祭に用いる若松や、祭の当日に当親家の門口に立てる松をとるために半日がかりで男四人が山に入る
若松は五階五心の松、五重の松とも呼ばれる枝ぶりの松を探す。枝が五段で各段毎に五本の枝が揃っている松のことで滅多に見当たるものではない。祭の松とりにかぎり、誰の山からかりだそうと天下御免である
五階五心の若松は祭前日までに用意され、当日の祭壇の傍の床の上に安置され、神職の修祓、祈祷を受けている
床の上から当親が若松を下し、株を神職に向けて座敷の上座に置く。神職は若松を拝礼後に隣席の民子総代に若松を移す。総代は自座から座敷の中程に進み出て、若松の株の向きを上座になおし一礼して挨拶する
総代が自座を離れるのを待って、挨拶が始まる以前から数人の子供が若松の枝にとりつき、若松を起こすことを妨害している。この子供たちは稲田や用水路に害を及ぼす蟹に擬せられており、これを追わねば(若松から手を離させる)、若松を起こし、美事な稲とたたえ、豊作満作を祝うことは許されない
総代は田まわりの意味で若松の周囲をまわりはじめる
「🎶めでためでたの若松さまよ
枝も栄えて葉も茂る。
枝も栄えて、葉も茂りゃこそ
人はめでたの松という🎶」
と歌の数々を披露
田まわりを終え、蟹の子が退散すると
「よいよい。よいよい。よいよい。。。」と若松を起こし、担ぎ、上座に向かって若松を据え
「目出度し」
「万歳楽土」
と唱和する
総代は満面喜悦の色を表し若松を次座にまわす。以下順次、上座から下座、左右交互に一同が松祝いを進めていく
最後は当親が若松祝いをして作庭に担ぎ出す。かつては作庭に担ぎ出された若松を中心に庭躍りがひろげられ、暁に及んだ