印刷・出版労働者の労働争議③横暴な監督を追い出した博真堂印刷所争議―1928年の労働争議
参照・協調会史料
横暴な監督を追い出した博真堂印刷所争議―1928年の労働争議
場所 下谷区入谷町
従業員数 37名(うち女性4名)
争議参加 22名(男20名、女2名)
応援労組 出版労働組合(旧評議会系)
組合加入 ゼロ
争議発生日 1928年11月7日
(横暴な監督への怒り)
製版工の監督(製版部職長)であった工場主の長男は、職工を不公平に扱い、また差別的昇給をするなど横暴な男だった。しかも労働者には平気で賃金遅配をしておきながら、自分たちは家族と贅沢な避暑旅行に行くなど労働者の中で怒りが高まっていった。その上、この長男は取引先から貰えるお金すらもきちんと取ってこない。このままでは長男のせいで工場が潰れてしまうと危機感を抱いた22名が、1928年11月7日要求を提出し争議に入った。
(労働組合には未加入)
旧評議会系の出版労働組合が応援していたが、22名は組合には未加入のまま「製版部一同」としてストライキを闘い、会社と交渉した。
(要求)
要求書
第一 工場設備の改善
第二 誠実な製版部職長を置く事(大衆の選出)
第三 給料は決まった日に必ず支払う事
第四 賃金7割の値上げ
第七 皆勤手当、2日分を付ける事
第八 馘首を廃止する事
等
昭和3年11月7日
製版部一同
この要求が工場主の長男から即座に拒絶されたため22名はストライキを敢行した。
(解決)
11月17日の労資交渉で、会社は労働者の要求の大部分を容認し、協定を結び争議は解決した。
記
一、賃金の値上げ 1割から1割5分の値上げ
一、給料を半月勘定とする
一、給料は必ず決まった日に支払う
一、第一、第三は公休として、その日に出勤した者には4割増支払う
一、皆勤手当は2日分支給する
一、本年中に工場設備の改善に入る
一、製版部職長を従業員が選出する(ただし工場長の承認を得ること)
一、今争議で馘首しない、将来も絶対馘首しない
一、工場法による解雇退職及び傷病手当を制定する
一、争議中の日給を半額支給する
以上