口承性は語りである
古事記は誦習(繰り返し読む)という口承性(口伝えに伝承する)で成立した
語り手は、聞き手を意識して、語りの内容を、聞き手の耳と心に快く、印象に強く残るように工夫する必要がある
そのためには接続詞や接続助詞などを多く用いて、文脈を途中で切らないようにする工夫が施される
古事記に「故・爾・是・乃・即・而」などの接続関係の助詞が頻出しているのはこのためである
また同じ語や句を繰り返して文章を韻律的(リズム的)にする工夫も施されている
例えば、天照大御神と須佐之男命の誓約(うけい)の物語には、「乞い渡して」「ぬなとももゆらに」「さがみにかみて」「吹きうつる気吹の狭霧に成れる神」などの句が数回にわたり繰り返されている。この繰り返しのリズムに乗って、誓約の呪儀が荘重に聞き手の心に印象づけられるのである
小島憲之氏は、接続の助詞や、同語の繰り返しの使い方は、漢訳仏典の文体からの影響があると述べている
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