ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

BILLIE ビリー

2021-07-02 00:42:03 | は行

ビリー・ホリデイの話だけじゃなく

彼女を追い、謎の死を遂げた女性ジャーナリストも主人公にしてる点がツボ。

R.I.P.

 

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「BILLIE ビリー」71点★★★★

 

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伝説のジャズ・シンガー、ビリー・ホリデイ(1915-1959)の

人生を追うドキュメンタリーです。

 

名前も曲も、知ってはいたけれど

こんなに凄まじい人生とは知らなんだ、と

BLM(Black Lives Matter)の時代につながるドラマに

見応えがあった。

 

 

さらに興味深いのはビリーの話だけじゃなく、

彼女の伝記を書くべく、取材を進めながら

38歳で不可解な死を遂げた

女性ジャーナリスト、リンダ・リプナック・キュール(1940-1978)を

もう一人の主人公としているところ。

 

なので、「ビリー・ホリデイについては知ってるよ」という方にも

思わぬミステリーあり、サスペンスありで

新たな問いかけをもたらす映画では?と思います。

 

まず

本作はリンダが伝記執筆のために集めていた、

関係者たちへのインタビューが

大きな素材になっている。

 

1915年、フィラデルフィアに生まれたビリー・ホリデイは

相当に過酷な幼少期を過ごしていた。

「10代のころは体も売ってたわ」と

証言する人もいて

 

かつ同性愛者でもあった彼女の人生は

けっこうなドラマ。

Netflixの「マ・レイニーのブラックボトム」の

マ・レイニーを思い出してしまったりもしましたが

 

これらの証言は

リンダが集めていたインタビューで

彼女はビリーを知る人々から、当時の彼女の様子、

歌姫の陰と陽を自然に聞き出し、

そのセックスライフにもすらっと斬り込む。

その手腕が――すげえ。

いち取材者として、ものすごく勉強させられました。

 

で、映画はリンダの存在をしっかり前に出しながら

さらに

ビリーの壮絶な人生に迫っていく。

 

1939年、ビリーは

南部で木に吊るされる黒人の現実を歌った「奇妙な果実」で

人種差別問題に声をあげたんです。

しかし、それが物議を醸し、

彼女は警察にマークされてしまう。

 

声をあげたがゆえに、踏みしだかれる彼女の人生。

わずか44歳で逝ってしまうまでの話は

なんともやりきれない。

 

そして、そんなビリーの人生を追うリンダもまた

取材の過程で、身の危険を感じはじめ

 

そして、1978年に

わずか38歳で亡くなってしまう――。

 

問題に声をあげた女性、それに光を当てて世に出そうとした女性

二人の非業が、時を超えて共鳴した。

彼女たちが伝えるものを、いまこそ

受け取らねばならない、と切に思うのでした。

 

★7/2(金)~7/15(木)角川シネマ有楽町で公開。ほか全国順次公開。

「BILLIE ビリー」公式サイト


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