るるの日記

なんでも書きます

日本人らしさとは、野生と科学の中道で生きること

2021-06-30 16:27:46 | 日記
日本文化は、レヴィ=ストロースのいう【野生の思考】を科学技術と同居させた、まことに稀有な文化だ
市場、料理、職人の仕事、ゲーム、ゆるキャラ、アニメ。。に【野生の思考】が生きて【はたらき】を行っている

しかし、日本はグローバル基準に合わせて変わっていこう、変えていこう、という動きも強まっている。このまま強まっていくと、【野生の思考】につながる大切なものがどんどん壊されてしまうおそれもある

【野生の思考】という本は、いまこそ日本人が読んで考えるべき書物。一筋縄ではいかない、強靭な知性によって書かれたとても難しい本だが、そこには、日本人がこれからどうやって自分たちの世界をつくっていったらよいかを考えるためのたくさんのヒントが埋め込まれている

野生の思考は未開社会の文化について書かれた本だが、日本論としても読むことができ、じつに面白い





この本から抜粋しました
2016年末に書かれましたから
新型コロナ流行でグローバル基準はふきとんだ?


市場の競りは武士の一騎討

2021-06-30 16:06:03 | 日記
戦争が休戦となったとき、境界域にまっさきに市場が開かれる。市場にはついこの間まで敵味方だった双方から物品が持ち込まれ、男女の出会いも起こり、結婚も発生する。戦争と市場は対になるような機能を持ち、平和をつくりだすための空間として市場というものが存在してきた。だから市場での商人のやりとりは戦争の延長という性格も持っていて、そのため商人たちはまるで戦いのように、市場の中でも一騎討を行う傾向がある

市場に仲卸たちが集まってきて、お互い気楽な雰囲気で冗談を言いあったりしているが、いざ競りが始まると、それまで冗談を言いあっていた者同士が敵同士になり、武士の一騎討のような、迫力ある競り合いが始まる。競り合いはある意味ギャンブルと同じだから、相手の肚を読みながら賭け続けていく。こうやって競り市では商人同士の一騎討が行われる

一般客が買いに来たときは、昔の市だと値段交渉が行われる。この値段交渉にも戦略と交渉術が必要。交渉術を知らない人は高い値段で買わされるが、別に商人は悪いことをしてはいない。それが市場のルール。

このような市場を通過して自然の産物は食料として人間の社会へ入ってくることができる



日本の築地市場の美的ハーモニーにレヴィ=ストロースは感動

2021-06-30 15:45:09 | 日記
レヴィ=ストロースは世界中どこへ行っても、まず市場へ出かけた。市場は食事を通じて、社会が自然界からさまざまな物を集積する場所であり、博物館と同じだと語っている

ある社会の文化的な生産物を一堂に会しているのが博物館だ。その社会の人が世界の中でどのように生きているかを知るためには、市場へ行くのがよい

レヴィ=ストロースは築地に行って深い感銘を受けている。野菜から海産物までありとあらゆる自然物が集められていて、それらが無造作のようでいて、実に見事な統制をもってレイアウトされ、イカが箱に入って並んでいる隣には、蟹の箱が整然と並び、イカの白、蟹や海老の赤、魚の青、赤、銀など色彩の配置にまで【感覚の分割主義】にしたがって熟慮されているかのよう。意図せずして全体が美的ハーモニーを作り出していることに、レヴィ=ストロースは感動したのだ

日本橋に最初に魚河岸がつくられたとき以来の伝統が、ここにはまだ生きていました。レイアウトの美は、魚河岸に働く人々が無意識に作り出したもので、【構造】の感覚が生きている

日本料理は分割主義

2021-06-30 15:22:46 | 日記
レヴィ=ストロースが日本で気づいた料理の特徴に【分割主義】がある。デカルトは思考に分割的秩序を取り入れたが、日本は感性や美意識によって分割するという

料理では、刺身など自然の素材を、なるべくそのままで食べ、しかも他の素材と混ざらないようにする。味が混ざることを嫌い、混ぜ合わせは口の中で行う。ここがフランス料理や中華料理と大きく異なる

確かにこの分割主義が日本料理を美しくしている。自然から採ってきた素材が最小限の変形を加えただけで、最速で食卓に出てくるよう、料理の体系ができている。日本料理は視覚的な美を通じて自然の人間化が行われている

学者の観察眼・日本料理の提供の仕方・京都の料亭では一品一品出てきたが、今日の旅館はいっぺんに出てきたのはなぜか?

2021-06-30 15:09:19 | 日記
レヴィ=ストロースの【神話研究】では、食事に重要な位置が与えられる。食事は自然から文化への移行である。火の利用という転換期に、食事は自然から文化に移行し、新石器時代には数多くの料理神話が語られた

そうゆうレヴィ=ストロースだから、当然日本料理にも深い関心を示した。人類学者だから何でも食べてみる人で、離島の旅館などで出されてくる刺身の美味しさにびっくりし、中でも一番気に入ったのは、何と白子。こんな珍味はないと、おおいに喜んだそうだ

京都の料亭では料理が一品一品出てくるのに対し、隠岐の旅館では料理がいっぺんに出てくる、ということにも彼は鋭い観察眼を発揮している。その違いは【通時態】と【共時態】の違いだと喝破している

通時態は、様々な要素が時間軸に沿って順番に並んでいる秩序(フランス料理)

共時態は、様々な要素が同時に並列に並んでいて、その中から選択していくという秩序(中華料理)

レヴィ=ストロースは、その時の旅館の仲居さんに、料理を一度に並べる理由を聞いてみたらしいが、仲居さんは答えようがなくて困ったらしい。当時レヴィ=ストロースと対談した大橋保夫氏は「旅館ではサービスの人手が足りないという問題もあるかと思います」と応じているが、その意味するところはもっと別のところに隠されているように思います。これから研究すべき問題です