清盛は言う
世の中が鎮まる間、後白河法皇を鳥羽の北殿か、この西八条へ移そうと思う。そうなると後白河法皇を守る武士が矢を射るだろう。侍たちにその用意をしろと触れを回せ。馬に鞍を置き鎧の準備をせよ」
これを聞きつけた清盛嫡男重盛は、父清盛の元へ駆けつけ、はらはらと泣かれ父清盛を説得した
「御運はもはや末になったと思われます。人の運命が傾きかける時には、必ず悪事を思い立つものです。父上の様子は全く正気とも思われません
わが国は天照大神の子孫が国の主として統治し、天児屋根命(あめのこやねのみこと)の子孫の藤原氏が朝廷政治を司どられて以来、太政大臣の官職に上がった人が甲冑で武装する事は、礼儀に背きます
とりわけ父上は出家の身。法衣を脱ぎ捨て甲冑をつけ、弓矢を持たれることは、仏教の方でももはや戒律を破っています
儒教の方でも仁義礼智信の法に背きます
父上は先祖にまだ聞かない太政大臣という最高の官職になり、私のような無才愚闇の身で大臣の位にまで上り、日本全国の半分以上の国・郡は平家一門の領地になりました。これは世にもまれな朝恩であります
この大きな御恩を忘れて、後白河法皇の滅亡をはかられる事は、天照大神の御子心に背く事になります
日本は神国です。神は非礼をお受けになりません
聖徳太子十七条憲法に
「人には心がある。心にはそれぞれ固執するところがある。よしあしの道理を、誰がよく定められようか。相互に賢であり愚であって、一つの輪のようにつながっていて端がない。ゆえに人が怒っても、かえって自分に過失がないか反省し慎め」とあります
法皇の謀反計画はすでに明らかになりました。法皇の相談相手の成親も逮捕したので、たとえ法皇がどんなとんでもない事を思い立たれても、何の恐れがありましょうか
法皇のためにいよいよ忠勤を尽くし民のためにますます哀れみ慈しむようになさったら神の加護を受け、仏の思召しに背くはずはありません。神仏がこれを受けてくださったなら、法皇も思い直される事がどうしてないでしょう。君には従うべきです」
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