カープV逸20年 私の提言
①古葉竹識さん(75) 元広島監督・東京国際大監督
監督の仕事
最近は成績が残せんかったら、コーチを代えていくよね。これが不思議で仕方ない。勝ち負けの責任は、監督以外にない。
1975年の途中で監督やれと言われたが、その前の3年間は最下位で監督が毎年代わっていた。今年最下位だったら自分もクビになると覚悟した。そんな気持ちで戦っていくうちに優勝争いに絡み、優勝できた。
戦力は常に他球団との比較で考えた。うちの1番打者はあそこに勝っているけど、リリーフは負けているとかね。自分の球団の中だけで満足していては駄目。力で負けるんなら、どんな野球でカバーするかを考える。それはプロも大学野球でも一緒ですよ。
若い投手成長
今のカープは若い投手が育ってきている。最近のドラフト指名をみても、まず投手をしっかりしようという方針がわかるよね。ただ巨人や阪神のようなFA補強は難しいし、いずれは選手が出ていく可能性もある。スカウトと話をして、将来を考えながらチームづくりをするしかないよ。
打線も、本塁打をがんがん打つ打者がいるわけでもない。広島の良さは、足を使った野球ができるかどうかに懸かっている。ヒットエンドランやバントを交え、大事な場面でスクイズを決められるか。ゲームに必要な練習をいかにやるか。これ以外にない。
僕から見ると、野村監督はまだベンチで目が光っていない。僕は今も試合中は必ずベンチの隅っこに立つ。あそこが一番グランド全体の動きが見える場所だから。学生には「オレもグランドに出ている。戦っているんだぞ。」と言ってね。
投手のボールから目を離したことがない。一球に皆がどれだけ集中し、守りの準備をしているか。球種によって、どんなスタートを切っているか。気付いたことは試合中に指摘するし、集中していない選手には怒る。
特にプロは、大変なお金を払ってファンに足を運んでもらっているんだから。皆さんに納得してもらえるかは、シーズンを通して緻密な野球ができるかどうかに懸かっている。野村監督はもっと目を光らせて、指摘してほしい。プロとしてきちんとした野球をしているか、させているかは監督の仕事だ。
5割が最低限
勝率5割は最低限の仕事とも考えていた。あと5勝できるか、5敗してしまうかで監督の評価は分かれる。そのためにユティリィープレーヤーをつくったし、高橋慶彦や山崎隆造をスイッチヒッターにした。主力の故障に備えてね。野村監督も秋季キャンプで取り組んだそうだけど、当然のことだよ。
当時は僕がゼネラルマネージャー的名な役割もやっていた。故松田耕平オーナーから「責任はおまえにある」と言われていたし、現場を一番分かるのは監督でしょう。自分が辞めても、5年間は優勝争いできるチームづくりも目指していた。常に将来のことを考えるのも監督の大事な仕事だよ。(聞き手加納優、撮影五反田康彦) 中国新聞平成23年12月11日より抜粋