るるの日記

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古事記・軽皇太子と穴穂御子

2021-02-13 16:33:17 | 日記
ここをもちて百官及天下(もものつかさ、また、あめのした)の人ども、軽太子に【背きて】、穴穂御子(あなほのみこ)によりぬ

ここに軽太子、畏(かしこ)みて、大前小前宿禰大臣(おほまへをまへのすくねのおほおみ)の家に逃げ入りて、兵器(つはもの)を備へ作りたまひき

穴穂王子もまた兵器を作りたまひき。ここに穴穂御子、軍(いくさ)を興して大前小前宿禰の家を囲(かく)みたまひき

ここに其の門に到りましし時、【大氷雨(おほひさめ)】ふりき
故、歌ひたまはく

「大前小前宿禰が
金門蔭(かなとかげ)
かく寄り来の
【雨立ち止めむ】

と歌ひたまひき
ここに其の大前小前宿禰、【手を挙げて膝を打ち】舞ひ【かなで】歌ひ参来(まいく)、其の歌にいはく

「宮人の
【脚結(あゆひ)の小鈴】
【落ちにきと】
宮人【とよむ】
【里人】も【ゆめ】

と歌ひき
この歌は宮人振なり

かく歌ひ参帰(まいき)てまをさく
「【我が天皇(おほきみ)の御子】、いろ兄(せ)の王(みこ)に兵(いくさ)をなやりたまひそ。もし兵をやりたまはば、必ず人わらはむ。僕(あれ)捕らへて貢進(たてまつ)らむ」とまをしき

ここに兵(いくさ)を解きて退(そ)き坐(ま)しき。故、大前小前宿禰、其の軽太子を捕へて、率(い)て参出(まいで)て貢進(たてまつ)りき

★背きて
異母兄妹の結婚は許されるが、同母兄妹の結婚は不倫とされていて、その不倫を皇太子がしたから、みな皇太子に背いたのである

★大氷雨(おおひさめ)
激しいひょうやあられ

★雨立ち止めむ
雨をやまそう、雨宿りしよう

★手を挙げ膝を打ち
舞の所作

★かなで
手足を動かして舞う
次の歌は舞踊を伴って歌われた

★脚結(あゆひ)の小鈴
活動しやすくするため、袴を膝の下あたりで結ぶ紐。その紐に鈴をつけて装身具とした

★落ちにきと
軽王と軽大郎女の密通事件を暗示する

★とよむ
鳴り響く、騒ぎ立っている

★里人
※里に下っている人々
※大前小前宿禰一族・一党

★夢
斎み慎め
気をつけよ

★我が天皇(おほきみ)の御子
わが天皇である御子よ
天皇はまだ即位前なのでオホキミとよむ


■この密通事件を知って、朝廷に仕える官人や国民たちは、軽王にそむいて穴穂御子の方に心を寄せてしまった

それで軽王は恐れて、大前小前宿禰大臣の家に逃げこんで、武器を作って備えた

穴穂御子も武器を作った。そして穴穂御子は軍勢を発して大前小前宿禰の家を包囲させた。その家に到着した時、氷雨がひどく降ってきた。そこで歌をうたった

「大前小前宿禰の金門の蔭に、寄って来い、ものどもよ、ここに立って雨の止むのを待つことにしよう」

すると大前小前が手を挙げ膝を打ち、舞を舞い、歌をうたいながら出てきた。その歌は

「宮人の脚結につけた小鈴が、落ちてしまったといって、宮人たちが騒ぎたてている。里人たちも軽挙妄動を慎みなさいよ」

この歌は宮人振という歌曲である

大前小前宿禰は歌いながら穴穂御子の前に参って、「わが皇子さまよ、兄君に兵士を差し向けなさいますな。もし兵士を差し向けなさるならば、きっと世間の者は、兄弟の道にもとると謗り笑うでしょう。私が捕らえてその身柄をお渡しいたします」と申し上げた

これを聞いて、穴穂御子は軍勢の包囲を解いて後方に退かれた。そこで大前小前宿禰は軽王を捕え、穴穂御子に差し出した

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