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気ままに生活してるシニアの残日録

映画「ROH セビリアの理髪師」を観る

2023年05月25日 | オペラ・バレエ

英国ロイヤル・オペラ・ハウス(ROH)シネマシーズン2022/2023という映画シリーズがあるのを偶然見つけた。調べてみるとちょうど「セビリアの理髪師」(上演日:2023年2月15日)が上映中だったので早速観に行った。ニューヨーク・メトロポリタンオペラ(MET)のライフビューイングがあるのは知っていてたまに観に行っているが、ROHでも同様なものがあるとは知らなかった。値段は3,700円。客は10人くらいか、ほとんどがシニア、女性であった。

このシネマシリーズはMETライブビューイングとほぼ同じような構成でできている。指揮者や演出家、主な出演者へのインタビューなどが最初と幕間にあり、後はじっくりとステージを映す。やはり自宅で観るよりも映画館で観ると迫力があり楽しい。

観た上での感想を少し述べよう

  • 演出のライザー&コーリエが 2005 年に英国ロイヤル・オペラで手がけ、その後も再演を重ねている人気プロダクションだそうだ。確かに色彩もよいし舞台設定も舞台転換もよかった。
  • このオペラの序曲は好きだ、魔笛の序曲も好きだが、この序曲も素晴らしい。この序曲は以前、NHKのプレミアムシアターだったかBS放送のオペラ番組の最初のところで流れていたので「良い曲だな」と思っていたら、やがてセビリアの理髪師の序曲だと知った。
  • 歌手の中ではなんといってもロジーナを歌った若手のアイグル・アクメチーナが良かった、歌唱力があり高音から低音まで完璧にこなし、色っぽいところやコケティッシュなところも演じる演技力がある。彼女が独唱した私のもっとも好きなアリア「una voce poco fa(今の歌声は)」の素晴らしいこと、ところどころ彼女流にアレンジした歌い方をする余裕もあり、素晴らしい。このアリアを聴いてすっかり彼女を好きになった。
  • ロッシーニのアリアには早口言葉でまくし立てる難しい歌い回しが要求されるところがあるが、それが一番多いのはバルトロであろう。そのバルトロ役のドイルが当日急に調子が悪くなり口パクで対応したのには驚いた。オペラ開幕前に芸術監督が舞台に出てきて事情を説明したハプニングには驚いた。この役は喉が完璧でも難しいのでやむを得まい。代役が舞台袖で歌ったが映画を観て違和感はなかった。いわれなければわからないのはさすがにプロだ。カーテンコールでは代役と演技役と二人で出てきて喝采を浴びていた。
  • 指揮者のバラーレと伯爵役のブラウンリーの練習風景が幕間に映され、二人の議論を聞いていると、歌手とオーケストラの関係がよくわかった、歌手とオーケストラがピッタリ息が合わないとオペラがおかしなことになるが、歌手は常に指揮者を観ているそうだ。指揮者は舞台とオーケストラをつなぐ大事な役割があるとの説明に納得した
  • 幕間のインタビューで演出家だか誰かが言っていたが、この作品ではフィガロは物語の進行役である。主役はロジーナ、伯爵、バルトロの3人で、準主役がフィガロとバジリオであろう。

とにかく最初から最後まで楽しめたオペラであった。オペラは悲劇より喜劇の方が断然好きだ。

【音楽】ジョアキーノ・ロッシーニ
【台本】チェーザレ・ステルビーニ (原作:ボーマルシェによる戯曲「セビーリャの理髪師」)
【指揮】ラファエル・パヤーレ(43、ベネズエラ)
【管弦楽】ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団(ゲスト・コマス:ベンジャミン・マーキス・ギルモア)
【演出】モッシュ・ライザー、パトリス・コーリエ

【出演】
 ロジーナ       :アイグル・アクメチーナ(露、20代)
 フィガロ       :アンドレイ・フィロンチク
 アルマヴィーヴァ伯爵 :ローレンス・ブラウンリー(米、50)
 ドン・バジーリオ   :ブリン・ターフェル(英、57)
 バルトロ       :グラント・ドイル(歌)、ファビオ・カピタヌッチ(演技、48)
 ベルタ        :エイリッシュ・タイナン