10.
ジーン・ウールは、好奇心という誘惑に負けて、禁止されていたマントラムを使い上位サイクルまで来てしまった。
やがて、障壁を守る番人の犬たちが、宇宙の彼方から恐ろしいうなり声をあげてジーン・ウールを追いかけてきた。
障壁に挑む魂は、時間の彼方の犬によって虜とされ、この宇宙サイクルの完了するまでとどめられる。そして、宇宙意識が去ってゆくとき、取り残されるのだ。
ジーン・ウールは逃げた。曲線の上を走って走って、やっと体まで逃げ帰ってきたが、体を円で守ろうとしたとき、アルルの番人の犬の牙が彼女の腕にガシッと食い込んだ。
そして、ジーン・ウールは六次元のある場所に閉じこめられたのだ。
☆
ジーン・ウールを哀れに思った神々が、彼女のもとへ季節を送った。
自然は、その秘密の扉に近づき手を触れるまでは何も見せない。昨日と同じ今日があるだけ、今日と変わらない明日があるように思わせていたが、自然は人間が彼らと通じ合う方法を学び、自然と共感する者にはそっと秘密を打ち明けてくれる。
ふいと扉が開いてしまい見渡してみれば、九月の力がみなぎっている。その中にあれば、何ものでも強さと勇気と自信とを得る。木々は力強く伸び、花は咲き、蝶は舞っている。
やがて、花は種を残し、蝶は卵を産む。人は、霊より来たり受胎し、また霊に還る。
季節も同じ、縮こまった冬から幼な児のような春へ。幼な児の春から青年の夏へ。青年の夏から働き盛りのたくましい秋。青年よりもっと充実した実りの中年。やがて老いてゆく冬。
生命あるものが大地の中に引き籠もる冬。ひとつの法則がすべてに当てはまる。
自然が、大事な秘密をこんなに無造作に開示していたとは。
ジーン・ウールは自然の秘密をここで学んだ。