猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

ブラインド・マッサージ

2020-11-07 22:24:37 | 日記
2014年の中国・フランス合作映画「ブラインド・マッサージ」。

幼い頃に交通事故により視力を失った若手のシャオマー(ホアン・シュアン)。
目が不自由であることを理由に破談になりながらも、結婚を夢見て見合いを
繰り返す院長のシャー(チン・ハオ)。客から「美人すぎる」と評判だが、自
分にとって何の意味も持たない「美」に嫌気がさすドゥ・ホン(メイ・ティ
ン)。そんな視覚障害者たちが働く南京のマッサージ院にシャー院長を頼っ
て同級生ワン(グオ・シャオトン)と恋人のコン(チャン・レイ)が駆け落ち同
然で転がり込んできた。彼ら2人によって、平穏だったマッサージ院の日常
に緊張が走るようになる。

ロウ・イエ監督による、盲人マッサージ院で巻き起こる人間模様を描いた映
画。シャー院長が経営するマッサージ院で働くシャオマー(ちょっと坂口健
太郎似)は、1番年下のようだ。彼は幼い頃の交通事故により視力を失ったが、
「いつか視力が戻る」と周囲から言われていたもののそれが嘘だったという
ことを知って、自殺未遂を起こしたこともある。首筋の傷痕が痛々しい。シ
ャー院長は何度も破談になりながら、めげずに見合いを繰り返している。美
人だと言われているが、自分の顔を見たことがないホンにとって美は意味の
ないものであり、美人と言われることにうんざりしている。他にも数人の従
業員たちがいるが、彼らは住み込みで働いているようである。
皆仲が良く、平穏に毎日を過ごしていたが、ある日シャー院長の同級生のワ
ンとその彼女のコンが駆け落ちのようにして転がり込んできて以来、マッサ
ージ院の静かな日常に変化が起きる。ワンは自分も全盲のため、全盲の女性
との結婚は許さないと両親に言われていたのだ。シャー院長は快く彼らを受
け入れるが、シャー院長とシャオマーはコンに興味を持ち、惹かれるように
なってしまう。この辺はよくわからないのだが、コンはちっとも美人ではな
いし、それにお互いに見えていないのにどうして惹かれたりするのだろう。
何が基準になっているのだろうと、不思議に思った。
やがてシャオマーは同僚に無理矢理連れて行かれた風俗店で、マン(ホアン
・ルー)という女性を本気で好きになってしまう。まあ、これはわかる。シ
ャオマーは度々風俗店を訪れるようになるが、そんなにお金持っているのか
な、と思った。私はこのシャオマーとマンのエピソードが1番好きだ。物語
は淡々と進んでいくように見えるが、結構起伏がある。ワンの弟が借金を作
って、怖い人たちが催促に来ているのに、弟は行方をくらまして両親がオロ
オロしているところをワンが助けに行くエピソードがあるが、その時のワン
の思い切った行動がすごい。不肖の次男をどうにもできないのに、両親はワ
ンの結婚を反対する資格なんてないのではないだろうかと思った。
おもしろいなと思ったのは、マッサージ院のスタッフは何度か集合写真を撮
っていたが、それを誰が見るのだろうかということ。皆目が見えないのに。
スタッフの食事の世話をしているおばさんくらいしか見られないのではない
だろうか。それがユーモラスだった。ラスト近くで物語は大きく動く。ああ、
こんなふうに終わるんだなと思った。ラストシーンも良かった。静かだが愛
を感じられるいい映画だった。


良かったらこちらもどうぞ。ロウ・イエ監督作品です。
二重生活




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ゴーストライター

2020-11-02 22:20:39 | 日記
2010年のフランス・ドイツ・イギリス合作映画「ゴーストライター」。

元英国首相アダム・ラング(ピアース・ブロスナン)の自伝執筆を破格の報酬で依頼
されたゴーストライター(ユアン・マクレガー)。政治にあまり関心がない彼は気乗
りしなかったが、ラングの滞在する孤島の豪邸を訪問する。取材をしながら原稿を
書き進めていくが、次第にラングの過去に違和感を抱き始める。更には前任のゴー
ストライターの不可解な死の謎に行き当たり、独自に調査を進めていくが、やがて
国家を揺るがす危険な秘密に触れたばかりに、恐るべき陰謀に巻き込まれていく。

ロマン・ポランスキー監督のポリティカル・サスペンス。第60回ベルリン国際映
画祭銀熊賞(監督賞)受賞作品。元英国首相アダム・ラングの自叙伝執筆を破格の報
酬で引き受けたゴーストライターは、ラングが滞在する島へ向かう。同じ頃、ラン
グはイスラム過激派のテロ容疑者に対する拷問への関与が取り沙汰されていた。ゴ
ーストライターは自分の前任者が事故死していたこともあり、あまり気乗りしなか
ったが、自伝執筆のために取材を始める。しかしやがて前任者は事故死ではなく不
審死を遂げていることを知る。
冒頭から早速スリリングな雰囲気で興味を惹かれる。キャストもイギリスの俳優た
ちがメインでいい感じ。ティモシー・ハットンといったアメリカの俳優も出演して
いるが。ゴーストライター役のユアン・マクレガーがいかにも平凡な感じでギラギ
ラしていないのが良く、そのゴーストライターが知りすぎたために、真実に近づき
すぎたために陰謀に巻き込まれていく様子がとてもサスペンスフルだ。
気さくで愛想のいい元首相、何を考えているのかわからないその夫人、様子のおか
しなメイドなど、登場人物たちが個性的で興味深い。寒々とした孤島の映像もいい。
物語は割と地味で、ずっと緊張感が続くといった感じではないのだが、要所要所で
「そういうことなのね」と思わせられるのがとてもおもしろい。ゴーストライター
が島のある老人に聞かされた話にピンと来るシーンは印象的だ。老人は何気なく話
したのだがそこにゴーストライターは真実の匂いをかぎ取る。
ゴーストライターが車に追われるシーンは1番ハラハラした。そして意外な展開に
驚かされる。ラストも衝撃的である。よく練られたシナリオで、おもしろかった。


良かったらこちらもどうぞ。ロマン・ポランスキー監督作品です。
戦場のピアニスト
おとなのけんか
告白小説、その結末
テナント 恐怖を借りた男




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