猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

ラブレス

2024-04-07 21:42:12 | 日記
2017年のロシア・フランス・ドイツ・ベルギー合作映画「ラブ
レス」。

一流企業で働くボリス(アレクセイ・ロズィン)と美容サロンを経
営するジェーニャ(マルヤーナ・スピヴァク)の夫婦は離婚協議中
だった。夫婦には既にそれぞれ別のパートナーがおり、新たな生
活のため一刻も早く縁を切りたいと考えていた。2人には12歳の
息子・アレクセイ(マトヴェイ・ノヴィコフ)がいたが、どちらも
新生活に息子を必要としておらず、ある日激しい罵り合いの中で
息子を押しつけ合ってしまう。その翌朝、学校に行ったはずの息
子がそのまま行方不明になってしまい、彼らは必死でその行方を
捜す。

ロシアの鬼才、アンドレイ・ズビャギンツェフによる人間ドラマ。
一流企業で働くボリスと、美容サロンを経営するジェーニャの夫
婦は離婚協議中。12歳の息子アレクセイと3人で住んでいたマン
ションも、買い手が決まりそうになっていた。ボリスとジェーニ
ャは早く新生活を送りたいと考えており、そのことに気がついて
いるアレクセイの様子は元気がなかった。息子に関心のないジェ
ーニャはしょっちゅうスマホで恋人とやり取りをしており、息子
の世話にはイラつきを見せていた。
一方ボリスの恋人は既に妊娠していたが、彼の会社の経営者が厳
格なキリスト教徒のため、そのことを会社では隠していた。そん
なボリスとジェーニャはどちらがアレクセイを引き取るのかで揉
めていた。ジェーニャは息子を寄宿舎学校に入れようと考えてい
たが、ボリスは「子供は母親が引き取るものだ」とジェーニャを
非難し、、2人はいつも激しい口論をしていた。
離婚しようとしている夫婦が子供の親権で揉めるというのはよく
あることだと思うが、この夫婦は親権を押しつけ合っているのだ。
2人とも自分のことしか考えていないのが呆れる。激しい罵り合
いを聞いていたアレクセイのくしゃくしゃになって泣いている顔
は忘れられない。その後、学校からアレクセイが2日も登校して
いないという連絡をジェーニャは受ける。慌ててボリスに電話す
るが、彼は気のない返事しかしない。刑事がやってきて、最後に
アレクセイに会ったのはいつかとジェーニャに聞くが、彼女の記
憶はあいまいだった。
子供が2日も登校していないのに気づかない親なんているのだろ
うか。ボリスもジェーニャも本当にアレクセイに関心がないのが
よくわかる。刑事もそのうち帰ってくるかもしれないからと、あ
まり動こうとはしない。ロシアの警察はそうなのだろうか。日本
だと子供が行方不明になったら大きく報道され、捜査が行われる
と思うのだが。そしてアレクセイの捜索をメインで行うのは市民
ボランティアの捜索救助団体なのだ。ジェーニャとボリスはボラ
ンティア救助団体と共にアレクセイを捜すが、一向に見つからな
い。
ジェーニャは自分の母親の家を訪ね、アレクセイが来ていないか
聞くが、どうもジェーニャと母親は不仲なようだ。ジェーニャは
母親から愛情を受けて育っていないのが見て取れる。ジェーニャ
は妊娠したためボリスと結婚したのだが、母親は「あの時冷静に
なれと言ったのに。中絶して別れろと言ったのに」と罵り、驚い
た。帰り際、ジェーニャはボリスに「中絶すれば良かった」「あ
なたを愛しているから結婚したんじゃなくて、あの母親から逃げ
出したかった」と激昂する。
アレクセイは誰からも望まれずに生まれてきた子だったのだろう
か。アレクセイがかわいそうでたまらない。ある日警察から身元
不明の少年の遺体が発見されたから確認に来るようにと夫婦に連
絡が入る。しかしそれはアレクセイではなかった。ジェーニャは
「私はあの子を引き取るつもりだったのよ」と号泣し、ボリスを
叩く。ボリスはへたり込んで涙を流す。夫婦が親らしさ、人間ら
しさを見せた唯一のシーンだったと思う。子供が行方不明のまま
なのと、死んでいることがはっきりするのと、どちらがマシなの
だろう。寒々しい雪のロシアを舞台にした胸をえぐられるような
重たい映画だった。


