ゆっくり行きましょう

気ままに生活してるシニアの残日録

映画「英国ロイヤルバレエ ドン・キホーテ」を観る

2024年02月04日 | オペラ・バレエ

近くのシネコンで「英国ロイヤル・オペラ・ハウス バレエ、ドン・キホーテ(全3幕)」を観た。上演日は2023年11月7日。値段は3,700円、上映時間は3時間19分。今日もプレミアム・シートの部屋だったので飛行機のビジネスクラスのようなシートでゆったりとしてよかった。人数があまり入らない部屋だが、女性中心に30名はきていただろうか、意外に人気があるのに驚いた。私はこの演目が大好きだ。初めてバレエ公演を観たのはドン・キホーテだった。

【振付】カルロス・アコスタ、マリウス・プティパ
【音楽】レオン・ミンクス
【指揮】ワレリー・オブシャニコフ、ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団 

【出演】

ドン・キホーテ:ギャリー・エイヴィス
サンチョ・パンサ:リアム・ボズウェル
ロレンツォ(キトリの父):トーマス・ホワイトヘッド
キトリ:マヤラ・マグリ
バジル:マシュー・ボール
ガマーシュ(金持ちの貴族):ジェームズ・ヘイ
エスパーダ(闘牛士):カルヴィン・リチャードソン
メルセデス(街の踊り子):レティシア・ディアス
キトリの友人:ソフィー・アルナット、前田紗江
二人の闘牛士:デヴィッド・ドネリー、ジョセフ・シセンズ
ロマのカップル:ハンナ・グレンネル、レオ・ディクソン
森の女王:アネット・ブヴォリ
アムール(キューピッド):イザベラ・ガスパリーニ

この演目は英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2023/24の開幕を飾るもので、この日は国王チャールズⅢ世とカミラ王妃がご臨席したのには驚いた。2回の一般席の一番前にお座りになった。それとハッキリ覚えてないが、英国の各地の学生やウクライナ支援の演奏を行う楽団メンバーなどが観ていることが紹介された。

休憩が2回あり、それぞれに関係者にインタビューがされるのはMETライブ・ビューイングと同じだ。今回は2013年に振付けを担当した元プリンシパルで世界的なスターのカルロス・アコスタにいろいろ質問していた。彼は、この演目はクラシックな演目だが、従来とは違う新しい振付けを加えた、例えば演奏の途中でバレエダンサーが声を上げるとか、ステージの場面転換を大胆に行ったとか、床をタイルにしたかったが試したら滑りやすくてダメだったとか、いろいろ参考になることを話してくれた(詳しいことは正確に覚えていないが)。

また、舞台上の物(大物、小物)を扱う方のインタビューもあり面白かった。大物はドン・キホーテが乗る馬があり、小物はコーヒーカップなどが多く使われていたが、これらを苦労してそれなりに見せる努力がされていることが理解できて参考になった。あとは主役のキトリとバジルの2人の練習風景も幕間に映された。

ヒロインのキトリ役は、2011年のローザンヌ国際バレエコンクールで優勝し、2021年にプリンシパルに昇格したブラジル出身のマヤラ・マグリ。シネマシーズンでは初主演だそうだ。彼女の踊りは素晴らしかった。特に一幕目の終わりだったか、バジルのリフティングで高い位置で手足を伸ばしてポーズとるところがバッチリ決まって素晴らしかった。

キトリの恋人のバジル役は、大人気の英国出身マシュー・ボール。男性ダンサーの魅力が詰まったこの役で、華麗な超絶技巧の数々を見せた。マヤラ・マグリとは私生活でパートナーだそうだ。確かに2人の演技は息がピッタリ合って最初から最後まで素晴らしいパフォーマンスであったと思う。特に三幕目の最後の方で、2人で交互にクルクル回転して踊るところ(バレエ用語で何というのか知らないが)などは「凄いな」と感心した。

また、1幕から3幕まで大活躍するキトリの二人の友人のうちの一人を、日本人の前田紗江がアサインされていたのは嬉しかった。結構出演する場面が多いのでよかった。私は彼女を知らなかったが、ROHのホームページの団員紹介を見ると次のように紹介されている。

「日本人ダンサー、前田紗江さんは英国ロイヤル・バレエ団のソリスト。彼女は2017/18シーズンの初めから英国ロイヤル・バレエ団のオード・ジェブセン・ヤング・ダンサー・プログラムに参加し、2018年にアーティスト、2022年にファースト・アーティスト、2023年にソリストに昇進した。前田さんは横浜で生まれ、7歳からダンスを始めた。彼女はマユミ・キノウチ・バレエ・スクールとローザンヌ国際コンクールの奨学金を受けてロイヤル・バレエ・スクールで訓練を受けました。」

