ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

サンドラの週末

2015-05-18 23:56:27 | さ行

ダルデンヌ兄弟監督、最新作。


「サンドラの週末」70点★★★★


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夫と二人の幼い子どもと暮らす
サンドラ(マリオン・コティヤール)は

体調不良でしばらく仕事を休業していた。

ようやく復帰できるとなった矢先
サンドラは会社からクビを言い渡される。

社員にボーナスを払うためには
一人を解雇する必要があるというのだ。

困ったサンドラは
ある手段に出ることに――?!

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「息子のまなざし」「ある子供」
「ロルナの祈り」「少年と自転車」――
傑作ぞろいの
ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟監督の新作。


おそらくうつ病で休職していた主人公サンドラが、
復職できずクビになりそうになる。

でも同僚たちがボーナスを諦めれば
サンドラは会社に残れる。

ボーナスを取るか、サンドラを取るかで
16人の同僚が週明けに投票をすることになる。

そのためにサンドラが週末に
同僚たちを説得にまわることになるんだけど

しかし、というか当然というか
同僚たちそれぞれの事情もあるわけで……というところが
ドラマになっていくんですね。


実際、心の病気で休職した人は
「契約更新なし」など失業することも多く
まさに社会を映す題材。

そして
弱者を助けるとか、正義を声高に叫ぶのではなく
弱者の背中にそっと手を添える程度の
淡々とした距離感が現実的であり、リアルでした。


さすがダルデンヌ兄弟。


ただ最近の映画で
もっと最下層の貧困やら、深刻度の高い話を
見慣れてしまったせいだろうか。

想像よりも鑑賞後感がフラットだった、という気もしました。



「金か情か」「利己か善意か」を従業員たちに問うような
会社のやり口は許せるものではないけれど
でも生活が苦しいのは、誰も同じ。

だからこそ
「あなたが従業員だったら、どうする?」
「あなたがサンドラだったらどうする?」

そして
「何が一番の解決法なのだろう?」と
考えさせられます。


サンドラにとっては
勇気を出して同僚を訪ね回る
行為自体がリハビリなんでしょうね。

かなり荒療治ではあるけれど(苦笑)
自分の状況をさらけ出して、助けを求めるってことが
本当は一番大事なんだよな、と。


そしてこの結末は
いいエンドなのだと思いましたよ。


★5/23(土)からBunkamura ル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで公開。

「サンドラの週末」公式サイト
コメント (2)
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