長い旅の末に得たもの「老いたるものが若返る」草は、消えてしまった。
その日、ギルガメシュは腰を落として泣いた。

ウトナピシュティム 30

2006-09-10 05:46:30 | ウトナピシュティム
30.
ギルガメシュはこれを聞いて、喜んだ。
ギルガメシュは深淵に通ずる溝を開け、重い石を足に縛り付けた。
その石が彼を深淵に引き込んだ。

ギルガメシュは、いつ終わるとも知れない深い深淵を沈んでいった。
深淵は下るほどに一層闇が深くなった。ギルガメシュの傍らを何かが通り過ぎる。怪物の息づかいが聞こえる。

「おまえは何者だ。」
ギルガメシュは答えない。
「おまえは何者だ。答えなければ生きては帰さん。」
ギルガメシュは答えない。
「返答なくば、力づくでここに留めおこう」
ギルガメシュは強い力に捕らえられた。強い力に締め上げられた。
しかしギルガメシュの3分の2は神々の身体だ。深淵の怪物は引き下がらざるを得なかった。

再び別の力がギルガメシュを襲った。
「おまえは何者だ。」
ギルガメシュは、またも答えない。
「おまえは何者だ。答えなければ生きては帰さん。」
ギルガメシュはまたも答えない。
「返答なくば、やむをえんな。」
ギルガメシュを捕らえた力は、前以上に強い力だったが、深淵の怪物は引き下がらざるを得なかった。

こうしてギルガメシュは深淵の底にたどり着いた。
漆黒の闇の中にあって1カ所光るものがあった。
闇を照らす蝋燭にも似て、それはそれ自身が光を放っていた。

ウトナピシュティム 29

2006-09-09 08:07:48 | ウトナピシュティム
29.
その時、彼の妻は、ウトナピシュティムに語った。
「あの若者は荒野を旅してここまでやって来ました。彼は疲れ切り、体力も消耗しています。だけど、あなたが死と生の秘密の〈回答〉を与えたので、彼は自分の国に帰るのですか。」

ギルガメシュは櫂を持ち上げ、舟を岸辺から遠ざけようとしていた。

ウトナピシュティムは、ギルガメシュをじっと見、やがて彼を呼び止めた。

「ギルガメシュよ、お前はここまでやって来て、疲れ切り、消耗している。
わしがお前に死と生の秘密の〈回答〉を与えてもいないのに、あきらめてお前は帰ろうとするのか。
死んだ人間以外でここまで来れたのは、神々のみだった。おまえは3分の2が神、3分の1が人間の身体だ。そのおまえが今ここまで来れたということは、おそらく意味のあることに違いない。

ギルガメシュよ、わしは隠された事柄を明かそう。
生命の秘密をお前に語ろうぞ。
その根が刺藪のような草がある。その刺は野バラのようにお前の手を刺す。もし、この草を手に入れることができるなら、お前は不死の生命を見出すだろう。

その草は深淵のなかにある。その深淵の底までたどり着けるなら、おまえは老いたる者が若返る、死と生命の秘密を手に入れることが出来るだろう。しかしギルガメシュよ、何があっても決して口をきいてはいけない。何も喋ってはいけない。言葉を発するとおまえは深淵に捕らえられ、二度と戻ってくることはあるまい。」

ウトナピシュティム 28

2006-09-08 06:33:46 | ウトナピシュティム
28.
ウトナピシュティムは、舟師ウルシャナビに言う。
「ウルシャナビよ。舟着き場がお前を軽んじ、出入り口がお前を嫌うように。
その岸辺を往き来する者よ。その岸辺から離れていけ」

「お前が先導した者の身体には、汚れた髪が巻き付いてしまった。皮膚がその美しい肉体を損なってしまった。ウルシャナビよ、彼を案内し、水場に連れて行け。水でその汚れた髪を雪のように清く洗わせよ。その皮膚を脱ぎ捨て、大洋がそれを持ち去るように。彼の良き肉体が潤うように。彼の頭巾が新調されるように。彼が衣装を、彼の活力の衣を、身に纏うように。彼が自分の町に行けるまで、彼の道に達するまで、その衣装は汚れず、真新しくあるように」

ウトナピシュティムは、ウルシャナビに舟師としての任を解いたのだ。
(淡々と書かれているが、この出来事を心に留めておこう)

ウルシャナビは彼、ギルガメシュを案内し、水場に連れて行った。
ギルガメシュは、水場でその汚れた髪を雪のように清く洗った。ギルガメシュがその皮膚を脱ぎ捨てると、海がそれを持ち去った。
彼の良き肉体は潤った。彼は自分の頭巾を新調した。彼は衣装を、彼の活力の衣を身に纏った。
そしてギルガメシュが自分の町に行けるまで、彼の道に達するまで、その衣装は汚れず、真新しくあり得たのだった。

ギルガメシュとウルシャナビは舟に乗った。彼らはマギル舟を出航させ、ウルクへの航海に出ようとしていた。

ウトナピシュティム 27

2006-09-06 06:42:55 | ウトナピシュティム
27.
彼の妻は、ウトナピシュティムに語った。
「彼にお触れなさいな。この者が目を覚ますように。彼が自分の来た道をやすらかに帰れるように。彼が出てきた門を通って、自分の国に帰れるように。」