ROHの日本人ダンサーには最高位のプリンシパルに高田茜、平野亮一、金子扶生がいるのは知っていたが、この3名以外にも何人か所属しているのを知り頼もしくなった。頑張ってほしい。

最後に、今回の演奏だが、作曲はミンクスとなっているが、今日の演奏を聴いてみると私がいつも聞いているドン・キホーテとはかなり違ったアレンジがされていたので面食らった。ウィキで確認するとこの演目の振付けのベースはプティバや彼の弟子のゴルスキーのものだが、その後にアレンジを加えていろんなバージョンがあるようだ。曲についても追加したり、一部変更しているものもあるようなので、今回もそうなのだろう。私としては普段聞いているものが良いと思っているのでいきなり違うバージョンを聞かされても「何だ、これは」としか感じないが、慣れの問題でもあろう。そう大幅に変えているわけではない、ただ、フラストレーションはたまった。

さて、昨日は節分、最近は恵方巻きを食べるのが1つのブームになっているようだ。私が子どもの時はそんな習慣はなかった。多分にコンビニやスーパーの販売戦略に乗せられているようで癪に障るのだが、昨夜はスーパーで買ってきた恵方巻きを食べた。

 


山本武利「検閲官、発見されたGHQ名簿」を読む(その3・完)、2024/2/4一部訂正

2024年02月04日 | 読書

※2024/2/4 一部記載を訂正しました、取消し線で示しています

参謀本部高級幕僚の暗躍

  • 終戦期に自軍の惨敗必死を知りつつ、自身の敗戦後の身の処し方を計算し、自軍の重要インテリジェンスを旧敵国に売り込む行為行った軍人がいた。
  • 有末精三中将(参謀本部第2部長)や服部卓四郎大佐らは売国奴以外の何物でもなかった。有末は河辺虎四郎(参謀次長)にも協力を求めた。彼らは最高機密を旧敵国に最高値で売り込み、占領の手助けをした。多くの高位にある軍人同様に、戦争犯罪で起訴される可能性があったが、彼らは占領軍を手助けしながら自身の戦犯化、家族の窮乏化を回避し、CCDのウォッチリストの作成や追求で、旧軍同僚を追い込んだ。
  • 河辺虎四郎は敗戦時に参謀次長として連合国とマニラで会談、辰巳栄一(陸軍中将)は、𠮷田茂の軍事顧問を務めながらCIAに協力していた。彼らに比べれば、検察官の検閲に協力していた人の罪は軽いし、それの罪や恥を自覚する人々は良心派であった。
  • 有末のように裏で占領軍に協力した旧幕僚が多かった。

(コメント)

立派な軍人もいたが、このような卑劣な軍人がいたのには驚いた。ところが、有末精三中将についてウィキを見ると次のように正反対のことを書いてある、どっちが正しいのだろうか。

「戦後は、ソ連や中国の動向を注視していた占領軍の諜報部参謀第2部(G2)との関係を急速に深め、有末の働きかけにより、大本営の参謀たちは諜報部に次々とスカウトされていった。彼らは諜報部の意向を受けてソ連や中国などへのスパイ活動に従事し、戦犯となることを回避した」。

更にウィキによれば、有末は戦後、勲章までもらっている(昭和8年8月勲四等瑞宝章、昭和15年2月勲三等瑞宝章、昭和20年1月勲二等瑞宝章)。著者の指摘が正しいとすれば、時の政府はいったい何を考えていたのだろう。

CCD資料の行方

  • CCDの工作で入手し作成されたウォッチリスト、傍受記録、コメントシート、新聞、雑誌、書籍などの資料は膨大であり、この活動を歴史的に残す方策が検討された。
  • マッカーサーやウィロビーなどは、この資料のコレクションのインテリジェンス的価値を見抜いていたためCCD工作中から整理、保存しようとした。日本人側はその存在を知らなかったし、知っても価値がわからなかった。CCDが残した資料群は、1978年にメリーランド大学ブランゲコレクションになった。
  • このコレクションは、敗戦国日本の言論、通信が幅広く検閲された時期の負の刻印である。そのコレクション作成のために、旧敵国に動員されたのは日本人検閲官であり、その数は著者の推定では2万人もいた。彼らは高学歴だが貧困に喘いでいて、捕虜、極端な場合は奴隷のような心情で汚名を忍んで米側の命令のまま、自国民の言動を検閲で盗み見たり、盗み聞いたり、密告したりしていた。
  • 米軍のやり方は、どさくさに紛れて敗戦国の資産を戦勝国が戦利品として無断で持ち去る行為である。これらの資料の返還請求は敗戦国民の正当な権利である。

(コメント)

こういうことをやるアメリカは好きになれない。

アメリカは戦時中に日本に対し明々白々の戦争犯罪を犯し、戦後の日本占領時には憲法違反の言論検閲を行った。その検閲がどのように行われたか理解が進み参考になった。

(完)