良かったらこちらもどうぞ。アンドレイ・ズビャギンツェフ監督
作品です。
父、帰る
裁かれるは善人のみ


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2 コメント

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毒両親ですね…(-ω-;)ウーン (ウラジーミル・アスポン)
2024-04-07 23:29:37
親のせいで子供のアレクセイは悲惨ですね。
自分達が離婚したいのはいいとして、子供のアレクセイを押し付けあっているのが嫌ですね。
子供の親権めぐって争っている方がいいですね。
要らない物扱いされたら気分悪いですよね。

お腹を痛めて産んだ母親が子供のアレクセイに関心が無く、
恋人とのやり取りを楽しんでばかりいるのが酷いです。

子供は母親が引き取るものという押し付けをする旦那のボリスもイラつきます。

子供を押し付け合う夫婦。この夫婦の間に生まれたアレクセイが気の毒です。
一生のトラウマものですね。お荷物扱いされたんじゃ、泣いてしまいますね…(-ω-;)ウーン。


ところで、学校から連絡があって初めて、子供が2日も登校していない事に
気付くのは変過ぎませんか…。
大学生なら未だしも、まだ12歳ですよね。
慌ててボリスに電話かけても子供のアレクセイの事を心配もしないのは、実に酷いです。

子供が行方不明なのに、この夫婦もおかしいけど、刑事もそのうち帰ってくるかもしれないと、真剣にならないのが不思議ですね。
日本なら大騒ぎになりそうです。
アレクセイの年齢が12歳となると、中学1年にもなりうる年齢なので、子供と考えていいか微妙な年ごろでしょうか。
中学生だと自分で家出したと思われて、真剣に警察もとりあわない事も考えられます。
ボランティア救助団体と探すのが不思議です。

ジェーニャの母親の家はアレクセイには祖母の家ですが、
どうも、そこにはいないんですね。

ジェーニャが、できちゃった結婚したのは、ボリスを好きだからでなく、
母親の家を出たい気持ちが強いからなんですね。
アレクセイは最初から望まれない子だったとは、お気の毒です。

身元不明の遺体は、アレクセイではないんですね。
尚、身勝手な夫婦にも多少の罪悪感はある事が分かりホッとしました。

3/30生まれの私は12歳になって一週間かそこらで中1だったので、中1なら、努力すれば
一人で何とか生きてると思います。
この両親の側にいるより人間としての尊厳が保たれるのでは…。
Unknown (杏子)
2024-04-09 14:21:41
>ウラジーミル・アスポンさん
コメントありがとうございます。アレクセイはほんとにかわいそうです。
離婚の時親権を巡って揉めることはよくあるみたいですが、押し付け合うなんて…
夫婦ゲンカを聞いていたら、子供は自分が親から愛されていないのがわかってしまいますね。

夫婦共に息子に関心がないみたいです。母親は息子に食事の用意はしますが、
後は恋人とスマホのやり取りに夢中。息子にとって家族とおしゃべりしながらの
暖かい食事の時間ではありません。
おいしく食べられるはすはありませんよね…

子供が2日も登校してないことを、学校からの連絡で知るとは信じられませんね。
夫婦は留守にしていることが多いので、ほんとに子供に無関心なんですね。

警察の対応も驚きます。日本なら大騒ぎになりますよね。
他に抱えている事件が多いからと後回しになるんですよね。
こんなにやる気のない警察は洋画でもあまり見ない気がします。
ジェーニャも、アレクセイを最後に見たのはいつかと警察に聞かれても、
記憶があいまいで、ほんとに信じられません。

ジェーニャの母親も毒親ですね。結婚に反対だったようですが、言うことがひどすぎます。

身元不明の少年の遺体を確認しにいった夫婦のシーンは、胸に迫るものがあります。
2人とも少しは息子を愛していたのでしょうか…
ラストシーンは雪のロシアと同様に寒々しいです。

ウラジーミルさんは3月30日生まれなんですね。新学年になるギリギリですね。
4月生まれの子とは1年近く離れているので、幼稚園や小学校低学年の頃は
大変だったかもしれませんね。小さい時の1年は大きいです。

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