ウトナピシュティムは、語った。
「人間はよこしまなものだぞ。彼はお前にもよこしまをはたらこうぞ。
さあ、彼のためにパンを焼き、彼の頭のところに置きなさい。」

彼女はギルガメシュのためにパンを焼き、彼の頭に乗せた。そして彼の眠った日数を壁に記しておいた。
彼の最初の日のパンは乾いてしまった。
第2日のパンはいたみ、第3日のパンはべたつき、第4日の焼き菓子は白くなってしまった。第5日のパンは灰色になり、第6日のパンは焼かれた。
第7の日のパンが焼かれたところで、ウトナピシュティムが彼に触れると、ギルガメシュは眼を覚ました。

目覚めたばかりのギルガメシュは、言う。
「眠りがこの身に注がれるやいなや、すぐさま、わたしに触れ、わたしを起こしてくれたのはあなたですね。」

ウトナピシュティムは、語る。
「さあ、ギルガメシュ、お前のパンを数えてみよ。眠っていた日数がお前にわかろうというもの。お前の最初のパンは乾いてしまった。第2日のパンはいたみ、第3日のパンはべたつき、第4日の焼き菓子は白くなってしまった。第5日のパンは灰色になり、第6日のパンは焼かれた。第7日のパンが焼かれたところで、お前は眼を覚ましたのだ。」

ギルガメシュは、言う。
「ああ何ということだ。不覚にも眠ってしまったのか。
ウトナピシュティムよ。
わたしはどのようにして、どこへ行ったらよいのです。
略奪する者たちが、この身体をしかとつかまえてしまったのです。わたしの寝室には死が腰をおろしています。わたしがどこに顔を向けようと、そこにはただ死があるのみです。」

ギルガメシュは斑点としみの浮き出た、変わり果てた自分の身体を見出したのだった。

ウトナピシュティム 26

2006-09-05 06:17:25 | ウトナピシュティム
26.
そこでエンリルはわが手を取って、わたしを引き上げた。彼はわが妻をも引き上げ、わが傍らにひざまつかせた。
わが額に触れ、われらの間に立って、われらを祝福して言った。

『これまで、ウトナピシュティムは人間であったが、いまやウトナピシュティムと彼の妻とは、われわれ神々のようになる。
ウトナピシュティムは遙か遠くの河口に住め』

こうして彼らはわたしを連れて行き、遙か遠くの河口に住まわせたのだ。
ギルガメシュよ、おまえが探し求める生命を見だすために、いまは誰が神々を集わせてくださるだろう。さあ、六日、七晩、眠らずにいてごらん」

ギルガメシュがウトナピシュティムの足下に座している間、眠りが霧のように彼の上を吹きわたった。
ウトナピシュティムは、妻に語った。
「生命を求めるこの若者をごらん。彼の上には眠りが霧のように吹きわたる」

眠りと死の垣根は低く、ギルガメシュは冥界の霧に捕らえられた。

ウトナピシュティム 25

2006-09-04 06:50:45 | ウトナピシュティム
25.
彼女イシュタルは語った。
『神々よ、わたしはわが項(うなじ)のこのラピス・ラズリを決して忘れまい。
わたしはこれらの日々を心に留め、永久に忘れまい。
神々はスルキンヌのところに来るように。
だがエンリルは、スルキンヌのところに来てはならぬ。
彼は熟慮もせずに、大洪水をもたらし、わが人間たちを破局に引き渡したがゆえに』

エンリルは到着するやいなや、すぐに方舟に眼を留めた。
エンリルは憤り(いきどおり)、イギギ(監視する者)の神々に対する怒りに満ちた。
『なんらかの生命が大洪水を免れたのだな。人間は誰も破局を生き延びてはならなかったのに』

ニヌルタ(農耕、植物神、雨神、戦神そして「大地の主人」)は、エンリルに告げた。
『エア(エンキ)以外に、誰がこのようなことをするだろう。エアこそはすべての業をわきまえているのだから』

エアは、エンリルに告げた。
『あなたは英雄、神々の賢者ではないか。熟慮もせずに、どうして洪水をもたらしたのか。
罪人にはその罪を負わせよ。咎ある人にはその咎を負わせよ。それで赦せ。彼とて抹消されてはならぬ。それで我慢せよ。彼とて殺されてはならぬ。
洪水をもたらす代わりに、ライオンを起こして、人々を減少させたらよかったのだ。
洪水をもたらす代わりに、狼を起こして、人々を減少させたらよかったのだ。
洪水をもたらす代わりに、飢饉を起こして、大地をやせ細らせたらよかったのだ。
洪水をもたらすかわりに、エラ(疫病をもたらす神)を起こして、人間を撲滅させたらよかったのだ。
わたしが偉大な神々の秘密を明かしたのではない。アトラ・ハシース(ウトナピシュティム)に夢を見させたら、彼が神々の秘密を聞き取ったのだ。
さあ・・
いまや、あなた自ら彼について決定を下すがよい。』