自分が正しいのになぜ相手も正しいのか

2020年02月20日 | 社労士
久しぶりに矢部正秋さんの『プロ弁護士の思考術』を読み返してみた。
どのページを開いても読むべき箇所がある。
どのページにも線が引かれている。
仕事に行き詰ったとき、人間関係で厭世的な気分のときに読み返せばいいのだが、そういう時は余裕がなく、全てが終わった後にこの本を手に取り、やや気分が落ち着くといったところである。

人間は、自分の思い込みを離れてものを見るのは難しい。
客観的に見ていると思っても、実は「自分」というフィルターを通してみているのである。
感情をまじえず客観的に物事を見ることは、人間にとって不可能である。
また、そうなっては人生がおもしろくない。
われわれは対象をそのまま見るのではなく、自分の見たいように見ている。そう知るだけで考え方がずいぶんと変わってくるものである。

自分が正しいのになぜ相手も正しいのか。
ある意見が正しいか否かは是非を誰が判断するかの問題と切り離すことができない。
裁判では原告・被告のいずれも、自分の言い分が正しいと主張する。
弁護士は常に自分の主張が誤りと判断されるリスクにさらされる。
弁護士は自分の意見に真っ向から反対する者に鍛えられる。


これは弁護士に限ったことではない。
人生すべてにおいて言えることであるが、特に仕事において生きる教訓といえる。
座右の書というものは本当にありがたい。
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黒い巨塔は酷評ながら面白い。他人の悪口はなんだかんだいって面白い。

2020年02月06日 | 社労士
元裁判官瀬木比呂志さんの小説『黒い巨塔』とっても面白かったです。
カスタマーレビューは酷評でしたが、私は人物描写がとりわけ気に入りました。
普通小説には、フィクションであるという断りが書かれていて、この本もそうだけどなんか書きっぷりがしつこい。カスタマーレビューによれば
「フィクションとうたっているものの、作者の現職時代のうっ憤晴らしとしか読めませんでした」
たしかに!!
「主人公と一部の同僚以外は、皆とりえのない最低人間に描かれている。」
「余りにもステレオタイプで、まるで飲み屋で愚痴を聞いているような気分でした」
「出てくる人物出てくる人物、「要領が悪い」だの「知識が足りない」だの「能力なく就いた不相応なポジション」「こういうところが小物を感じさせる」だのと悪口ばかりで、唯一悪く言われないのは主人公だけ、そしてその作者を投影しているのは、当然、主人公ですね」
いやほんとその通りなんですよ!
自分はそっちのけで他者に辛辣な人ってこの世にごまんといて、そういう人が「辛口」なんていって持ち上げられてた時代ありましたよね?そうですよね!!
作者の瀬木さんはそういう時代に青春及び壮年時代を送ったんですよ!
今じゃそういう「辛口」はてんでウケませんが、そういう時代があったのは確かです。
自分が長年在籍していた組織を悪しざまに言う暴露本は貴重で面白いです。面白くないのはそういう人をもてはやす世間です。これいけません。
瀬木さんは下手な小説で叩かれてますが、うまく書いてたらもてはやされたとこです。
あぶないあぶばい…
瀬木さんのこの本、登場人物がいっぱいでてきて誰が誰だかわからなくなるのですが、ステレオタイプにこっぴどい人物評で紹介してるのでその個所に戻るとすぐにわかるのです。
いったい、あんた何様のつもり?って作者には言いたくなるくらい。
カスタマーレビューのなかの
「この程度の理不尽な陰湿さは、たいていの職場でありますよ。組織で働いている人間にとっては珍しくもない」という感想。このレビュー書いた人は、品位を欠く言動と人格の下劣さ、むき出しのエゴイズムで嫌われている田淵課長ではなく、あまりに高いプライド、他人の意見に一切耳を貸さない融通の利かない性格、氷のような冷たさで嫌われている桂木課長タイプだな。
ナチスのユダヤ人虐殺などもこれまでに何度もあったこと、なんて冷静ぶるタイプだな。
あとこの本、同年代の人が読んだら時代背景が共感できて少しは面白いんじゃないかな。ピンクフロイドだのエリック・クラプトンだの地獄の黙示禄だのがでてくるから。
ノンフィクション、ルポルタージュと言いながら三文小説みたいにつまらない物語もあれば、フィクションといいながらリアリティーが半端ないものもある。
ツッコミどころ満載のこの本読んでみるの悪くないです。
タイトルの黒い巨塔はまあ、ご愛嬌で…


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