ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

だれも知らない建築のはなし

2015-05-22 20:39:42 | あ行

建築って、ホントにおもしろい。

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「だれも知らない建築のはなし」70点★★★★


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建築家の父を持ち、
磯崎新アトリエでの勤務経験もあるという
1979年生まれの石山友美監督が撮ったドキュメンタリー。


日本の1970年代以降の建築を振り返るという
おもしろいテーマのインタビュー集です。


ワシ、建築にかなり興味あるほうで
建築目的で旅もするし
実は学生時代に丹下健三事務所で
バイトをしていた笑い話(というしかない!)もあるんですが

でもこのドキュメンタリーで
建築家の“人間らしさ”も見たうえで

建築家って改めてあらゆる意味で本当に到底かなわない
すげえ人たちなのだなとわかった。
つまり「哲学を具現化する存在なのだ」って。


映画の軸になるのは
1982年にアメリカで行われた
世界の一流建築家が議論する「P3会議」の話。

そこに磯崎新氏が、当時まだ若手だった
安藤忠雄氏や伊東豊雄氏を連れていくんだけど
そこでプレゼンテーションした安藤氏が
冷笑の拍手に遭ったそうなんですね。

映画はその場にいた当人たちに
当時の様子をインタビューしながら
「日本の現代建築とはなんなのか?」を描いていく。


磯崎氏、安藤氏、伊東氏、そして
ピーター・アイゼンマン氏たちのインタビューは
建築とはなんぞや、を教えてもくれるんですが

名指し批判もありーの、な
辛辣さを併せ持っていて

でも当人たちはそれぞれ、そんなこと気にもしてないようで
そこがおもしろい(笑)。

特に建築家レム・コールハース氏がまあ辛口で
でも、言われたほうも
苦笑していなすしかないほど
的確でシャープな斬り方と、高い思考能力はさすが。

芸術批評の世界はなにかと難しいので、
高い次元で批判もし合える、こういう関係が羨ましいなと。


なにより
いま、そこにある日本の建築物を見ながら
ポスト・モダンとは何だったのか?
バブル崩壊から現在の流れは……? と
多くを学べるところがいいんです。


例えば
バブル期のころは、確かに風変わりで個性的な建築物があった。
神奈川県の湘南台文化センターとか
神戸のフィッシュ・ダンスとか
福岡のキャナルシティもそうなのか……とか。

でも、いま次々と建っているマンションやショッピングモールは
正直、無個性なものばかり。

それは
建築家なし、で建てられているからなのか、と
この映画を見て、改めて理解した。

でも
いまはそれが求められているわけで
建築を見るとそれが建った時代背景がわかるんだということも
すごく勉強になりました。


建築専門用語を知らなくても楽しめるけど
資料併読か、解説付きの上映だと
よりおもしろさ倍増だろうなあ、とも思いました。


★5/23(土)からシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。

「だれも知らない建築のはなし」公式サイト
コメント
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