⁂感想
今、会社や工場で働く者、非正規労働者、派遣労働者、外国人労働者・・への差別、低賃金、長時間労働、過酷な労働、残業代未払い、不当解雇、セクハラ、パワハラなど違法行為の横行は一向に減ることはない。そして職場には性格の悪い、労働者の誰からも憎まれている上司「須賀爺」がいる。どこの職場でも例外なく「須賀爺」がいる。「須賀爺」はたまたまいるのではない。差別と搾取の資本主義社会における職場には必ずいる。100年前からいて今もいる。
この憎い「須賀爺」に出会ったらどうしたらいいのか。毎日毎日泣き寝入りして我慢して働き続けるのか。ケンカして会社を辞めるのか。労働者にはこの二つの道しか選択肢はない。否、第三の道がある。うつ病になるほど苦しんで耐えなくても、生活を犠牲にして会社を退職しなくてもいい第三の道がある。まともな良心的労働組合だ。東部労組では、職場の労働者が立ち上がって悪人職制を追い出したケースは幾つもある。女性たちが立ち上がってパワハラ・セクハラ上司を放逐させた職場もある。
日々「須賀爺」に苦しめられている皆さん! 第三の道をぜひ選んで欲しい。
詩
須賀爺
根岸正吉(N正吉)
須賀爺
須賀爺の面の憎さよ。
あの
額に寄する残忍の皺よ。
冷酷のまなざしよ。
憎らしき靨《えくぼ》よ頬っぺたの穴よ。
須賀爺の面の憎くさよ。
今日も亦|緯糸《よこいと》をたぐりしと叱りし。
解雇するぞとおどかせし。
そんなに叱るなよ。罵(のの)しるなよ。
おれは慣れないのだ。
機台の前に立つさえ怖いのだ。
あの杼《ひ》の音|箴《おさ》打つ音にも驚くのだよ。
須賀爺の面の憎さよ。
おれのみが憎むのではない。
みんなだ。
時間が十二時を打っても機械が止まっても
汽笛の鳴らぬ間《うち》は
飯食いにやらぬと出口に立ち塞がる。
あの面の憎くさよ
(『新社会』1916年6月号にN正吉名で発表 1920年5月日本評論社刊『どん底で歌う』)
*根岸正吉(ねぎし しょうきち)
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1892-1922 詩人,社会運動家。
1892年(明治25年)生まれ。社会主義運動に共鳴し、工場ではたらきながらN.正吉の名で「新社会」などに詩を発表。1920年(大正9年)日本社会主義同盟の結成に参加した。1922年11月12日死去。31歳。群馬県出身。伊勢崎工業卒。詩集に「どん底で歌ふ」(共著)。