上・江東北辰社牛乳店労働争議の件(「労秘」警視総監宮田光雄)1928年2月10日
警察がつぶした労働争議! 江東北辰社牛乳店―1928年の労働争議(読書メモ)
参照・協調会史料
江東北辰社牛乳店労働争議
(あまりにあくどい、非人道的な悪虐牛乳配達会社)
江東本所区の北辰社牛乳店は、24名の牛乳配達労働者に公休日を月に一日すら与えず、配達先の客が飲んだ牛乳ビンを返却してくれない時は、そのビン代金を配達労働者に負担させ、また客が引っ越し(逃亡)した場合などの未払いの牛乳代金も労働者に弁償させ、見本として客に飲んでもらうその代金すら労働者に払わせる、その上雨が降っても雨具の支給すらない、寮の食事内容もひどい等々、あまりにもあくどい、非人道的な悪虐会社でした。
(東京合同労働組合)
1928年(昭和3年)1月9日、評議会の東京合同労働組合に加盟している21名の牛乳配達労働者は、連名で以下の要求書を会社に提出します。
(要求)
1、売上高の一割を支給する事
2、公休日は月1回は行うこと
3、歩合清算を15日に行う事
4、集金歩合を3分値上げする事
5、顧客の逃亡による損失の廃止
6、食事の改善
7、工場法規を工場内に貼りだす事
8、壜代金の不足を従業員に立て替えさせることの廃止
9、見本の牛乳代金を従業員に立替えさせることの廃止
10、5、6、7、12の手当を月10円を支払う事
12、外泊者の食料代15円を支給する事
14、雨具を支給すること
等
すぐに会社は全面的に拒絶します。
(ストライキ決行)
1月10日より16名がストライキを決行します。東京合同労組本所支部は、「全支部員諸君に檄す」、「同志諸君!! 戦いはこれからだ!! 我々の争議を勝たせろ!! 応援金を送れ!! 」と応援依頼の緊急檄文が東京合同労組の各支部や評議会系などひろく関係労組、団体に発しました。
(当局・警察の姿勢に従い強硬な会社)
この時の当局の姿勢は、すぐ直後の3.15弾圧、4月の評議会など解散命令が示すごとく、評議会への徹底弾圧のそれでした。この当局の強硬姿勢に従った江東北辰社牛乳店経営者は、牛乳配達労働者の「せめて公休日を月1回欲しい」「顧客が支払わなかった牛乳代金の立て替えの廃止」「(客が返してくれなかった)牛乳壜代金の立替えの中止」等のあまりにも当然な、ささやかで切なるこれら要求ですら無慈悲に拒否し、その上、スト破りを多数雇い入れた上で、乱暴にもスト参加16名全員を解雇してきます。
(労農党緊急ビラ)
会社の驚くべき対応に、労農党江東支部は直ちに「北辰社の牛乳を買うな」「悪家主寺尾鉄二を葬れ」「力を一つにして戦え」と緊急ビラをつくり、江東全域に配布します。また、関東婦人同盟も「見よ子の親にしてこの姉妹あり」のビラを配布して地域の女性労働者からの連帯を呼び掛けました。
(争議団員ほぼ全員が検束)
なんと警察は、ストライキの翌日の1月11日に争議団員14名と支援に来ていた東京合同組合員5名をいっきに検束する弾圧をしてきます。争議団員16名の内14名を検束という、これはもう闘う当時者の壊滅そのものでした。警察が直接労働争議をつぶしたのです!
こうして2月5日江東北辰社牛乳店労働争議は完全に敗北します。
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(感想)
この争議は、1928年という今から100年近く前の東京江東区にあった牛乳配達店の労働争議の話です。
ところで2009年7月に私が東部労組本部オルグとして担当した東部労組布亀支部の以下の最初のアピールをご覧下さい。「布亀マザーケア」は、大阪に本社を持ち、主に明治牛乳配達を全国に展開するチェーン、労働者約千名の会社です。
―アピール―
「私たちは、毎日毎日朝早くから夕方まで、牛乳や乳製品を配達し、集金し、営業をしています。今まで私たちは、固定給22万円といいながら、実際は、そこから私たちは配達している会社の車を「車両代=リース代」として賃金から1万8千円引かれていました。その上、配達で使う車のガソリン代を約1万から2万円を自腹で払っています。
お客様の代金回収も、未回収分は私たちが立て替えて会社に振り込んでいました。
有給休暇も実際は取れませんでした。それどころか、宅配を代行してくれた人の分として一本につき30円を給料から差し引かれたり、(有給休暇で休んだ次の日は)「倍配」の決まりもありました。これではおいそれと田舎にも帰れません。
そのため幾ら頑張っても生活は苦しくなるばかりです。毎月の給料が16万円いけばいいほうです。ひどい時は13万円、14万円の時すらあります。しかも、ここから配達の車のガソリン代を自腹で払うわけですから、実際の収入は10万そこそこということすらあります。
これでは家族や子供たちを育てることができません。
また私たちは、れっきとした社員なのです。にもかかわらず、就業規則に書かれている様々な労働条件、例えば退職金制度や特別有給休暇や慶弔見舞い金などは適用されていませんでした。本社ビルの社員には与えられている正月休みやゴールデンウイークや盆休みも私たちにはありません。江戸時代の丁稚(でっち)にも盆と正月には休めたのに、現代社会の私たちには「盆も正月」もないのです。親が倒れて休みを申請したら、休みを変更しろと言われた人もいました。こんなひどい差別が許されていいのでしょうか。
お客様も一般の世間の方も大切な商品である牛乳や乳製品を毎日宅配している者たちがこんな低賃金で配達していることを知らないと思います。」
布亀で働く牛乳配達の全国千名の同僚の皆さんへ呼びかけます
https://blog.goo.ne.jp/19681226_001/e/eace58ab8d3133afed1f5c74704acee0
100年前の牛乳配達の先輩たちと現代の私たちとどれほどの違いがあるでしょうか。東部労組布亀支部は、3年間歯を喰いしばって頑張り抜き多くの闘いをくりひろげました。ついに2012年10月全面勝利の協定を勝ち取りましたが、本当に資本家・経営者の性根は100年たってもまるで変わっていませんね。
https://blog.goo.ne.jp/19681226_001/e/f5b3d7757a281f3f2d8804ed7a23a58b